1年間を通して活躍した若手芸人に贈られる上方漫才協会主催の『第六回上方漫才協会大賞』が、1月11日(月・祝)に大阪・なんばグランド花月で開催されました。新人賞、話題賞、文芸部門賞などの各賞に加え、「オシャレ&ダサい芸人ランキング」の発表もされるなか、栄えある大賞はミルクボーイ(駒場孝、内海崇)に! 感極まった内海が思わず涙する、思いのこもった授賞式となりました。
上方漫才協会大賞は、2014年に大阪・よしもと漫才劇場がオープンした際に、大阪のお笑い文化の継承と発展のために発足した上方漫才協会が主催する賞で、同協会に所属する若手漫才師を対象に2016年に始まりました。各分野のプロデューサーが1年を通じて活躍した芸人を推薦し、選ばれた関東・関西55組のなかから決定する「大賞」は、第一回(2016年)のアインシュタインから、第五回(2020年)のミキまで毎年、人気・実力ともに若手ナンバー1のコンビが受賞しています。
受賞発表イベントでは、芸歴7年目以下の芸人を対象とした「新人賞」、メディアを賑わして漫才の発展に貢献した芸人に贈られる「話題賞」、ネタの表現力や構成などが評価される「文芸部門賞」など各賞のほか、昨年から新設された「オシャレ&ダサい芸人ランキング」の発表もあわせて実施。今回はオンライン配信もされ、全国のファンが各賞の行方を見守りました。
マヂラブ野田「カウスの言葉」明かす
受賞発表イベントのMCは、第一回の大賞受賞者であるアインシュタインが担当。楽屋からの中継レポーターは、同じく第三回で大賞を受賞したトットが務めます。上方漫才協会会長の中田カウスが「今日は、昨年1年間の努力の結果を見ていただく。最後まで楽しんで」と呼びかけて、イベントはスタートしました。
まずは「話題賞」の発表です。受賞者は、すゑひろがりず(南條庄助、三島達矢)とマヂカルラブリー(野田クリスタル、村上)。「すゑひろがりずは、このスタイルで通し切ったのが立派。マヂカルラブリーは、いままで見たこともなかったような漫才」とカウスも賞賛します。さっそく、それぞれネタを披露して爆笑を巻き起こしました。
トロフィーを手にしたすゑひろがりず・南條は、こうした賞を受賞したのは初めてとのことで、「やっと経歴に書ける」と小道具の鼓を叩きながら大喜び。一方、新M-1王者になった際のネタをめぐって“漫才論争”が起きているマヂカルラブリー・野田は、東京の劇場でカウスに挨拶した際に「お前らは漫才や」と言われたエピソードを明かしました。
「新人賞」はカベポスターに
「新人賞」のノミネートは、9番街レトロ(京極風斗、なかむらしゅん)、令和ロマン(髙比良くるま、松井ケムリ)、ドーナツ・ピーナツ(ピーナツ、ドーナツ)、カベポスター(永見大吾、浜田順平)、ぼる塾(きりやはるか、あんり、田辺智加)、フミ(吉永もーりしゃす、もういっちょ!とん平)の東西6組。
審査の結果、栄冠を勝ち取ったのはカベポスターでした。カウスから「これを弾みに、大賞を獲れるように頑張って」とエールを送られた2人は、「これまで賞レースに出ても勝ち切ることができなかった。新人賞をいただけてうれしい」と喜びを爆発させました。
また「文芸部門賞」には、ラフ次元(空道太郎、梅村賢太郎)、もも(せめる。、まもる。)、キングブルブリン(村上剛、田中昭太)、ヒューマン中村、インディアンス(田渕章裕、きむ)が選ばれました。
「ダサい芸人」はエンペラー安井が2連覇!
