元ガスマスクガールの畠山達也が、吉本芸人として復帰します! 引退から5年間、いまでは漫画家として活躍する彼が、11月19日(金)に東京・ヨシモト∞ドームで開かれる復帰公演『たっちゃん帰ってくるってよ』で再スタート。芸人と漫画家という2つのジャンルで才能を発揮する畠山が、いま再び笑いの世界に舞い戻るのはなぜなのか——同期で親交が深く、今回の復帰にも大きく関わっているというジェラードン・海野裕二を交えて、じっくり話を聞きました。
畠山はNSC(吉本総合芸能学院)大阪29期生で、2008年にお笑いコンビ・ガスマスクガールを結成。同期の見取り図とともに早々に劇場レギュラー入りを果たすと、2009年の「ABCお笑い新人グランプリ」で審査員特別賞受賞、さらに同年の「M-1グランプリ」準決勝進出など好成績をおさめました。
しかし、将来を有望視されながらも2011年に解散。その後、新たに組んだコンビ・シチガツも2015年に解散し、2016年に芸人を引退しました。
漫画家としては2015年に「第83回赤塚賞」で佳作を受賞し、翌年の「少年ジャンプGIGA 2016 vol.4」でデビュー。これまで「週刊少年ジャンプ」や漫画アプリ「少年ジャンププラス」で作品を発表しています。
解散後もコントへの熱は冷めず…
——芸人を引退してから漫画家の道へ。いまは、どういった活動をしているんですか?
畠山 (解散後)なにもしていない状態を変えたいと思って、2016年ごろに上京しました。いまは(漫画家として)ネームといわれる下書きを描き、それを担当編集に見せてOKが出れば会議にかけられて、読み切り作品が載るかどうか……という活動をしていたり、原作者にまわって、ほかの方に作画を担当していただいたりしています。
——11月に芸人として再始動するということですが、何かきっかけがあったんですか?
畠山 コロナ禍になって改めて、自分は家で黙って作業するのが向いていないなと……。そこから、人前に出てコントをしたり、表現したりしたいと強く思うようになりました。コロナが蔓延する前は、月に1、2回、呼ばれたらライブに出るような活動をしていたんですけど、それがコロナでまったくなくなったとき、(舞台に出ることで)バランスを保っていたのかなって思いました。
そんななかで、ある日、朝起きたときに、ほんまになにもかもがイヤになって、海野に「どうやったら吉本戻れる?」ってLINEをしました。それまでも、そういった話はしていたんですけど、急に、このままだとなにも変わらんわって思って。
——同期とはいえ、身の振り方を相談するほど仲良くなったきっかけは?
海野 (同期の)コマンダンテ・安田(邦祐)くんじゃないかな。
畠山 安田に飲みに誘われたときに海野が来て、それが始まりだと思います。
海野 4年前、大阪からコマンダンテが上京したときに、僕と安田くんが仲良くなったんですよ。しばらくして、安田くんが「たっちゃん(畠山)を紹介したい」と。3人で安田くんの家で『M-1グランプリ』を観ましたね。
畠山 2人ともゲームとお酒が好きなので、ちょこちょこ飲みに行くようにもなって、そこで相談するようになりました。
海野 たとえば5時間飲んだとして、絶対、ちょっと言うんですよ。みんなで楽しく飲んでいる空気感のなかで、ボソッと「ほんと、お笑いやりてぇなぁ」みたいな。
畠山 終盤な。
——(笑)。
海野 そのときよく一緒に飲んでいたのが、僕、たっちゃん、安田くん、マヂカルラブリーの村上さん。そこで「やればいいじゃん」「いや、相方が……」「探せばいいじゃん」「俺なんて誰も知らないでしょ」「まず仲間がいるから。“こんなに面白い人がいるよ”って紹介できるから」みたいなやりとりを3年はしていましたね。
畠山 3年か(笑)。まぁ、でもそうよね。
海野 ただ、(畠山の芸人時代の)歴史を知らないので、安田くんに相談したこともありました。
畠山 そうなの?
海野 「安田くんが(芸人に戻れと)言えないなら、俺がイタい(わかっていない)フリして、言ったほうがいいかもね」って。
「畠山には相方が必要」
——畠山さんから具体的に「お笑いをやりたい」と聞いたとき、どう思いましたか?
