自らのYouTubeチャンネルで、日々試行錯誤する芸人たち。そこには“バズると思って”自信満々で公開したのに、なぜか再生回数が伸びなかった動画があるはずです。そんな「思ったほどバズらなかった」動画ベスト3を本人に選出してもらい、その原因を分析してもらうシリーズ「YouTube実感再生回数 もっとバズると思ったのに…」。第1回は、ニューヨーク(嶋佐和也・屋敷裕政)の登場です!
いちばんの期待はずれは“いかにもYouTube”なあの企画
【第3位】:渋谷の街中で肛門に異物を入れた人を見つけられるか? (再生回数:約3.5万回)
動画はこちらから。
――「バズると思ったのに思ったほどバズらなかった動画」と言われて、何が思い浮かびますか?
屋敷 めっちゃありますけど……。映画『MEN IN BLACK』みたいな世界観の「MEN IN ブルブル」ですかね。渋谷の街にお尻に大人のおもちゃ入れてる男がいて、黒スーツにグラサンの俺らがリモコンスイッチを持ってブルブルさせて、誰か当てる動画。
嶋佐 遠隔でリモコン操作して、探しに行くやつです。
屋敷 いま思うと、なかなかの企画ですよね(笑)。ぜんぜん関係ないおじさんの近くでスイッチ押して様子を見る、みたいなことして。ゴリゴリお笑いやし、規模もデカかったんですけど、ぜんぜん伸びなかったですね。
嶋佐 伸びなかったなあ、苦労したわりに。
屋敷 うわ、いま見たら「MEN IN ブルブル」3.5万再生ですね。
嶋佐 やば! ダル!
――なぜバズらなかったと思いますか?
嶋佐 なんでだろう。ちょっとした掛け違いなのかな。わかんない。どうやったってバズらなかったのかなあ。
屋敷 いや、趣旨が一発でわかるサムネとかやったら違ったかもしれん。さらば青春の光さんは、そこがめっちゃうまいんですよ。けっこう複雑なお笑いをやっとっても、一発で何をやりたいかわかるサムネなんです。俺らは「未確認振動物体から地球を救え!」とか書いてるから……。
嶋佐 ああ、それじゃあダメだよ。そんなだったか。
屋敷 (全体の)パッケージを大事にしすぎちゃってたのかもしれません。
【第2位】:怖い話をラップにのせてみたらどうなるのか? 〜ホラースタイルダンジョン〜(再生回数:約2.4万回)
動画はこちらから。
屋敷 「ホラースタイルダンジョン」という、フリースタイルラップにのせて怖い話をする企画。いまこうやって説明してても、絶対オモロイ企画なんですけど。
嶋佐 うん。
屋敷 これ最終的にはCreepy Nutsさんとかもゲストに迎えて、東京ドームとかでやるようなイベントになると思ったんすけど……。
嶋佐 全然でしたね。
屋敷 いま見たら2.4万回でしたね。ヤバイっす。
嶋佐 きつっ!
屋敷 これはなんでバズらんかったか、マジでわからん。「怖い話×ラップ」とかわかりやすく書いてて、サムネもいい感じなんですけどね。俺らにもっと力のあるタイミングでやったらもうちょいバズってたと思うんやけどなあ……。
【第1位】:行列店と普通店のタピオカミルクティー、目隠しして当てられるか? (再生回数:約2万回)
動画はこちらから。
嶋佐 YouTubeにめっちゃ寄せたやつも伸びなかったですね。(YouTubeを)やりはじめた当初、とりあえずバズりたいと思って、YouTuberっぽいことしてみようって。それは全然でした。
屋敷 そうそう。行列のできる店と、ぜんぜん並んでない店のタピオカを目隠しして飲み比べて、味が違うんか当てる動画。『芸能人格付けチェック』のパクリ+トレンドのタピオカを取り入れて、もう完璧な布陣やと思ったんですけどね。まじで100万再生とか行っちゃうかと思った。
嶋佐 そうそう。
屋敷 俺らが新しいと思ってやったことが、実は死ぬほどYouTubeでコスられてたという、いちばん最悪のパターンでした。
思いがけないヒット動画は菅田将暉も絶賛!?
【意外に伸びた動画】:ザ・エレクトリカルパレーズ(再生回数:約203万回)
動画はこちらから。
――逆に、こんなにバズると思わなかった動画は?