一方、昨年から始まった『オシャレ&ダサい芸人ランキング』も大盛り上がり。コーナーMCのトットが、よしもと漫才劇場の観客投票で決まったトップ50を発表していきます。
「オシャレ芸人」の1位に輝いたのは、コウテイ・九条ジョー。一方の「ダサい芸人」は、なんとエンペラー・安井祐弥が2連覇! 舞台に呼び込まれる両名ですが、安井は端から不満顔。「今回は、(エントリー写真を)黒い服を着て薄暗いところで撮った。そっとしといてくれということ」と嘆きながら、「ダサいですかこれ?」と首をかしげると、トット・桑原雅人から「ダサいですね」と一刀両断されていました。
大賞受賞に内海「5年前だと考えられない」
そして、ついに大賞の発表です。まずは、55組から最終ノミネートに選ばれたミルクボーイ、コウテイ(下田真生、九条ジョー)、さや香(新山、石井)、ニューヨーク(嶋佐和也、屋敷裕政)、すゑひろがりず、3時のヒロイン(ゆめっち、福田麻貴、かなで)、ぼる塾の7組が舞台に上がります。
カウスが発表した大賞受賞者は、ミルクボーイ! 内海は「5年ぐらい前だと考えられない……」と思わず涙を流し、「(これまでは)2階席で見ているだけでノミネートもされなかった。もう1回、漫才を頑張ろうというとき、上方漫才協会大賞を狙おうと言って始めたので、それがようやくかなった」と喜びを噛みしめました。
また特別賞には、和牛(水田信二、川西賢志郎)が選出。VTR出演した2人は、「この賞に恥じないよう、これからもどんどん漫才を頑張っていこうと思います」と決意を新たにします。カウスは「非常に繊細ないい漫才を見せてくれます。いとし・こいし師匠を思い出す」と、その実力に太鼓判を押しました。
カウスも絶賛「漫才への情熱を感じた」
イベント終了後の囲み取材で、大賞を受賞したミルクボーイについて、カウスはこう言います。
「ミルクボーイには感心しています。忙しいのに、いつも漫才に対する情熱みたいなものを感じる。今日は(受賞で)うるっと涙を流してくれたり、人間味のあるところも見せてくれるし、ちょっと調子に乗ってるところもあるし(笑)。非常にいいコンビに大賞を受賞していただきました」
内海は、「(M-1を)獲ってからの1年は『王者』として見られるプレッシャーもありましたが、(カウス)師匠にいつも『頑張ってるね』と言っていただき、評価していただいて本当にありがたいです」とホッとした表情。駒場も「僕は大阪の漫才に憧れて、高校は関東でしたが(大学で)大阪に来た。だから、『上方』とつく賞をいただけて本当に光栄です」と語りました。
改めて、受賞の瞬間に涙した理由を聞かれた内海は、「(よしもと漫才劇場の前身である)『5upよしもと』を卒業してから、あべのハルカス9階の狭い舞台で土日だけの舞台に出ていた。その後、漫才劇場ができて、もう一度出させてもらえることになり、救っていただいたみたいな気持ちがよみがえりまして……」としみじみ。「上方漫才協会大賞ができたときも、ノミネートももちろんされず、後輩が売れていくところを見ていたので、やっと大賞を獲れたのが本当にうれしくて泣いてしまいました」と心境を明かしました。
来年は“オシャレ芸人”狙う!?
新年早々の受賞で幸先のいいスタートを切った2021年は、「去年できなかった全国ツアーをしたい。コロナが落ち着いたら全国の皆さんに漫才を見てもらいたい」と言う内海。駒場は昨年、コロナ禍で中止になった趣味のボディービルの大会にも意欲を見せ、「この賞を背負って、そっちも頑張ろうと思っています」と燃えています。
また、大賞と同時に『ダサい芸人ランキング』で10位という結果も残してしまった内海は、「自分の好きな服を買えるようになったので、来年はオシャレ芸人を狙っていきたい」と新たな“目標”も掲げていました。
一方、話題賞を受賞したマヂカルラブリーをめぐる“漫才論争”について聞かれたカウスは、こう言い切ります。
「日本でいちばんと言われる賞レースでチャンピオンになったのだから、『漫才』です。今日の授賞式を見ても、ちゃんとしゃべくり漫才をやっていた。今後も期待しています」
そして、若手芸人たちの躍進の背景に“劇場”の存在は大きいとしたうえで、「舞台なくして漫才はない。やっぱり劇場がいちばん大事やなと思います」と語ります。
昨年1月には東京・神保町よしもと漫才劇場がオープン、12月には大阪・森ノ宮よしもと漫才劇場がスタートしました。各地でイキのいい若手が続々と育つ状況に、上方漫才協会会長として「各劇場を昨年以上に見て回ることが大事」としながら、「磨いたら輝いていく原石みたいな若手がたくさんいる。いままで見たことないようなコンビを見ていただく、その手前で、こっちでちょっと磨きをかけてみたい」と新星誕生に期待を寄せました。