舞台活動に精力的に取り組んでいる俳優・小川菜摘が、仲良しの後輩・アサヌマ理紗とともに、2人が信頼する演出家・役者に声をかけて劇団「熟年団」を結成! 12月4日(水)~8日(日)まで東京・恵比寿のエコー劇場で第1弾公演『チェリー・ホープを知ってるかい。』を上演します。気の置けない“熟年世代”の仲間と、若手の実力派俳優3人が集まったこの劇団。さっそく稽古場にお邪魔しました。
稽古場ではセリフの覚え具合を探り合い?
熟年団のメンバーは、小川、アサヌマのほか、演出を務める村上大樹、俳優の今林久弥、小林タカ鹿、千葉雅子の6人。さらに今回の旗揚げ公演では、若手実力派俳優の冨岡健翔、加藤夕夏が出演します。
「チェリー・ホープを知ってるかい。」は、いまから約25年前に劇作家・鈴木哲也が「家族」をテーマに書き下ろした知る人ぞ知る名作。小川、今林、冨岡が演じる伊達家の3兄弟と、アサヌマが演じる長男の妻・かすがは、実家の取り壊しが決まったことを機に、1999年の大みそかに宮城県仙台市にある家に集まります。家族水入らずの穏やかな年越しとなる予定が、加藤演じる「のぞみ」が現れたことで事態は一変。伊達家に大騒動が巻き起こります。
――まずは若手チームの皆さんにお話を伺います。稽古が始まって、稽古場の様子はいかがですか?
アサヌマ 殺伐として……はないです(笑)。
加藤 ほのぼのとしていますね。
冨岡 賑やかに楽しくやっています。
――今回は、熟年団に若手の2人が加わりますが、稽古場で世代別に分かれるようなことはないのでしょうか。
アサヌマ それは全然ないですね!
村上 今回は、いわゆる商業ベースの演劇と比べて規模が小さく、出演者が少ないので、世代で分かれるというより、みんなで一丸となってやっているという感じです。会話劇でセリフが多いので、いまは役者同士が「こいつはどこまでセリフを覚えてきたんだろう」と探り合っている段階といいますか……。
(一同笑)
村上 若い人たちは先輩たちが覚えているのに、自分が覚えていなかったらどうしようというプレッシャーがあるだろうし、熟年の先輩たちは、(セリフを)覚えたはずなのに全然出てこないとか、カッコ悪いところを後輩に見られたらどうしようという別の恐怖がある(笑)。だから、表面上は仲良くせざるをえないけど、それぞれの目は……。
アサヌマ わざと殺伐とさせてる!
村上 2人(加藤・冨岡)は緊張するとかないの?
加藤 最初はめちゃくちゃ緊張していて、顔合わせのときは、絶対にちゃんと挨拶しようって思って臨みました。ベテランの方々は稽古に来られる時間が早くて、稽古場が開放されると、もういらっしゃるんです。やっぱり先輩方よりあとに入るのってよくないのかなと、どんどん来る時間が早くなって……。
アサヌマ かわいそうに(笑)。
「熟年団」のオファーに加藤は即決、冨岡は…?
――今回の舞台は「熟年団」の旗揚げ公演となりますが、ここまでの経緯を教えてください。
アサヌマ “旗揚げ”というのも恐れ多いというか、「旗揚げしましょう!」というよりは、(小川)菜摘さんとの他愛もない話から生まれたんです。一緒にゴハンを食べていて、また舞台やりたいねという話になって。「村上(大樹)さんやってくれないかな? LINEしてみよう!」という流れになり、村上さんにLINEを送ったら、「やりまーす」って。それから今林さん、(小林)タカ鹿さんたちにもご連絡したら、また「やりまーす」と(笑)。
村上 純烈さんの座長公演の演出をやらせてもらったんですが、そこに菜摘さん、アサヌマ、今林さん、タカ鹿さんが出演されていて、東京・大阪で各1カ月ずつくらい一緒に公演をしていたんです。そこでそれぞれのお芝居を見て、仲良くなったので、また一緒にやれたらいいなという話をしていました。
――加藤さん、冨岡さんは「熟年団」からのオファーを受けて、どう思いましたか?
加藤 びっくりしました。村上さんとは、舞台の仕事をし始めたばかりの時期にご一緒したのですが、あのときの自分は、思うようにできなくてもどかしい気持ちがあって……。そんな私を見ている村上さんが呼んでくださったのがすごく嬉しくて、即決で「出ます」っお返事させていただきました。だから、今回の舞台では1年間の頑張りをすべて出して、村上さんに成長したところを見てほしいという気持ちが大きいです。
アサヌマ 素敵!
