“99歳祖父と2人暮らし”あしなっす×EXITりんたろー。が語る「SNSでシェアする介護」の意外な効用

99歳のおじいちゃんとの2人暮らしの様子を配信し、チャンネル登録者数が31万人を超えるデカダンス・芦名秀介(あしなっす)のYouTubeチャンネル『あしなっすの1週間』。介護が必要なおじいちゃんとの日々を、家族だからこその距離感であるがままに伝える様子が話題となり、5月には著書『僕のおじいちゃんは99歳。毎日がサプライズです』(KADOKAWA)も出版しました。今回は、その芦名が「介護」をテーマに、“介護経験者”で知られるEXIT・りんたろー。と対談しました!

出典: FANY マガジン
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りんたろー。はチャラ男キャラとは裏腹に、老人ホームで8年間もアルバイトしていたという一面があります。「在宅」でおじいちゃんの介護を行う芦名と、「施設」で高齢者たちへの介護経験のあるりんたろー。芸人という立場から語られる「介護」の現場とは? 9月には100歳を迎える芦名のおじいちゃんの近況も含め、誰もが迎える「老い」をテーマに語り合いました。

12年前からおじいちゃんと2人暮らし

――芦名さんが5月に出した著書『僕のおじいちゃんは99歳。毎日がサプライズです』の主人公ともいえるヒロキおじいちゃんは、9月に100歳を迎えるそうですね。介護に携わるようになったきっかけから教えてください。

芦名 僕は12年前から、おじいちゃんと2人暮らしをしているんです。当時、おじいちゃんは87歳でした。

りんたろー。 すげえ! けっこうクリアというか、元気なおじいちゃんなの?

芦名 98歳まで自転車に乗ってたくらいで、めちゃくちゃ元気です。もともと僕、兄、両親、祖父母の6人で暮らしていたんですけど、僕が中3のころに母が病気で亡くなり、その次の年に親父も亡くなりました。そこから、おじいちゃんと兄貴が僕の親代わりになったんです。おばあちゃんも、高3のときに施設に入所して、おじいちゃんとの2人暮らしになったのは、兄が社会人になり家を出たタイミングで、それが12年前なんです。

出典: FANY マガジン
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――87歳のおじいちゃんと2人暮らし、不安などはありましたか?

芦名 なんもないです。だって、その時点で洗濯とかも全部してもらっていたので。

「ネタになるかなと介護のバイトを始めた」りんたろー。

りんたろー。 それがすごいよね。その年齢で、自分で何でもできるってすごい。僕はNSC(吉本総合芸能学院)に入ってからパチンコ店でバイトしてたんだけど、先輩のライブの手伝いとかで急に行かなきゃいけない、イコール、シフトに穴を開けてしまうことが多くて。そんなときに「オープンメンバー募集」という、家の近くの老人ホームのチラシを見つけ、新しく始まる施設というのと「喋れるネタにもなるのかな」という気持ちもあって、そこでバイトを始めた。あとは、おばあちゃん子というのもあるんだけどね。結局、23~24歳ぐらいからEXIT結成したあとぐらいまで、8年ぐらいやってました。

芦名 りんさんが介護経験者だというのは、芸人ほぼ知っていますよね。それでテレビも出られてましたし。

りんたろー。 その前のバイトが給料はよかったんだけど、全部マニュアルというか、決められているんですよね。施設でのバイトは、もっとゆっくりとした時間のなかで、利用者の方と会話をしてみたり、ゲームをしてみたり。しかも毎回、同じではない反応になるのが介護ならではだし、そこが楽しいなと思いましたね。

出典: FANY マガジン
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――おばあちゃん子ではありつつも、“チャラ男”のイメージからすると、介護ってすごく遠いのかなと思うのですが、実際にやってみてどうでしたか?

