名曲『ハナミズキ』はどうやって生まれた!? 作曲・マシコタツロウ×作詞・一青窈“デビュー20周年”SP対談

老若男女、世代を超えて多くの人に愛されている『ハナミズキ』。言わずと知れたこの名曲は、作詞・一青窈、作曲・マシコタツロウで2004年2月に発表されました。2人は、ともに2002年リリースの『もらい泣き』でデビューし、今年で20周年を迎える名コンビです。今回はその記念スペシャル対談として、アマチュア時代からともに歩んできた2人に、当時の話や楽曲制作の秘話などを振り返ってもらいました!

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン

マシコタツロウは、中森明菜、郷ひろみ、EXILE、SMAP、Kinki Kids、嵐、関ジャニ∞など、さまざまなアーティストに楽曲を提供。ファンたちから「神曲」として崇められる曲も多く手掛けている作曲家です。1月18日(水)には、自身の20年のキャリアで初のオリジナルフルアルバム「CITY COUNTRY PRESENT PAST」をリリースしました。デビュー前からの“仲間”である一青窈との対談は、ざっくばらんな雰囲気で始まりました。

「楽曲を作る」という使命を持った“姉弟”

――まず、20年前に出会ったときの最初のお互いの印象を聞かせてください。

一青 基本的には出会ったときと、20年たったいまと変わっていないかな。なんか、いつもギャグを飛ばしているという印象においては、一貫して変わらないかな(笑)。

マシコ ギャグってなんだよ(笑)。確かに何でも話す仲ではあった。

一青 いつもワケのわからないことを言って笑わせてくれていた印象。『ハナミズキ』を出す前もそうだし、出した後もそうだし、子どもを産んでもそうだし、ずっと何も変わらず。

マシコ けっこう、この人(一青窈)が“ゲラ”なんですよね。めちゃくちゃ笑う。涙流して派手に笑ってくれる。だから、最初からよく笑う子だなとは思いましたね。

一青 え! そうなの? ふつうの人は笑わないの?

マシコ あと、笑いのツボが合うというか。

一青 それはあるかも! タツロウのツボがちょうど刺さるんだよね。そういう意味では「こんな面白い人いるんだ! ずっとしゃべっていたいな」という印象でしたね。

――では、そんなおふたりの関係性をひと言で表すなら?

一青 私からすると、面白いことを言う人が曲を作ってくれるという感じで(笑)。

マシコ いや、それ関係性の説明になってないから! 僕からすると“姉弟”だと思います。友だちという感じでもなくて。最初から、「曲を作るために」という共通する使命があった。だから、たとえるなら、同じ家に生まれた姉と弟。双子の姉ちゃんくらいかな。2人で音楽を作るぞという名のもとに一緒にいる家族ですよね。
当時、コライト(共同で楽曲を制作すること)みたいなのがそんなになかったんです。だけど、僕らは一青窈の日常にへばりついて楽曲を作り出していて。「こうやったらいいかな」っていうのを一青に提案して、それをどんどん書いていく。

一青 彼女ができたり、彼氏にフラれたり、ボロボロになって「もう私、歌えません」ってキャリーケース持って事務所から家出したり。そんな姿もタツロウには見られている間柄で。

マシコ つまり、僕らの関係性は「(お互いの)プライベートの中に音楽がある」という感じでしたね。お互いデビュー前で素人だったので、プライベートの中で「こういう曲を作れ」という宿題を共有している感じ。

一青 そうそう。確かに学校の同じクラスで、文化祭までになんとか曲作るぞと言いつつ、一緒にだらだらおしゃべりしちゃったり。そういう感じだったかもしれない。

マシコ だから、最初のころはぜんぜん女性として見ていなかった。一人暮らしの家で制作して、一青が泊まったりすることもあったけど。

一青 ただただ健全な関係で。ライブで歌って、夜に帰ってきて、ぐうぐう寝て。

マシコ でも、オレが床で寝て、ちゃんとベッドは譲っていましたけどね(笑)。

一青窈ならではのブレスの入れ方、それがフックになる!

