今回で“第60回”と上方漫才界でもっとも長い歴史がある『上方漫才大賞』の大賞を受賞したのは、コンビ結成20周年を迎える銀シャリ(橋本直、鰻和弘)でした。4月12日(土)に大阪市内で開催された発表会では、さらに奨励賞をヘンダーソン(子安裕樹、中村フー)、新人賞を豪快キャプテン(べーやん、山下ギャンブルゴリラ)が受賞。会見では3組とも喜びを爆発させながら、今後に気を引き締めていました。

ヘンダーソンの2人の目に光るものが…
2011年に新人賞を、2016年に奨励賞を受賞し、芸歴20年目にして初の大賞を受賞した銀シャリ。
大賞受賞後に開かれた会見で、「コンビ結成20周年で、上方漫才大賞も第60回大会。こんなに覚えやすい数字はありません」と鰻が感慨深げに語ると、橋本も「(5月3日から始まる)全国ツアーを前に受賞できたので、ツアーも頑張りがいがあります」と気合を入れました。

この日の『第60回上方漫才大賞』は、まずは新人賞からスタート。新人賞にノミネートされたのは、ぐろう、バッテリィズ、豪快キャプテン、フースーヤ、はるかぜに告ぐ、ジョックロック、オーパスツーという結成10年目までの7組(出番順)です。
今年から審査員とテレビ・ラジオの視聴者投票の結果を合算した得点が発表されることになり、「92点」を獲得した豪快キャプテンが新人賞を受賞しました。その瞬間、2人は放心したような表情を浮かべていましたが、じわじわと喜びを爆発させました。

奨励賞には、ダブルヒガシ、天才ピアニスト、カベポスター、マユリカ、ヘンダーソンの5組(出番順)がノミネート。どのコンビも磨き抜いた渾身のネタを披露。そして「95点」を獲得したヘンダーソンが奨励賞に輝きました。
渋い表情で喜びをかみしめる子安と、対照的に「やったー!」と両腕を頭上で広げて無邪気に感情を表す中村。昨年は同期の見取り図に敗れたこともあり、心境を聞かれると「ずっとつらかったです」と中村。子安は「もっとクールに喜ぶつもりが……」と笑いを誘いますが、2人の目には熱く光るものがありました。

笑い飯・西田「いつ大賞をとってもおかしくなかった」
そしていよいよ大賞の発表へ。会場の空気はピンと張り詰めるなか、第60回という節目の年の『上方漫才大賞』に輝いたのは……銀シャリです!
橋本と鰻は大きく手を振りながら、センターマイクへと向かいます。会場からは割れんばかりの歓声と拍手。橋本は満面の笑みで「やりましたー! うれしー!」、鰻もにこにこしながら「うれしいです!」と挨拶しました。
微妙に間違える鰻に、饒舌なたとえツッコミを入れる橋本。さらにボケとツッコミを自在に入れ替えるなど、コンビ結成20年の貫禄も十分に感じさせる息の合った漫才を披露し、会場を沸かせました。

ネタを終えたあと、司会の太平サブローらが2人に受賞の感想を尋ねると、「名前が呼ばれた瞬間のお客さんのリアクションが嬉しかったです」と鰻。大賞受賞は約1カ月前、狭い部屋で告げられたそうで、この日まで絶対に他言無用。
それだけに「ホッとしました」と、橋本は安堵の表情を浮かべます。そして「ずっとほしかった賞です。漫才師の頂点ですから、こんなに嬉しいことはありません」と続けました。銀シャリにとって、奨励賞を受賞して9年でつかんだ栄誉です。
2人の憧れの先輩で、昨年2回目の大賞を受賞した笑い飯(西田幸治、哲夫)もお祝いに駆けつけ、花束を贈りました。

