世界が注目するイギリスの国民的オーディション番組『Britain’s God Talent(ブリテンズ・ゴット・タレント=BGT)』で爆笑を生んだ2人の日本人芸人――おなじみの“パンツ芸”で日本人初となる決勝進出を果たした“とにかく明るい安村”と、オナラを自在に操るという芸で準決勝のステージ出演を果たした“市川こいくち”。じつは同期で仲のいい2人は、今回のイギリス挑戦も一緒に現地入りしていました。「番組出演も、ロンドン観光も楽しすぎた!」というイギリスでの思い出を、安村と市川にたっぷり語ってもらいました!
「Don’t worry, I’m wearing……」「Pants!」の掛け合いで会場を熱狂させ、6月5日(日本時間)の決勝に奇跡の出場を果たした安村と、オナラでロウソクの火を消したり、吹き矢を飛ばしたりするパフォーマンスで世界を驚愕させた市川。2人は、安村がNSC(吉本総合芸能学院)東京6期、市川がNSC名古屋11期という同期の間柄です。
それだけに気心も知れていて、安村が準決勝からワイルドカードで決勝へと進んだ瞬間を、もっとも間近で見ていたのも市川でした。大きな話題となったBGTの舞台裏で何があったのか、そして安村の決勝進出の一報を聞いたときの2人の気持ちとは――2人しか知らない“あの日”を振り返ります。
イギリスでパンツネタをやるとは思っていなかった
――2人は同期で芸歴23年目ということですが、今回披露したネタは、いつできたものなんですか?
市川 オナラ芸自体は小学生からやっているんで、30年以上。
安村 マジで! すごいね。
市川 芸人になってからもやってたので、芸歴=オナラ芸の歴史になります。ただそのときはオナラをただするだけで、今回の番組でやったような道具を介してっていうのはしてなかった。
安村 僕はピン芸人になったのが2014年4月。このネタができたのが10月ぐらいでした。なので、いまで9年ですね。ピンになってこれができるまでは早かったです。
市川 ピンになって半年で、もうできてたんだね。めっちゃ早いね!
安村 でも、最初にこのネタ思いついたとき、まさかイギリスに行ってやることになるとは、まったく思ってなかったけどね(笑)。
――そんなおふたりが今回、『BGT』に出演したわけですが、それまでに海外でネタを披露したことはあったんですか?
市川 僕は、2019年に今回の『BGT』のアジア版に出演したことがあります。アジアの人たちに、僕のオナラ芸はどう受け止められるのかと懸念していたんですけど。
安村 なるほど。アジアはオナラに寛容な国というイメージはないもんね。
市川 そうそう。でも、アジアでの出演のとき、めちゃくちゃ盛り上がって笑ってくれたので、それはひとつ、自分のなかで自信になっていた気がします。
安村 僕は、韓国の釜山国際コメディフェスティバルへの出演だったり、韓国での単独ライブはあったんです。もりやすバンバンビガロと30分ずつネタをするっていうステージもあったし(笑)。オール韓国語で。その後、コロナ前にアメリカに行くという話がかなり進んでいたんですけど、コロナでダメになりました。
市川 韓国で30分のネタ!? すごいよ、よくやったな(笑)。でも、じつは僕もやすと同じタイミングで、アメリカ行きの話が来ていたんです。でも、それがダメになってしまった。それからの今回の『BGT』だけに、僕にとっては「やっと来られた!」という気持ちもあって、かなり気合入ってました。
「旅行気分」の安村と「オナラ対策」で4日食事抜きの市川
――ある意味で念願の海外だったわけですね。
安村 僕はどちらかというと、予選は「イギリス旅行」でしたね。イギリスなんて行ってみたいじゃないですか! だから、番組に出られることより、イギリスに行けることがうれしかった。着いてすぐ、「007」のジェームズ・ボンドの飲み方でお酒をオーダーして飲んだり、めちゃくちゃはしゃいでました。
市川 最初は完全オフな感じだったもんね。もうニッコニコ笑顔で(笑)。予選はやすと入れ替わりだったんですけど、準決勝から決勝までは10日間ぐらい滞在して、そこはやすと一緒だった。
安村 滞在中、こいくちは大変そうでした。というのも、ネタの性質上、ネタ前はゴハンを抜いているんですよ。
