開業150周年を迎えたJR大阪駅では11月4日(月・祝)までの期間、記念イベント「大阪駅タイムトラベルステーション~時間の旅へ出かけよう!~」を開催中です。なかでもAR(拡張現実)を使って、スマートフォンの画面上で過去の鉄道車両を見ることができる「AR大阪鉄道博物館」は注目度満点! そこで今回は、今年でコンビ結成30周年を迎えるテンダラー(白川悟実、浜本広晃)が、このAR博物館で鉄道や大阪駅の歴史を体感しながら、2人のこれまでの歩みを振り返りました!
若手時代はJR大阪駅から営業に
この日、テンダラーの2人を案内したのは“北区住みます芸人”の木尾モデル。さっそく木尾がJR大阪駅の思い出を聞くと、2人がこう振り返りました。
「めっちゃ若手のころに、それこそJR大阪駅で集合してみんなで営業に行ったなぁ。メッセンジャーとか、水玉れっぷう隊とかね。中央口で集合して、在来線に乗って現場まで行くねん」(浜本)
「神戸に劇場(吉本海岸通り劇場)があったころは、新快速に乗って劇場まで行ってたよな。行き帰りの電車の中で、劇場に観に来てたファンの人らと一緒になったり(笑)」(白川)
2人で「あったなあ」と思い出話に花を咲かせながら、AR体験はノースゲートビルディング2階東側にある「カリヨン広場」からスタート! ここでは、1881年に走っていた蒸気機関車「1800形1801号」のAR画像を体験できます。実際に汽車が出てくる演出を体験した浜本は「わ、おもしろい!」と大興奮。浜本も「おぉ~、この状態で写真が撮れるんや!」と興味津々です。
木尾 「1800形」は、鉄道開業150年の歴史のなかでも序盤のほうに登場した車両なんですけど、テンダラーさんは芸歴1~2年目はどんな感じでしたか?
浜本 そもそも、30年を迎えるなんて思ってないよな?
白川 感覚的に言うたら「おもしろそうやから、オーディション受けてみよか」のノリで始まったからね。
浜本 で、受かったからそのときやってた仕事を辞めて「本格的にやってみよか」と。だから、そのときオーディションに落ちてたらやってない。
木尾 ええっ! ちなみに当時のネタって覚えてます?
浜本 覚えてる。忍者ネタ。忍者の先輩(白川)と後輩(浜本)で、城に忍び込むっていうやつ。
木尾 それが、ゆくゆく「必殺仕事人」側に回るんですね(笑)。じゃあ、はじめはコントやったんですね?
浜本 そう、コント。でも、日によって「今日は漫才しようか」「コントにしよか」みたいな感じで、決まってなかってん。なんやったらボケとツッコミも。
白川 ネタによって変わってたなぁ。そんな感じで始めてるから(笑)。で、1年目くらいにレギュラーで舞台の出番が決まって、それからボケ・ツッコミを決めて。
木尾 1年目で、レギュラーで舞台出番がもらえるなんて、いまはもうないですよ!
浜本 あのころの白川くんはイケイケで、まだ1年目の心斎橋筋2丁目劇場のオーディションを受けてるとき、「NGK(なんばグランド花月)に出たいなぁ」と言い出したから、「そら出たいよ」って答えたら、「じゃあ、ちょっと行こうか」と支配人のところに行って、「NGKに出たいんですけど」って(笑)。
白川 「どうしたらいいですか?」ってね。
木尾 えぇ~~!? 直接!?
浜本 支配人もびっくりしてて、「ネタ、あんの?」と聞かれたから「あります」って言うて、NGKの舞台袖でネタを見せて、それから10日後くらいになぜか出番がもらえた。
白川 そんな奴、おらへんで(笑)。
浜本 なんで出してくれたんやろうなぁ? そこから定期的にNGKに出るようになったんよ。もちろん最初は全然ウケへんから、手をかえ品をかえ、めちゃくちゃ考えたな。10分出番で。
木尾 1年目で、いきなりNGKで10分出番!?
浜本 そらめちゃくちゃスベったよ。でも、そこで「客を振り向かせるためには、つかみがめちゃくちゃ大事やな」っていうことに気づくのよ。それでめっちゃ考えた。それができたのは、やっぱり劇場があったからやね。
木尾 すごいですね……! そういう気質は30年が経ったいまでも変わってないですか?