――曲は、どうやって作るんですか?

一青 私もタツロウが実際、作っている“機織り”のところは見たことない。お互いにできたものをラリーしている感じなので、どうやって作っているのかいまだにわからない。

マシコ 当初は曲が先で、そこに一青が詞をつけていたんです。でも、いまは変わってきました。一青が歌詞のノートを持っていて、そこに実に大量のいろんな歌詞が書かれているんです。僕はそれがすごく好きで。いつからか「こういうことが歌いたいんだよね」というものをもらって、それにメロディーをのっける。そういうことをやり始めて、いまや歌詞が先になったかな。

一青 そうだよね。当時はまだFAXで、感熱紙で送り合っていた。それがだんだんメールになっていった。ただ、ラリーもそんなに何度もやるわけではないんですよ。

マシコ 急に打ち返さなくなるんです(笑)。基本的に、一青は細かいことは気にしない。骨子がしっかりしていて、ブレない芯があって、それ以外の枝葉が少し変わろうが、そういうのは柔軟に。作詞家として柔軟な人だと思う。

出典: FANY マガジン
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――一青さんからみて、マシコさんの作曲家としての印象は?

一青 わりとアレンジの部分においては、誰かにゆだねるという力を持った楽曲だよね。メロディーライン1本勝負みたいな。「ここのメロディーに対してキチンと乗っけてくれれば、あとは誰でも構わない」というか。そのあたりの空間の多さを持っていることも、私が書きやすいのかもしれない。つまり、余白が多い。だからこそ。想像がしやすいっていうのがある。
あと、私が歌うときにコブシをまわしやすい。私のために書いてくれるときは、そこも考えてくれている気がします。

マシコ なんとなく読めるんですよね。一青がこんなふうに歌うだろうなっていうのが。

一青 私の得意とする歌謡曲っぽいメロディーとか、強みをきちんとわかってくれたうえでメロディーを提出してくれるから、歌いやすいというのはあります。

マシコ 逆に、いまだにびっくりするのがブレスの入る場所。それが奇想天外で。『ハナミズキ』の歌詞にある「庭のハ ナミズキ」は有名ですけど、ああいうことですね。でも、一青の場合はそれがフックになっているから、僕も直さない。5文字の言葉を入れてほしくて「♪〇〇〇〇〇~」って入れてるのを、「♪〇〇、〇〇〇~」と歌詞を入れて歌ってきたりする。あり得ないと思いながらも、「待てよ、面白いかもな」と。ちょっと引っかかりがあったほうがいい意味で気になる。変なところでブレスが入るから聞いている人はドキッとするので。

50年たっても“音楽”でつながっている仲

――マシコさんのアルバム発売記念の「茨城網羅ツアー」は、茨城県内を40カ所ほどまわるという精力的なもので、すごいですよね。

マシコ それなんですよ! それをぜひ言ってほしい! これが全部で58ステージあるんです。
作曲家としては印税という形で報酬を得るわけですけど、エンドリスナーの顔というのは見えないんですよね。たとえば、一青窈のCDを誰が買ってくれて、どんな人がカラオケで歌ってくれているのか。それで、曲を誰がどんなふうに聴いてくれているのかを知りたいという気持ちがあって。
今回のアルバムは、コロナ禍に作ったものなんです。僕は茨城の出身で地元が大好きなんですけど、コロナ禍で人にも会えず、悶々としながら作った。だから、出来上がったら絶対に茨城で発表したいなと思っていて。3年たってようやく行けるようになったので、いままで会えなかったのを取り返すようにまわっています。

一青 いいなぁ。またバイクの後ろに乗っけてもらって行ってみたいなぁ。

マシコ そうそう! 20年前、よくライブ終わりにバイクの後ろに乗っけて家に送ったりしていたよね。

一青 ライブがいちばん楽しい。私はストリートで歌ってたので、大きい箱よりも小さい箱で。12人ぐらいがいちばんいい。

マシコ そうそう、聞いてみたかったんだけど、ライブって楽しい? 歌ってる瞬間も楽しいと思ってやっているの?

