盲目の漫談家で「R-1ぐらんぷり2018」王者の濱田祐太郎が、地元である兵庫・神戸市で初となる単独ライブ『濱田祐太郎スタンドアップコメディーライブ』を開催しました。60分間ノンストップのトークライブで飛び出したのは、とんちんかんな盲学校の先生やら、容赦ない先輩芸人やら、R-1格差の不条理やら……の爆笑エピソード。今回は、その熱い夜の様子と、ライブを終えた濱田のインタビューをお届けします!
劇場スタッフに導かれて壇上に登場!
11月1日(日)、神戸新開地・喜楽館(神戸市兵庫区)で満を辞して行われた、濱田祐太郎のスタンドアップコメディーライブ。開演時刻を迎えると、劇場スタッフに導かれ、壇上中央へとゆっくり進む濱田を、大きな拍手が迎えました。
「ありがとうございます、濱田祐太郎です」
開口一番ペットボトルの水に手を伸ばし、来るなり飲みだす濱田の様子に、会場はクスクスと笑いに包まれました。
その後は挨拶がてら、生まれつき盲目であることを語り、「今日もどうやって壇上のセンターを認識するか、スタッフと打ち合わせしてたんですけどね。目印にテープを貼っても見えないわけだし。剣山を縦にして置いとこか、なんて」と、さっそく“盲目あるある”トークを披露。濱田の軽妙な語り口にかかれば、ハンディキャップも一気に“笑い”に昇華してしまいます。
盲学校の日常を「笑い」に変える
続いて披露したのは、盲学校時代の出来事。「変わった学校でしてね」と切り出します。
「生徒全員、だれも見えてないのに黒板がある」
「見えてないのに落書きしようとしたら、チョークも黒板消しもない」
「それに対して先生は、お前らあっても使わんやろ」
「だったら、黒板もいらんやろ!」と強烈なツッコミを加えながら、数々のエピソードを披露する濱田。
さらに、R-1受賞ネタも。
「体育の先生なんて、もっとひどい」
「足元の白い線を基準に並んでくださいって」
「どうやって?」
「みなさん、心の目で見てください」
「そんなんムリやって!」
R-1受賞当時を振り返り、「3795人の芸人の頂点に立ったわけでしょ。ほぼ3万人のトップです」などと澄ました顔で、ボケもしっかり挟みます。
「全盲」濱田をイジり倒す先輩芸人
今回のライブでは、全盲の濱田ならではのエピソードがふんだんに盛り込まれました。日常生活でも、思わずツッコミたくなるシーンだらけだと言い切る濱田。「初対面の人はみんな、僕にメチャクチャ気を使いすぎ(笑)」などと、胸の内を明かす場面もありました。
一般人が濱田に“気を使いすぎる”のに対し、容赦がないのが濱田の芸人仲間たち。先輩芸人である藤崎マーケット・トキを引き合いに出し、「トキさんはね」と語り出す濱田。
「お前、見えてないからわからんやろうけど、と前置きして、まさにやりたい放題(笑)。僕が使っている杖はコンパクトに折りたためるタイプのものなんですけど、こないだトキさんに本番前にガムテープでぐるぐる巻きにされて。で、『俺が連れてったるわ』言うて、舞台袖から中央へ誘導してくれたんですけど、センターマイクから遠く離れたところに連れて行くんですよ」
「『どう考えてもセンターちゃうでしょ!』て言うたら、なんやお前、ほんまは目見えてるんやろ!ってトキさんが逆ギレ(笑)」
周囲から愛情たっぷりにイジられる日々を紹介したエピソードトークは、まさに“笑撃”の内容でした。
M-1とR-1の“格差”にモノ申す!
今回、披露されたネタには、時事問題や話題の人物も数多く登場しました。
その1つが、「世間で話題の人の顔が気になる」というネタ。話題の“あの人”の顔がいったどんな顔なのか、濱田が聞いて回った結果を面白おかしく語ります。会場の笑い声もどんどんヒートアップしていきました。
トークライブの終盤。濱田はR-1王者として、M-1との“待遇の差”に切り込みます。「よしもとの人に言いたい!」と切り出し、こう続けます。
「M-1チャンピオンはR-1の司会を任されたり、相方に問題がある人もない人も活躍してるけど、R-1チャンピオンなんてひどいもんですよ。せめて闇営業でも行かせろ〜!」
そして、「今日こそは言う。これは完全に差別や! 僕の発言で不快な気分になった人がいたら、クレームは全部よしもとへお願いします!」と言い残し、爆笑で沸く会場を後にしました。
あえて「差別」というワードを使って笑いを取る
初の単独ライブを終えた濱田に、感想を聞きました。
――初の単独ライブはどうでしたか?
最初は1時間って長いよな、と心配もしましたが、やってみると案外、時間の過ぎるのが早く感じられましたね。
――確かに、あっという間の60分でした!
え? 短かったですか? お客さん、金返せとか思っていませんかね?(笑)
――どんなネタを披露するか、悩んだりしましたか?
R-1出場によって濱田祐太郎の名前を知ってくださった方が多いので、その感謝の気持ちも込めて、ライブ序盤には、R-1グランプリでも披露した盲学校でのエピソードトークに、受賞後の話も交えて披露しました。
あとは、自分なりには裏テーマを設けていました。それは、あえて「差別」というワードを使って、笑いを取ること。最後の“締め”なんて、われながらメチャクチャかっこよく決まったなと思っています。単によしもとに不満が言いたかっただけかもしれませんが(笑)。
――最後に読者へ、メッセージをお願いします。
皆さん、世の中には辛いこと、苦しいこといっぱいありますけど、そんな時はぜひ劇場へ足を運んでみてください。僕らがその辛い気持ちを忘れさせますんで!
面白いネタを集めたら、またこの『濱田祐太郎のスタンドアップコメディーライブ』をやりますので、今回来られなかった方は次回にどうぞよろしくお願いいたします! 神戸に来るついでがあったら今日の劇場、喜楽館にもぜひ立ち寄ってくださいね。