江戸時代・寛政期から200年あまり、京都の地で彫金錺(かざり)金具制作を続けてきた竹影堂中村家の当代・竹影堂榮眞(ちくえいどうえいしん)さんと、兄であり金工作家の中村鎚舞(なかむらついぶ)さんによる、初の兄弟展『七代 竹影堂榮眞・中村鎚舞 茶の湯金工展』が、9月14日(水)から京都髙島屋6階美術画廊で開催されています。この日は、すゑひろがりず(南條庄助、三島達矢)の2人も会場に訪れて“伝統工芸”に生で触れました!
金・銀・銅などの金属を加工し、茶道具や香道具などの工芸品を作り上げる錺の匠・榮眞さん。かたや鎚舞さんは竹影堂から独立したのち、「工芸工房 鎚舞」を構えて創作活動を行っています。
この展覧会を鑑賞しようと訪れたのが、すゑひろがりずの2人。美術工芸品を間近で見るのは初めてとのことでしたが、作り手の“生解説”を聞きながらの鑑賞に大興奮。「面白いなあ!」「すごいなあ!」とすっかり前のめりで、おしゃべりも大いに弾んだひとときをレポートします。
新幹線の線路にも生きている伝統の技
会場には、榮眞さんと鎚舞さんのそれぞれが手がけた作品がズラリ。銀などの金属を使った茶道具、香道具、さらには器や煙管といった“実用寄り”なものから、銀と銅を混ぜ合わせたり、溶接したりするなど技巧を尽くしたアート色の強いものまで、いずれも細部まで精巧に作り込まれたものばかりです。
一つひとつの作品について、制作工程やこだわりのポイントを説明してもらいながら見ていくすゑひろがりず。「この模様は(金属を延ばすために)叩いた跡ですか?」「色はどうやってつけるんですか?」など、さっそく質問を連発します。ふだん、なじみのない分野の道具だけに使い方がわからないものも多く、茶釜の蓋を置いておくための“蓋置”を見た南條は、「オシャレやなー! (蓋を置いたら)隠れてまうのに!」と感心しきり。季節に合わせて上下を入れ替えて使えるものもあり、三島は「スカジャンみたいな感じですね」と絶妙のたとえで笑わせていました。
2人は、技術の歴史にも興味津々! なかには刀と同じ技術が使われている作品もあり、鎚舞さんが「日本の刀の技術は昔から世界でトップクラス。だからこそ、いまでも世界トップクラスの金属加工ができる。たとえば、新幹線を走らせる線路や車輪なんかもものすごい技術で、それらにも刀や鎧を作ってきた技術の文化が息づいていると思います」と語ると、三島は「やっぱり歴史はつながってるんや……!」と感動の面持ちです。
また、話題は模様や技法の名称にも及び、榮眞さんが「たとえば、外国のイメージがあるハートマークですが、同じ形がお寺なんかの錺金具にもある。あれは“猪目(いのめ)”というんですよ」とレクチャーすると、南條は「これからはハートのことを“猪目”って言うていこう!」と固く決意。すゑひろがりずのネタに“猪目”が登場する日も近いかもしれません。
「見えないところにまで気合いを入れているのがスゴイ!」
たっぷり時間をかけて館内を見て回ったすゑひろがりずは、「このなかで、いちばん制作に時間がかかった作品は?」と質問。すると、鎚舞さんが「『2カ月でできるようになった』と言っても、そこまでに10年ぐらい試行錯誤したり、考えている時間がある。だから、どれだけ時間がかかったか、よくわからなくなるんですよ」と答えます。これを聞いた南條は「本番では5分やけど、そのネタを作るときのファミレスでの8時間を入れるかどうかっていうことやな。勉強になるなあ!」と自分たちに重ね合わせて共感していました。
特に気に入った作品を聞いてみたところ、三島は榮眞さん作「純銀ビアカップ」と鎚舞さん作の「接合ボンボニエール」をピックアップ。榮眞さんは、近所の飲食店にこのビアカップを持参し、瓶ビールを注いで飲んでいるそうで、お酒が大好きな三島は「うわ〜、うまそう! これは飲んでみたい!」と思わず価格をチェック!? ボンボニエールは日本語にすると“あめ玉入れ”。鎚舞さんが制作過程を聞かれて、「これは説明ができない難しさで、作った人にしかわからない。羽生結弦さんが4回転半をやろうとしたぐらいの……」とたとえたのが強く印象に残ったと話しました。
南條が選んだのは、榮眞さん作「南鐐一塊口鉄被せ湯沸」。外側が鉄、内側が銀という湯沸かしで、「まわりにあえて鈍い色が来てて、開けたら中が銀。“逆ちゃうの?”と思いましたけど(笑)、カッコいいしオシャレ。おふたりのすべての作品がそうですが、“そこまで見ないやろう”というところにまで気合を入れているのがスゴイ」と大絶賛していました。
観覧を終えた三島は「個展とかあんまり来たことなかったんですけど、すごく楽しいですね!」とニッコリ。遠い世界の人だと思っていた榮眞さん、鎚舞さんのフランクな人柄にも魅了されたようで、「おふたりとも親戚のおっちゃんみたい(笑)。金属のことをすべて知っておられるので、出てくるお話がめちゃくちゃ興味深かったです」と南條。最後は「こういうのを使ってモノボケとかしたい」(三島)と仰天アイデアも!?
広い意味では同じ“表現”という土俵で勝負している2人は、作品を楽しみつつ大いに刺激も受けたようで、「頑張らなアカンなと思いました」と声を揃えていました。
展覧会概要
『七代 竹影堂榮眞・中村鎚舞 茶の湯金工展』
開催期間:9月14日(水)~19日(月・祝)
場所:髙島屋京都店6階・美術画廊