白川 (浜本は)ずっと引っ張ってくれてるね。
浜本 いまも(白川には)めちゃくちゃ驚かされるよ。いま彼はドイツに目を向けてて、「ジ・白川バンド」で、ドイツのサマソニみたいな音楽フェスの出演権をかけてオーディションを受けてるのよ。
白川 あと2回、勝ったら出れる。
浜本 その大事な予選が、俺らの単独ライブの1週間前やからな。
白川 ドイツから帰ってこられへんかも知れん(笑)。
浜本 そういう行動力はさすがやね。休みの日にタイまで行ってゾウに乗る免許を取ったり(笑)。日々、驚かせてくれるから刺激がある。
「$10」から「テンダラー」に表記を変えた理由は…
続いて、サウスゲートビルディング1階の「旅立ちの広場」に移動。ここでは1950年に走っていた「クハ86形」のAR画像が楽しめます。鉄道開業から現在までの歴史のなかで、折り返し地点の時期に活躍していた車両です。
木尾 テンダラーさんだと芸歴15年目のころ、コンビ名を「$10」から「テンダラー」に表記を変えた時期ですか。
白川 あぁ~、はいはい! そうかそうか。
浜本 そのころは、ガッツリNGKに出て15年もやってるけど、年輩の方からしたら「$10」が「テンダラー」と読むってわからへん。でも、劇場でやっていくって決めてたから、誰が見てもひと目でわかるコンビ名にしたほうがいいんじゃないか、ということで。ちょうどそのころに15周年記念ライブがあったから、そこで「周年の重大発表」なんて言いながら。でも、読み方はテンダラーのままやから「表記だけ変えます」って発表して変えた。
木尾 なんで最初は「$10」だったんですか?
浜本 カタカナのコンビが多いから、そのなかに記号があったら目立つんじゃないかって、いろいろ考えててん。ちょうどそのとき、当時、一緒に働いてたバイト先で、慰安旅行でハワイに行って、帰国後は初めて吉本のオーディションを受ける予定になってて。それで、ワイキキビーチでコンビ名を考えるときにドル紙幣を持ってたのもあって、「$10にしようか」「そうしよか」みたいな。
白川 「$」は記号で目立つから。
浜本 一応、ほかの候補としては「ハワイ&マウイ」もあってんけど、(白川が)「それはいやや」と(笑)。
木尾 (笑)。ちなみに15年のなかで、“解散の危機”はなかったんですか?
浜本 ないなぁ。まだ若いから将来のことを考えているようで「なんとかなるか」みたいな感じで何も考えてなかったし……。
白川 そうそう。なんか妙に忙しかったこともあって。
浜本 それに、そんなにテレビに出てなくても単独ライブをやるとチケットが売れてん。『M-1グランプリ』も終わり、レギュラーもない状態やってんど、単独をやると毎回満席になるから、「じゃあ、やってることは間違ってないんかな」という感触があってん。それがなかったら辞めてたんちゃうかな。
木尾 劇場と、お客さんに支えられた、と。
白川 絶対にそう。ほんまに劇場。
浜本 それこそ「必殺仕事人」のネタも、このころにできたネタやからね。
東京進出しなかったのは「NGKがないから」
次に一行は、ノースゲートビルディング2階中央の「アトリウム広場」へ。この場所では、1971年に走っていた当時の「クハ486形 雷鳥しらさぎ」の雄姿がARでよみがえります。鉄道歴史の中間地点を折り返して少し経ったくらいですが、テンダラーの芸歴に置き換えると20年目前後です。
木尾 テンダラーのおふたりは、17、18年目に「THE MANZAI」決勝進出を果たしています。ようやく世の中にバーンと出たころでしょうか?
浜本 17年目のときにマネージャーから「芸歴が関係ない漫才コンテストなんですけど、どうですが」って相談されて、こっちは山ほどイベントをやってきてネタはいっぱいあるし、そのなかでもめちゃくちゃ自信があるネタが「必殺仕事人」やってん。でも、当時の自分たちはもうそのネタはやり切った感があって、DVDにも入れたし、引き出しの中にしまい込んでたんよ。
白川 うんうん。そうそう。
浜本 俺らのなかで「DVDに入れて形に残したら、もうええか」っていうのがあったから、劇場では5年くらいやってなかってん。そこに「THE MANZAIがあります」っていう話が来て、それで「このネタでいかれへんわけあらへん」ってなってん。
木尾 僕、テンダラーさんがスベってるところは見たことがないんです。17年のなかでウケ続けたネタのなかでも「必殺仕事人」のネタは、確固たる自信があったんですね。
浜本 あった。絶対にインパクトが残せると思った。
白川 そうそう。
浜本 白川さんも「やっぱりこれ(「必殺仕事人」のネタ)やな」って言ってたから。
木尾 ビートたけしさんから褒めていただいたことで、世間の風向きが一気に変わった感じはあったんですか?
