大阪・よしもと漫才劇場(マンゲキ)の所属芸人で、誰がいちばん面白いかを決める2カ月に1回のガチネタバトル、「グランドバトル」と「Kakeru翔GP」。8月に行われたバトルでは、「グランドバトル」は隣人(中村遊直、橋本市民球場)が初めてのチャンピオン、「Kakeru翔GP」ではぐろう(家村涼太、高松巧)が3回目のチャンピオンに輝きました。「どの賞レース優勝よりも1位を獲るのが難しい」といわれる恒例のバトルの内幕を王者2組に語ってもらいました。
この対談の様子は、【YouTubeよしもと漫才劇場チャンネル】でもご覧いただけます!
芸歴9年目以上の「極メンバー」全組が集結し、磨き上げたネタで競う「グランドバトル」。一方の「Kakeru翔GP」は、芸歴8年目以下の若手「翔メンバー」が出場し、磨き上げたネタでバトルに挑みます。今回は、8月3日(土)に「グランドバトル」、そしてその翌日の8月4日(日)に「Kakeru翔GP」が行われました。
「M-1に向けてネタを仕上げだす時期だから…」
——2組とも、総合チャンピオンになったときに手応えは感じてましたか?
隣人・中村 「グランドバトル」は3部に分かれて戦うんですが、僕らは2部で「まぁまぁ、いけたかな~」ぐらいやったです。手応えはあんまりなかったけど、スタッフから「残っといてください」と言われたから、なんとなく「あるかな?」くらいの感じでした。
隣人・橋本 僕は「優勝はないかな」と思ってたけど、まわりが「絶対に優勝や」と言ってきたんで、「ああ、まわりがそう言うなら、そうなんやろうか」ぐらいな感じでした。でもネタをやってるときは、全然そんなことは思ってなかったです。
ぐろう・高松 僕らはネタが終わったとき、「いけたかな? でも、ネタが弱いところもあったからどうやろうな~」って感じでした。でも、確信はしてなかったです。
ぐろう・家村 今回を入れて3回優勝しているなかでは、今回がいちばん手応えがあったので「1位やろうな」とは思ってました。でも、どれだけウケても結果ってどうなるかわからないんで、どうだろうとは思ってましたね。
——ぐろうさんは「Kakeru翔GP」で3回目のチャンピオンとなりましたが、どんな心境ですか?
家村 言うても1年ぶりぐらいだったので久々だったし、ちゃんとガッツポーズが出ました。やっぱり優勝はうれしいです。
——「グランドバトル」でも「Kakeru翔GP」でも、ふだんのライブとはちょっと違う空気が流れると聞きますが、当日の空気はどうでしたか?
中村 楽屋でもみんな、一言もしゃべらず壁に向かってネタ合わせしてました。みんな、がんばってる大会なんで。
橋本 そんな「M-1」みたいな感じやったっけ?(笑) 言うても僕らにとって「グランドバトル」は2カ月に1回、絶対に巡ってくるものなので。それに本来、お笑いは戦いなんてせんでもいいもんやと僕は思ってます。でも、戦わせることによってお客さんが面白いなら、存分に戦わしてくれ! とは思ってます。
中村 4年に1回のオリンピックぐらいの気持ちでやってますよ。
橋本 とくにこの夏場(8月)は、「M-1」とか「キングオブコント」の予選が始まるから、全コンビがネタの集大成を出す時期ではあるんです。この時期から芸人たちはネタを仕上げだすから、8月のチャンピオンになるのがいちばん難しいって言われてるんです。そんななか、僕らが優勝できたんで、いまのところ僕らがいちばん面白いってことやと思ってます。だからもう、決まったって感じです(笑)。
家村 僕らの「Kakeru翔GP」のほうは降格があるから、劇場メンバーになれなくなる可能性もあって。
橋本 そういう面では「グランドバトル」とは、ちょっとちゃうかも知れんな。
高松 下位に入ってしまったら……みたいなことがあるから、「グランドバトル」よりは楽屋とかもピリついてる感じはあるかも知れないです。
実績のあるネタでも勝てないのが「グランドバトル」
——熾烈な夏場の「グランドバトル」「Kakeru翔GP」で、ネタ選びにも慎重になりましたか。
橋本 僕らは「キングオブコント」で戦えるネタを、バトルで出したらどうなるかな? と思って今回のネタを出しました。そしたら優勝できました。なので、キングオブコントでやりました。
中村 2カ月前から「グランドバトル、何する?」「やっぱりアレかな」ってなって、さんざんモメて、2人で海とか見に行って「アレやな」ってなって。
高松 海で。
中村 海やな。
家村 僕らは今回、いちばんの新ネタを出しました。それこそ「Kakeru翔GP」の1週間前にできたやつ。この時期は賞レースが続いていて、マジでネタがない! ってなってまして、2人で「じゃあ山へ行くか」ってなって。山に行って、石とか見て「あぁ、石でやってみようか」となりました。
高松 うちは山で。
——「山」と「海」でね。
中村 そう考えると、8月の優勝は僕らって決まってたかも知れんな。
——「グランドバトル」「Kakeru翔GP」は、ほおかの賞レースと比べて難しさは違いますか?
