本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く企画『芸人読書感想文』。
第6回目の「課題図書」は、レインボージャンボたかお著『説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女』(KADOKAWA)。男性ブランコ・浦井のりひろが独自の目線で感想文を書きます。
普段あまり本を読まない。こんなに文豪のような見た目なのに。新書でも小説でも、読んでその文章にのめり込むまでいつも時間が掛かってしまう。なので「読書」という行為とはなんとなく、「この人の言う事は間違ってないんだけど、会うとしんどい親戚」くらいの距離の置き方をしてしまっている。
レインボーのジャンボ。僕の二年後輩で、愛嬌のある見た目からは想像もつかない、ボケでもツッコミでも成果を上げるマルチファイター。ネタも面白く、どんな現場でもこんなに頼りになる人はなかなかいない。そんなジャンボが小説家デビューを果たした。TV、舞台、YouTube等フルでやってるのに、いつ書いてたんだ。
芸人間で瞬く間に読んだ感想が拡がる中、僕は少し遅れて博多の劇場で本人から購入させてもらった。
久しぶりの読書。蘇る、しんどい親戚と正月に実家で会う前のような感覚。そんなにハマらなかったらどうしよう、その後も普段通りジャンボと対面できるだろうか。少し緊張しながら本を開く。
童貞卒業を目指して合コンに挑む若手芸人の田中。そこで出会った夕紀という女性を部屋に連れ帰るも、そこで夕紀の態度が豹変し……。
一ページ目からするすると体に文章が入り込んでくる。最初ジャンボのエピソードトークでも聞いているのかと思った。文章の巧拙というだけではなく、読んでいて登場人物が目の前で話している感覚になるというのは、結構すごいことなんじゃないかと思う。
実際ジャンボ本人や周囲の人間に実際起こった事がデフォルメされて盛り込まれているらしく、完全にモデルが明確な人物も登場するのでリアリティを伴った悲哀がある。
一節が終わると話し手が切り替わり、さまざまな人物の物語が次々と展開していく。この辺りは何百と魅力的なコントのキャラクターを生み出したジャンボの得意技が炸裂している。
それぞれの物語は少しずつ交錯し、やがてついに登場する真の主人公。この構成には「本当に初めて書いたのか?」と唸らざるを得なかった。とにかくテンポが良いので、「最終章」というページを見たとき「早っ!」と脳内で思わずツッコむと思う。
最後まで「放課後エッチな雑誌が落ちてないか一緒に探す友達」くらいの距離感で読むことが出来て楽しかった。
人懐っこい笑顔で近づいて、いつの間にかすべてを持っていく。まさにジャンボという男の油断ならなさが体現されたような小説。みなさんも気軽に手に取ってみて欲しい。読み進めていくうち、実に綺麗に、この物語の虜になっていくと思う。
書籍概要
説教男と不倫女と今日、旦那を殺す事にした女
著者:レインボージャンボたかお
発売日:2023年9月13日(水)
定価: 1,650円(本体1,500円+税)
頁数:224ページ
体裁:四六判
ISBN:978-4-04-897186-7
発行:株式会社KADOKAWA
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