レギュラーラジオ番組を持つ芸人は、番組の本番前後でどう過ごしているのか。決まってやっていること、ルーティンはあるのか――そんな素朴な疑問を本人、さらに番組スタッフにぶつけて、番組や芸人の魅力に迫る連載企画『わたしのラジオルーティン』。今回は、7月末に開催された『Jimbochoグランプリ』で、2度目の1位に輝いたドンデコルテ(小橋共作、渡辺銀次)が登場。ラジオアプリ「stand.fm」で配信中の『ドンデコルテの公式雑談』(毎週土曜21:00~)の収録現場にお邪魔しました。
昨年2月21日からスタートした『ドンデコルテの公式雑談』は、先輩と後輩という関係性でコンビを組んだ2人が、お互いのことをより深く知っていこうと始めたもの。2人だけで収録も行っている、手作り感満載のラジオ配信番組です。
楽屋の隅で突然の収録スタート!
東京・神保町よしもと漫才劇場でのライブ出演を終えた2人。楽屋に戻って私服に着替えると、小橋はスマホを片手にうろうろと歩き回りながら最近の出来事を回想します。
もともとは、渡辺が自身のネタについて語るコーナー「銀次ネタバレラジオ」を予定していたそうですが、FANYマガジンの取材が入るということで、急遽、ゲストを招いた収録に変更。「誰か空いてるヤツ~!」と言いながら、きょろきょろと楽屋全体を見渡したあと、近くで寝そべっていたネイチャーバーガー ・笹本はやてに、出演を依頼します。
「えっ、いいんですか?」と喜ぶ笹本に、「別に(このラジオに)出てもいいことはないよ(笑)」と伝える小橋。楽屋の隅に机付きのパイプ椅子を3つ用意し、その1つにスマホを無造作に置くと、打ち合わせは一切なしで、すぐさま収録をスタートさせました。
収録は、先の『Jimbochoグランプリ』の話題から、笹本による渡辺評、渡辺による後輩との交流術、ドンデコルテとしてのネタの変化についてなど、多岐にわたる内容に。放送は「2022/8/6 #79 『笹本から見て俺らってどう?』特別回」として、すでに配信されています。
事前に内容は決めない
収録を終えたドンデコルテの2人に、改めてこの番組について、そして『Jimbochoグランプリ』の優勝について話してもらいました。
――今日のように、いつも楽屋内で場所を探して録っているんですか?
小橋 楽屋はどうせうるさいんですけど、いちばん静かなところを選んで録るようにしていて。あと最初に今週、何をやったかを喋ることが多いので、事前に今週あったことを確認するのがルーティンです。
渡辺 僕のルーティンは、収録前に録ることを意識せず、(小橋に)何気なく録音ボタンを押してもらうようにすることですね。だから、小橋の動き次第で話が決まるというか。内容はぜんぜん決めないまま録音し始めるんです。
――そうしているのは、なぜですか?
渡辺 最初はエピソードを喋ろうと思ってたんですけど、やめたんです。なぜなら、小橋がめっちゃヘンなことを言うから。
小橋 え、そうかね?(笑)
渡辺 小橋のヘンな発言にうまいことノリつつ、僕は僕でボケなきゃいけないのがめちゃくちゃ難しくて。僕はもともとツッコミだったこともあって、思わずツッコんじゃうんですよね。だからエピソードトークをするより、もっと手前の作業をやっている感じというか。
たとえば、千鳥の大悟さんとかは、ツッコミのノブさんにツッコんでからボケても面白いじゃないですか。僕らとしても(自分たちの関係性のなかで)そういうやりとりができるはずなんですけど、まだ見つけられてない状態で……(と言いながら、頭を抱える)。
小橋 そんなに頭を抱えられて喋られても……本当にごめんね!
――(笑)。では、ラジオはある種、コンビ間のトークの型を作る鍛錬の場でもあると。
渡辺 そうですね。だって、避けて通れない道ですから。こいつに、ちゃんとしろって言うほうがおかしいですからね。
小橋 オレってそんなにちゃんとしてないんだ。恥ずっ!(笑)
――渡辺さんがこう思ってるということは、知ってましたか?