屋敷 「エレパレ」(「ザ・エレクトリカルパレーズ」。NSC東京校17期の謎のグループについて探るドキュメンタリー)が、いちばんかもしれないですね。実際、中身はめっちゃおもろかったし、動画をアップする前から、芸人さんにはきっとおもろがってもらえるやろなという手応えはありました。でも、一般の方にこんなに伝わるとは思わなかったです。
嶋佐 そうそう、業界の違うジャンルの人とか、けっこう見てくれた感じはしましたね。
屋敷 菅田将暉さんにおもろいて言われましたからね。
嶋佐 当時、菅田さんがドラマ『コントが始まる』(日テレ系)をやってたのもあったみたいで、『踊る!さんま御殿!!』(日テレ系)で共演したときに声をかけてくださって。
屋敷 だから、意外とあれは芸人だけのあるあるじゃなくて、組織に属する人、みんなが経験したあるあるなんやなというのが新鮮で想定外でした。
――エレパレに関しては、見た芸人さんがライブやラジオなどで話したりして、ちょっとした現象になっていましたね。
屋敷 軽い現象に。しかもアップしてすぐにドーンではなく、じわじわと広がっていきましたからね。
――やはり力の入れ方も、完成度もすごかったですね。
屋敷 たしかにね。そこはスタッフさんのおかげですよね。ああいうわけわからんことを全力でやる感じ。
――「花鳥風月」シリーズ(神保町よしもと漫才劇場所属の若手芸人たちの関係性を追った一連のドキュメンタリー動画)も、「エレパレ」に続くプロジェクト感がありましたね。
屋敷 たまたま「神保町花月でなにかやりませんか?」と声かけていただいて、無観客配信でライブをやったりして。タイミングがすごくよかったですね。
嶋佐 あれは面白かったですねえ。こんなふうになると思ってなかった。ライブの配信チケットもけっこう売れたんですよ。なんであんなに売れたのか、いまだによくわからない。
屋敷 捨てたもんじゃないっすよね、ああいうものをちゃんとおカネ払って見る人があれだけいるというのは。希望ですよ。またなんかプロジェクトみたいなものは、YouTubeでやろうとは思ってます。
「芸人だからこそ」の動画が伸びる
――ニューヨークのおふたりは、2019年から定期的に「ニューヨークのニューラジオ」や企画を更新するなど、芸人のなかでYouTubeに進出したのが早かったですね。
屋敷 最初はラジオがやりたかったんですよね。ラジオのレギュラーが全部なくなったタイミングで。M-1グランプリ2018で準決勝に行けなかったり、コンビの感じがよくなかったりとかいろいろあるなかで、ちょっとラジオのレギュラーをYouTubeでやるかと。プラス、いままで50本くらい撮ってきた単独の幕間のVTRをいろんな人に見てもらいたいなと。
嶋佐 うん。
――最近はテレビなどでかなり忙しいとは思いますが、YouTubeもずっと続けています。
屋敷 むかしに比べたらだいぶまとめ撮りで、部屋でできるもんばっかりですけど。ただやっぱり、忙しくなった要因として、YouTubeはだいぶ大きいと思うんすよ。だから、テレビが増えたからといって力を抜くのも違うなとは思って続けてますね。
――「バズると思ったけど……」に挙げてもらったものに比べると、企画の方向性もだいぶ定まっているように思いますが。
嶋佐 そうですね。作家さんが案を出してくれて、それをやるという感じでずっとやってきてるんですけど。
屋敷 その中でも嫌なことは「ちょっとやめときましょうか」と言って。芸人がやる意味があることは伸びやすかったりしますかねえ。初期でいうと「喫煙所で笑かす」(再生回数:約56万回)とか、YouTuberの人がやるより芸人がやるほうが見たいと思うもののほうが。
――「タピオカ~」のように、YouTubeらしいものよりも伸びましたか。
屋敷 そういうのをやるんやったら研究も努力もせなあかんし、面白いだけじゃないことも考えなあかんと思います。かまいたちさんとか、最強やと思いますね。「セブンイレブンのパンベスト3」とか、ふつうの人でもできるテーマだからこそ、ほんとうに面白くないとバズらないと思うんですよ。僕らはそこまでコツを掴んでないから、芸人やからできることをストレスなくやっている感じです。
動画「喫煙所でタバコ吸ってる人をコントで笑わせられるか?」はこちらから。
YouTubeでつながる芸人の輪
――おふたりが芸人に話を聞くシリーズのように、ニューヨークだからこそ聞けることがたくさんある気がします。
屋敷 まあ基本、知り合いですからね。ふつうのインタビュアーさんよりは、たぶんしゃべりやすいのかなと。あとは俺らが話聞くのが好きやし興味があるから、相手のことばっか聞いてまうんすよ。
嶋佐 そうっすね。やっぱみんなの話、面白いですからね。
――GAGの福井俊太郎さんが、「お笑いで興奮できるほどお笑い好きな芸人ランキング」で屋敷さんの名前を挙げていましたね。
嶋佐 ははは!
屋敷 話してくれてましたね(笑)。でも、福井さんのチャンネルもすごいよな。1人でコアなお笑いの話したり、(囲碁将棋の)根建(太一)さんとゴハン行ってるだけとかでちゃんと1万再生とか行ってて。
嶋佐 たしかにそうだね。僕、自分でYouTube見るときは、そういうのばっかり見ちゃうんだよな。バズってるチャンネルとか、あんまりちゃんと見たことない。身内ばっかり。
屋敷 でもそうなってしまいますね、たしかに。俺もオードリーさんのラジオより、いまはぱろぱろ大久保(元ぱろぱろの大久保健)の「stand fm」(音声配信アプリ)を優先しちゃいますから。あとはネルソンズさんのカスタムラジオとか、ダイタクさんのニューラジオ、「激イタ珍道中」(相席スタート・山添寛とインディアンス・田渕章裕のラジオ配信)、「アーバンブルーラジオ」(しずる・KAƵMAとフルーツポンチ・村上健志のラジオ配信)とか。
嶋佐 身内をすごく意識しているわけじゃないですけど、YouTubeに出てもらう芸人も近いところに声かけさせてもらったり。
――視聴者にもその関係性が見えますね。
屋敷 そうですね。YouTubeを始めたころ、ギャラもまともに払われへんのにいろんな人がゲストに来てくれた。その感謝の気持ちがいま、ABEMAとか地上波の自分らの番組にゲストきてもらったときにも続いてるのはちょっとあります。「出させてあげてる」なんてまったく思わない、先輩・後輩関係なく、自分らのものを盛り上げるためにきてくれた仲間みたいな感覚です。
嶋佐 うん、ありがたい限りですよね。
屋敷 それは、まさにYouTubeやってたからこそ芽生えた感情のような気がしますね。
動画「お笑いで興奮できるほどお笑い好きな芸人ランキング」はこちらから。