“人間国宝”が若者へ伝えた浪曲の魅力。二代目京山幸枝若が特別講義「日本から浪曲をなくしたくない」学生たちが熱視線

2024年に「人間国宝」に認定された吉本興業所属の浪曲師・二代目京山幸枝若が、4月23日(木)に大阪市西区の大阪スクールオブミュージック専門学校(以下OSM)で特別講義『⼈間国宝 浪曲師 京⼭幸枝若 〜和の旋律は世界を変える~』を開催しました。幸枝若と弟子たちが伝える浪曲の魅力に生徒たちも真剣そのもの。幸枝若は浪曲のステージも披露して魅力を存分にアピールしました。

出典: FANY マガジン
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人気ヒット曲で節回しを説明

浪曲はメロディ部分の節(ふし)、セリフ回し部分の啖呵(たんか)を組み合わせて物語を紡ぐ伝統芸能。100年ほどの歴史があり、その歴史で初めて重要無形文化財、いわゆる「人間国宝」になったのが幸枝若です。

ステージに拍子木の音と三味線が響くと、そこに登場したのは真っ白な着物に身を包んだ幸枝若の弟子、京山幸太。OSMのことを謳ったオリジナル浪曲で伸びのあるよく通る声を会場に響かせると、幸枝若、そして幸太の妹弟子の京山幸乃、曲師の虹友美を紹介します。

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「浪曲を聞いたことのある人?」

幸太の質問に、生徒たちから手は上がらず。これを見た幸太は「聞いてもらいがいがある」と、やる気十分の表情です。そして幸太、幸乃が浪曲について、さらに詳しく説明していきます。

浪曲にはいろいろなリズムがあり、即興性を重視する点ではジャズに似た部分があるとも言われている、と幸乃。「一言一句ぴったりというより、自由な表現ができるのが面白い部分」と話しながら、違うジャンルをやりたいと思っている人にもヒントになるところがあると思う、と生徒たちにアピールします。

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さらに、浪曲の「節」には五七調、七五調があり、五七調は重厚で安定感がある一方、七五調は節に音がはまりやすく軽妙な響きであることを説明。生徒にも馴染みがありそうな、高橋洋子の「残酷な天使のテーゼ」や米津玄師の「Flamingo」などを流して、節について説明します。

三味線を奏でる曲師についても、浪曲に合わせてその場のアドリブで弾いていることなどが語られると、実際に演奏してみせるシーンも。普段は耳馴染みのない三味線の音に、生徒たちも真剣に耳を傾けていました。

出典: FANY マガジン
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浪曲には「一声二節三啖呵」という言葉があり、とにかく声の良さがいちばん大切だとのこと。幸乃は改めて、「浪曲は大衆芸能。ぱっと聞いてわかる内容で楽しかったり悲しかったり、いろんな物語を語るので、聞いてみると身近に感じるものもある」と魅力をアピールすると、「カッコいい場面のある話も多いので、ぜひ一度、見に来てもらえたら」と呼びかけました。

人間国宝のパフォーマンスを眼の前で!

休憩のあとはいよいよ幸枝若のステージです。今回、幸枝若が披露する「竹の水仙」は、江戸時代の伝説の名工・左甚五郎の物語。無一文で近江(現在の滋賀県)の宿に泊まって贅沢三昧をした甚五郎が、どんな秘策を使ってその場を切り抜けたのか……という演目です。

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幸枝若はステージに登場すると一礼。浪曲は聞き慣れないと理解するのが難しいので、なるべくわかりやすくやりたい、と話すと、「浪曲が上手やなと思ったら眠たくなってくるので、寝てくださいよ」と笑わせ、「竹の水仙」が始まります。

三味線と拍子木が響くと、「びわ湖の風が身にしみる〜、ここは大津の街の中〜」と幸枝若の節回しが。まずは街に並ぶ宿屋の名前で笑わせると、宿屋の夫婦の会話をテンポよく聞かせます。

そこからも登場人物のやりとりや状況描写を言葉の強弱、音程、間などで、鮮やかに見せる幸枝若の浪曲に、生徒たちもしっかりと聞き入っていました。

出典: FANY マガジン
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浪曲を終えた幸枝若は「(十代の人の前でやるのは)緊張するね」と言いつつも笑顔。質疑応答では舞台での様子や普段の稽古、三味線についてなど、生徒たちから次々に質問が飛び出します。

幸枝若は人物を演じ分けることについて「(登場人物の)顔を自分で想像しながら、見えるようにやっていると(観客からも)見えやすくなる」と説明。ほかにも曲師とのアドリブでのやりとりなどについても語りました。

最後に幸枝若は「自分で歌って、語ってというのをやっていただきたい、悪かったら自分の責任、よかったら自分の手柄、その快感」と浪曲の魅力について話すと、「ひとつの物語を自分で作ってやったり、古典をやったりしていただきたい」と呼びかけました。

「浪曲に恩返しをしたい」

今回のイベントは、若い世代が浪曲に触れる機会をつくりたい、ということで行われたもの。囲み取材で幸枝若は「顔を見ていたらけっこう喜んで聴いてくれているようで、これだけ喜んでもらえるとは思ってなかった」と笑顔を見せます。

出典: FANY マガジン
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質疑応答で学生から多くの質問があったことについても、「みんな手を挙げてくれてうれしいですよね、誰も挙げへんかったらどうしようかと思っていた」と笑わせると、「どんどん違うところでもやってみたい、100カ所回って1人でも2人でも興味をもってくれたら」と話します。

浪曲というジャンルの現状について、東京では盛り上がる兆しが見え始めているものの、「実感としてはなかなか若い世代が増えてこない。こっちからチャンスを作っていかないと」と訴える幸枝若。

改めて「自分は浪曲のおかげでここまでやってこられた、浪曲に恩返しをしないといけない」と熱い思いを語ると、「浪曲を残したい。日本から浪曲をなくしたくない。浪曲っていいもんですよって伝えたい」と力を込めました。