浜本 世間よりも、自分らが、やね。やっぱり「あ、間違えてなかったな」という自分らの気持ちがデカいんちゃうかな。背中を押してもらえた、みたいな。「これで正解ですよ」と言われたくらいのうれしさですね。
木尾 「THE MANZAI」や「M-1グランプリ」をきっかけに、活動拠点を東京に移す方もいらっしゃったと思うんですけど、そこには繋がらなかったんですか?
浜本 東京には、NGKがないしな。
木尾 うわっ……! なるほど。やっぱりなんばグランド花月は濃度が濃いというか。
浜本 高校球児は、やっぱり甲子園で野球やりたいやん。「東京ドーム、ありますよ」って言われても、「いや、ええねんけど、甲子園がいいな」みたいな。そんな感じちゃう?
木尾 なるほど……! そして20周年のときには、新たなチャレンジをされていますよね。ロサンゼルスで、英語漫才。
浜本 そうそう。20周年で、なんかやらなあかんって考えたときに、実はその1年前にタイで単独ライブをやってん。お客さんは現地の日本人の方で、100人ぐらい来てくれたらいいか~と思ってたら、350人くらい来てくれて、「こんなに喜んでくださるんや……!」と思って。
白川 ふつう海外で350人なんて入れへんやん?
浜本 それで手応えを感じて、20周年は「よっしゃ、アメリカでやろう!」って言ったら、当時のマネージャーが「じゃあ、全編英語でやりましょうか」、俺らは「何言うてるねん、おまえ~」なんて笑いながら(笑)、日が近づいてきたら「ほんまにやってくださいね」ってなって……。マジでふたりでカネを握りしめて英会話スクールに行ったもんな。
木尾 そんな状態から全編英語のネタを!?
浜本 まあ、でも、けっこう現地に行ってから内容を変えた。やっぱりつかみはめっちゃ大事で、当時は(なかやま)きんに君もアメリカにいたから、きんに君の友だちに教えてもらった英語を入れたりしたら、わりとハマった。
白川 やっぱり生の英語やからね。
木尾 20年目でキャリアもあるのに新たな挑戦って、難しいんじゃないですか?
浜本 難しいよ! いちばん大変やったのは、ストリートでネタをやったとき。アメリカってお客さん自身も一緒に楽しみたい気持ちが強いから、踊るネタのときに前で観てたお客さんが俺らと一緒に踊りだしてん。なんやったら俺を押しのけて、ええ場所で(笑)。もう笑てもたわ。俺よりうまいし(笑)。
白川 なんやねん! ってなったな(笑)。
木尾 盛りだくさんですが、21年目となる2015年には「第50回 上方漫才大賞」も受賞されました。
浜本 「大阪で活動していく」って決めたとき、じゃあ何を目標にするねんってなったら「上方漫才大賞」。自分らのなかで「この5年くらいで上方漫才大賞は獲りたいな」って話してた5年目で獲れたから、それはよかったなと思います。
白川 これでやっと「漫才師です」と言えるという、ね。
舞台に対する気持ちは「大人になったわ~」
この日のAR体験ツアーの終着点は、大阪駅構内の橋上駅屋上5階にある「時空(とき)の広場」です。この場所では、1996年から走っている新幹線の「500系521形」のAR体験ができます。浜本は「ARで最新の新幹線と写真が撮れるって、技術の進化はすごいね~」と感心しきり。「時空の広場」には人工芝が敷かれて、家族連れにもピッタリです。
木尾 JR大阪駅もこうして進化を遂げているわけですけど、いよいよ終盤です。最近では「THE MANZAI マスターズ」にもご出演されて、世間的にも漫才師としての確固たる地位を築いてこられました。時間の過ごし方にも重みが出てきたのでは。
浜本 重みと言うか、単純に寄席の出番も確実に後ろのほうになるやんか。
白川 そうそう。やっぱり、慎重にはなるよ。
浜本 新ネタを単独ライブで試して、そのネタを引っ提げて寄席で試すときがいちばん緊張するね。
木尾 やっぱり、キャリアを重ねて舞台に立つときの心持ちは変わってきましたか?
