ゲキメーション作家・宇治茶が大切にする松本人志の言葉と「猫の絵」の秘密に大興奮!

どーも! 芸人ライターのブロードキャスト!!・吉村憲二です! せんきゅっそ!
ゲキメーション映画監督の宇治茶さんが、7月に名古屋のTheater Caféで個展『けだらけ。』を開催しました。その内容がすごかったので、今回はこちらのイベントを紹介したいと思います!
ゲキメーションとは何か? 個展『けだらけ。』の裏テーマとは? 憧れ続けている松本人志さんへの思いと、ゲキメーション作品に松本さんが特別出演した経緯とは? いろいろな質問に淡々と答えてくれた宇治茶さんですが、その言葉のなかには熱いものがありました!

出典: FANY マガジン
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いまだかつて見たことがないゲキメーションの衝撃

「ゲキメーション」とは、劇画とアニメーションを融合した表現方法で、劇画調の切り絵をカメラの前で動かしながら撮影していくものです。7月7日(金)から10日(月)に開かれた今回の個展では、そのゲキメーションで全編つくられ、世界各国で数々の映画賞を受賞した長編映画『バイオレンス・ボイジャー』(2018年)も上映されました。僕はそんなものを初めて見たので、ただただ度肝を抜かれました!

宇治茶さんにその着想を聞くと、熱くこう話してくれました。

「家のまわりが山で囲まれていたような、小さいころの現体験に、ホラーやコメディ要素を放り込んで……。じつは、全体的に影響を受けているのが松本人志さんなんです」

『バイオレンス・ボイジャー』は、とにかく圧巻の約90分。ストーリーのスケールの大きさと映像のすごさに、僕の目は釘付けとなり、最高に面白かった。言葉だけはなくて、心から本気で「こんな映画見たことない!」と言えます。

出典: FANY マガジン
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松本人志が特別出演をOKした理由とは

そして、目を引くのが声優陣の豪華さです。ココリコ・田中直樹、サバンナ・高橋茂雄、そしてナレーションに特別出演の松本人志……このキャスティングが決まった経緯を聞くと、「これも、ぜんぶ自分が出した希望で、ココリコ・田中さんや、サバンナ・高橋さんに出てほしいと頼んだら、受けていただけたという感じです」と嬉しそうに話します。

そして松本さんの特別出演について、興奮気味にこう説明してくれました。

「この映画のプロデューサーが(当時の吉本興業の)大﨑(洋)社長と岡本(昭彦)副社長に引き合わせてくれました。そこで『(2人から)松本君と通じるものを感じる』みたいに言ってもらい、松本さんに1回会うことができました。そこで『燃える仏像人間』(2013年)も見ていただいたところ、『面白い!』と言ってもらえて、『協力できることがあれば』と。それで、ダメもとでオファーしたら、OKいただいたんです」

出典: FANY マガジン
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憧れの人と対面できたときの気持ちはよくわかる。そして、そのとき見てもらった作品が認められたからこそ、松本さんに特別出演してもらえたということ。そのことだけでも、宇治茶さんの作品が本当にすごいんだということを証明しているんじゃないかと思いました。皆さん、めちゃくちゃ見たくなってきたでしょ?

展示された可愛い「猫の絵」の秘密

宇治茶さんに、今回の『けだらけ。』展の見どころを聞くとこう言います。

「去年の9月ごろに3作目の長編映画を撮っている途中、作品をつくることのストレスが原因で、精神的に体調を壊しまして。それでもある時期から『絵を描かないと』と思い、最初に描いたのが猫の絵で、気づいたら猫の絵を量産していたんです」

会場には、『バイオレンス・ボイジャー』とはタッチがまったく異なる可愛いタッチの猫が展示されていて気になっていましたが、苦しんでいたからこそ生まれた作品だったのか! と納得です。

出典: FANY マガジン
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そして宇治茶さんは、「猫の絵ばかり描いていたら、妻に『本来のキモい絵を描け』と言われ、そこで描いたのが猿の絵。これが起点となり、もとの自分のタッチを取り戻したんです」と、猿が描かれた木片を持ちながら熱く語ってくれました。

「猫の絵」によるリハビリを経て、自分本来の描き方に戻るまで――という裏テーマがあった今回の個展。猫の絵に夢中になり、映画に釘付けになって、とにかく最高だ!

うまくいかないときは松本人志に助けてもらう

最後にこれからの展望を聞くと、「未完成の長編を完成させたい」と即答します。そして、真っ直ぐな目でこう話してくれました。

「松本さんは『あの人みたいになりたいと思うな。あの人みたいにはなりたくないと思え』ということを言ってましたが、自分だからこそできる、世間の人に楽しんでもらえる作品をつくりたい」

端々に松本さんの名前が出てくることから、影響力の強さがものすごく伝わってきました。うまくいかないときは、松本さんのラジオ番組『放送室』(2001~2009年にTOKYO FM で放送)をひたすら聞いて、助けてもらうこともあると言います。

出典: FANY マガジン
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ダウンタウンに憧れてお笑いを志す芸人はたくさんいる。でも、芸人だけじゃなく映画監督として活躍している人のなかにも、ど真ん中で影響を受けている人がいる。それが宇治茶さん。そして自分なりの表現の仕方で、すごい作品をつくり続けているんだなと改めて感動しました。

未完成の長編が、とてもとっても楽しみ。あなたも、宇治茶さんのクセになる“キモい”絵でできた次回作を、楽しみに待っていてほしい!

【プロフィール】
宇治茶(うじちゃ)Ujicha
京都府生まれ。京都嵯峨芸術大学観光デザイン学科を卒業。
大学在学時からゲキメーションという映像表現に興味を持ち、作品制作を始める。
※ゲキメーションとは、劇画とアニメーションを融合した表現方法。
2013年:映画「燃える仏像人間」第17回文化庁メディア芸術祭エンタテインメント 部門・優秀賞受賞
2018年:映画「バイオレンス・ボイジャー」アルゼンチン・ブエノスアイレス国際インディペンデント 映画祭審査員特別賞、アメリカ合衆国・生き埋め映画祭WTF!?!アワード受賞、 カナダ・ファンタジア映画祭 観客賞同賞受賞
2020年:NHK Eテレ アニメ「ふしぎ駄菓子屋 銭天堂」OP&ED映像のゲキメーションを担当、テレビ朝日 土曜ナイトドラマ「妖怪シェアハウス」昔話パートのゲキメーションを担当
2022年:映画 「妖怪シェアハウスー白馬の王子様じゃないん怪ー」昔話パートのゲキメーションを担当