気づいたら絵本作家の仕事ばかりに…異色のピン芸人・ひろたあきらの新作は「猫がいっぱい集まってくる絵本」

絵本作家でもある芸人・ひろたあきらが、3作目となる絵本を出版しました。今回の題材は「猫」。2022年2月22日の“スーパー猫の日”に合わせて発売された『にゃおにゃおにゃお』(ヨシモトブックス)は、ページをめくるたびに奇想天外な猫が登場します。絵本の賞を受賞し、いまや「絵本作家としての仕事ばかり」という異色の芸人であるひろたに、絵本にまつわるあれやこれやを聞きました!

出典: FANY マガジン
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数字の2が3つ並んで「にゃんにゃんにゃん」。そんな語呂合わせから毎年2月22日は「猫の日」とされていますが、今年はそれが6つも並ぶことから”スーパー猫の日“と呼ばれ、各地で猫関連イベントなどが開かれて盛り上がりました。

そんな特別な日に発売された『にゃおにゃおにゃお』は、小さいころから猫と暮らしてきたひろたが、日常的に感じてきた触れ合う喜びや楽しさ、愛しさを、表現したいという気持ちから生まれたといいます。

2019年の「第12回MOE絵本屋さん大賞」新人賞1位を受賞したデビュー作『むれ』(KADOKAWA)、コロナ禍のステイホームのなかで生まれた2作目の『いちにち』(同)に続き、3作目はさまざまな猫たちが集まってくる、見ているだけで楽しい絵本となりました。

いちばんシンプルな形の猫にした

――『にゃおにゃおにゃお』はどういう経緯で生まれたのですか?

去年の秋ごろ、ほかの絵本の打ち合わせのときに「来年は2022年だから猫の絵本を作りたいな」みたいなことをポロっと言ったんです。そうしたら、吉本の編集さんが「ああ、作りましょうよ」と軽い感じでOKしてくれて(笑)。せっかく出すんだったら2月22日に間に合わせたいと思って、けっこうスケジュール的にはギリギリだったんですけど、なんとか実現できました。

出典: FANY マガジン
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――前作『いちにち』(KADOKAWA)のときは、とても時間がかかったとのことでしたが、今回は?

締切が決まっていたので早かったですね。打ち合わせで内容が決まってから締め切りまで、1カ月弱ぐらい。いままでの絵本に比べると短いほうだと思います。そんなスパンで描くのは初めてだったので、「本当に間に合うのかな」と思いながら進めていました。
結局、描くものはいままでの絵本に比べて少なかったし、簡単な絵だったので問題なく間に合いました。でも簡単な絵だけに、気になるところがあったらすぐ直せてしまうので、描き直しはずいぶんしましたね。全ページ何枚も描いて、そのなかから「これかな」というものを選んで色を塗って……という形で進めていきました。
猫の形もいろいろ試してみたんですけど、いちばんシンプルなものにしました。手の先をもっとリアルに寄せたりもしましたが、小さな子向けなので、シンプルでいいかなと思って、いまのような形になりました。

「もう猫ちゃうやん」と副社長から…

――小さい子でもマネして描けそうですよね。最後のページでいろんな形の猫が出てきますが、第1作の『むれ』にも通じる“多様性”のようなメッセージ性を感じました。どのような発想でこういう展開になったのですか?

僕は、猫が寄ってくるのがすごく好きなんです。むかし実家で猫を飼っていたときも後ろを付いてくるのがかわいくて。それを思い出して、「猫がめっちゃ寄ってきたら嬉しいな」と思って、猫がいっぱい集まってくる絵本にしました。1匹ずつぜんぜん違う猫が来たほうが「つぎ何が来るかな?」って楽しいだろうし、最後には変な猫がいっぱい来たら面白いかなと。その結果、“いろんな猫がいる”というメッセージ性も生まれたかなと思います。

――もう猫じゃない、みたいな生き物もいますよね。芋虫みたいな……(笑)。

いや、猫です(笑)。こういう猫もいるのかもしれないなって思ってもらえれば……。
でも、確かにそうですね、猫じゃない問題ありますよね(笑)。実は、この絵本を最初に見てもらったのが、吉本の副社長の藤原(寛)さんなんですよ。会議室が埋まっていたので、たまたまロビーのデスクで色校チェックをやっていたときに藤原さんがいらして、「何してんの? 見せて」って色校を見てくれて。藤原さんも猫好きで飼っていらっしゃるらしくて、「ええわぁ、ええわぁ」って……。で、最後のページを見て「もう猫ちゃうやん」っておっしゃっていました(笑)。
やっぱりそう思う方は、多いかもしれないですね。でも、「いろんなねこさん」って書いていますからね。言い切ってしまえば、こっちのものです(笑)。

出典: FANY マガジン
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――(笑)。猫の鳴き声にもいろいろありますね。

最初は全ページに「にゃお」しかなかったんですけど、編集さんとのやり取りで「もっとあるんじゃないか」と言われて。「じゃあ、1匹ずつ鳴き声も変えてみましょう」ということで、ぜんぶ違うものにしました。絵本としてめくっていったときに楽しいように、そのキャラに合っている雰囲気のものということで考えています。

――猫を飼っていたとのことですが、鳴き声で何を訴えているかわかりますか?