海野 めっちゃうれしかったです。でも、これが恋愛だったらよかったのになって思いましたね。長年口説いて、ようやくあっちから「好き」って言ってくれたようなものですから。
畠山 (笑)。
海野 本当に動かなかったので、僕と安田くんと村上さんで「たとえば、たっちゃんが戻ってきたらこんなことができる」「あの人と組んだら見えるな」とか、ずっと熱弁していましたからね。その場では「俺には無理だ」とか言うんですけど、次に飲みに行って終盤になると「お笑いやりたい」って言うし。
——ブランクもあって、自分の笑いが通じるのか、という不安があったんでしょうか。
畠山 むちゃくちゃありますね。この間の『キングオブコント2021』(10月2日放送)を見ていても思いました。いまのコントって、こんなにさき行ってんのか!って。あの大会を事前に見ていたら、「戻りたい」って言っていなかったかもしれないですね(笑)。ただ、いまはそこで自分のコントが通じるか挑戦したいと思っています。
——芸人だったころから常に“新しい笑い”に挑戦していましたし、心配ないように思うのですが、海野さんから見てどうですか?
海野 じゃないと、そういう話(本格的に芸人に戻るように説得)もしないですからね。ギャグ漫画みたいなことやグロテスクなこと、下ネタもいけますし。たっちゃんの見た目からは想像できないような、発想力がすごいですから、やっぱりやるならコンビがいいと思うんですよ。この面白さを、フィルター通して世間に伝える人が必要だと思います。
畠山 僕の発想がポップじゃないので(笑)。だから、いままでの相方がポップに見せてくれていたんじゃないかなって思います。(コンビ解散後は)自分1人でなにもできないと思ったし、いままで組んできた相方のおかげで、ウケていたんやなと思いました。
海野 それがわかるまでに時間がかかったみたいですね。
畠山 特にガスマスクガールのときは早くに劇場メンバーに入れましたし、若かったので、オレのおかげやろって気持ちがあった。だから結局、解散になってしまいましたからね。
漫画もお笑いもやめる気はない!
——連載などを持てば漫画家として忙しくなるかもしれません。芸人と両立していくんですか?
畠山 漫画のほうは少ないページ数で連載できたらなと思っています。精神的にどうなるのかはわかりませんが、いま現在の状態だと両立は可能ですし、お笑いも漫画も辞めたくはないです。
——畠山さんにとって芸人も漫画家も、どちらも大切なのですね。
畠山 漫画でしかできないこともあったりするんですよ。ストーリー的な面もそうですし、漫画でしか表現できない笑いもありますし。反響や感想があると、漫画もいいなって思うので、お笑いを始めたからといって漫画家をやめるという選択肢はないです。
——お笑いのほうは、まずは相方探しからスタートでしょうか。
畠山 海野ともそういう話をしていたんですけど、僕の存在を知らない人がほとんどなので、いったん中(吉本)に入って、より多くの人に知ってもらったあとで探そうかなと思っています。
——畠山さんは現在36歳。年代は同じくらいがいい、など条件はあるんですか?
畠山 そこまでこだわりはないんですが、あまり年齢が下すぎると話が合わないと思うので、同じくらいのほうがいいかなと思っています。
——いまやりたいお笑いの方向性は?
畠山 コントをやりたいという気持ちがいちばんです。辞めてから数年は、コントができなかったことがキツくて……。改めて、自分にとってコントって大切なものだったんだなって気づきました。
——海野さんは、畠山さんにはどんな相方がいいと思いますか?
海野 とにかく明るくて、たっちゃんを引っ張ってくれる人がいいなって思います。僕も安田くんも村上さんも、そんなにエネルギッシュなタイプじゃなくて、ちょっとずつダメージを与えていくタイプ。でも、(畠山の相方になる人は)「いくぞ!」って無理やり引っ張り出す人がいいのかなって。“THE・お笑い芸人”のような感じがいいですね。
畠山 まさにそうですね。
——未来の相方がこの記事を読むかもしれません。畠山さんがどんな人なのか、海野さんから教えてください。
海野 僕の印象だと、めちゃくちゃお笑いが好きなんですけど、あんまり自信がないんですよ。芸人のころはあったのかもしれないですけど、いまいちばん自信がない。たっちゃんは、いつも「ごめんね。こんなときに」っていう気遣いもある人間だし……うーん。たっちゃんをまとめるのムズいなぁ。
畠山 そんな複雑な人間なん?