冨岡 僕は4月ごろの(別作品の)稽古の最中に、村上さんから直接LINEがきて、菜摘さんもという話を聞いて、僕も「ぜひ!」と即お返事させていただきました。すごく嬉しかったですね。
村上 冨岡くんは、はじめ「スケジュールがちょっとどうかなぁ?」って……(笑)。
冨岡 ゴネてない! ゴネてない! 即決!(笑)
(一同笑)
いい妻を演じたら「もっと頭がおかしい感じで」という指示が
――それぞれ自身の役についてはどう思っていますか?
アサヌマ 村上さんはやっぱり面白くて、(やってみたら)ぜんぜん違うということが結構あります。以前も、ご一緒した作品で男性を振る女性の役をやったんですけど、いい女っぽくやったら、「もっと気持ち悪い、オタクっぽい感じで」って言われて、「あ、間違っちゃった」みたいな(笑)。別のラジオドラマでも“いい奥様”の感じでやったら、「もっとゴリラっぽく」って言われたし……。
村上 こっちが思っているより、いい女をやろうとしすぎるんだよ!(笑)
アサヌマ 今回も“いい妻”をやろうとしたら、「もっと頭がおかしい感じで」って指示があったので(笑)、いま(台本を)読み直しているんです。
加藤 (自分が演じる)のぞみは家族や自分の居場所を求めている人で、発言する言葉が結構ネガティブなんですよね。ふつうにしゃべっちゃうと雰囲気が暗くなっちゃうので、“かわいそうだけど笑える”――そんな愛らしい人になればいいなと。そのあんばいが難しいんですけど。
役割的には、家族に課題を突き付ける役なので、浮いていてもいいのかなと思いながら、伊達家とは違う空気感を出していけたらと思っています。
冨岡 僕は3兄弟の末っ子なんですけど、僕にも実際に兄貴が1人いるんです。次郎(冨岡の役名)は甘やかされて、自由に生きてきたタイプなんですけど、実際の僕は「末っ子だからちゃんとしなきゃ」というマインドがあって、あまり兄貴に甘えてこなかった。(芝居中に)そっちの軸が出てきて、ちゃんとしすぎちゃうところがあるので、もっと肩の力を抜いて、ちゃんとするのをやめようと思っています。
――村上さんは、今回の演出で心掛けていることはありますか?
村上 1つの部屋にいて対話するだけで、場面が変わるわけでも、歌や踊りが入るわけでもない、丁寧に淡々と紡いでいく作品です。それを小劇場サイズのところでしっかり見せるというのは、シンプルゆえに集中力もいる。みんな上手だし、経験を積んでこられている人が多いので、“それらしいもの”をパッと作ることはできるんだけど、せっかくこういう機会を与えられているので、もうひとつ深くお芝居をして、濃密な空気を出せるようにしないといけないんだろうなと思っています。
台本を読んだら配役がぴったりだった
――続いて、熟年チームの皆さんにお話を伺います。まずは、改めて小川さんから「熟年団」の結成の経緯をお願いします。
小川 本当に(アサヌマ)理紗ちゃんとゴハンを食べながら、「楽しいお芝居やりたいよね」と話したところから生まれました。あの人とあの人とやりたいよねって、皆さんのスケジュールを確認しつつ、吉本にも協力を打診しました。
村上さん、今林くん、小林くんとは純烈の座長公演で一緒で、さらに千葉雅子さんをぜひ呼びたい! って私が熱望したんです。そうしたら、ラッキーなことに(千葉さんの)スケジュールが合って、快く参加してくださるということになりました。だから、大好きなメンバーがそろって、めちゃくちゃ嬉しいんです!
――「チェリー・ホープを知ってるかい。」を選んだ理由は何ですか?
村上 熟年世代が集まってやったら面白そうな昔の作品だったり、誰かや僕が新たに書くことも考えたんですけど、メンバーがほぼ決まっていて、そこにフィットする作品をあたっていくなかで、これをすすめてくれる方がいて、読んでみたら配役がぴったり。僕を含め、台本との距離が全員同じで、取りかかるにあたってみんながフラットなのがいいなと思いました。
加藤のキラキラした目にク~ッとなる
――ご自身の役、または自分以外の配役についての感想はいかがですか?
