アニメ、ゲーム、音楽、教育、通信、放送――「コンテンツ×デジタル」を掲げ、これまでの枠組みに捉われない新たな国際ビジネスの発展に取り組む一般社団法人「CiP協議会」が9月14日(月)、東京ポートシティ竹芝(東京都港区)の開業に合わせてオープニングイベントを開きました。イベントには、協議会に参画する吉本興業ホールディングスの大﨑洋会長をはじめ、多種多様な分野のキーマンたちが参加。この国、そして子どもたちの未来をつくり出すため、協議会が進める「10のプロジェクト」が語られました。
シリコンバレー×ハリウッド=竹芝地区!?
「この竹芝をポップカルチャーとテクノロジーを融合したイノベーションを起こす街にしたい――ということで、『テック&特区』として5年前から活動してきました。現在、通信・放送・音楽・アニメ・ゲーム・教育機関など50の企業や団体が集まって研究開発や人材育成、ビジネス支援を行い、今後もイノベーションのハブになっていきます」
冒頭のあいさつでCiP協議会の中村伊知哉理事長は、協議会と竹芝地区の役割をこう述べました。
CiP(Contents innovation Program)協議会は、その名のとおり、デジタルを掛け合わせることで「コンテンツ」に「イノベーション」を起こす「プログラム」を発信していく組織で、国内外の産・官・学を業界の垣根を越えて結び、そのコミュニティの核として国際ビジネスの発展を後押しする活動をしています。
ニコニコ生放送で同時配信された当日のオープニングイベントは、吉本興業の大﨑洋会長のほか、自民党デジタル社会推進特別委員長の平井卓也衆議院議員、日本eスポーツ連合の岡村秀樹会長、日本音楽制作者連盟の野村達矢理事長、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科委員長の稲蔭正彦教授など、プロジェクトに深くかかわるゲストを招き、現在進行中のプロジェクトの紹介とともに、協議会の役割を披露する機会となりました。
この日、発表されたCiP協議会の新しいマニフェストには、こんな言葉が掲げられています。
「ちょっと先のおもしろい未来“チョモロー”」
「チェンジ・トゥモロウ」略して「チョモロー」。協議会が入る東京ポートシティ竹芝には、ソフトバンクグループの本社も移転してくる予定で、いま竹芝地区は急速に、日本を代表するデジタル・テクノロジーの集積地に生まれ変わりつつあります。協議会はその姿を、「シリコンバレーとハリウッドの融合の場」と表現しています。
協議会が目指すのは、この地で新たな“化学変化”を生み出すこと――これまで完全な縦割りで分かれていた映像・音楽などの産業と、高校・大学などのアカデミックの世界に“横のつながり”を生み出し、人材育成とイノベーションの役割を担っていくことです。起業支援や教育分野では中村理事長が学長を務める「iU(情報経営イノベーション専門職大学)」などと連携していくことも発表されました。
よしもとが考える「未来に向けてのプラン」
吉本興業の大﨑会長は、コメントを求められ、「(理事長の)伊知哉さんとは子どもやじいちゃん、ばあちゃんの未来についていつも話しています」と述べました。
さらに吉本興業が現在進める教育事業の動画配信プラットフォーム「Laugh & Peace_Mother(ラフ&ピース マザー)」事業や課題解決を行う「世界一のゆるいエージェント」、2021年度開局予定のBS放送局について語りました。
BS放送局では地域創生をテーマに、社会の困ったことを1つの番組にして、そこからそれを解決する1つの事業を生み出す――そんな構想で、「CMも入らないし、視聴率も気にしない」と説明します。
こうした取り組みは、協議会とも連携しながら進められていくことになります。
「超eスポーツ学校」や「超・起業学校」も
イベントでは、CIP協議会が推し進める10のプロジェクトも発表されました。
愛知県の大村秀章知事がオンラインで登場して説明したのは、世界的な製造業の拠点である愛知県が、その強みを生かして整備を進めるインキュベーション拠点「ステーションAi」プロジェクト。竹芝との間で、デジタルによって空間を超えたつながりを結ぶ構想が進められています。
「超eスポーツ学校」は近い将来、市場規模が3000億円まで拡大するといわれる「eスポーツ」を大学や専門学校、高校だけでなく、教育委員会や教育者などと結び、連携していこうとしています。さらに、教育機関を起業メンターやベンチャーキャピタルと結ぶ「超・起業学校」もプロジェクトの一つです。
テクノロジーを使って性や年齢、障害などの壁を超えて楽しめる「超人スポーツ」は、デジタルによって拡張された身体能力でトップアスリートとも競うことができる斬新なプロジェクトです。
また、情報ICT分野、経営ビジネスでイノベーションを生み出す人材を育成するため、東京都墨田区に開校したiUも、竹芝にサテライトキャンパスを設置して連携します。多くの企業と協力関係にある同大は“3年後に卒業生の全員起業を目指す”というユニークな教育目標を掲げています。
中村理事長は、「大人の仕事は“場”をつくること。未来はこれからの人がつくるもの」と言います。
アフターコロナの世の中で求められる社会——それは、これまでの世界の延長線上にはなく、大胆な転換が求められています。協議会の参与を務める石戸奈々子CANVAS理事長/慶應義塾大学教授は、アフターコロナで求められる街を「密ではない集積された街」だと言います。
これから竹芝という新たな「場」から何が生まれるのか。その姿は、協議会が20201年に計画しているイベント「ちょっと先のおもしろい未来」で体感できる予定です。音楽、お笑い、スポーツ、オタクなどにテクノロジーをかけ合わせると、“おもしろい未来”が生まれるのではないか。そんな「チョモロー」な世界が、もうそこまできています。