「現代のポップカルチャー」と「日本古来の芸術文化」にある意外なつながりを通じて、若者に日本の文化・芸術の魅力を知ってもらおうというイベントが、2月16日(水)に文化庁公式YouTubeチャンネル『bunkachannel』でアーカイブ配信されます。題して「文化庁×吉本興業 シンポジウム『ココにもカルチャー』きっと体験したくなる! あなたの知らない日本文化」。人気芸人たちが学んだ大ヒット漫画やコスプレ、お笑いと伝統文化の“隠れた関係”とは!?
建国記念日の2月11日(金、祝)に、吉本興業の公式YouTubeチャンネルで配信されたこのイベント。お城が大好きで、最近の趣味は「金継ぎ」だというロンドンブーツ1号2号・田村淳がMCを務め、「休みの日はひとりで長野の神社に行って蕎麦食って帰るという、老後みたいな生活をしてます」と話す麒麟・川島明、「今日もルミネtheよしもとで“日本文化”3回やってきました」とネタを“日本文化”と言うすゑひろがりず(南條庄助、三島達矢)、そして日本文化に精通するモデルの市川紗椰らが出演し、日本文化のスペシャリストとともに、ポップカルチャーと伝統文化の接点を紹介。意外な共通点の多さを知ることで、日本文化への関心を高めようというものです。
『鬼滅の刃』の衣装に隠されたメッセージ
今回のテーマは、「ファッションデザイン」「浮世絵&日本画」「狂言」の3部構成。「ファッションデザイン」では、漫画大好き芸人として知られる川島と一緒に、大人気漫画の時代背景からキャラクター衣装に込められたメッセージをひも解きます。
まずは国民的大人気漫画『鬼滅の刃』のコスチュームについて、「あの羽織の柄には、実はとても深いメッセージが隠されているんです」と紹介する川島。ここで和文化研究家・三浦康子氏が登場し、より詳しく解説していきます。
『鬼滅の刃』の舞台は大正時代。「当時は現実的なモダニズムが広がって、いわゆる和洋折衷が人気になり、和装をベースに洋装を取り入れたりしたんです」と話す三浦氏は、主人公・竈門炭治郎の羽織の柄として有名になった黒と緑の“市松模様”について、「この柄は古代からあって、もとは“石畳”と言われていたんですが、歌舞伎役者の佐野川市松が好んでよく着ていたことから“市松模様”という名前が付きました」と、その由来を説明します。
当時は、流行をつくった人の名前が柄の名称になることが多く、「いまで言うと、緑と黒の市松模様は“炭治郎柄”と言ってもいいくらい」とのこと。また、市松柄には「永遠」や「子孫繁栄」といった意味もあり、川島は「このあたりのことが漫画とリンクしているので、ぜひ『鬼滅の刃』1巻を読んでみてください」と力説しました。
ほかにも、炭治郎の妹・禰豆子の着物の柄である麻の葉模様には魔除けの意味があり、健やかに育ってほしいという思いから産着などによく使われるというエピソードや、漫画『花の慶次-雲のかなたに-』の主人公で、天下一の傾奇(かぶき)者と言われた戦国時代の武将、前田慶次の“傾奇者”がのちの歌舞伎につながっているという話など、興味深い話題が次々に飛び出します。
「日本には昔から、“目に見えない思いを物で表す”という文化があります。私たちもそういう文化のなかで育っているので、意味がわからなくても心に響くものがある。さらにその意味を知ると、それを大事にしようとすることで文化がつながっていきます」と話す三浦氏の言葉に、みんな大きくうなずいていました。
浮世絵は江戸時代のインスタ!?
第2部は「浮世絵や日本画に見る江戸時代のコスプレ」というテーマで市川紗椰が登場。現代に通じる“コスプレ文化”について、こう語ります。
「江戸時代の浮世絵や日本画は大衆的なもので、庶民から発信されたものという意味では、いまのインスタのようなものだと思う。非日常を感じるために人はコスプレをするんだと思いますが、そういったものは思っているより、昔からあったんです」
長野県小布施町にある北斎館の館長、安村敏信氏も加わったところで、さっそく「江戸ハロ1839」と題した絵を紹介する市川。実はこれ、東京・渋谷のハロウィンを「渋ハロ」ということから「江戸ハロ」にしたもので、本当の題名は「蝶々踊り図鑑」とのこと。仮装行列の蝶々踊りを描いた絵で、よく見ると人々がタコや魚、鶴などの仮装をしています。この踊りは天保10年(1839年)に京都で突然、始まったもので、踊っているうちにテンションが上がってしまって、民家に土足で入ったりするなど大騒ぎだったとか。
それを聞いて「渋谷の100倍イカついやん」と指摘する川島に、「日本人は昔から、お祭りで仮装するのが大好きなんですよ」と安村氏。その話に淳は、「渋谷のハロウィン、あんまり好きじゃなかったんだけど、昔からそうだったんだって知るとちょっと許せますね」と納得した様子でした。
ほかにも「慶応四豊年踊之図」や「洛中洛外図屏風(左隻)」などの絵とともに、京都の祇園祭での“コスプレ”や、現在の夏フェスのような江戸時代のイベントの様子が解説されていくと、淳は「この絵、どこで見られるんですか? 見に行きたいなぁ」と興味津々。「日本画の見方を知らなかった。いまと通じる部分がたくさんあるって気づけただけでも、美術館めぐりがさらに楽しくなりました」と、うれしそうな表情を浮かべました。
狂言はほとんどドリフのコント!?
ラストは「お笑い×狂言 現代のお笑いと『狂言』に隠された共通点」と題して、これまでも舞台やYouTubeで共演経験があるすゑひろがりずの2人と狂言師・野村太一郎氏が登場。身近なコメディとして楽しめる狂言の魅力に迫りました。
狂言は、日常生活での失敗談などの滑稽さを演じる、現在のお笑いやコメディに近いものだと話す、すゑひろがりずの2人。「棒縛」という演目で、主人が後ろにいることに気づかず、酒を盗み飲む太郎冠者と次郎冠者の映像を流すと、そのほとんどコントのような状況に淳や川島は「ドリフみたい」「『志村うしろ!』状態だ」と驚きます。
ほかにも、「取り違えや聞き違いをしたままストーリーが展開する、アンジャッシュさんのコントのような物語が狂言にも多いんですよ」と話す野村氏に、淳は「(狂言は)もっと格式があって、笑っちゃいけないのかなと思っていたけど、笑い声も聞こえてくるんですね」と納得顔。
さらに、初心者が狂言を見る際の注意点について、「起承転結の“結”がないので、誰かが拍手したら拍手していただければ(笑)」と話す野村氏に、川島は「それ聞いといてよかった! 『オチてないけどな』とか思ってしまいそうやった(笑)」と語りました。
学びあり、笑いありの『ココにもカルチャー』。「これからはもっと気軽に、ウォーリー感覚(探す感覚)でいろいろ見てみたいと思います」と川島が言うように、日本文化の新しい“見方”を発見する機会となりました。
イベントの様子は2月16日(水)14:00ごろから文化庁公式YouTubeチャンネル『bunkachannel』で視聴できます。
YouTubeチャンネル『bunkachannel』はこちらから。