桂文枝「大阪市西区」の創作落語は“家具の街”にちなんだ親子の人情噺! 思い入れたっぷりに「今日の出来は120点」

桂文枝の大阪市24区創作落語プロジェクト『参地直笑祭in西区』が、3月29日(土)に開催されました。この日は文枝のほか、弟子の桂三幸、漫才の弟子であるこんばらさん、そして “西区住みます芸人”のツートライブ(周平魂、たかのり)が出演。会場の西区民センターに詰めかけた大勢のお客さんは、文枝が若いころから縁があるという西区のあれこれを織り込んだ落語を堪能しました。

出典: FANY マガジン
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「あと4カ月弱で82歳になります」

2018年からスタートした『参地直笑祭』は、大阪市と吉本興業が締結した地域活性化などを目的とした包括連携協定に基づき、文枝が大阪市24区それぞれの特色を盛り込んだ創作落語を作って地域の魅力を発信するプロジェクトで、今回、第22弾を迎えました。

前説を担当したのはツートライブ。住みます芸人だけあって西区での知名度が高い2人が「区の広報誌の表紙を飾った」と報告すると、温かい拍手が起こりました。そして「参地直しょ」「うー!」のコール&レスポンスでスタート。

まずは文枝のトークから。2018年3月に始まった『参地直笑祭』は、文枝が79歳になる2022年に終わる予定でした。しかし、2020年からのコロナ禍によって中断。その後、再開したことを振り返りながら、文枝は「私ももう80歳を超えて、あと4カ月弱で82歳になります」と話します。この日は82歳以上のお客さんが何人かいて、文枝は「私も自信がつきました」と笑顔を見せました。

出典: FANY マガジン
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中学生から成人して結婚するまで大阪・港区に住んでいた文枝は、自転車に乗って西区に遊びに来ていたそう。よく知っているからこそ落語づくりは苦労したそうですが、「頑張ってやります!」と気合を入れました。

ネタはツートライブの漫才から。「登山家のドキュメンタリー番組を見た」という周平が番組中の「人生とは登山である」というたとえに感銘を受け、これが「何でも応用できる」と言い出します。

そこから、たかのりが次々と登山に代わるお題を投げかけ、周平も応じます。上手いたとえが出ると会場から拍手。最後にお客さんからお題を募ると「桂文枝師匠!」と元気のよい声が上がり、周平がたじたじになる一幕もありました。

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「初めてのスーツは西区で買った」

次は文枝の漫才の弟子で、現在はマジックなど諸芸を得意とするこんばらさんです。冒頭、口から鳩の人形を取り出し、「こんばらさんも昔は西区・阿波座の住人でした!」と挨拶。西区の郵便局でアルバイトをしたことがあるそうで、会場からは「へ~!」という声が上がりました。

その後、ゴム手袋を膨らませたり、カードマジックを見せたりと、老若男女関係なく誰もが楽しめるマジックで沸かせました。

続いて、三幸が高座をつとめます。冒頭、趣味がゴルフであると明かし、ゴルフにかけたギャグを披露。そして「私は西区のちょっと西、愛媛県出身です」と笑わせ、子どもの頃のエピソードにちなんだ小噺を続けます。

いまは西区民であることを告げると、会場は一気に温かな雰囲気に。ネタは上方落語には珍しい侍が登場する「たけのこ」を披露し、洒落の効いたサゲで笑いを誘いました。

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そしていよいよ文枝の登場。西区の思い出をこう話しました。

「最初に既製品のスーツを買ったのが西区九条の商店街でした。ラジオ番組の『ヤングタウン』に出るようになりまして、スーツも何も持っていなかったので母に相談すると、スーツを買おうと言って、九条商店街に行きました。ブカブカやったんですけど、お母ちゃんがぴったりやわ!と。駆け出しのころはずっと着た切り雀でした。そのスーツを買ったあとに、生まれて初めて西区でお好み焼きを食べました」

西区の落語のタイトルは「しあわせのラストタンス」です。西区にある「オレンジストリート」は若者に人気のオシャレな街として知られていますが、かつては「立花通り」と呼ばれ、家具店が立ち並ぶ“家具の街”でした。

文枝は、嫁入り道具に桐のタンスを持たせることが昔の習わしだったことに触れながら、とある家具店の親と子の心温まる物語を口演。文枝自身が西区を歩いて作ったというだけに、「堀江」や「川口」など、西区の地名もふんだんに取り入れ、物語の情景をありありと浮かび上がらせました。

出典: FANY マガジン
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三村区長「誰もが誇りに思える街にしたい」

エンディングのトークコーナーでは、弟子の桂三語が登場。三語も初めての1人暮らしが西区だったそうです。そして三村浩也西区長が登場し、文枝へ花束を贈呈。三村区長は「しあわせのラストタンス」が西区の特徴をよく捉えていることに感銘を受けた様子でした。

さらに三村区長は、もうすぐ始まる「大阪・関西万博2025」で西区発祥の民謡「堀江盆音頭」で盆踊りをするとPR。文枝が西区の展望を尋ねると、三村区長は「地域活性化を図りたい。これからもこういったイベントを開催して、明るく、楽しいコミュニティを広げていきたいですね。誰もが誇りに思える街にしたいです」と語りました。

出典: FANY マガジン
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三語が「今日の評価は何点ぐらいでしょうか?」と聞くと、文枝は「120点」と回答。会場から大きな拍手が湧きました。

文枝の大阪市24区創作落語プロジェクト『参地直笑祭』も、浪速区と西成区の2つを残すのみ。24区創作落語では、タイトルに必ず「しあわせの」と冠していて、“24のしあわせ”がまもなくコンプリートします!

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