「銀シャリはいつ大賞を取ってもおかしくないと思っていたので、今年も俺らが取ったらどれだけ怒るかなと思いましたが、やっと受賞して、こうしてゲストとして呼んでもらえて嬉しい」
笑い飯の2人が受賞を称えると、さらに同期のジャルジャルや、橋本が「アベンジャーズみたいな方々」と畏敬の念を抱く海原やすよ ともこ、中川家からのお祝いメッセージも紹介されました。
2年前から大賞への思いを公言
終了後の囲み会見では、銀シャリ、ヘンダーソン、豪快キャプテンが改めて受賞の喜びを語りました。
大賞への思いをずっと内に秘めていたという銀シャリ・橋本ですが、2人の間で「大賞を取りたい」と意識を強めたのは4年ほど前とのこと。さらに、2年前からは周囲のいろいろな人に公言し始めたといいます。
それだけに橋本は「夢は口に出しさないと実現しません!」と声に力を込めると、会場に駆けつけた笑い飯の2人に対して、「ボケ方、ツッコミ方含め漫才師としての取り組み方をずっと劇場で拝見していた笑い飯さんが来てくださって、非常に感慨深かったですし、めちゃくちゃ嬉しかったです」と改めて感謝しました。

さらに今後の目標を聞かれた橋本は、こう語りました。
「健康に気をつけて、漫才師が長くできるように。先輩にも後輩にも常に見られている環境なので、いまの漫才からさらにクオリティが高くなるように頑張りたいです」
一方、現在、セスナの免許取得も頑張っているという鰻は、「また大賞を取れることがあったら、セスナで会場入りしたいと思います。それが実現できるのも2年後ぐらいですけど、免許取得に向けていいスタート切れました。ありがとうございます」と“個人的な目標”を掲げていました。

ヘンダーソン・中村「フルモデルチェンジしていまの形」
2回目のノミネートで奨励賞を受賞したヘンダーソン・中村は、心境をこう話します。
「3年前まで、もう漫才を諦めようかと言ってコントをつくり出したりとか、迷っていた時期があったけれど、やはり漫才をちゃんとしたいなと思って、いまのボケとツッコミにしました。もともとは僕がボケで、相方はツッコミだったんですけども、フルモデルチェンジしていまの形を見つけられました。その漫才のなかでも、ここ最近でいちばん仕上がっている状態で今日この舞台に立てたので、試せる! というワクワク感もありました」
昨年のステージ数は822回と、主に東京と大阪を往復しながら舞台の上で研鑽を積みました。
「とにかくめげずに、あきらめなくてよかった」という中村が、今後について「まず『THE SECOND』でタイトル取って、上方漫才大賞がいちばんほしい賞なので、そこに向かって漫才を日々頑張っていけたら」と力を込めると、子安も決意をこう語りました。
「今年初めて単独ツアーもやらせていただけるのですが、上方漫才大賞の奨励賞を引っさげてツアーに行くことが目標だったので、まず1つめの目標をクリアできました。大賞は雲の上の存在というイメージでしたが、ここまで来たらちょっと欲が出るというか、奨励賞が取れたし、大賞を取る権利は得られたかなと思うので、受賞に値する漫才していきたいなと思います」

豪快キャプテンは例えば炎に感謝
新人賞の豪快キャプテンは、候補に昨年のM-1準優勝で勢いに乗るバッテリィズも名を連ねていたことから、「正直、バッテリィズもおるしな……と思っていたので、受賞した瞬間は無の心境でした」と山下。一方、べーやんは「(新人賞に選ばれたら)涙が出るかなと思っていたのですが、(受賞に)びっくりして鳥肌が止まらなかったです」と話しました。
披露したネタ「おでん」は全国ツアー用に作ったもので、ネタ作りに頭を抱えていたとき、例えば炎・タキノの「おでん、どうすか?」という一言がきっかけで生まれたとのこと。
最後に山下は「ジョックロックとかバッテリィズが『M-1グランプリ』で結果を出して、頑張っていますので、僕たちもこれを機にもっと成果が出せるように頑張りたいと思います!」が語と、2人して改めて気を引き締めました。