りんたろー。 遠いからこそ、ギャップが生まれてエピソードトークも面白くなるし、最初のころは兼近(大樹)がベビーシッターをやってて、オレは介護のほうをやってたので、それこそ赤ちゃんからお年寄りまで幅広い層を網羅できるという感じ。バイトをただのバイトにするのはよくない。そこからでも笑いに生かせることはないかなと思っていました。

芦名 僕は逆でしたね。おじいちゃんとの2人暮らしが始まって2年後くらいにNSCに入るんですけど、お笑いやる前からおじいちゃんとの2人暮らしが当たり前だったので、「ネタになるかも」という思いは一切なかった。マジでコロナ禍になるちょっと前くらいまで、「高齢のおじいちゃんとの2人暮らしがネタになる」というのがまったく想像つかなかったんですよ。
コロナ禍になって「ライブ出られないし、YouTubeやろうかな」という話になったとき、前の相方から「お前、おじいちゃんとやったら?」と言われて、そのときは「いや、意味ないだろ。普通のおじいちゃんだし」と言ったんだけど、そいつ曰く「いや、あんなに喋れる96歳のおじいちゃんいねえよ!」と(笑)。そういう経緯で、最初はTikTok、その後、YouTubeでおじいちゃんの動画をアップし始めたんです。おじいちゃんが96歳のときでした。

出典: FANY マガジン
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りんたろー。 それは芦名が芸歴何年目のころ?

芦名 芸歴でいうと8年目ですね。最初はおじいちゃんと、ただごはんを食べているところがたまたまバズって。おじいちゃんが口にごはんを運ぶんだけど、テレビに夢中になってて、ごはんが落ちちゃう。でも、自分では食べているつもりだからモゴモゴしながら「ここ、行ったことある」とテレビの内容に反応している。そして、隣にいる僕は金髪&短髪だったので、まるでヤンキーとおじいちゃんみたいな動画で(笑)。

りんたろー。 へぇ! たまたまた生まれたシーンがバズったんだね。

芦名 そうです。自分ではいまだに何がいいんだかよくわかってない(笑)。

りんたろー。 芦名にとっては、それが日常だもんね。

――芦名さんとおじいちゃんの関係は「家族」ですが、りんたろー。さんの場合は利用者と介護スタッフ。そのあたりで、発言などにも気を使うことはありましたか?

りんたろー。 そこは絶妙な距離感で、ツッコミしたりしてましたね。ごはん食べ終わったのに「ごはんまだかい?」と言われる方に「いや、食べた食べた(笑)」とか。いい感じの距離感でいけましたね。最初はどこまでいっていいのかがよくわからなかったけど、経験を積んでいって思ったのは、こっち側の緊張とか、苦手だなと思っている気持ちは伝わってしまうということ。だから、わりと気を使い過ぎずにフレンドリーに行ったほうが、あっちも打ち解けてくれるんですよね。

出典: FANY マガジン
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おじいちゃんの脳梗塞はYouTubeのおかげで見つかった

――一般的に介護にまつわるストレスってあると思うんですけど、どのようにポジティブに変えているんですか?

りんたろー。 この間、93歳になった自分のおばあちゃんに会ったんですよ。うちのおかんは、おばあちゃんが認知症になって名前もわからなくなったりしたのがショックだったらしく、僕も、さすがにそうなっている状況を目の当たりにすると、(ショックを)くらっちゃうかなと思ったんですけど、それまでの施設での経験で免疫ができてたのか、スッと受け入れることができました。これは、いまの医療では治らないからどうしようもないし、うまく受け流しながらやっていくしかないんだなと。93歳まで生きているだけでも、だいぶありがたいことです。
それで、床に座っておばあちゃんと目線を合わせて手を触りながら話すようにして。過去の写真を見せながら「これがおばあちゃん、これはおじいちゃん、これが僕だよ」と見せていたら、最終的におばあちゃんが「じゃあ、あんた、りんちゃんかい?」と言ったんです。それは、うれしかったですね。

芦名 ええ! すごいな! おじいちゃん、98歳の4月に脳梗塞になって入院したんですけど、認知症状が加速してしまったんですよ。退院するときにお医者さんに言われたのが、「退院後は懐かしい場所に連れて行ってあげてください」と。過去の記憶を出してあげたほうが、進行を止めることができるらしくて。
それで、めっちゃ連れて行きました。一緒に遊んだ公園にお弁当つくって行ったり。そうしたら、それだけが理由ではないんだろうけど、おじいちゃんが、けっこう回復してきたんです。うれしかったのは、認知症になると短期記憶がなくなるのに、僕が連れて行ったことを、うれしそうにおばさんに話していたこと。