――(笑)。
海野 真面目だったり不真面目だったり、女の子も好きなんで、ややこしいんですよね。
畠山 未来の相方が読むかもしれんのに、オレが女の子好きっていう情報しかないやん。「じゃあ、組もうか」とはならんやろ(笑)。
海野 相方作るとしたら、指示を出してもらったほうがいいと思います。いままでのコンビは、たっちゃん主導でいっていたらしいんで、五分五分にしていけば。
畠山 それは思いますね。
『キングオブコント』に挑戦したい
——畠山さんの帰りを待っている芸人も多いと思います。たとえば、同期の見取り図(盛山晋太郎、リリー)とは過去にツーマンライブを開催していましたね。
畠山 距離がだいぶ離れてしまったので、接する機会もなくなってしまったんですけど、(彼らが)初めてM-1決勝に行ったときはうれしかったです。見取り図、コマンダンテ、吉田たち……みんなに思い入れがあります。
——漫画家と芸人それぞれ野望を教えてください。
畠山 芸人としては、コンビを組んで単独ライブができる位置までいく。そして『キングオブコント』に挑戦したいと思っています。漫画家のほうは、『週刊少年ジャンプ』で連載を持ちたいです。そんな人(漫画家と芸人を両立している人)はいないと思うのでがんばりたいですね。
——そんな畠山さんにエールをお願いします。
海野 「困ったらすぐに連絡してくれ」ですかね。(悩みごとを)言わないんですよ。
畠山 確かにそれはあります。限界ギリギリになって、ようやく海野に言う。
海野 僕もそっちのタイプなので気持ちはわかるけど、客観視したら「早く言えよ」って思っちゃうんです。
畠山 (笑)。だから海野と仲いいのかもしれないですね。2人ともため込んでいる状態で飲むこともあるし(笑)。事後報告も多いからね。
——11月19日(月)のライブはどんな内容になりそうですか?
海野 たっちゃんがお世話になった芸人を呼んで、トーク。そのあと、まだブランクがあると思うので、大喜利、モノボケ、エピソードトークとか、“めちゃくちゃストロングお笑いコーナー”をやってもらおうかなって思っています。それでダメだったら吉本とまた話し合って、もとに戻ってもらうのもアリ(笑)。でも、たぶん大丈夫だと思うんですよ。
——畠山さんのリスタートの第一歩を見られるわけですね。
海野 「伝説の始まり」です。
畠山 ちょっと待って(笑)。
海野 それくらい言っといたほうがいいよ。
畠山 じゃあ……伝説が始まります!
海野 (笑)。
——最後に、ライブに向けての意気込みをお願いします。
畠山 『たっちゃん帰ってくるってよ』ってタイトルでやるんですけど、東京のお客さんからしたら、お前誰やってなるかもしれないですね。でも、それをかき消すくらい面白いライブにしたいと思います。ぜひとも足を運んでいただきたいです。
海野 たっちゃんとは友だちなので、友だちが復活するところを観ていただきたい気持ちはあるんですけど、ただ、(出演者のなかで)僕だけ東京の芸人なんですよ。大阪の歴史を知らないのに、なんであいつがライブやろうとしてんの? とか、ちょっと怒る人が出てくるんじゃないかなって思っています。
畠山 海野のおかげで吉本に戻れたので、みんなそんなふうには思わないと思います。
海野 芸人のたっちゃんと一緒にやりたいという思いでこのライブを立ち上げて、みなさんにも(出演のお願いの)連絡をしましたし、見たことのないライブになるとは思います。
畠山 マジで人がテンパっているところを観られると思います(笑)。
海野 SMAPでいうと、森(且行)くんが帰ってきたくらいのことですから。それくらい大きなことです。
海野 そんなことないやろ(笑)。
取材・文:浜瀬将樹
公演概要
『たっちゃん帰ってくるってよ』
会場:ヨシモト∞ドームステージⅡ
日時:11月19日(金)開場18:30 開演18:45 終演19:45
チケット:前売1,800円 当日2,300円 配信800円(GoTo適用価格)
発売日:10月20日(水)10:00~(一般発売)
出演者:畠山達也、ジェラードン海野、クロスバー直撃前野、GAG福井、尼神インター誠子、アイロンヘッド辻井、マチルダグチヤマ
概要:畠山達也(通称:たっちゃん)が吉本に帰ってくる!
親交のある芸人仲間を呼んで、畠山をお笑いの舞台へ完全復帰させるライブです。
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