吉本興業が「オンラインカジノ」テーマにタレント向けコンプラ研修会を実施! 池上彰氏「運は芸のために使うべき」

タレントによる行動や発言などについて、さまざまな場面でコンプライアンスの重要性が問われる昨今、吉本興業所属タレント向けのコンプライアンス研修会が、3月28日(金)に東京・IMM THEATERで開催されました。今回のテーマは「オンラインカジノ」と「コンプライアンス全般」の2つ。警察庁生活安全局保安課風俗環境対策室の植木百合子室長による講義と、ジャーナリストの池上彰氏と吉本芸人で構成されたパネリストたちとの討議が行われました。

出典: FANY マガジン
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オンラインカジノにグレーゾーンはない

これまでも「吉本興業の危機管理について」や「不同意性交について」など、さまざまなテーマでコンプライアンス研修を行ってきた吉本興業。今年のテーマは昨今のオンラインカジノ問題を受けたもので、会場で約700人のタレントが参加しました。オンラインとアーカイブ映像で、全所属タレントが受講するといいます。

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第1部は、警察庁の植木室長による「オンラインカジノを巡る現状」をテーマにした講義が行われました。

いわゆる「オンラインカジノ」とは何かの説明に始まり、警察による近年の取り締まり強化の背景や、具体的な検挙状況についても説明。植木室長は「これまでは路面店を取り締まってきましたが、オンラインカジノが増えてきたことによりオンラインの取り締まりを強化し、昨年は279人を検挙しました」と述べました。

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また、決済代行業者を介する海外のオンラインカジノの仕組みや、日本の法律上、賭博罪に該当する違法行為についての解説のほか、日本が海外のオンラインカジのビジネスのターゲットになっている実態なども説明。著名人を広告塔に採用している例もあると注意を呼びかけます。

さらに、オンラインカジノの売り上げが資金洗浄に使われたり、反社会勢力の資金源になる場合もあると指摘。今後も取り締まりを強化していく方針であると強調し、次のように断言しました。

「日本国内ではオンラインカジノによる賭博は犯罪です。その違法性にはグレーゾーンはありません。すべてクロです。『海外で合法的に運営されているサイトだから利用しても大丈夫』などという誤った情報発信も見受けられますが、日本国内からオンラインカジノにアクセスして賭博を行うことはすべて犯罪です」

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オンラインカジノの経験者のなかには、その違法性を認識していない人が多かったというアンケート結果を踏まえ、現在、警察庁では「オンラインカジノを利用しない、広めない、誘わない」をテーマにSNSなどでの情報発信を行っているといいます。

最後は会場に向けて、「お笑いは日本の宝だと思っています。そんなお笑いを発信し、社会への影響力もある芸人のみなさんに、オンラインカジノについて深く考えていただき、これからもより良い発信をしていただきたい」と呼びかけました。

国によって違うギャンブルの違法性

第2部ではジャーナリスト・池上彰氏とパネリストの芸人4人による「ギャンブルに人生賭けますか?」をテーマにしたトークセッションが行われました。

パネリストを務めたのは、サバンナ・高橋茂雄、椿鬼奴、おばたのお兄さん、3時のヒロイン・かなで。高橋は登場するなり「芸人が集まるとこんなにやりにくいんや……(笑)」と、会場の観客席が芸人ばかりという特殊な状況に思わず苦笑します。

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池上氏は「ギャンブルの境界線」について、「たとえば雀荘なんかもありますけど、あそこでももちろんおカネを賭けるのはNG。ただ、いっときの娯楽程度、“ちょっとおごる”程度ならOKなんです」と、合法と違法のボーダーラインについて説明します。

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また、公営ギャンブルと違法なオンラインカジノの違いや、2018年に国会で成立したIR法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)による国のカジノの管理についても説明し、違法なギャンブルへの注意喚起を促しました。

「日本人がラスベガスに行ってギャンブルをするのはOKなのに、日本国内ではなぜダメなのか?」という質問に対しては、賭博罪はあくまでも日本国内で行われた賭博行為が処罰の対象になるからであり、旅行先では日本の刑法が適用されないためと説明。

さらに、米大リーグの大谷翔平選手の通訳を務め、その後、米国で訴追された水原一平被告が違法賭博に手を出していた事例に触れつつ、「アメリカは州によって法律が違うんです。州によってはスポーツ賭博が合法な場合もある」などと解説しました。

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池上氏が「ヨーロッパでは賭博場が大人のおしゃれな社交場にもなっている」と、国によってイメージが違うことを話すと、韓国のカジノに行ったことがあるという鬼奴は、「韓国のカジノでは『何日もお風呂に入ってないんだろうな』って人、いますもんね」と、ヨーロッパとの印象の違いを明かしていました。

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「芸人になること自体がギャンブル」

池上氏は「むかしは芸人といえば“破天荒”が魅力と言われていましたが、いまは“吉本芸人”がブランドになる時代。売れると突然、友だちが増えたり、親戚が増えたり、それを悪用しようとする人も残念ながら出てくる可能性があるので自覚しておいたほうがいい」と、安易な人付き合いに警鐘を鳴らします。

「とはいえ、芸人なんてフリーランスのようなものだから、自分で自分のブランドを守ることも大事」という池上氏は、たとえばCM出演のオファーが来たとしても、その会社がどんな会社なのか、自分で調べてみることも大事だと指摘しました。

池上氏自身、フリーランスになってからCMのオファーはすべて断っているそうで、その理由を「特定のスポンサーの広告に出ていたら、そのスポンサーに忖度をしていなくてもしているようにとられる可能性があるし、何か問題が起こったときに責任を追及されるのも困る」と話し、「CMなどに出る際は悪用されないように気をつけてください」と注意を呼びかけました。

出典: FANY マガジン
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池上氏が「そもそも芸人になること自体ギャンブルのようなもの。みなさんは、それだけで十分、人生ギャンブルじゃないですか」と問いかけると、高橋も「確かに」と納得した様子でうなずきます。池上氏は芸人たちに向かって、こうメッセージを送りました。

「みなさんはすでに人生をお笑い芸人になることに賭けているわけだから、それ以上のことはやらなくていいのでは、と思います。根拠はないんですが、それぞれ人が持っている“運”というものはあると思う。僕の場合は、ギャンブルをいっさいやめたら仕事の運が向いてきた、という実感があります。だから、みなさんも仕事のこと以外でギャンブルをしてしまうと、もしかすると芸人として成功しないかもしれない。自分の持っている運をすべて芸人として花開かせるために使うことが大事なんじゃないかなと思います」

会の最後には、相談したいことがある人のためのホットラインや、出席確認を兼ねたアンケートフォームへのアクセスQRコード、コンプライアンスガイドブックなどが紹介されました。研修内容がその場限りのものではなく、芸人一人ひとりにきちんと身につくように試行錯誤が続けられています。

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