今林 この年齢になって、「チェリー・ホープを知ってるかい。」をやるというのが自分の中では大きくて、家族ができて、親が高齢になって、年齢設定はちょっと違いますけど、長男・太郎が自分の中ですごくハマるなっていう気持ちはありますね。このメンバーがすごく実家感あるんですよ(笑)。
あと、加藤さんがすごくキラキラした目でずっといるんですよ……。
小川 ずっといる…って(笑)。
今林 僕らがセリフ出なかったり、適当なことをいろいろやっているときに、ずっと真面目な顔で頑張っているじゃないですか。ちょっともうク~ッってなりますよね。
小川 キラキラでピュアな感じに、おじさんやられちゃってるのよ(笑)。
千葉 私の役は6割方勝手にしゃべっていい役で、皆さんより暴走しやすいというか、これからの稽古で怒られていくんだろうなというのが楽しみです。
ライフワーク的に「熟年団」を続けていきたい
――熟年団ならではの魅力、または熟年団の今後の展望など教えてください
村上 最近はオーダーをもらって、そこに来られるお客さんや演目に対してベストなものをつくる、という考え方でつくることが多いんです。でも、今回のように小劇場で、本当に気心が知れた仲間と、シンプルに面白いと思うものをつくっていくのはやっぱり刺激的です。
そういう場を与えてもらえるのは嬉しいと思う反面、それが面白くないと評価されると、言い訳がきかないというか……(笑)。その緊張感とちゃんと戦って面白いと言ってもらえるものをつくりたい。“熟年”という名前を付けちゃったからには、“チャラっと面白い”程度のものにはできない。熟年団は、いまの自分と向き合える場所ですね。
今林 この1作目を成功させて、もっといろんな熟年たちともやりたいし、いろんな若年たちともやりたいですね。こんな贅沢な企画ってないなと思うので、それぞれの場所で培ったものを持ち寄って、いいものをつくっていきたいです。
小川 立ち上げたからには、年に1回のライフワーク的に、私の人生の中で熟年団が続いていったらいいなって思っています。演劇界に熟年層はたくさんいるので(笑)。若年の役者陣が「熟年団」を見て、一緒にやりたいと思ってもらえたら嬉しいし、「熟年団」を見たお客さんが「年齢を重ねていくって面白いね」って、魅力的に感じてもらえるようになればいいですよね。そのためにも、今回の公演を頑張って、たくさんの方に観ていただきたいです!
千葉 ありそうでなかなか生まれなかった企画なので、どこかの劇団に客演するのではなく、かといって商業的な集まりでもなく、こういう「熟年団」にしかできない組み合わせがどんどん続いていけばいいなと思います。
小林 “熟年だから”何をやるというより、僕にとっては、“熟年なのに”猫をやるとか、そういうことが新鮮なんです。20代の自分に言ってやりたいですね。「おまえ、50手前で猫やるぞ」って。
(一同笑)
――最後に、発起人である小川さんから見どころをお願いします。
小川 大みそかの家族のてんやわんやの大騒動です。お客さまも一緒になって考えさせられたり、笑ったり、ちょっとホッコリしたり、ジーンとしたり、共感できるところも多々あると思います。その顛末を私たちと一緒に楽しんでいただけたらと……。どうでしょう、村上さん?
村上 小劇場で加藤さんや冨岡くんのお芝居を間近で見られることはなかなかないから、それだけで価値がありますよね。
小川 私たちがおまけみたいじゃないですか!(笑)
全員 (笑)
公演概要
熟年団『チェリー・ホープを知ってるかい。』
日時:
12月4日(水) 19:00開演
12月5日(木) 14:00開演/19:00開演
12月6日(金) 14:00開演/19:00開演
12月7日(土) 13:00開演/18:00開演
12月8日(日) 13:00開演
※開場時間は開演の30分前
会場:恵比寿・エコー劇場(渋谷区東3丁目18-3)
出演:
アサヌマ理紗★
今林久弥
小川菜摘
加藤夕夏★
小林タカ鹿
千葉雅子
冨岡健翔★
(50音順)
※★の方々は熟年ではありません。
脚本:鈴木哲也
演出:村上大樹
チケット:前売 7,500円/当日 7,800円(全席指定席・税込)
※未就学児は入場不可。
※車椅子席をご利用の方は、チケットご購入前にFANYチケット問合せダイヤル[TEL]0570(550)100(10:00~19:00/年中無休)までお問合せください。
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