今年で芸歴24年目、『THE SECOND』での飛躍を誓うLLR(福田恵悟、伊藤智博)の全8回のネタライブ『LLRの八門遁甲ライブ』が、12月10日(水)に東京・ルミネtheよしもとで最終公演を迎えます。そこで今回、『THE SECOND』で勝つために真摯にネタと向き合ってきたLLRの2人と、このライブでMCを務め、『THE SECOND』全選考会でMCを担当しているキクチウソツカナイ。に、これまでに得てきた“気づき”と意気込みを語ってもらいました。

ゲストは人気者の後輩たち
――『八門遁甲ライブ』が12月10日(水)に、ついにファイナルを迎えます。どんなライブになりそうですか。
福田 会場が「ルミネtheよしもと」という予選会に近い大きさの箱で、ゲストは人気者(金属バット、ダイタク、ナイチンゲールダンス、9番街レトロ)を集めました。出てもらう後輩たちには申し訳ないですし、僕らのネタを見たことがないお客さんも多く来られるかもしれないですけど、そこは言いっこなしでお願いします。
伊藤 まぁ、今回だけじゃなく、基本は毎回そんな感じです(笑)。もう見たくない!と思っていても、僕らが勝手に何度も登場しますからね。
福田 お笑いが好きなお客さんの前で漫才させてもらうことで、何かしら手応えをつかめたらいいなと思ってます。

キクチ ゲストがさまざまで、ゲスト目当てに来てくれるお客さんも多いっていうのが、このライブのいいところだと思うよ。半分以上の観客が毎回、入れ替わるなかで、どれだけ笑いを取れるかが測れるしね。そういう意味でも、ネタをたたく(ブラッシュアップする)にはすごくいい環境ですよね。だからこそ、僕は毎回、オープニングではライブタイトルの意味とかライブの主旨をちゃんと説明するように心がけています。
ダイタクから「LLRさんは絶望的に漫才が下手」
――ゲストには、このライブを立ち上げるきっかけとなったダイタクさんも出演します。
福田 ダイタクって正直者なんです。面と向かって言ったんだったら信用しなかったでしょうけど、僕のいないところで知り合いに「LLRさんってネタ自体はめっちゃ面白いけど、漫才が絶望的に下手なんです」って言ってたらしくて。
キクチ あははは!
福田 それ聞いたとき、めっちゃいいじゃん!と思ったんです。僕ら、ネタは面白くないけど口八丁手八丁というか、雰囲気でごまかしてるんだと思ってたら、真逆だったんだなと。漫才が下手なら練習すればうまくなれるかもしれないと思えたのも、このライブを始めたきっかけのひとつです。
いままでの僕は、人の意見を絶対に聞かなかったんです。意味がないと思っていたので。けど、20年以上やってダメだったんだから、人に言われたことは全部やってみようと思うようになった。それでダメならまた変えればいいと思ってましたけど、結構ウケるし、こういうこともあるんだなという気づきがあって面白いです。
伊藤 自分たちだけだと気づかないことって、たくさんありますからね。

