NSC(吉本総合芸能学院)大阪29期生のハマムラ、アキラ、そして31期生の明里(あかり)洋輔がトリオを組む超速バギーが、実に8回目(!)のグランドバトル挑戦で、大阪・よしもと漫才劇場(マンゲキ)の「極メンバー」入りとなりました! 超速バギーの結成は2021年3月のこと。それからというもの、マンゲキ昇格を目指してネタを磨きに磨いて……ついに“極メンバー”の座をもぎ取った3人に話を聞きました。
「極メンバー」までの長い道のり
「グランドバトル」は、マンゲキで2カ月に1回開催されるネタバトル。芸歴8年以上の極メンバー全組に加えて、マンゲキ昇格を狙う若手芸人らのオーディションライブ「UP TO YOU!サバイバルステージ」で勝ち上がった選抜メンバーが、1日がかりでネタバトルを繰り広げて順位を競います。「UP TO YOU!」から勝ち上がったメンバーは、総合10位以内に入った場合、マンゲキ昇格となり“極メンバー”としてステージに立つことができます。
超速バギーは、10月5日(土)に行われた約60組の芸人が出場する「グランドバトル」に「UP TO YOU!」から参戦。3部構成の第3部に登場して第3位で通過。総合順位で9位にランクインし、晴れて極メンバーの仲間入りとなりました。
昇格に同期と祝杯「こんなええ日に終電で帰りたくない!」
——「UP TO YOU!」からマンゲキ昇格、おめでとうございます! いまの率直な心境は?
ハマムラ 僕ら、3年間で「グランドバトル」に8回行ったんですけど、「グランドバトル」って2カ月に1回しかないんです。だから昇格できないと、そのたびに2カ月間の空白ができてしまう。それがホンマにしんどかったです。昇格できてホッとしました。
アキラ 僕はたぶん誰よりもホッとしてると思いますね。やっぱり、僕みたいなもんを扱ってくれている2人と昇格できて、やっとスタートラインに立てました。
明里 僕もホッとしたんですけど、2人がホッとしてるのを見て、またホッとしました。
——芸歴が長い3人なので仲間も多いと思いますが、仲間たちはどんな反応でしたか?
明里 「グランドバトル」が終わって、同期のパーティーパーティーのきむきむ、武者武者の濱坂(恭平)と3人で飲みに行きました。きむきむが終電で帰らないといけなくて、「こんなええ日やのに終電で帰りたくない!」とゴネてたんですけど、終電で帰っていきました(笑)。その気持ちがうれしかったです。
ハマムラ 同期のヘンダーソン・中村フーから「おめでとう」とかそういう言葉は全部はしょって「また飲みに行こ」ってメッセージが届きました。むかしは一緒に海に行ったり、よく遊んでたんです。見取り図・盛山(晋太郎)がめちゃ太ってるころ、海で撮られた写真があるじゃないですか。あの写真の右端に写ってるのが僕で、中村も写ってます。そう考えたら長い付き合いやな~と思います。
アキラ 僕はヘンダーソン・子安(裕樹)と仲がよくて、「いけたわ」って連絡したら「よかったな! またメシ行こう!」と返事が来て、その3日後に大阪に帰ってきた子安と、ダブルアート・真べぇ、新喜劇のカバちゃんと4人で、お好み焼きでお祝いしました。あとは、「グランドバトル」当日にXで報告する前に、サバンナ・八木(真澄)さんから「おめでとう」とLINEが届きました。どこで情報を仕入れたんでしょう。
明里 情報が早すぎる(笑)。
結成秘話!? アキラ「ハマムラと2人ではイヤ」
——そもそも、トリオを結成したきっかけは何ですか?
明里 僕とハマムラさんはそれぞれ別のコンビを組んでて、アキラさんはピン芸人でした。
アキラ 「5upよしもと」(2014年11月に閉館した吉本の劇場)で“サードチャレンジの鬼”と呼ばれてました。
ハマムラ 明里と僕はちょうど同じくらいの時期に解散して、2人でよく飲みに行っていたんです。
明里 僕は、相方を探そうかピンでやろうか、と考えてたんですけど、ある日ハマムラさんが「いいヤツを見つけた」とアキラさんを連れてきたんです。でもまぁ、どう言うたらいいんですかね……。
ハマムラ えっと、僕はアキラさんと組んで舞台に出ようとしたんですけど、アキラさんがオレと2人ではイヤや、と。
——アキラさんはなぜイヤだったんです?
アキラ メチャクチャにされそうやったんです……。最初、「1回だけ一緒にネタやってくれへん?」と言われたんですけど、そのネタが僕をボコボコにするネタで……。
明里 もちろん、お笑い的に、ですよ!
