アニメ界の匠 渡辺歩監督がデザイン学校を訪問! 学生へのメッセージは「悔しさを何回も繰り返して、作り続けてほしい」

『ドラえもん』や『宇宙兄弟』、『怪獣の子供』、『漁港の肉子ちゃん』、『サマータイムレンダ』などの作品を手掛けるアニメ界の匠・渡辺歩監督が、1月31日(火)に静岡デザイン専門学校で、学生作品の講評会を行いました。
この講評会は、BSよしもとで放送中の『再発見!みっけばなし』の番組制作で生まれたつながりから実現したもの。渡辺監督は学生たちに様々なアドバイスを送りながら、次世代のアニメーターたちとの交流を楽しみました。

BSよしもとの番組で未来のクリエイターを育成!

出典: FANY マガジン
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BSよしもとで放送中の『再発見!みっけばなし』 は、日本各地に埋もれている後世に残したい昔話を発掘する番組です。番組MCを田中直樹(ココリコ)、番組キャラクターであるカラスてんぐの“からちゃん”の声をはら(ゆにばーす)が担当しています。
この番組では、最後に各地の昔話をもとにした紙芝居の読み聞かせが行われますが、この紙芝居は全国のデザイン学校生がつくっており、その監修を渡辺監督がつとめています。
静岡デザイン専門学校は、グラフィックデザイン科の有志54名が参加して6県分(熊本、佐賀、宮崎、長崎、鹿児島、大分)の紙芝居を制作した縁から、今回の講評会が行われることになりました。

全チームに丁寧なフィードバックを送る渡辺監督

早速、各県を担当したチームごとに、講評が行われていきました。

佐賀県のチームが担当したのは、『孝行鮎』という昔話です。制作に3週間をかけたという力作に渡辺監督は、「キャラクターと背景のバランスがすごく良い。1枚の絵として完成度も高く、自分たちの書きたいスタイルをやり抜く思いを感じた」などと、評価していました。
チームリーダーの高橋真希さんに講評会後に話を聞くと、「すごい監督に、直接講評をいただけたのが経験になりました。私は映像系の仕事につこうと思っているので、今回の経験を今後も生かしていきたいと思います」と、感想を話してくれました。

出典: FANY マガジン
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全員が一年生で構成された長崎県のチームが紙芝居にしたのは、戦争がテーマの「アンジェラスの鐘」という物語です。渡辺監督は、重たいテーマの話を見事に作品に昇華していると称えました。また続けて、「1年生の皆さんが共同作業の難しさを経験できたのは素晴らしいこと。みんなでつくった充実感をかみしめてほしい」とメッセージを送ります。
チームリーダーの熊谷美羽さんは、講評会を振り返り、笑顔でこう語りました。
「服のディティールなど、気を付けていたところを褒めていただいたのが嬉しかったです。先輩方の作品のクオリティーも見て、もっと頑張っていきたいと思いました」

出典: FANY マガジン
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こうして、1時間半におよぶ全6チームの講評会が終了。渡辺監督は各チームの作品を丁寧に講評し、また質疑応答にも、慎重に言葉を選びながら受け答えしていました。
さらに講評会終了後は、多くの学生が渡辺監督を囲み、自分のデッサンを見せたり、個人制作の相談をしたりする姿も見られました。監督は、当初の予定よりも大幅に時間を延長して、学生たちとのコミュニケーションを楽しんでいました。

渡辺監督「学生が作品を最後まで形にできたことが素晴らしい」

講評会終了後、渡辺監督にインタビューをしました。

――学生がつくった紙芝居の講評会を行ってみて、いかがでしたか?

渡辺監督 楽しかったです。彼らに作品づくりで苦労したことを聞くと、みな一様に共同作業の難しさを語っていました。これはモノづくりとしては原初的な問題で、プロの現場でも永遠のテーマです。自らのクリエイティブ以前に、共同作業としてのスケジュール管理やクオリティー管理の問題が必ずでてくる。それを彼らが今回体験できたことは、すごく大きな学びになったのではないかと思いました。

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――みんなで一つのものを制作する経験を与えられたことが良かったと?

渡辺監督 そうですね。今回の紙芝居制作は、ふだん学校で出されている課題とは形式が違うものだと思います。先生との1対1ではなく、仲間との横の関係みたいなものが必要になる。それを彼らが体験して、作品を最後まで形にできたことが素晴らしいことだと思いました。

――講評会で学生にアドバイスを送るうえで、意識していたことはありますか?

