芸人本読書感想文~横澤夏子~

芸人本読書感想文

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』

本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く企画『芸人読書感想文』。
第7回目の「課題図書」は、水田信二著『水田の小言を熟読するほど 一生ものの自炊力が身につく いちいちうるさい定番レシピ』(ヨシモトブックス)。横澤夏子が独自の目線で感想文を書きます。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン / 書影:©ヨシモトブックス / イラスト:ライス田所

水田信ニさんのレシピ本を読みました。私は高校時代からレシピ本を読むことが好きなので、今回もわくわくしておりました。はじめに、「しっかり読み込んで、まずは忠実に、繰り返し作ってほしい」とあり、普通のレシピ本と様子が違うことに気が付きました。最近の私は、いかに少ない行数で完成するかを極めた簡単なレシピを求めています。「え! こんな簡単に作れるの?」「わー知らなかった! 裏技だ!」そんなレシピ本ばかり私は今まで読んできました。

どんなレシピが載っているかを楽しみに、ページをめくると、『料理の基本』と大きく硬い字体がありました。家庭科の教科書でももっとポップに書いてあるはず。そんなことは知ってるのよ……と思いながら読んでみると、水田さんの声で、料理の基本中の基本を読み上げてくれている気がします。

そういえば知らなかった、そんな基本が書かれています。手先を拭きたい時のフキンを用意するだけで、がっつり手を洗わないで済むといった時間削減のコツなど、私が今までやっていなかった基本がたくさん出てきます。ふむふむ、勉強になるぞ……と読み進めてもまだまだレシピを教えてくれません。

とにかく基礎がしっかりしているんです。レシピに辿り着かない。一回本を閉じると長すぎる本のタイトルが目に飛び込んできます。『水田の小言を熟読するほど 一生ものの自炊力が身につく いちいちうるさい定番レシピ』背表紙を見ると、字体や文字の大きさまで変えて、上から下までタイトルの文字でびっしりでした。

意を決して、再度ページを開きます。まだ調味料の説明です。その中に心打たれた説明がありました。それは油の蓋に「油」とマジックペンで書くということ。たしかに、キッチンの下にある引き出しに立てて収納しがちの調味料は蓋に中身を書けば上から見た際にすぐ何が入っているかわかります。

コンマ何秒かかかる探す作業時間を取っ払おうとしている水田さんの性格が如実に現れています。と同時に、実家でもそうだったと懐かしい技でもあることに気付きます。もう忘れ去られていた、蓋に「油」と書く作業がおばあちゃんの知恵袋のような温かみも感じて、水田さんへの信頼度が増します。「書く人は開封する人」としっかり決まりがあるところにも生活が回っている風景を感じ、笑ってしまいました。

ページをめくります。待ちに待ったレシピのページです。写真と一緒に、その料理に出会った時のお話をされています。ただただおいしそう。作りたい気持ちが湧き出ます。よし! 作ろうとさらにページをめくると、文字数が多い。とにかく文字数の多さに驚きます。工程の写真があるわけではなく、たくさんの文字たちが水田さんとして語りかけてきます。

出典: FANY マガジン

まず、お米を炊く工程が「58分50秒」と記されていました。うそだ……お米を炊くだけで?と思いながらも、細かく書かれています。お米を炊くことは幼少時代に母に教わってから学ばなかったもの。久しぶりにお米を炊くことから学びます。お米を計量カップで計って炊飯ジャーに入れるまでを「40秒かかるが水田の場合は30秒」だと煽られていると思える部分がありました。負けたくない……そんな気持ちも浮かぶ中、これはレシピ本ではなくネタ台本だと思えてきました。ネタのように細かい部分まで突き詰める水田さんを連想させます。

出典: FANY マガジン

実際に、3分45秒で作れるという今回のレシピの中で最短時間を叩き出していた「卵とトマトの炒め物」を作ってみました。はじめに言われたように、何度も読み込んで、何度も読み込んで頭に入れて調理します。でも次の工程を忘れてしまい本を開くと、「まだ頭にしっかり入ってないから、読み込まんと」と水田さんに言われそうな気がして背筋をシャンとしながら料理ができました。もう水田さんと一緒に作っているような感覚になっていました。

完成して、食べてみるとおいしい。本当においしいんです。トマトは炒めるものではないと思っていた私に新しいレパートリーが増えました。卵がふわふわとろとろでいられるコツもわかりました。食べていると、ドヤ顔でニマニマしている水田さんの生き霊が見えた気がしました。本には、水田さんの笑顔のカラー写真が全くないことに気付きます。満面の笑みの水田さんは、作った人にしか見えない特典映像のようでした。

私が持っている料理本の中で、一番ボロボロになるまで読み込みたいと思える一冊でした。これからも私の脳内に住んでもらった水田さんと一緒に料理をしたいと思います。

そして何より、この本を読んでからキッチンが片付くようになりました。あれもこれも出しっぱなしにしていると水田さんに小言を言われているような気がして、水田さんにとにかく小言を言われないように、完成と同時に片付けが終わることを意識しています。

一番使うキッチンの棚にこの料理本に置いておこうと思います。「そこは、一番使う調理器具を入れなさい」という水田さんの小言が聞こえてきた私は読み込んでいる証拠なのかもしれません。

世界一ありがたい小言が詰まっていました。

書籍概要

『水田の小言を熟読するほど 一生ものの自炊力が身につく いちいちうるさい定番レシピ』

出典: FANY マガジン

発行:ヨシモトブックス 
発売:ワニブックス
発売日:2025年3月25日(火) 
定価:1,760円(税込)
B5変形判・並製/オールカラー/128P
ISBN 978-4-8470-7502-5  C0077

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■コンテンツ
調理道具/調味料/火加減/包丁の使い方&切り方/材料の切り方/はかり方/便利な食材と保存のコツ

■レシピ
牛肉のしょうゆ焼き丼/ じゃがいもと玉ねぎとわかめの味噌汁/ ミートソース/回鍋肉/厚揚げの炒め物
肉じゃが/だし巻き卵/釡揚げしらすのペペロンチーノ/ 魚の煮付け/牛ステーキ/コロッケ 他

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