橋本 僕ら、2021年に「ytv漫才新人賞」で優勝させてもらってて、ふだんはコントが多いんですけど、このときは漫才2本で優勝させていただいたんです。そのときの漫才を「グランドバトル」でもやったんですけど、両方ともめちゃくちゃ下位でした。
だから、賞レースで優勝できたネタでも「グランドバトル」では難しかったりしますね。だいたい60組くらい出るんですけど、みんなおもしろいし強い人がいっぱいいる。層の厚さは感じますよ。そこに難しさがあるかも知れません。
中村 ほんまにそれは感じます。
高松 「Kakeru翔GP」のほうは、初めて劇場入りした、どんなネタをするのかわからないような新進気鋭の芸人たちと初めて戦ったりするので、その人らがもしかしたら上位にいくかも知れない、という予想のできなさがあります。
家村 僕が難しさを感じるのは「いつ、舞台袖に降りるか」というタイミングです。漫才劇場は、6階が楽屋で5階が劇場になってるから、どのタイミングで5階に降りるのか。だいぶ前の「Kakeru翔GP」で僕らがトリやったんですけど、相方がだいぶ早めに5階に降りて、舞台袖で「空気がだいぶ重いな」と感じたらしく、勝手にグッと緊張して、本番に大噛みして。
高松 ……ありましたねぇ。
家村 それも、連覇がかかってるときにボロカスの漫才をしてしまったんです。自分でわざわざ早めに舞台袖に降りて、自分で勝手に縮こまって早めに緊張して大噛みして連覇を逃したんです。だから、降りるタイミングが大事。
——とはいえ、ギリギリすぎてもソワソワしますしね。
家村 そうです。ギリギリすぎてもスタッフさんが「いない!」って慌てるかもしれないし。
高松 でも早すぎても、変なこと考えちゃって「こんな空気で大丈夫かな?」と不安になっちゃいました。
じつは熱い「なんでもグランドバトル」と「なんでもグランプリ」
中村 「グランドバトル」では、集計の時間を使って「なんでもグランドバトル」っていうコーナーがあるんですけど、あれで1位を獲ることこそ難しいです。MCの先輩の「なんかある人~!?」で手を挙げていかないといけないんで。でも、その用意がないから何とか誰かが時間を稼ぐっていう難しさはあります。
3人 はははは(笑)。
橋本 あの時間がいちばん難しいよな? ネタも大事やけど、あのコーナーも「どうしよう?」ってなります。でも、そこでいくらがんばったところで「グランドバトル」の投票が終わったあとなんで、ランキングには何の影響もしません。それやのに、みんなめっちゃがんばる。それこそが、まさに“芸人”やな! って感じますね。「グランドバトル」ってなると、観てくれてるお客さんもちょっとピリついてしまうから、「ふだんと変わらんよ! 僕らはいつもどおりですよ!」っていう意識で楽しんでいただくために、そうやってます。
中村 「なんでもグランドバトル」って45分くらい、しっかり腹が減るくらいあるんで、お客さんがリラックスして楽しんでもらいたい、というのはありますね。もし次回、チャンピオン対談をやるなら1部から3部の「なんでもグランドバトル」チャンピオンでやってもらいたいですね。でも、不思議なもんで、終わったら一切の記憶がないんです。誰がチャンピオンになったのかも毎回、覚えてません。
家村 「Kakeru翔GP」でも「なんでもグランプリ」というのがありますよ。
中村 あるんや!?
