福岡よしもと(吉本興業福岡支社)から新たなスターを発掘するために結成された、芸歴9年以下の若手芸人8組によるユニット「福岡ネクストエイト」。今回は、そのなかでも“アウトロー”な存在だという結成4年目の出目金(あつし、橋本康平)にインタビュー! コンビ結成秘話や相方の素顔、2月に控える単独ライブへの意気込みを聞きました。
NSC福岡校での出会いとは
――昨年10月に「福岡ネクストエイト」が発足してから、変化はありましたか。
橋本 まさか僕らが選ばれるとは思っていなかったんですよ。
あつし 自分たちで言うのもなんですが、僕らはどちらかというとアウトローなタイプというか。でもせっかく選んでもらえたので、以前よりはやりたいことと、プラスアルファで売れるためにやらないといけないことを意識してやっています。たとえば名前を広く知ってもらうためにSNSでアウトプットしていくとか。
橋本 がんばろう、という気持ちにはなりましたね。こんなサポートが受けられるなんて、とんでもない待遇だと思うので、「福岡ネクストエイト」であることを生かそう、という気持ちにはなりました。
――昨年11月には初の単独ライブ『孵化』も開催しました。
橋本 ものすごく大変なのでは……とドキドキしていたんですが、思っていたよりも大丈夫でした。意外と早めに準備を始めたからだと思うんですけど、わりと余裕がありました(笑)。
あつし 自分たちが好きなことだけを自由にできる、という楽しさがあってよかったです。
――同じく11月には、大阪・なんばグランド花月で『初舞台選手権2022秋』(なんばグランド花月の本公演に出演したことのない芸人たちが集まったネタバトルライブ)にも出演しましたが、福岡とは違いましたか?
橋本 なんばグランド花月はお客さんとしても行ったことがなく、本当に初めてだったんですけれども、こっちは大変でした。目に見えない“圧”というのか、プレッシャーがものすごくて……。まさに「強者がいる世界だ」って思いました。苦しかった……。
あつし おまえ、楽屋で寝とったやろ!
橋本 でも、隠れて寝ましたよ。
あつし ドア、開いとったやないか! こいつ、神保町よしもと漫才劇場に行ったときも、大楽屋に15組くらい一緒で、僕はいろんな人に挨拶しながらどうにか交流していたのに、こいつはひとりで本を読んでいたんですよ。1冊読み終えていました。
――橋本さんはマイペースなんですね。そんな2人の出会いはNSC(吉本総合芸能学院)福岡校とのことですが、NSCに入学したきっかけはなんですか。
あつし 僕は、福岡の小郡市の出身で、18歳で大学進学のため千葉に移りまして、その後、他社のお笑い養成所に通って丸2年ほど東京でのらりくらりとフリーの芸人をやっていました。でも、芸人の稼ぎはゼロだし、バイトがメインの生活をしていて。「なにか変えんといかん」というときに、福岡にNSCができたのを知って、もう一度ゼロから始めてみよう、と思って地元に帰ってきました。
橋本 僕も福岡出身で、大学卒業後はふつうに就職して半年強くらいサラリーマンをしていました。でも、サラリーマンが絶望的に合わなくて……。
――「絶望的に合わない」とは?
橋本 たとえば、期限のある仕事を延ばしに延ばしてどうにもならない状態になってから先輩に助けてもらったり。とにかく電話がめっちゃ苦手で、いろんな取引先の人に連絡を密に取らないといけないのに、すごい苦手でした。
あつし じゃあ、なんでコールセンターに就職したん(笑)。
橋本 それで、以前から憧れていた芸人になろうと思って会社を辞めると同時にNSCに入学しました。
――橋本さんもお笑いが好きだったんですね。
橋本 小学生のときはネタとかじゃなく、バラエティ番組が好きでよく見ていました。とくにレイザーラモンHGさんがすごく好きで、『バク天』(『爆笑問題のバク天』、TBS系)とかよく見ていましたね。スポーツや勉強ができたほうじゃないから、ならばお笑いをがんばれば……! という憧れがありました。
あつし 僕もバラエティ番組が好きでしたね。『水10!』(フジテレビ系)はよく見ていましたし、深夜にこっそり起きて見る『はねるのトびら』(フジテレビ系)が好きでした。あとは子どものころから人に笑ってもらうのが好きでしたよ。
あつしは破天荒な「昭和気質の芸人」
――そんな2人がNSCで出会ったわけですが、どちらから声をかけてコンビを組んだんですか?
