お笑いコンビ・オズワルド(畠中悠、伊藤俊介)が、4月9日(金)に東京・ルミネtheよしもとで単独ライブ『あたらしいとうきょう』を開催します。コロナ禍によって昨年3月から延期されていたライブが、さらにブラッシュアップしてついに実現。今回は2人に、彼らがこだわり続ける『M-1』を振り返りながら、単独ライブのこと、漫才スタイルの遍歴、ルームシェアのこと、などなどたっぷり聞きました。
吉本の養成所・NSC(吉本総合芸能学院)東京17期生として出会った伊藤と畠中が2014年にコンビを結成。昨年は、2年連続の『M-1グランプリ』ファイナリスト、『第41回ABCお笑いグランプリ』準優勝、『第6回マイナビ Laughter Night』グランドチャンピオンと華々しい成績を残しています。
目標はオンラインチケット1万枚!?
――コロナ禍を経て1年越しの開催です。決まったときの気持ちから聞かせてください。
伊藤 ようやくできるようになったか、と。
畠中 “1年待たせてしまったな”という思いはあります。
伊藤 “待たせてしまった”という表現は、おこがましいですけどね。
畠中 全国で楽しみにしている何万人のファンが……。
伊藤 どこからそんな自信がくるの? 空気階段の単独ライブのオンラインチケットが1万枚以上売れたんですけど、そこから畠中は、“自分たちも1万枚売れる”と思い込んでいるんですよ。売れませんって!
――(笑)。ルミネの初単独。このことも大きな出来事なのでは?
伊藤 関西でいうNGK(なんばグランド花月)ですからね。
畠中 ずっとやりたかったんで、ようやくできる喜び。あとは、いいものを何万人の方に観てもらうだけです。地方に住んでいる方で、僕たちの漫才を観たことない人も多いと思うので、知ってもらういい機会だなって思います。
――漫才が中心になるとは思いますが、やはり賞レース向けに作ったネタがほとんどですか?
伊藤 単独ライブは特別なものなので、コントとかふだんやらないことをやったりしますけど、漫才に関しては9割5分、M-1に向けて作っていけたらなって思っています。
――漫才は、お客さんの反応を見て、ブラッシュアップするネタを選定するような形ですか?
畠中 1本でも勝負ネタになるようなものができたらなって思いますね。
――自分たちのお気に入りのネタと、お客さんにウケるネタは違うこともあるんですか?
伊藤 ありますね。まさに去年のM-1決勝でやった漫才(改名ネタ)も、僕らはやるつもりがなかったんですよ。ゆにばーすさんがやられているライブのパクリで、先輩芸人を呼んで今年の勝負ネタを採点してもらうライブをやったんですけど、かまいたちの山内(健司)さんから「決勝行ったら、これ(改名ネタ)1本目に叩いたほうがええんちゃう?」って言われて。準々決勝のとき、準決勝も“これでいこう”と思っていたネタがあったんですけど、いざ準々決勝でやったらそこまで反応がなくて。どうしようかって言っているときに、「そういえば山内さんが言ってくれてたな」って……。2週間、死ぬ気で叩いて準決勝と決勝でやらせてもらった感じですね。
――では、そういった勝負ネタになるかもしれないネタのベースが、単独ライブで見られるということですね。
伊藤 全然あり得ると思います。
畠中 1本もない可能性もありますし(笑)、“ぜんぶ使えるな”って思うネタができるかもしれないし。
伊藤 究極を言ったら、ひとくだりでもいいものがあればって感じですね。漫才はほかのネタでも使えますし。
畠中 ふつうの新ネタライブよりも、下手なものを見せられない、よりよいネタをやろうっていう気持ちは強いです。だからこそ残るんじゃないかって思いますけど。
伊藤 そうですね。恥かきたくない。
「Wボケ」スタイルを捨てたワケ
――(笑)。M-1決勝に進出してから、お客さんの見る目が変わった印象はありますか?