アキラ 「ちょっと怖いな~」と思ってたら、明里が入ってくれると言ってくれたんで、それなら安心かな、と思いました。
明里 入るというか、止める、というか(笑)。
——では、明里さんの役割は「止めること」なんですね。
ハマムラ 小道具(アキラ)・ボケ(ハマムラ)・止め(明里)ですかね。
アキラの印象は「まるで地蔵」
——それぞれどんな相方か、紹介していただけますか?
ハマムラ 僕から見た明里は「色男」です。僕とアキラじゃ出せないスマートさがあります。ネタも優しいんですよね。僕は説明がうまくないんですけど、「こういう言い方をしたほうが伝わりますよ」と補足してくれるから、そのおかげでウケ方はだいぶ変わってると思います。
明里 僕にとってアキラさんは、居心地がいい人です。親戚感が強いというか、たまに「ほんまに血がつながってるんじゃないか」と感じることがあります。僕だけじゃなく、けっこういろんな方が感じてると思いますよ。なんか懐かしいというか、「田舎の夏休み」みたいです。
ハマムラ たしかに、お地蔵さんみたいです。前掛けを付けてあげたいです。
アキラ 僕から見たハマムラさんは、いい意味で何をしでかすかわからない。一緒にいてワクワクします。「ラグビーボール」みたいです。どこに飛んでいくかわからないですね。遊んでて楽しいボールやなと思います。
ハマムラ 自分こそラグビーボールやのに……。
負けるたびに課題を見つけて解決していった
——これまで、「グランドバトル」に8回出場してきましたが、昇格できなかった時期はどうやって自分たちを鼓舞していたんですか。
ハマムラ 負けたらまた2カ月先……となるのは、もちろんシンプルにしんどいんですけど、僕は「絶対また新しいネタ出てくる」という確信があったんで、「どうしよう……」と落ち込んだりはしなかったです。「じゃあ、次はどのネタで行こうか?」って思ってました。
明里 負けるごとに毎回、課題が見えたので、そこをどうしましょうか、みたいなことを話し合って、それをひとつずつ潰せていけたのがよかったかもしれないです。
——今回の「グランドバトル」では、昇格の予感めいたものはあったんですか。
明里 もう8回目やったんで、僕はほとんど緊張してませんでした。「今日はなんか、いい感じですね」「このネタ、よさそうですよね」みたいな話はしましたね。
ハマムラ 7回目の「グランドバトル」で負けたときに、袖にハケた瞬間、「次はあのネタで行こう」というのがあったので、だからとくにヘコむとかもなく、8回目を迎えることができました。
アキラ 絶対ウケるやろうし、たぶんいけるんちゃうか、というのはありましたね。
若手芸人に“お笑い好きのおっさん”と間違えられたアキラ
——極メンバーになって活躍の場もぐっと広がると思うんですが、今後の目標を教えてください。
明里 僕らは初期からずっとコントをやってるんで、コントでまずは“大阪でいちばん面白い”と言われたいです。誰もマネできないようなこともやってると思うので、そこも評価されるように。
ハマムラ マンゲキは音響や小道具がそろってるんで、これまでできなかったことができるようになってネタの幅が広がりそうなんで、それが楽しみです。小道具を作って、いずれ個展をして販売。またはグッズ化。明里は手先が器用なので、発注するといろいろ作ってくれます。新しい稼ぎ方を探っていきたいです。
明里 カネや……。遠回しにカネの話、してる……。
アキラ 漫才劇場という大きな舞台でやれるのがすごくうれしいので、まずは全力でやりたいです。
ハマムラ あと、「グランドバトル」に行くまでって、「UP TO YOU!」とか、下のライブを勝ち上がっていかないといけないんです。そこは若手の子が多くて、一度、アキラさんが劇場に入ったとき、若手の子から「受付がどこか、わかってますか?」って言われてたんですよ。
アキラさんは「わかってるよ~」と返してたけど、その若手の子は、きっとアキラさんを、一般のお客さんが裏口から入ってきた、と思ってるんですよね。お笑い好きのおっさんが裏口から芸人のところに入ってきた、と。アキラさんにそんな思いをさせてしまったことがツラかったです。アキラさんを早く認知してもらえるようにやっていかないと。
明里 あれはトリオとして、いちばんツラかった出来事といえるな……(笑)。
——アキラさんの名誉のためにも、一刻も早く売れないとですね。
明里 僕も、アキラさんと2人で街を歩いてるとき、ビラ配りしている人に呼び止められて、その人がアキラさんのほうを見て僕に「お父さん?」と聞いてきたんです。それもツラかったですね。早く売れて、親子と間違えられるようなことがないように。僕たちはトリオなんだぞ! というのを示したいです。
——アキラさん、こんな思いやりの相方に恵まれて、幸せ者ですね。
アキラ そうですね(笑)。やっぱり心強いです。