上方落語の若手噺家の登竜門『第7回上方落語若手噺家グランプリ』の決勝戦が9月28日(火)に大阪・天満天神繁昌亭で開催され、接戦を勝ち抜いた桂小鯛が優勝しました。2007年の入門で、決勝の舞台では自作の新作落語「落語夫婦」を演じた小鯛。「コロナ禍だけに、こうした応援が励みになります」と喜びを語りました。
『若手噺家グランプリ』は上方落語協会所属の若手を対象とし、今回は2003年から2017年の入門者のうち37人がエントリー。この日の決勝では、予選を勝ち上がった9人が戦いました。
それぞれ11~13分の持ち時間で、設定時間に足りなくても、オーバーしても審査員1人につき5点減点というルールで、審査は桂米左らが担当しました。
「わけわからん話」
トップバッターは桂九ノ一。元気よくあいさつすると、大らかな語りで「へっつい盗人」を披露します。引っ越し祝いに店先からへっつい(釜土)を盗もうと悪だくみする切れ者とアホな男のやり取りを、表情豊かに熱演しました。
続いて、月亭希遊が新作落語「巻き舌職人」を口演。「わけわからへん話ですからね」と前置きして披露したのは、巻舌をこよなく愛するというエキセントリックな男が出てくる噺で、冒頭から巻舌を連発して爆笑をさらいます。
笑福亭智丸のネタは「寝床」。浄瑠璃を披露したい店の旦那を、それを聴きたくない招待客らがなんとか阻止しようとするやり取りを生き生きと演じます。
『若手噺家グランプリ』決勝の常連、笑福亭喬介は「寄合酒」を披露。あの手この手で酒の肴をこしらえる様子を面白おかしく表現。多少の失敗も思わず許してしまいたくなる人物像を愛嬌たっぷりに描きます。
月亭遊真は、泥棒が出てくる演目「おごろもち盗人」で勝負。登場人物の名前に時事ネタを盛り込み、笑いを誘います。目星をつけていた家への侵入に失敗し、身動きが取れなくなった盗人の心情の変化を、表情と声色で豊かに演じました。
落語ファンが主人公の創作落語
「近日息子」を披露した桂二葉は、言い間違いが多いという知人の話題をマクラに。登場人物がご近所に対して日ごろのうっ憤を晴らす場面では、マクラで紹介したエピソードも交えてヒートアップ。肩で息をする熱演で会場を沸かせます。
桂そうばは新作落語の「必殺仕分人」を口演。日常生活で“仕分け”が必要な場面を例に出して親近感を沸かせ、昭和テイストのギャグを織り込みながら、オチでは父親の悲哀を面白おかしく描いて笑いを誘います。
桂華紋は高座に上がって第一声、「人が大変そうにしている姿は、傍から見たら面白い」と巻き舌であいさつすると、「鰻屋」を口演。鰻屋の大将をユーモアたっぷりに演じ、いけすで泳ぐ鰻を捕まえようとする場面では、緩急をつけた表現で惹きつけます。
ラストは、桂小鯛が自作の新作落語「落語夫婦」を披露。創作の経緯を「知り合いに落語好きなご夫婦がいまして、落語ファンが主人公やったらどうなるかと思って作りました」と説明します。古典落語の名場面や有名噺家の名前を交えつつ、“上方落語クイズ”や落語家のリアルな叫びも盛り込み、大いに沸かせました。
「これまでは計算していたが…」
9人の演目が終わったところで、いよいよ結果発表へ。
準優勝に選ばれたのは、桂二葉。女性初の受賞に「生まれて初めて賞をもらいました。女性が古典落語で賞を取れたのがうれしいです。(優勝賞金の)20万円がほしかったけど、来年に取っておきます」と笑顔でコメントしました。
そして優勝に輝いたのは桂小鯛!
「これまでは計算して大会に臨んでいましたが、今回は目の前の落語ファンに楽しんでいただけるネタをやったのが、いい結果につながったと思います。コロナ禍だけに、こうした応援が励みになります」と喜びを語りました。