「奈良県住みます芸人」ならぬ「奈良勝手に住みます芸人」を名乗って活動するピン芸人・サルイン。笑い飯・哲夫の実家の田んぼの作業を手伝ったことをきっかけに米作りにハマり、なんと11月5日(火)に稲作についての本を出すことになりました。教員免許を持つ彼が、子どもたちに稲作の楽しさを知ってもらおうと書いた本のタイトルは『稲作ライブ おもしろくてたいへんな田んぼの一年』(くもん出版)。そこで今回、サルインにとって“師匠”ともいえる哲夫とともに、本や農作業について思いっきり語ってもらいました!
勝手に任命された「奈良勝手に住みます芸人」
――おふたりが知り合ったきっかけは?
哲夫 よく覚えてないんですけど、仲良くしている奈良県住みます芸人の十手の西手くん(エナジー西手)が、「奈良に住んでる後輩がいるんで」って教えてくれたのが最初やったと思います。
サルイン 合ってます(笑)。
――第一印象はどんな感じでしたか?
哲夫 すごく気さくで、芸人というより地域おこし協力隊みたいなイメージがありましたね。「奈良県住みます芸人に任命する」と吉本から言われたんじゃなくて、もともと石川の子やのに、奈良が好きで勝手に奈良に住んでるっていうのを聞いて、「じゃあ、奈良勝手に住みます芸人やな」みたいな話で。われながら、いいネーミングしたなって。
サルイン “住みます”はライバルが多いですけど、“勝手に住みます”はいまだにライバルがいないんで。一人勝ちで、ちょうどいい名前を名乗らせていただいてます。
――サルインさんは、哲夫さんにどんなイメージを持っていましたか?
サルイン 奈良の方っていうのは知ってましたけど、先輩っていうより、芸能人の上の人っていうイメージが強かったですね。お会いする機会があるとは想定すらしてなかった状態で初めてお会いした感じでした。印象としては、突飛なことをされる……。
哲夫 (笑)
サルイン ネタとか、バラエティの振る舞いとかで、そんなふうに感じてました。そして、ちょうどお会いしたくらいのタイミングが、哲夫さんのアカデミックな活動が表に出たくらいだったと思うんですけど、知的好奇心が旺盛な方だなって思ってました。
いちばん苦労した写真撮影
――最初に書籍になるって聞いたとき、どう思いましたか?
哲夫 子ども向けって聞いたので、ホンマに僕がやってほしいなと思っていたことをやってくれたなという感じでした。自分とこの田んぼを小学校に貸してでも、稲作の面白さと大変さを知ってほしいと思っていたから、それを生で勉強できるような本を出してくれたというのは、願ったり叶ったりでうれしいです。
サルイン 僕は教育に携わりたかったんで、まさかこんなチャンスが来るとはって感じでした。ただ、僕はお手伝いしかしたことがなかったんで、稲作で知らないことももちろんあるんです。そこは一から調べました。だから、そういうところは「こんなんらしいよ」って言い回しになってると思うんですけど。
哲夫 (笑)
サルイン 出穂(しゅっすい)とかも、どういう伸び方するんやってとこまで見てなかったので、そういうところは詳しい先輩に聞いて。哲夫さんにもいっぱい聞きましたね、「これ、わかんないんですけど」って。本当に、プロと素人のちょうど間の立場で書かれてる本やと思います。
――文章、写真、イラスト、すべてサルインさんが担当したんですね。
哲夫 なかなかの労力やなって思いましたね。絵もうまいし、かわいらしいから子どもも気に入りそうやし。
サルイン 1人3役って聞いたときは、そういうもんやろって(笑)。絵は個展で描いてたし、文章も書くし。いちばん苦労したのは写真ですね。作業中はスマホを触らないんで、使える写真が全然なくて。田んぼには、カメラを置く場所もないし、置けても熱々になって使えなかったり……。
それでなんとか撮った写真を(編集者に)送るんですけど、「サルインさんがどれも写ってないですね。できるだけ写真に入ってください」って。そうなると、また一からや〜って。時期を逃せない作業もありますし、本当に写真が大変でした。
根付け、収穫、食べるとき……稲作にはいろんな喜びがある!
――稲作をしていて、いちばんうれしいときってどんなときですか?
哲夫 収穫はうれしいですし、家族が美味しいって言ってくれるときもそうですね。それと市場にも出してるんですけど、すぐ売れたとき(笑)。あとは苗を植えて根がついたとき。根がつくまでは不安なんです。
――逆に大変なときは?
哲夫 やっぱり天候ですかね。特に今年は大変でした。本当に今日まで作業をやってて(取材は10月末)。室内の作業やったんで少々雨が降っても大丈夫ですけど、稲刈とか外の作業は絶対無理なんで。本職の合間にやってるんですけど、そんなときに限って雨が降ったりして「なんでなん! オレ、日ごろの行いどうなってるん!?」って。だから天気と……あとは草と虫。
サルイン 草は取っても取っても生えてきますね。
――サルインさんの仕事ぶりはいかがですか?