伊藤 M-1の予選って、“まだ決勝に行っていない人を行かせてあげたい”っていう空気になるじゃないですか。僕ら1発目に行ったときは、完全にそんな空気にしてもらったんですけど、去年に関しては、どっちに転ぶかなって思いつつも、まだウエルカムな空気で。だから、今年はどうなるか? ネタ次第だとは思うんですけど、追い風をどれだけ吹かせられるかってことですかね。そういう意味では、単独ライブも大事ですし、『ABCお笑いグランプリ』も絶対に獲りたいです。
――いまの漫才スタイルには、どうやっていきついたんですか?
畠中 もともとはツッコミなしのWボケみたいな感じでした。コンビ組んで初めてのM-1で3回戦に行けたので、“このスタイルで間違いない”っていうのがあったんですけど、2回目のM-1は1回戦で落ちて。
伊藤 なんで3回戦でそんなこと思ったのか、っていうこともありますけど。
畠中 “ツッコまない”というのに、こだわる必要がないのかなって。
伊藤 その年、名前が売れたまんじゅう大帝国が同じようなことをやっていて、そのときの感じだったら、まんじゅうのほうが上手いし、“これ以上やっても勝てない”と思ったのもありました。まんじゅうがいなかったら、まだ(Wボケを)引っ張っていた可能性もありますね。
――伊藤さんはツッコミにまわった形になったんですね。
伊藤 前のコンビでツッコミをしていて、(オズワルドでは)ボケをやりたかったので、乗っかりボケみたいなことをしていたんですけど、(スタイルを変えるので)ツッコミが必要だと。畠中が爆裂にツッコミに向いていないので、僕か畠中、どっちがツッコミかっていったら、100%僕だなって。
嬉しかったダウンタウン松本の言葉
――そうした経緯もあって、ついにM-1決勝にいくわけですが、2019年はノーシードの1回戦からの戦いでした。どんな心境で挑んだんですか?
伊藤 頭おかしいと思われるかもしれないですけど、決勝は毎年行けると思っていました。
畠中 それまで3回戦しか行ったことなくて、準々決勝でめちゃくちゃウケたんですよ。“もしかしたら、今年がいける年なんじゃないか”って予選をやっていくなかで思っていました。
伊藤 絶対、取りこぼせないと思っていましたね。メチャクチャ面白いのに、決勝に行きそうで行けなかった方々も見てきましたし、1回逃すと、同じ流れはなかなか来ない。“今年、絶対にいかないと”って思っていたので、(準々決勝は)人生でいちばん緊張したかもしれないです。それは、いまも塗り替えられていないですね。
――コンビを組んでいて、ターニングポイントはどこだと思いますか?
伊藤 M-1に関して言うなら、ゆにばーす・川瀬(名人)さんとの出会いですね。50%は川瀬さんのおかげです。あの人は行動で見せてくれるんですよ。
畠中 ネタ1本の叩き方とか。ゆにばーすさんってこうやってネタを作っているんだ、って勝手に見てマネしています。
伊藤 僕ら、ウケた・ウケていないの基準の甘さがハンパなかったんですよ。フワっとウケたときも、「今日、かなりよかったな」って感じだったんですけど、ゆにばーすさんは、けっこうウケていても「んー」って悩んでいて、俺らの基準じゃ話にならないんだって。めちゃくちゃウケなくちゃいけないよねっていうのは、ゆにばーすさんを見て感じました。
――賞レースで結果を残したことで、テレビ出演も増えました。
伊藤 僕は、テレビに出られるのが嬉しいんですけど、畠中はそこまでなんですよ。
畠中 M-1優勝したいので、バラエティーに出すぎると、どうなるんだろうっていう不安もあります。
伊藤 もちろん僕もそうなんですけど、「売れる」と「M-1」はまた別モノとして考えていますね。M-1優勝は、どんだけ売れたとしても目指したいです。
ーーテレビに出演すると、大先輩の芸人がオズワルドさんの漫才をどう見ているのか聞けるチャンスでもありますよね。
伊藤 『松本家の休日』(ABCテレビ)に出させてもらったときに、ダウンタウン・松本(人志)さんが、M-1決勝で言ってくださったアドバイスを、すごくかみ砕いて話してくださって……。ああいう機会は、本当にありがたいですね。
畠中 2019年が「90点」、2020年が「88点」と下がっているのを見て、「松本さんの点数が88か~!」って思っていたんですけど、つまらなかったじゃなくて、こうしたらもっとよくなるっていうアドバイスをいただけたので、いい宝物をもらった感じがします。
ルームシェアで大ゲンカ
――おふたりとも芸人とルームシェアしていますよね。畠中さんは、素敵じゃないか・柏木(成彦)さん、ナミダバシ・太朗さん、伊藤さんは、蛙亭・岩倉(美里)さん、森本サイダーさん、ママタルト・大鶴肥満さん。家に帰って芸人仲間がいるのは、、どういう感じですか?