出典: FANY マガジン
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あと、僕にとってはコメントくれる人たちの存在が大きいいんです。その脳梗塞も、YouTubeを見てくれている人のおかげで見つかりました。最初におじいちゃんが倒れたときにCTを撮ったんだけど「転倒しただけですね」と。でも、あきらかに言動がおかしいから、YouTubeのコミュニティに「こんな症状なんです」と書き込んだ。そしたら「絶対にMRIを撮ってください」というコメントがたくさん来て。それでMRI撮ったら「いますぐ入院してください。脳梗塞です」と。そのときに治療していなかったら、いま生きていない。だから、YouTubeを見てくれている人たちにめちゃくちゃ感謝です。

りんたろー。 あしなっすを見ていると、おじいちゃんとの生活をYouTubeのコンテンツとしてシェアしたことで、いろんな情報が入って来たりしていて、「介護」を新しい形で分担してシェアしている感じがする。しかも、それが仕事にも広がりを持たせている。
介護ってすごく小さなコミュニティになりがちで、だからこそ介護する人はつらくなっていってしまう部分もあると思う。そういう自分を責めて「ダメだ」って思いがちだし。だから、あしなっすみたいに“分担”したり、いろんなコメントに励まされたり、ときに弱音を言いやすい環境をつくるっていうのは大事なことだなって思います。

出典: FANY マガジン
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芦名 最近でいうと、おじいちゃんがコロナになって、家からも出られない、24時間ずっと僕ひとりで介護という状況でした。しんどすぎて、その様子をぜんぶ配信していたんです。そこでもいろんなアドバイスももらえたし、本当に助けられた気がしました。

あと、そこに集まったコメントを見て、ほかの人がまた知識を得たりもしてます。だからチャットにも「ここ、勉強になるなぁ」みたいなコメントあったりもするんですよね(笑)。

りんたろー。 これ、おじいちゃんと芦名の2人だけの閉ざされたなかでやってたら、ただしんどいだけになっちゃう可能性ある。でも、それをYouTubeという場で、多くの人にシェアすることで、エンターテインメントに昇華できる。しんどいこともそうやって笑ってもらえたら、ポジティブに変換できるもんね。

芦名 YouTubeを始めるまでは、おじいちゃんのこと、そんなに知らなかったんですよ。ただ家族だった。YouTubeを始めたら、「むかし仏像を集めていたけど、おばあちゃんにおカネがもったいないと、ぜんぶ捨てられた」とか(笑)、知らなかった一面が見えてくる。記憶が100年間分もあるわけだから。でも、僕が知っているのはせいぜい70~90代なんですよね。僕の知らない30~50代の引き出しがあるのが、面白いなと思います。

出典: FANY マガジン
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りんたろー。 なるほどね。僕って施設で起きることしか経験していない。だから、高齢の方と生活をともにしているあしなっすと喋っていると、めっちゃ“学び”がありますね。まだまだ知らないことがありますね。

芦名 僕こそ、りんさんの話から学ぶところがすごくあります。

――では芦名さん、9月で100歳になるおじいちゃんに言いたいことは?

芦名 毎日一緒にいてくれてありがとう。本当にコロナになったときは、もうダメかもと思った。もう無理だろと。イヤだと思うんですよ。70歳ぐらい離れてる孫に生意気にあれやれこれやれ言われて。自分のプライドもあるだろうに、毎日言うこと聞いてくれて、自分でやれることはやってくれるんです。本当にありがとうって気持ちですね。


YouTubeチャンネル「あしなっすの1週間」はこちらから。

書籍概要

『僕のおじいちゃんは99歳。毎日がサプライズです』
出版社:KADOKAWA
発売日:2023年5月29日
単行本:208ページ
定価:1540円(税込)

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