哲夫 野球部って聞いてたし、体育会系のサボらず力強い仕事をしてくれるってイメージで、最初からよかったですよ。ただ、西手よりもスマホをイジる回数は多いなって。作業中とかも写真を撮ったり、なんかデータ蓄積してんのかなって(笑)。
サルイン 本を出すにあたって、絵描きます、文書きます、写真もいりますとなって、「3、4年やってるんで写真ありますよね?」って言われたんですけど、1枚もなかったんです。さっき言ったみたいに、作業中って手が汚れてるからスマホ触らないし。だから本が出るって決まってから慌てて……。それをしっかり見られてて、バレながら(笑)。
哲夫 本の帯に「すばらしいサボりだった。」って書いたとおりですね。
稲刈りの上手下手は“音”を聞けばわかる
――哲夫さんから見ていてサルインさんが得意な作業は?
哲夫 全般できる感じですね。この前も初めてコンバインに乗ってもらったんですけど、扱いも上手やし。ここ2年くらいはカマの使い方もよくなってます。音でわかるんですよ。1株につき1回、ザクッてやるのがいいんですけど、(2年前は)ゴシゴシって聞こえてくるので、カマを2、3回入れてるなと(笑)。
サルイン 音でバレるっていう(笑)。
哲夫 ゴシゴシって聞こえてくるから、「1回でいきや〜」みたいな話をしていたのが、ここ2年くらいは1回ずつでいってるなって。いろんなところで田んぼを手伝ったりしているいうのも聞いてるんで、経験値ってすごいなぁと思います。生意気ですけど、サルイン、成長してるなと思います。
サルイン ありがとうございます! ホンマうれしいですね(笑)。
勉強が苦手な子でも米作りが実感できる
――本を見ると小学生と田植えをしたり、知り合いの手伝いに行ったりしてますよね。
サルイン 農家さんって、家によっていろんな作業のやり方が違うんです。それを集約して自分のやり方にたどり着いて、みたいな感じです。
哲夫 ホンマに、子どもにそれを教えたいんですよね。いろんな大人のいろんな教え方があって、子どものなかでそれを研磨して、いちばんエエ方法を見つけていくっていう。これはホンマに子どもの教育に、いちばんエエことやと思いますね。田んぼなんてそれの最たるものなんでね。おっさんごとに言うことちゃうやん(笑)、みたいなね。どっちも間違ってないし、いいとこがある。そのいいとこをパクっていく(笑)。自分なりに考えていくんですね。
――農業について、子どもたちに伝えたいことはありますか?
哲夫 日本はお米が主食ですし、米作りっていうのは絶やさないようにしてほしいなと思います。ふつうにご飯食べてるけど、それは誰かが作ってくれたお米ですし。それと野菜も。実は子どものとき、野菜が苦手やったんですよ。だから苦手な子は、自分で収穫したら苦手が克服できるよって。嫌いな子は1回、畑仕事をやってみてほしいって思いますね。
サルイン この間、哲夫さんの家でご飯いただいたんですけど、お肉以外は全部、(自分のところで)採れたやつで。お米、野菜……全部。すごくいい環境やなって思いました。お店で買うのより、味も全然おいしいんです。
哲夫 ホンマにむちゃくちゃうまいですもんね。
――最後に本のアピールをお願いします。
哲夫 挿絵が多くてわかりやすい本です。フリガナも振ってくれていて、誰でも読めるようになってるんですが、「吉本興業」の「興業」っていう字がすごく難しいんで、ここにフリガナ忘れてました。
サルイン ホンマですね、画数も多いですし(笑)。お米は身近にあるものなので、勉強苦手な子でも読んでくれたら実感しやすいと思うんですよ。だから興味あるところだけでもサラッと読んでいただいたら、知識も広がると思います。それと“雑学ゾーン”が想定の3倍くらいに増えていて、本文がしんどいときにはそこで息抜きもできますんで、楽しみながら読んでもらえたらなと思います!
書籍概要
『稲作ライブ おもしろくてたいへんな田んぼの一年』
著者:サルイン
発売日:2024年11月5日(火)
定価:1,650円(本体1,500円+税)
単行本:176ページ
出版社:くもん出版
Amazonはこちらから。
イベント概要
稲作ライブ出版記念サルインイラスト展
開催日程:11月7日(木)~11月30日(土)
開催場所:三宅町交流まちづくりセンター MiiMo1F
(〒636-0213 奈良県磯城郡三宅町伴堂689)
開催時間:9:00~21:00 休館日は入場できません。
入場料:無料