芸人本読書感想文~ピストジャム~

芸人本読書感想文

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く企画『芸人読書感想文』。
第5回目の「課題図書」は、作/オコチャ、挿画/矢部太郎(カラテカ)『食わざるもの、DON’T WORK』(ニッポン放送)。ピストジャムが独自の目線で感想文を書きます。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン/書影:©ニッポン放送/イラスト:ライス田所

この作品は、2021年に制作されたニッポン放送のPodcastドラマの小説版だ。生井(うまい)家の長男、高校2年生の壮太が母の不在をきっかけに一家の料理長になるところから物語は始まる。

壮太には香織という中学2年生の妹がいるのだが、香織は母がいなくなってからほとんど食事を食べなくなった。そんな妹を見かねて、壮太は料理をつくろうと決心する。

壮太と香織は口げんかが絶えない。父ひろしは、思春期を迎えた子どもたちと会話が減ってきて上手にコミュニケーションを取れずに悩んでいる。

少しぎくしゃくした家族の関係が、壮太が試行錯誤してつくる料理を通して徐々に変化していく。Podcastドラマではその様子をコミカルに描いていて、シーズン2へと続くかたちで終了した。

母ゆかりが不在の理由は明かされておらず、あれこれ想像しながら拝聴していたことを思い出す。あと、聴いていると食欲を猛烈に刺激されたことも。

小説は、生井家と再会できた喜びと結末がどうなるのかという楽しみでページをめくる手が止まらなかった。ドラマでは語られなかったエピソードや、小説ならではの表現もあり、気がつけば最後まで読み終えていた。

今作の魅力は多岐にわたる。家族愛、料理愛、恋愛。そして、食べることは未来をつくることだという力強いメッセージ。

悲しみに打ちひしがれる夜も、まずは食べてから。やさしさに満ちた言葉が心に響く。

作品全体に流れるユーモアあふれる表現も見逃せない。香織は無類の将棋好きで専門用語を連発するし、スーパーの個性的な店員や父ひろしの勤務先の社長の言動には思わず口もとがゆるむ。

章ごとに語り手が変わる構成も作品にリズム感を与えている。一つのできごとが兄、妹、父の目線で語られることでより立体的に感じられるのだ。

読み進めていくと、舞台である文久町という架空の町にも親しみがわいてくる。『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する、仙台がモデルになっているという杜王町のよう。そう思うと、もしかしたら作者のオコチャさんが以前「宮城県住みます芸人」だったことも関係しているのかもしれない。

「文久」という聞き慣れない言葉が気になり、調べてみた。すると、いまから160年前に使用されていた元号だった。

その前の元号は「万延」だったという。文久は、万延が終わって誕生した。

この作品には、とんでもない隠し味が入っていたようだ。
まだまだ見落としているものがあるかもしれないので、再読かつドラマも再聴することに決めた。食事も忘れてこの文章を書いていたので、まずは食べてから。

書籍概要

『食わざるもの、DON’T WORK』

出典: FANY マガジン
©ニッポン放送

発売日:2月2日(木)
定価:本体1,500円+税
仕様:A5判・192ページ

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