家村 タレンチのコバタさんは7連覇ぐらいしてます。
高松 最近は、あんよの日っていう、それこそ新進気鋭の男女コンビが出てきてショートほっこりコントをしたりして。
中村 「なんでもグランドバトル」に出てほしいぐらいや。
高松 「グランドバトル」には、コバタさん枠はいないんですか? 連覇してるような方。
中村・橋本 えぇ~……?
中村 ほんまに記憶がないねん。実は連覇してる奴がおるかも知れんけど、本人しか覚えてないかも知れへん。
高松 僕、そういえば「なんでもグランプリ」、出ましたよ。
家村 やっぱり出た奴は覚えてるんですね。
高松 サムギョプサル屋で4年間、働いていたんで、50音で何を言われても、そのサムギョプサル屋で4年間、ホンマにしゃべったことあることを言えます。
中村 じゃあ、「さ」。
高松 「サムギョプサル、焼いていきますね~」
3人 あぁ~……!
高松 「さ」やったら、そらそうなるでしょ(笑)。
「2カ月に1回開催は大相撲と一緒」
——芸人さんにとっていろんな賞レースがありますが、2組にとって「グランドバトル」「Kakeru翔GP」はどんな位置づけですか?
橋本 弁当箱があって、ごはんの部分が「キングオブコント」や「M-1」だとしたら、「グランドバトル」は“左上”ですかね。
——おかずでしょうか?
橋本 うーん……弁当によりますかねぇ。
3人 わははは(笑)。
中村 じゃあ、どんな弁当かを言えよ。
橋本 僕は左利きなんで、ごはんを食べたあとにこう伸ばして。ごはんの近くではあります。つねに近くに感じている“重要な位置”、という感じでしょうか。
中村 僕は、ひと言で言ったら、靴。
家村 革靴……とか?
中村 靴によるなぁ~。
家村 ですよね。
中村 漫才劇場に所属していたら、「グランドバトル」には出なあかん。「芸人」と「グランドバトル」、ペアで行きたい、みたいなことです。所属してたら、絶対出ないとあかんし、勝たなあかんっていう。
家村 靴が「右」と「右」でもダメですもんね。
中村 そう。マンゲキ所属である限り、「バトル」と「バトル」でもあかんし「芸人」と「芸人」でもあかん。「芸人」と「グランドバトル」でないとあかん。
高松 すばらしい……!
——では、ぐろうさんにとって「Kakeru翔GP」はどんな位置づけでしょう?
高松 「Kakeru翔GP」は、サニーレタス。サムギョプサルには欠かせないものだから。サムギョプサルにはサニーレタスが絶対欠かせないように、若手芸人には絶対に欠かせないものです。
中村 サムギョプサルは、そのままで食えるんじゃないの?
高松 いや、全然わかってないです。また食べ方を教えますわ。ここで言うとネタバレになるから。
中村 「なんでもグランプリ」のな(笑)。
家村 僕は本当に、「大相撲やな」って思ってます。2カ月に1回、命懸けで戦うじゃないですか。力士さんは15日ですが、僕らはこの1日に向けて2カ月間の集大成をぶつける。そして“横綱”を決める、という。だから、一緒だなと思いました。
中村 大阪場所だ!
家村 そうです! マンゲキなんで、つねに大阪場所ではあるんですが(笑)、今回は夏場所。大相撲は奇数月で、「Kakeru翔GP」は偶数月なんです。力士の皆さんに勇気をいただいて、来月がんばる。僕は、そういうサイクルでがんばっています。
動画「隣人×ぐろうチャンピオンインタビュー」はこちら。
公演概要
■『グランドバトル』第一部~第三部
日時:10月5日(土)
<第一部>開場 12:15/開演 12:30/終演 15:05
<第二部>開場 15:35/開演 15:50/終演 18:25
<第三部>開場 18:55/開演 19:10/終演 21:45
会場:よしもと漫才劇場
チケット:前売1600円/当日1900円
配信1500円/配信通し券(第一部・第二部・第三部)4000円
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FANY Online Ticket(配信)はこちらから。
■『Kakeru翔GP』第一部・第二部
日時:10月6日(日)
<第一部>開場15:30/開演15:45/終演18:30
<第二部>開場19:00/開演19:15/終演22:00
会場:よしもと漫才劇場
チケット:前売1500円/当日1800円
配信1500円/配信通し券(第一部・第二部)2800円
FANYチケットはこちらから。
FANY Online Ticket(配信)はこちらから。