福田 あと、これも僕がいないところでのことなんですけど……。
キクチ どんだけ後輩に陰口言われてんの!?(笑)
福田 あはは! みんな、心配してくれてるんだと思います。
何年か前のことですけど、囲碁将棋の文田(大介)が「LLRさんのすごいところが、ひとつだけある」と。「いろんな漫才師を見てきたけど、あんなにネタを詰めないコンビ、初めて見た」と言ってたらしくて。これは悪口でもあるんですけど(笑)、僕はこの話を聞いて、ネタってもっと詰められるんだと気づいたこともありました。
キクチ 今回、ゲストはいいメンバーだよね。金属バットなんて『THE SECOND』の申し子というか。
福田 毎年、決勝に行ってるのは金属バットだけですからね。あと、金属バットのお客さんってめちゃくちゃ笑ってくれるんですよ。
伊藤 盛り上げてくれるよね。金属バットのお客さんは受け皿が広いんだと思う。逆に、金属バットがいちばんウケてないときもあるし(笑)。
福田 好きだから厳しくなっちゃうのかな? いつも勘違いしちゃうくらい笑ってくれるから、ありがたいんですよね。
『THE SECOND』をRPGのように楽しんでいる
――この挑戦をいちばん近くで見ているキクチさんから見て、LLRさんは変化していますか?
キクチ どちらかと言うと、昔はクールにネタをやってるタイプだったと思うんです。けど、ここ2年くらい、福田の人間力が出始めてるというか。この20年くらい感じたことがなかった熱量みたいなものが見えてきて楽しいですね。『THE SECOND』のノックアウトステージは、ネタの内容で勝っても人間力で負けるところもあるんじゃないかと思うなかで、素直に賞レースで勝ちたいっていう気持ちが出てきてるのがいいなと思いますよね。
福田 もともとネタは好きなので、いま思えば『M-1』にも、もっと真剣に向き合えたはずなんです。けど、まだ若いから遊びたいとか、そんなに頑張ることじゃないみたいに当時は思ってたんだと思います。去年1年間、ネタを頑張って、結局、『THE SECOND』の選考会は落ちちゃったんですけど、それはそれで納得はできたというか。ネタ自体は好きだったし、お客さんも笑ってくれたしな、とか考えていると、ロールプレイングゲームをやっているような感覚になってきたんです。
キクチ それが大きかったんだ。

福田 はい、僕、ロールプレイングゲームが好きで。大学受験は高校3年生の夏までまったくしてなくて、僕と伊藤はクラスでケツから数えたほうが早いくらいの成績だったんですけど、大学に行こうかなと思い始めて兄貴の参考書をやってみたら、受験がロールプレイングゲームに思えてきて。楽しくなって勉強していたら、大学に入れたんです。『THE SECOND』もそんなふうに、熱中できているんだと思います。
伊藤 当時の僕らからすれば、『M-1』も頑張ってはいたんですけどね。いま思えば、もうちょっと楽しんで挑戦できればよかったなとは思います。
キクチ われわれの世代はカッコつけだから、本気になっているところを人前で見せたくないところがあったんだよね。コンビ仲がよくないほうがカッコいい、みたいなところもあったなかで、僕がやってたトリオ(ポテト少年団)は信じられないくらい仲がよかったけど。いまは「M-1に懸けてます! ここで勝ちたいです!」っていうのがカッコいいっていう感じだもんね。あと、『THE SECOND』自体、カッコつけてる人じゃ受からないっていうのが、出ている人はみんな、わかってるんだと思います。
伊藤 みんな、熱量は高いですよね。モンスターエンジンの大林(健二)くんもクールなイメージだったけど、一緒になったとき、すごく熱いなと思いました。
キクチ 時を経て、みんな、そういうところが出せるようになったんだろうね。
17時から閉店まで喫茶店で「お笑い」を考えている
――となると、若手のころよりお笑いのことを考える時間も増えましたか?
福田 最近、めっちゃ考えてます。ネタどうこうというより、『THE SECOND』を攻略するためにどうしたらいいのか、まわりに勝つにはどうすればいいのかみたいなことが多いです。もともと、そういうことを考えるのは好きだったんですけど、パチンコにもいっさい行かなくなりました。
キクチ パチンコより攻略を考えるほうが面白くなった?
福田 そんな時間があったら、喫茶店に行って考えようと思うようになりました。たぶん家の近くのチェーン店で、僕、あだ名つけられてると思います。17時くらいから閉店まで、グラスを目の前に置いてずっと座ってるんで。
伊藤 (笑)。喫茶店に行くと、たまに1人でぼーっとしてるおじさんがいて、この人、何やってるんだろうと思うことがあったけど、あれは一生懸命、何かを考えてるのかもしれないってことか。
キクチ あのころに見たおじさんに、いま福田はなってるのかもしれないね。