橋本 声をかけてきたのは田中(あつし)ですが、モーションをかけたのは僕のほうかもしれない。グループを作ってショートコントをやる授業のときに、同じグループになったんです。そのときの自己紹介で、田中が金属バットさんが好きだと言ったんです。僕も金属バットさんが好きなんですけど、なぜか恥ずかしくて、そのときは霜降り明星さんと、かまいたちさんの名前を挙げて。で、授業が終わったあとにLINEで「オレも金属バットさん、好きだよ」と送りました。
あつし なんでその場で言わんの?
橋本 なんか、恥ずかしかったんですよ。だから、まわりの人にめっちゃ相談して、そしたらみんな、「送りなよ~!」って背中を押してくれた。
あつし そんなこと、相談すなよ!
――あつしさんは、橋本さんのどこに惹かれましたか。
あつし 僕は相方がいないままNSCに入ったので、相方を探してたんです。そんなとき、NSCの授業でネタ見せがあって、そのときに唯一、ちゃんと「お笑い、やってるな」と思えたのが橋本だった、という感じです。
――あつしさんから見て、橋本さんはどんな人ですか。
あつし 独特の雰囲気があるというか。出てくる言葉も一つひとつがなんか人と違うんです。たぶん、本をたくさん読んでるからだと思うんですけど。
橋本 本、好きですね。ずっと友だちがいなかったので。学校の休み時間でも本はずっと読んでいました。
――では、橋本さんが思うあつしさんは?
橋本 「昔気質の芸人さん」という感じでしょうか、笑いに魂を売っているな、という感じです。ギャンブルで身を持ち崩したり、あと車上暮らしをしていたり。破天荒というか、絶滅危惧種のような……。大切に保護してあげないと。
――車上暮らし、ですか?
あつし はい。一昨年の4月からなので、もう1年半以上ですかね。軽バンで暮らしています。実家はあるんですけど、実家がある小郡市から福岡市まで車で1時間半くらいかかるんで、そうなると先輩づき合いもできないし、劇場もあるし……と考えると、往復のガソリン代を含めてもったいないし、時間の無駄だな、と思えてきて。
「僕らもそっち側にいたい」
――たしかに破天荒ですね……。出目金として、将来はどんなコンビになるのが目標ですか?
あつし 男性ファンについてもらえるようなコンビになりたいです。単独ライブでも、男女比が5対5になるような。男性って、たとえ面白いと認めても、そのときに面白くなかったら笑わないうような気がするんです。なので、男性ファンがついたときこそ認めてもらえたのかな、という気がして。女性はもちろんですが、男性の心も掴む芸人さんになりたいです。
橋本 僕は劇場中心に活動していきたいです。「今日、出目金が出るから劇場に行こう」と言われるようなネタをやっていきたいです。
――2月4日(土)には、2回目の単独ライブ『進化』が開催されます。
あつし 今回は「配信と戦う」ですね。配信があると、いろんなことが制限されて、僕らも何度も注意されたことがあるんです。なので、言葉ひとつ取っても、きちんと考えないといけないですが、そんななかでどこまで自分たちの色を出せるかというせめぎ合い。でも、配信があるからってビビりたくはないですし、ギリギリの末のネタを。
――そんなアグレッシブなネタを用意しているんですか?
橋本 よくいえば、アグレッシブですかね。でも僕は、そもそもお笑いは人々の営みのなかにあるものだから、人の業やどうしようもないところを隠そうとするのは好きじゃないんです。人間ってそんなにきれいなものじゃないぞ、ということは踏み込んでやっていきたいと思っているので。
あつし 昨年末の『M-1グランプリ』で優勝したウエストランドさんに、(審査員の)立川志らくさんが「時代を変えてくれる」と言っていたじゃないですか。僕らもそっち側にいたいというか、このギチギチの世の中が変わってほしいと思っていて。もし、僕たちの単独ライブの配信チケットがダントツに売れたら変わるかもしれない、くらいに思っています。そのせめぎ合いを見てほしいですね。
公演概要
出目金単独ライブ「進化」
日時:2月4日(土) 18:15開場 18:30開演
場所:よしもと福岡 大和証券/CONNECT 劇場
チケット:前売1300円
FANYチケット(会場)はこちらから。