本を愛する芸人たちが、芸人の本を読んで感想文を書く新企画『芸人読書感想文』。
第3回目の「課題図書」は、笑い飯・哲夫の最新作『ブッダの一生 – カネも妻も子も手放して仏教をつくったスゴい人 –』(ヨシモトブックス)。高学歴芸人のネイビーズアフロ・みながわが独自の目線で感想文を書きます。
「諦める」という言葉は、「明らかにする」が元になっている。必死になって追い求めているものになかなか手が届かない。そんな時、いっそ断念することで、視野が広がって思いもよらない良い道が明らかになる。これが諦めること。この話を聞いてから、僕の生き方はどれだけ楽になったか。
「自分のもの」の定義を広げる。自分の家を綺麗にする、自分の持ち物を大切にすることは当然のこと。同じ感覚で外のものや他人を捉えれば、ポイ捨てなんてできないし、人にも優しくできる。この話を聞いてから、僕の生活の中での意識はどれだけ改善されたか。
これらの教えを僕に授けてくださったのは、何を隠そう笑い飯の哲夫さんです。8年前、難波の街で哲夫さんに初めてお会いしました。「ずっとテレビで見て憧れていたトータルテンボスさんと共演機会の多い方だ!」と興奮したことを覚えています。僕が学生時代から師と仰いでいたトータルテンボスさんが師と仰いでいる哲夫さん。師の師を師と仰ぐのは至極真っ当なこと。僕もすぐに哲夫さんを師と仰ぎ、それから現在に至るまで幾度となくお酒を飲ませていただいております。その中で哲夫さんは、ご自身の経験も交えながら冒頭のような教えを授けてくださいました。
笑い飯さんがM-1で破竹の勢いを見せていた頃、哲夫さんは知的であると知られることを嫌ったそうです。「面白い人」というイメージを崩したくなかったから。ところが、そのこだわりを「諦める」ことで、仕事の幅は大きく広がったのだと教えてくださいました。また、お店のトイレなどに入って汚れていたら、必ず綺麗にしてから出る哲夫さん。それは「自分のもの」と捉えている範囲が大きいからだと教えてくださいました。また、芸についても深い考え方をお持ちの哲夫さん。先輩が後輩のボケを「今のは面白くないですね」と立場を利用して揶揄することで笑いを取るのはものすごく楽であり、なおかつ相手の価値を下げる行為であり、決してやってはいけない。そういったやり方がまわりまわって子どもたちのいじめの助長に繋がるんだということも教えてくださいました。
お会いする度に哲夫さんへの尊敬の念は大きくなりました。出会った当初の自分は、全然仰ぎ足りていなかったと恥じるほどに。と同時に、疑問が生まれました。一体この人の考え方のルーツはどこにあるのか? つまり、僕の師の師の師は一体誰なのか?
答えは仏教でした。ブッダでした。師の師のことは、本人とお話しをすることで深く知ることができましたが、師の師の師、つまりブッダのことは、難しい文章を読むことでしか知り得ない。難しい文章を読むことが億劫で、ずっと避けていました。しかし、この本がそれはそれはやさしく教えてくれました。優しく、そして易しく教えてくれました。
皆さんはギリシャ神話を読まれたことはありますか? カタカナの名前ばかり出てきて、難しくて、なかなか頭に入ってきません。
正直なことを申し上げると、この本もそれと同じです。カタカナがいっぱい出てきます。しかし、驚くほどに退屈しません。登場人物が皆、「笑い飯 哲夫」なのです。難しい名前の登場人物が哲夫さんのような関西弁で喋り出し、哲夫さんのようなユーモアを携えて会話をします。難しいお話を、ミニコントの羅列に昇華した本、そんな印象を持ちました。まだ字が読めない幼い頃、絵本を開いても難しい字が並んで読めない。それを母が、母の優しい声で、母の持てる限りのユーモアを交えながら話してくれました。この本では哲夫さんが、ブッダの一生を、漫才師哲夫さんの声で、M-1グランプリ9年連続決勝進出の、誰も否定することができない極上のユーモアを交えながら話してくれます。時には蛇足も織り交ぜられています。しかし、こんなに蛇足が有効に働いている文章を僕は他に知りません。
ブッダについて書かれた本は、数えきれないほどあるかと思います。しかし、珠玉のユーモアと共に読み進められるのはこの本だけ。
「なんであの人にはこれが与えられるのに、私には与えられないの?」「嫉妬心からか、心あたりのない噂を流されて職場で居場所がないわ」そんな悩みを持ったことはありませんか? その対処法はこの本の中に書かれています。安心してください。この本を開けば、哲夫さんが偉大なるブッダの名通訳として我々に教えてくださいます。
ブッダは相手の素質や能力に合わせて説法を行ったのだとこの本に書かれていました。哲夫さんは現代人にわかりやすくブッダの教えを伝えている。この本を書くこと自体がブッダの教えにのっとっているのかもしれません。そう考えると哲夫さんは、「滑稽第一」なのかもしれませんね。この本を最後まで読めば、この意味もわかります。読みましょう。そして、仰ぎましょう。
我が師の師に、敬意を込めて。
(ネイビーズアフロ・みながわ)
書籍概要
ブッダの一生 – カネも妻も子も手放して仏教をつくったスゴい人 –
著者:笑い飯 哲夫
装画・挿入画:和田ラヂヲ
発売:7月26日(火)
定価:本体1,400円+税
頁数:240ページ
発行:ヨシモトブックス
発売:株式会社ワニブックス
Amazonはこちらから。
公演概要
ネイビーズアフロ単独ライブ いとをかし2022inなんばグランド花月
日時:8月22日(月)19:30開場 20:00開演
出演:ネイビーズアフロ
場所:なんばグランド花月
料金:前売・当日共 3,500円(全席指定)
チケット:FANYチケットにて発売中
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