市川 臭いが出ないように、ネタ前は食事を抜いて腸を空っぽにするんです。しかも4日間(笑)。最悪でしたよ。
安村 機内食も食べないし、到着しても食べない。まったくイギリスの美味しいものを楽しめないわけです。みんなでゴハン食べるときも、「スープはありますか?」とか聞いてて(笑)。
市川 そうそう。「具は入れないでください。塩分だけ摂りたいので」とめちゃくちゃストイックに食べものの調整をしていましたね(笑)。
審査員の「×」に観客が「なぜだ!」
――予選は2人とも、めちゃくちゃウケていましたね。
安村 予選のときのウケ方はすごかった。でも、準決勝から決勝は会場の人数がすごい多くて。決勝はやはり客席の空気感もすごかった。
市川 予選のときはキャパ1000人弱。準決勝、決勝は2500人ぐらいなので、お客さんの数が単純に違う。予選のときは、まだお客さんが初見だからなじんでない。
安村 僕の「I’m wearing……」に対して「Pants!」というのは、予選のネタをしているときに、審査員が言い出したからね。
市川 準決勝から決勝はその様子が放送されていたから、みんなが「Pants!」を言いたくてうずうずしている状態。
安村 あれはヤバかった。みんなが早く言いたい状態で。何千人が一緒に「パ―――ンツ」と。
市川 とにかく聞いててすごかったです。僕も予選はめちゃくちゃウケたんですよ! でも、準決勝は……審査員全員からの「×」4つ。でも、お客さんはめっちゃ笑っていた。審査員が×したことに「なぜだ!」みたいな声も上がってたほどなんです。敗因を考えると、お尻の向きだったのかなと……。敗退したのでゴハンは食べられるようになったけど、あまりに批判の嵐で、気持ち的にあんまりおいしく食べられなかったです。
火鍋の辛さも吹き飛ばす「決勝進出」の一報
――安村さんは、準決勝でウケはよかったものの決勝には進めず。そこから一転、ワイルドカードでの決勝が決まったわけですが、そのときの心境は?
安村 準決勝が22時ぐらいに終わって、「負けたけど、いい負け方だったな」とか言いながら、こいくちや(吉本の)社員さんとゴハンに行って、みんなで火鍋を食べていたんですよ。「いや、これ、むっちゃ辛いじゃないですか!」とか言いながら。そんななか、社員さんの携帯電話に着信があって「安村さん! ワイルドカードで決勝進出決まりました!」と。「うわー!」と喜んだものの、すぐに「やべぇ。ネタがないぞ」と(笑)。
安村 その時点で23時ぐらい。翌々日には決勝だと。「ぜんぜん時間ない。しかも、明日の15時くらいからリハをやるって? ネタも決まってないのに?」と。それまで「辛い、辛い」と言ってた火鍋の味が、まったくしなくなった。でも、本当にみんなに助けられまして。
市川 やすは精神的にも体力的にも、準決勝から決勝のあの怒涛の展開は疲れたと思うよ。夜中3時くらいまでやり取りしてたのに、次の日の8時ぐらいには決勝用のVTR撮影し始めてたもんね(笑)。
安村 オレらは「どうすんの?」って思っていたけど、番組側は意外と「大丈夫ですよ」と、慌てるようなスタンスはまったくなかった。
市川 番組側は、ある意味で慣れているんでしょうね。そういうスケジュールの流れで、これまでずっと繰り返しやってきたから。
安村 オレは(準決勝が)最終日だったので決勝まで時間なかったんですけど、最初のほうで決勝進出が決まった人は、決勝まで6日くらいあいてたんですよ。オレは1日しかないから、VTRとかセットのクオリティがぜんぜん違う(笑)。
市川 たしかにそうだったね。最初のころに決勝に上がった人は、宙に浮くようなセットだったり(笑)。
安村 オレは“素舞台”ですから!! なんにもない。ダンサーが集まって派手に見せているだけで。『アナと雪の女王』を歌った出演者なんて、氷の台座とか用意されて、スモークもたかれて。あの違いは、すっごい不利だったと思うよ。
市川 ふははは。たしかに。だから、やす以外できないと思う。
安村 でも、本当に怒涛の数日間だったんですけど、めちゃくちゃ楽しかった。人生であんなことないから。
帰りの空港で指をさされ『BGT』の人気を実感
――イギリスで、いちばん思い出になったことは何ですか?
