大阪・なんばグランド花月(NGK)の真夏の風物詩である『吉例88 桂文珍独演会』が、8月8日(火)に開催されました。41回目を迎えた今年、文珍は師匠である五代目桂文枝の十八番で、弟子たちが脈々と受け継いできた古典の「船弁慶」と、自身の新作落語「ぴー」を披露。ゲストとして東京落語界から柳家花緑を招いたほか、女道楽の内海英華らも出演し、笑いで猛暑を吹き飛ばすような高座になりました。
「注意書きボード」を掲げながら口演!?
まずは文珍の四番弟子・文五郎が登場して、マクラも早々に「普請ほめ」を披露。小遣いほしさにたどたどしく普請をほめる男と家の主人とのやり取りを絶妙な間合いで描き、会場を盛り上げました。
続いて、ゆったりとした足取りで文珍が高座に登場。「『88独演会』も41回目になりました」と挨拶したあとは、マクラから話題のニュースを織り交ぜたシニカルな“文珍節”を連発します。
新作落語の「ぴー」では、「個人の感想です」「この物語はフィクションです。登場する人物、団体等は……」という注意書きのボードを実際に掲げながら、とある選挙の一幕を、随所にくすぐりを入れながらたっぷりと口演しました。
ゲストの柳家花緑は「NGKは初出演なのでうれしい。9つのころから落語をやっているなかで、今日は最高の日」と挨拶。花緑の祖父は言わずと知れた五代目柳家小さんです。
「お坊ちゃん界のなかでもキングオブお坊ちゃん」と自己紹介し、同じような若旦那が出てくる噺「千両みかん」を披露。江戸弁のさっぱりとした語り口でさわやかに魅せつつ、緻密な情景描写で技巧者ぶりも発揮しました。
「船弁慶」でかつての大阪の風景を描写
中入り後は、女道楽の内海英華が登場。「暦の上では今日から立秋。これから秋の気配が少しずつ来るんやないかと……」と話しつつ、「さのさ」やお座敷歌の「とんがらし」、都都逸などで華を添えました。
最後は文珍の「船弁慶」。「関西には、おもろいおばちゃんがいてます。そういうおもろいおばちゃんが出てくる、夏の暑い盛りの噺です」と本題へ。師匠である五代目文枝の型に忠実に、オーソドックスなスタイルで描き、かつて大阪で見られた水辺の風景を生き生きと描き出しました。
文珍は、「来年、私は芸歴55周年です。長い間、やっていればいいというものではありませんが、一生懸命頑張って、元気のうちにいろんな噺をやっていきたいですし、55周年の企画も考えています」と意気込みます。
そして、今年初めに見たホログラムコンサートを話題に上げ、「その雰囲気を感じてほしい」とエンディングで再現。最後まで笑いの絶えない『吉例88独演会』でした。