渡辺監督 表現が拙いことは、彼らが一番分かっていると思うので、そこはあえて言わないようにしました。それよりも良い部分、可能性のある部分に注目して声を掛けるようにしましたね。

――自信を伸ばすような、アドバイスを心掛けたということでしょうか?

渡辺監督 そうです。いずれにせよ、将来現場にでれば必ず叩かれますから、あえて先回りをして、鼻っ柱を折るようなことをしなくてもいいと思いました。学生のうちは、何でもできると思っている貴重な時期でもあります。その可能性を摘まずに、できるだけ伸ばしてあげようということです。もちろん、良くない部分は良くないと言ってあげることも大切ですが、そこはかとなく匂わせる程度にしましたね。

出典: FANY マガジン
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――順位のようなものもつけずに、各チームに丁寧にアドバイスをしているのも印象的でした。

渡辺監督 先ほども言ったように、本人たちが一番、自分たちの表現の良くなかったところに気づいているはずなんですよ。だから、わざわざこちらから優劣をつけるのは、ナンセンスだと思います。「一生懸命やったけど、これだけのものしかできなかった」という体験を持ち帰ってもらえればいいんです。そして、その悔しさを何回も何回も繰り返して、作り続けることで成長していってもらえたらと思います。

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出典: FANY マガジン  左から、はら(ゆにばーす )、田中直樹(ココリコ)、渡辺監督

学生作品の監修は「この番組が続く限りやりたい」

――渡辺監督は次回作の制作などでお忙しいと思いますが、なぜ紙芝居の制作監修の仕事を引き受けたのでしょうか?

渡辺監督 単純に興味本位です。今の若い人たちがこういう機会を与えられたときに、どういった作品をつくってくるのか。ふだん学生と関わることがないですし、アカデミックな仕事は初めてですので、面白そうだなと興味を抱きました。

――今回実際に学生と触れ合って、ご自身の学生時代と比べてどのように感じましたか?

渡辺監督 そんなに変わっていないなと思いました。テンションは一緒ですね(笑)。悩んでいることもほとんど一緒で、時代が変わっても根本は変わらないのだと思いました。要するに、「何者でもない自分」としての“強さ”と“モロさ”を持っている。特に講評会後に残って質問にくる子たちなんていうのは、若いころの自分に近い子たちですね。

――講評会後も、かなり長い時間をさいて学生とお話しされていましたね。

渡辺監督 彼らの悩みがすごくわかるんですよ。何とかしてあげたいと思うのだけど、だからと言って悩みを取り除いてあげることはできないんですよね。だから、寄り添ってあげることしかできませんでしたけど。でもそうやって若い人に接していると、自分の方がエネルギーをもらえますね。

出典: FANY マガジン
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――今後についても教えてください。これからも、番組内で紙芝居の監修は行われるのでしょうか?

渡辺監督 この番組が続く限り、やりたいと思っています。学生たちに作品づくりの経験をしてもらうことはすごく大事なことですし、プロジェクトとして価値がありますからね。

――学生と接する講評会も、機会があればまたやりたいですか?

渡辺監督 そうですね。今回は、私からの講評という形でしたが、次回は「一人一人がどういう考えで作品づくりに挑んだのか」という思いを聞きたいと思いました。「なんでこういう風にしたの?」という話を聞けたら、もっといいアドバイスができるような気がします。またぜひ形を変えて、第2弾、3弾とやりたいですね。

――それでは最後に、番組を観る方へのメッセージもお願いします。

渡辺監督 まず、この番組はすごく面白いんですよ。番組の前半で住みます芸人さんたちが昔話を発掘するところも面白いので、ご覧いただきたいです。
また紙芝居については、学生たちが昔話を知って、感じた思いを作品にぶつけています。大人のフィルターを通していない、彼らなりの紙芝居を見ていただきたい。粗削りな部分も含めて、不思議なエネルギーを作品に与えています。それがこの番組の魅力につながっていると思います。

番組概要

『再発見!みっけばなし』

出典: FANY マガジン

放送日時:毎週日曜 8:30-9:00 (同時配信、アーカイブ配信アリ)
視聴放送:
【TV】BS265chで無料でご覧いただけます。
【スマホ・PC】BSよしもとホームページより無料でご覧いただけます。
出演:田中直樹(ココリコ)、はら(ゆにばーす)

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番組ホームページはこちら

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