伊藤 まぁ、「仲間」っていうか「家族」なんで。
――すみません(笑)。
伊藤 そこをはき違えられると、“いい加減にしてください”って感じなんで。
――(笑)
伊藤 でも、こいつの家は、すぐにモメるんでね。ギスギスしている。
畠中 モメるのも高め合っているうちだから。
――草だんごでモメている動画をTwitterで見ました。
伊藤 何をあんなにモメることがあんの?
畠中 柏木の買ってきた草だんごを後輩の太朗が「1,000円って安いですね」って言っただけで、2時間モメますから(笑)。
――伊藤さんのところは、おだやかな関係なんですか?
伊藤 そうですね。メチャクチャ平和ですよ。ああいうのを家の中でやりたくないんですよ。「うるさい!」ってなるというか。
――その一方で畠中さんのところはいつもモメてる、と。
畠中 太朗がいちばん後輩なんですけど、押しが強すぎるんですよ。いちばんしっかりしているし、料理もしますし、洗い物も黙々とする。でも、いちばん自分が正しいと自信を持っているがゆえに、人の気持ちが分からないことがあって。
下駄箱がいっぱいになったんで、柏木の靴を指して、「これとこれ、いらないですよね? この靴、捨ててもいいですよね? カッコ悪いですよ」ってゴミ箱に入れたことがあったんですよ。そのとき柏木はスルーしたんですけど、のちのち“さすがに違うな”って、夜中の12時から朝の4時くらいまで話し合うというか。お互い、「俺はこう思った」ってどっちも引かない。
――長いですね……。
畠中 あと、俺と柏木でモメたのは、柏木は香草類が食べられない、と。「食べられたほうがいい」(畠中)、「食べられない人のマイノリティーを無視している」(柏木)、「食べられないのは悪じゃないけど、いいか悪いかで言うと、可能性が広がる意味でいいじゃん」(畠中)で5時間。
伊藤 もうこれ、「うるさい!」でしょ。こんなの家でやりたくない。その話で何が解決するの?
畠中 俺はもしかしたらマイノリティーを無視していたのかもしれない、って気づけた。お互い人より劣っている部分があって、それを支え合いながら生きていくということを、小さな社会(ルームシェア)で学んでいる感じですね。
伊藤 そんないいものじゃねーだろ。僕のところはとにかく平和です。この間、家に帰ったら(大鶴)肥満が寝てたんですけど、寝言で「おいしい匂いがする」って言っていましたから。
――平和ですね(笑)。最後に単独ライブのPRをお願いします!
伊藤 劇場のほうが完売したので、オンラインで観ていただけたらと思います。間違いなく、過去一のボリュームでやらせてもらいますし、漫才はもちろん、ほかの部分も見ていただけたら。
畠中 単独ライブって漫才だけじゃなく、自分たちが面白いと思っていることを、いろんな形で表現できる場所だと思っています。配信があるので、僕の地元の友だちとか、沖縄に住んでいる人とか、海外に住んでいる人とか、むかし好きだったあの子とか、そういう人たちにも、何かをきっかけに観てもらえたらなって思います。
公演概要
オズワルド単独ライブ『あたらしいとうきょう』
日時:4月9日(金)開場18:30/開演19:00/終演20:30
チケット:オンライン2,000円
FANY Online チケットはこちらから。