小橋 最近、やりづらそうだなとはうっすら思ってたんですけど……。ナベさん(渡辺)のボケが引き立つように、僕ももっと頑張らないとですね。
渡辺 いや、小橋は頑張らなくていい。オレが頑張らなきゃいけないんです。
小橋 じゃあ、オレは楽しく生きていたらいいってこと?
渡辺 うーーん……そんなふうに認識されるのも困るけどね(笑)。
――今回のようにゲストを招くほか、いろんなコーナーもあるんですよね。
小橋 最初からやってる「渡辺に言ってほしい言葉」と「小橋をなじりたい言葉」っていうコーナーは、毎回、触れているわけではないので自然消滅みたいになってるんですけど、まだ生きてはいます。
渡辺 消滅したと思ったら、また急に(リクエストが)来るので取りあげてますね。
小橋 「渡辺に~」は、僕らの漫才って、ナベさんの語り口調が売りだったりすることもあってね?
渡辺 僕に言ってほしい好きな言葉や四字熟語、本で読んだセリフを募集してる感じですね。「小橋を~」は最初、小橋が(まわりから)どう見えているのか、知ることが目的だったんです。それがいつの間にか、なじりたい言葉になったんですけど、たとえば「折り畳み傘をきれいに畳むのが嫌でクシャクシャにするヤツ」っていうレターが来たとしたら、(そのエピソードが)合ってるかどうかを小橋が答えるというコーナーです。
小橋 ちなみに、いまのは僕、やっちゃいますね(笑)。前回、『Jimbochoグランプリ』で優勝したときは、「やーい! やーい! 小橋なんてどうせ総合優勝」みたいな嬉しいイジりもありました。
漫才とコント“二刀流”の狙い
――『Jimbochoグランプリ』では、2回目の1位に輝きました。前回は漫才で、今回はコントでの優勝でしたが、会場大爆笑でしたね。
小橋 笑っていただけて、めちゃくちゃ嬉しかったですね。
渡辺 (作った段階で)いいネタになるだろうっていう手応えもありました。今回はお客さんにも票を入れてもらえて。愛されたんだって実感できたのが、嬉しかったですね。あと、タイミング的にここでコントをやっておかないと、(次回の『Jimbochoグランプリ』が開催される9月末には)漫才、漫才ってなってる時期だというのもありました。
――選考が進む『キングオブコント』では予選2回戦を突破して、今年も準々決勝に進出しました。『M-1グランプリ』とともに、賞レースで昨年以上の成績が残せるといいですね。
渡辺 そうですね。漫才とコント両方やることで、いろんな人に知ってもらえる機会も増えるというのは狙いの1つでもあります。漫才は昨年とはやり方をだいぶ変えてウケがよくなったはずなので、どうなるか楽しみですね。
小橋 ただ、賞レースはふだんやってる感じとは空気も違いますからね。なんとかハマればいいですね。
――8月12日(金)に神保町で開催される『漫才師ユニットSDS38~暑中漫才申し上げます~』は、M-1を意識したライブですよね?
渡辺 そうですね。MCとしてガリットチュウの熊谷(茶)さんに来ていただくんですけど、以前、来ていただいたときは僕ら全員、大笑いしてしまいまして。
小橋 僕らと素敵じゃないか、ナミダバシ……3組で束になってかかっていったんですけど、敵わなかったですね。
渡辺 だから、今回はどうなるのか楽しみにしていただきたいなと。それに、『~SDS~』は盛り上げていきたいライブなので、満席にしたいんです。新しく入ったシノブは芸歴2年目で。オーディションみたいにこっちが偉そうに採点するライブで、“おもろっ!”と思って投票したんですけど、そのときはまだ1年目だったんです。そんなシノブが、熊谷さんといかなる化学反応を起こすのか、はたまた起こさないのか。いまからワクワクしてます。
小橋 シノブは伸びしろがありますから、期待しておいてもらえれば。
渡辺 コアなお笑いファンの方が、覚えておいて損のない名前です。ぜひライブにも足を運んでほしいですね。
『ドンデコルテの公式雑談』はこちらから。
公演概要
『漫才師ユニットSDS38~暑中漫才申し上げます~』
日時:8月12日(金) 開場18:45 開演19:00 終演20:00
会場:神保町よしもと漫才劇場
出演:素敵じゃないか、ドンデコルテ、シノブ
MC:ガリットチュウ・熊谷
チケット:前売1200円 当日1500円
FANYチケットはこちらから。