今年で入門10年を迎えた落語家の月亭八織が、10月28日(月)に大阪・ABCホールで記念公演を行いました。「月亭八織噺家10周年記念公演 八織遊演地」と題された落語会には、師匠の月亭八方やゲストの笑福亭鶴瓶、もりやすバンバンビガロが登場。音や照明を活用し、八織ならではの演出がふんだんに詰め込まれたこだわりの公演になりました。
ゲストに笑福亭鶴瓶が登場
八織は、2014年に月亭八方の7番目の弟子として入門し、持ち前の愛嬌と明るさを生かしながら、めきめきと腕をつけてきました。
この日のステージには高座のほかに和太鼓とドラムが置かれ、開演前から特別な夜を予感させます。遊園地を彷彿させる軽やかでおしゃれなBGMが流れるなか、ゲストの太鼓ユニット「我龍」がステージに登場すると雰囲気は一変。紅白の獅子舞が客席で練り歩き、我龍による“祝い太鼓”で華々しく幕を開けました。
続く口上では、八織が師匠の八方と並んで登場。八方は公演開催を喜び、この日のために会場探しからチケット販売までやり遂げた八織をねぎらいます。そして、「10年間、嫌なことは? つらかったことは? もう辞めようと思ったことは?」と矢継ぎ早に質問する八方。これに明るい笑顔で答える八織とのやり取りは、まるで親子のようです。
動物が大好きという八織は、まずは犬が出てくるネタ「元犬」を披露しました。人間になった犬をかわいらしく口演。ネタはもちろん、犬にも、落語にも、八織の愛情がこれでもかと注がれていました。
中入り前はゲストの笑福亭鶴瓶が、実体験をもとに創作した私落語(わたくしらくご)の「青木先生」を一席。高校時代の思い出のエピソードで爆笑に次ぐ爆笑を起こし、最後はほろりと泣かせました。
上方落語特有の演出“ハメモノ”をフル活用
中入り後にステージに登場したのはゲストのピン芸人・もりやすバンバンビガロです。ステージと客席の距離が近いABCホールで見る大道芸は迫力満点。まるでストリートで見ているかのような臨場感で、会場を沸かせました。
大トリに再び八織が登場。10周年特別企画として鶴瓶から伝授されたネタ「死神」に挑みます。演出は八織の役者時代の師匠である後藤ひろひとが担いました。我龍による太鼓の演奏から物語が幕開けします。
死を覚悟した男を演じる八織が客席から現れ、一人芝居を展開。その後、八織の姿はいつのまにか高座に移り、落語の世界へと引き込みます。ネタ中の情景を音で表す上方落語特有の演出“ハメモノ”を我龍が担い、太鼓とドラム、サックスの音が世界観を深めました。
冥界の場面では、狐の面をつけた4人の人物が舞台に現れ、怪しげな雰囲気に。ロウソクの灯りのように照明が変化し、落語の世界をより立体化します。最後のサゲまで演じ切り、渾身の一席を終えた八織は、ほっとしたような笑顔を見せました。
八織の10年の集大成を魅せた唯一無二の「八織遊演地」。最後は我流の生演奏でお客さんを見送り、幕を下ろしました。