一青 えっ、楽しいよ! 歌ってる瞬間もずっと楽しいよ。楽しくないの?

マシコ オレ、楽しくないんだよ。歌いながら、お客さんの反応を見て、「いまのはダメだった」とか分析しちゃう。それと同時に次も予想してて、「ここはいつも外すから、ちょっとブレスを多めに」とか。歌いながらずーーっと考えてて。その上で楽曲の表現もしてってなると、楽しいと思うヒマができない。だから、歌っているときは楽しいとかなくて、ライブが終わった後にようやく「楽しい」となる。

一青 私はドリカムの歌みたいに「うれしい、楽しい、だいすきーーー!!!」っていう感じ。いま、この瞬間の『ハナミズキ』を聴いてもらうんだから、たとえ、ソの音をはずしたとしても、「いま歌えるんだ! そして聞いてくれる人が目の前にいる!」という喜びで。こんなに幸せな瞬間はない。そのために日々、コツコツ書いてますね。

マシコ うん、わかる。今回、これだけ回りながら、自分自身、すごく鍛えられている気がしていて。すべてにおいてプラスだと思っていて。
1時間で3曲しか歌わず、あとはトークというときもあるけど、しゃべりも音楽もひとつのエンターテインメントだと思っているから。ミュージシャンは喋らないほうがいいとか、斜に構えないとミュージシャンじゃないとか思っていた時期もあったけど、考え方が変わって。自分は何がしたいのかなって思ったら、笑顔にしたいんだよね。楽しませたい。音楽でもしゃべりでも結果、お客さんが楽しんでもらえるなら柔軟にどっちでもやろうと思ってます。

――では最後に、出会いから20年がたって、お互いに言葉をかけるとしたら?

一青 タツロウも子どもが3人、私も子どもが3人。幸せでよかったね。

マシコ なんだよそれ! 幸せだけど(笑)。

一青 いや、なんか20年前はそんなことになっているとは思い描いてなかった。ただただ一緒に音楽を作ることだけに一生懸命だった。でも、そんな私もタツロウもいま、子どもが3人もいて、それでいて音楽もできている。それがすごくいいなと。この先、タツロウが60歳とか70歳になっても、たぶん音楽作ってるんだよ。それで私も歌詞を書いてるんだよ。わかんないけど、そうやって50年とかたってもなんだか音楽でつながっているんだろうなって想像できる。

マシコ なんか一青窈と一緒に楽曲を作るというのは、この先も一緒にやっていこうとかそういう感じでもなくなってて。1年会わなくても平気だし、元気かなと思わなくても平気。でも、久しぶりに会ってもすぐにいつも通りになれるし。なんなんでしょうね。やっぱり家族なんですよね。わざわざ会わなきゃなって思わない。会わなくても大丈夫と。この距離感で、この先もなんか面白いことがあるたびに、声をかけあってやっていくんだろうなと思います。

アルバム概要

マシコタツロウ ソロアルバム『CITY COUNTRY PRESENT PAST』
発売日:1月18日(水)
定価:3,000円(税込)
内容:「ハナミズキ」の作曲家「マシコタツロウ」が20周年を記念してアルバムを制作。これまで誰かのために曲を作ってきたマシコタツロウが、今回は「本気で自分の為だけに曲を作ってみよう」と制作したアルバム。作家としてのアイデンティティを再確認する全11曲入りの作品。

【収録曲】
1 区画整理できないマイハー
2 オレンジの逆光
3 ヘイナルボン (BSよしもと「ワシんとこ・ポスト」ED、テレビ埼玉「いろはに千鳥」ED)
4 名もないペンキ塗りの詩
5 未熟
6 プレゼント
7 JB Freeway (讀賣テレビ「にけつッ!!」10月度ED)
8 OffWhite
9 ハッピーエンド
10 手紙
11 紙ネクタイ (西日本シティ銀行CM)

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