鳴き声だけではわからないかな……。仕草なども含めて、甘えているのか、怒っているのかぐらいは見分けがつきましたけど。でも、こっちが「にゃー」って名前を呼ぶと、「にゃー」って返事をするようになったんですよ。それがすごく嬉しかったです。なんて言っているかはわからないですけど、とりあえず返してくれるだけで嬉しくて。「うるせぇ」って言っている可能性もあるんですけど(笑)。でも、僕が仰向けで寝ているとお腹の上に乗ってきて、「にゃー」って言うと「にゃー」って答えてくれるので、いい関係ではあったなと思います。

ここ1年は完全に「絵本作家」!?

――改めて、絵本を描き始めるようになったきっかけを教えてください

もともとはコンビで漫才をしていました。その後、解散してピンで舞台に立つことになったときに、専門学校で絵を描いていたということもあって、ヘンな絵本を読むみたいなフリップ芸をやろうと思いついたんです。でも、絵本をあんまり読んだことがなかったので、本屋さんに行って見てみたら、めちゃくちゃ面白くて。
そこから絵本にハマってたくさん買うようになって、SNSでも絵本のことをつぶやいたりしていたら、当時の神保町花月(現・神保町よしもと漫才劇場)の支配人から「絵本のライブやりませんか」と提案いただいて、ライブをしたんです。それを書店員さんが見に来ていて、「うちの書店で読み聞かせをやりませんか」と声をかけてくれて、読み聞かせをやるようになって。そのときに、「読み聞かせをやるなら、自分で1冊作ってみようかな」と思って描いたのが、『むれ』です。

出典: FANY マガジン
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そこから出版業界の人との繋がりができて、KADOKAWAの方から「本にしましょう」とお声がけいただいたら、たまたま賞(「第12回MOE絵本屋さん大賞 2019」の新人賞1位)をいただくことができて……というのがきっかけですね。KADOKAWAさんからは昨年、2作目の『いちにち』も出させていただきました。

――絵本の発想というのは、どういうところから?

毎回、ぜんぜん違いますね。歩いているときに浮かぶこともありますし、考えようと思って机に向かっていて思いつくこともあります。いちばん最初のアイデアは、本当になんでもないときが多いですね。何かの絵を見て「こんな感じの展開が付いたら面白そうだな」とか。

――お笑い関係の仕事は、いまはやっていないんですか?

お笑いはほとんどやっていなくて、ここ1年で見たら完全に絵本作家ですね。「芸人を辞めて絵本作家になろう」と決めたわけではないんですけど、気づいたら絵本作家としての仕事ばかりになっていました。
お笑いは好きだし、ネタもやりたいなと思ったりするんですよ。M-1グランプリやキングオブコント、R-1グランプリが好きで、その日は家にこもって真剣に見て、同世代の頑張っている姿に「うわぁ、すごいな」と思って。で、「俺ももっと頑張ろう」という気持ちになって、机に向かって作り出したのが絵本だったんですよ。そのときに「絵本作家やん」って自分でも思いました(笑)。

――「よし、自分もネタ作ろう」とはならなかったんですね(笑)。

“作る”となると、もうネタではなく絵本でしたね。絵本を作っていると、もっといろんなものを作りたいなという気持ちが自然に湧いてくるんですよね。

作品を舞台にできたら!

――お笑いライブには出ていない代わりに、ワークショップや読み聞かせなどで子どもたちと触れ合うことが多くなったのでは?

子どもはやっぱり面白いですね。めちゃくちゃ元気だし、反応が素直だし、こっちが絵本を読んでいるのに、ぜんぜん関係ない話をしてくる子もいるし(笑)。
なかでも印象的だったのが、地元の保育園で読み聞かせをしたときです。“お客さん”として、いちばんやりやすかったです。書店での読み聞かせだと、まわりは知らない子ばかりだろうけど、保育園はみんな友だちだし、いつもいる場所だからすごく仕上がっていて(笑)。とても反応がよくて、僕も気持ちがよくなって、「これ面白い?」「これオレが考えたんだよ、すごくない?」とか言いながら『むれ』の読み聞かせをしました(笑)。そんななか、ある男の子が友だちに「これ面白くない人いなくない?」って本当に自然にボソッと言っていて……。それがめちゃくちゃ嬉しかったです。

出典: FANY マガジン
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――とってもいい話です! では最後に、今後の展望を聞かせてください。

絵本も作っていきたいですし、もっとお話メインの児童書みたいなものも書いていけたらと思っています。舞台に出て何かすることも好きなので、書いた作品をお芝居にして、芸人や役者の人と一緒に演じたりしたいですね。子どもから大人まで楽しめるような作品作りができたらいいなと思います。
お話は書いたことはないですけど、『むれ』も『いちにち』も演劇になると思うんですよね。『にゃおにゃおにゃお』も頑張ったらできるかもしれない(笑)。変なやつがいっぱい出てくる……みたいな。舞台でやったらまたぜんぜん違うものになって、面白いかなと思っています。

書籍概要

『にゃおにゃおにゃお』

出版社:ワニブックス
発売日:2022年2月22日
著者:ひろたあきら
定価:990円(税込み)

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