安村 ほんっとにロンドンの古着屋がよすぎて! 2日連続で行っちゃいましたよ。ブリックレーンっていうところなんですけど。
市川 気が付いたら4時間以上、古着屋めぐりに没頭してました。水も飲まずに。
安村 2人して、「あれ、めっちゃのど乾いてない?」と(笑)。ちょうど、こいくちの準決勝が終わって、オレの準決勝の日までに数日あったので、その間に一緒に買い物に行ったりしたんだけど、めっちゃ楽しかったです。毎日クタクタになってたもんね(笑)。
市川 ネタとかじゃなく、イギリス観光でね(笑)。
安村 ほんっとに楽しかった。この靴も向こうで買ったんですけど。見たことないエアマックスとかも買って、ジャージも買って……。めちゃくちゃ買って帰ってきたんですけど、日本に帰ってきて冷静になると「……これ、いらねーな」みたいなものもチラホラと(笑)。
市川 二度と来られないかもと思うと、「いま買っておかないと」と思っちゃうんだよね(笑)。
安村 そうそう、「あれ買えばよかったな」と思うよりはいいだろうと買っちゃいましたね。
市川 僕の思い出は、『ゴットタレント』ってイギリスでは本当にみんなが観ている番組だなということ。準決勝で僕はぜんぜんダメだったのに、インパクトのある芸だったからか、街を歩いていると「一緒に写真撮ってください」と声かけられることが山ほどありました。それがいちばん思い出深いです。23年間芸人やってて、初めての経験でした。
安村 確かに、帰りのヒースロー空港で「昨日見た!」と顔を指さされて写真を撮られたり。その反応を見て、「あ、イギリスの人、BGTをみんな見てんだな」って改めて思いました。番組の収録のときの盛り上がり方もハンパないし。いかに国民的番組なのかって感じましたね。
――日本に帰ってきてからの反響はどうですか?
市川 帰国して、初めてアップした動画がいきなり3000万回再生されました。その99%が日本以外(ヨーロッパやインドなど)からのアクセスだったんですよ。すごい反響だなと。あとは、三重県の実家からも「見たよ! 頑張っているね」と言われたり、それはうれしかったですね。
いつかは2人でラスベガス!
――では、“次なる目標”を教えてください!
市川 僕は海外に何カ所か決まっていて、じつは明日からスペインに行ってきます! オファーがあればどこにでも行きたいと思っているので。あとは、イギリスは行けたので、やっぱりアメリカにも行ってみたい!
過去にラスベガスでショーをやって、何億円と稼いだと言われる日本人のコメディアンの方がいるんです。ドリフターズのオナラの音はその人がやっていたという、オナラ界のレジェンドなんですが、その方が僕に「これからのオナラ界は君に託した」と言ってくださったので、そんなふうになっていければなと思っています。
安村 僕も海外は行きたいのは行きたいです。ゴハンのおいしい国に、2カ月に1回くらい行けたらいいなぁ。『BGT』に出たことで、日本でもいろんなテレビに呼ばれたり、そういうのも含めて“おまけ”みたいな感じがすごくいいです。その最終形としてパンツの広告とかのオファーが来たら、めちゃくちゃうれしいですね。
市川 それ来たら最高だし、おまけにしては相当すごいよね(笑)。
――最後に、今回の『BGT』、お互いがいてよかったなと思いますか?
安村 いや、むちゃくちゃ思います。こいくちは決勝のネタもぜんぶ一緒にやってくれたし、ほかにも、こいくちと一緒に来ていた編集スタッフが音の編集もできる人で、急遽、その人が決勝の僕のネタの音の再編集をやってくれたり。ほんっとに助かりました。
市川 頼りになったよね。みんなでチームになって、やすを決勝の舞台に押し上げた感じだった。
安村 本当にチームでした。みんなで戦っている感じもあって、いま思い出しても「楽しかった!」としか出てこない。
市川 僕は僕で、やすが実際に勝ち上がっていく感じに震えた。最後にワイルドカードで決勝進出って、出来すぎな展開じゃないですか。だから、次はアメリカに、またやすと一緒に行けたら最高。それこそ、アメリカンドリームというくらいですから。
安村 アメリカの番組もだけど、ラスベガスのショーに一緒に出るっていうのもいいね! ラスベガスでショーをやらせてくれる、お金持ちの人からのオファーお待ちしてます!
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