浜本 それは変わってると思う。「お客さんはめっちゃ楽しみにしてくれてるんや」っていうね。俺、前にシルク・ドゥ・ソレイユのチケットを取ったとき、友だちに「楽しみすぎて、前日は寝られへんかったわ」って話したら、「俺の知り合いも同じこと言ってたで。お前らの単独ライブの前の日に」って言われてん。それを聞いた瞬間、「え、そんなに楽しみにしてくれてるの!?」って。
木尾 一大イベントですね。
浜本 そうやねん。NGKに毎年恒例で来てくれる家族もおれば、最初で最後の家族もおる。10年ぶりに観に来てくれた家族もおる。ほんまに今日この日が最後の日かもわからんっていうお客さんがおるんや、って。いまは、そんなことも考えるようになったなぁ。大人になったわ~。
白川 それ、ほんまに思う! 1回1回、汗びっしょびしょになるもんな。だって、チケットを買って観に来てくれてるんやから。
木尾 今年で30周年を迎えられましたけど、今後、40周年、50周年に向けて見据えてらっしゃることはあるんですか?
浜本 将来とかよく聞かれるねんけど、俺らにとって、いまがもう将来やねん。
白川 うん、将来やわ。
浜本 そう。だってこの世界に入ったとき、30年後のことなんて考えなかったし。それに、いまの師匠方も現役ですごい活躍されてらっしゃる。
白川 たとえば(オール)阪神・巨人さんを見てて、自分が師匠がたの年齢になったときに、あのキレのよさ、テンポのよさで「こんなに動けてるかな?」って思うこともある。
浜本 そういうふうになっておくためにも、ほんまにベタやけど“健康”かな。こないだも、(白川が)人間ドックに行って全部調べたっていう話を聞いて、ホッとしたもん。
白川 ははは(笑)。
浜本 あとはもちろん単独ライブもね。毎年やってるねんけど、続けてやって、お客さんに来てもらえるようにやりたいよね。やっぱりお客さんに笑っていただくと、「1年間、やってきたことは間違ってなかったんかな」ってホッとするねん。
木尾 直近でいうと 6月28日(金)に大阪から始まる「テンダラー結成30周年記念公演」もあります。
浜本 ツアーで10年ぶりにロサンゼルスにも行くよ。基本的に日本語の漫才やけんけど、ちょっとだけあのネタも挑戦しようかと。それでまた英会話スクールに通って、できるかぎりがんばろうと思う。
木尾 カッコいいですね。いつまでも目的を持って挑戦し続ける姿は、僕ら若手芸人にとっても刺激になってありがたいです!
浜本 わからんで~。知らんうちにゾウの背中に乗って「じゃあな!」ってどっか行ってるかもわからんで(笑)。
イベント概要
大阪駅開業 150 周年記念イベント「大阪駅タイムトラベルステーション」
期間:2024年5月11日(土)~11月4日(月)(イベントにより期間は異なります)
場所:大阪ステーションシティ各所
内容:
1. 大阪駅×ドラマチック謎解きゲーム タイムトラベルステーションの謎
2. AR 大阪鉄道博物館
3. 大阪ステーションシティ×ソダテツ 大阪駅 QR ラリー
4. Osaka Art & Design 2024 ×大阪駅開業 150 周年
5. ホテルグランヴィア大阪×大阪駅開業 150 周年
6. 大阪駅開業 150 周年オープニングセレモニー&クイズイベント
(今後のイベント予定)
・お子様の未来(お仕事)体験企画×大阪駅開業 150 周年
・没入型体験イベント「タイムトラベルエクスプレス」×大阪駅開業 150 周年
・FM802 / FM COCOLO ×大阪駅開業 150 周年 他
公演概要
『テンダラー結成30周年記念公演』
■「テンダラー漫才会in大阪」
日程:6月28日(金)開場18:30/開演19:00
会場:なんばグランド花月
チケット:前売 4,000円、当日 4,500円
■「テンダラー漫才会in広島」
日程:8月24日(土)開場13:00/開演14:00
会場:中国新聞ホール
チケット:前売 4,000円、当日 4,500円
■「テンダラー漫才会inロサンゼルス」
日程:9月19日(木)開場18:30/開演19:00
会場:James Armstrong Theatre
チケット:前売30ドル 当日40ドル
■「テンダラー漫才会in名古屋」
日程:10月12日(土)開場17:00/開演17:30
会場:中電ホール
チケット:前売 4,000円、当日 4,500円
■「テンダラー漫才会in東京」
日程:12月13日(金)開場18:30/開演19:00
会場:浅草公会堂
チケット:前売 4,000円、当日 4,500円
■「THE FINAL」
日程:12月25日(水)開場18:30/開演19:00
会場:なんばグランド花月
チケット:前売 5,000円、当日 5,500円
FANYチケットはこちらから。