福田 はい(笑)。毎回、Suicaで支払ってるんですけど、最近は言う前にレジのSuicaボタンを押されるようになりました。
――「いつもありがとうございます」って声をかけられたら終わりですね(笑)。
キクチ 終わるね。始まりかもしれないけど。
「拍手笑いを起こすにはどうすればいいか…」
伊藤 福田はこう言ってますけど、僕自体はそんなに変わってないです。福田の変化も、正直、あんまりわかってないというか。みんなが言うから、そうなんでしょうと思っているくらい。この前、東野(幸治)さんにも「相方、やる気になったらしいな」って言われて。
キクチ そういう評判って大事だからね。あと、二十数年続けてもまだ世に出てない芸人は、生き延びるためにいろんなことをやるじゃないですか。僕なんか最たるもので、トリオを解散して生き残るために、司会者芸人という誰も踏み入れてない道を歩き始めてるんですけど。
福田 そんなことはないです。
キクチ まわりが道をいろいろと広げているなか、LLRはなんだかんだでずっと漫才をやっていて、それ以外のことをほぼやってないのは、カッコいいと思っています。意外といないじゃないですか、そういう芸人って。
福田 たしかに。NSC(吉本総合芸能学院)東京の7期生なんですけど、僕らより先輩で漫才をやられてる方って数えるくらいしかいない。たとえば、2人で起業したとしても、20年以上続けるって大変だろうから、難しいことなんでしょうね。
キクチ そうかもしれない。若手のころに人気もあって、仕事もあって、ネタも評価されていた芸人が、いまことごとくネタをやってないからね。そういうなかで、LLRは漫才だけブレずにやってるから、あの辺の世代の思いを背負わせたいなと思ってます。
『THE SECOND』で言うと、1年目は選考会を勝ち上がれなかったけど、2年目にベスト32に入って。3年目はダメだったけど、(欠場に備えた)謎のリザーバーシステムで33位といういちばん惜しい順位だったこともわかってしまってね? 来年はどういう傾向になるのか。
伊藤 それ、大事ですよね。

福田 僕は“ない要素”を考えたほうがいいんじゃないかなと思っているんです。僕ら、拍手笑いが苦手なんです。で、いま喫茶店でずっと考えてるんですけど。
キクチ 考えてるのはそれなんだ(笑)。
福田 はい。僕ら、家に帰って思い出してクスッとするコンビで、拍手笑いを起こすタイプじゃないんです。そんな僕らが拍手笑いを起こすには、どうすればいいのか。僕らの場合は拍手でいいと思うんですけど。
キクチ まずは拍手だと。
福田 はい。無理して入れようとしてるわけではないですけど、そういう要素を1、2カ所くらい作れたらいいなと思ってます。選考会では盛り上がりも必要ですからね。
伊藤 たしかに、僕らは笑いの積み重ねみたいなのは少ないかもね。
福田 そこ、また喫茶店で考えます! ここから先は『THE SECOND』に向けてネタをまとめていく作業に入りますけど、内容で大事なのは50%くらいで、あとはどれだけ(漫才が)体に染みついて、どれだけ観ている人に伝えられる気持ちがあるかだと思っています。僕は、いままでの人生でギャンブルをいっぱいやってきたんですけど、ビビッと来る瞬間があるんですよね。いま、それを『THE SECOND』で感じていて、いい運が来そうな気がしてます。頑張ります!
公演概要
LLRの八門遁甲ライブ~第八…完血死門…開!!~
日時:2025年12月10日(水)開場 20:00/開演 20:15/終演 21:30
出演者:LLR、金属バット、ダイタク、ナイチンゲールダンス、9番街レトロ
MC:キクチウソツカナイ。
会場:ルミネtheよしもと
主催:吉本興業
チケット:前売 3,000円/当日 3,500円
※配信なし
チケット販売:FANYチケットのみ
※チケット好評発売中!
FANYチケット:https://ticket.fany.lol/event/detail/8154
