サッカー元日本代表で、現在J2で優勝争い中の「FC町田ゼルビア」に所属している太田宏介選手(36)が、10月3日(火)に都内で引退会見を開きました。日本屈指の左サイドバックが、今シーズン限りでユニフォームを脱ぐ自らの決断と、18年間の思い出を語りました。サッカー芸人とのトークもありつつ、今後のキャリアへも明かされ、涙あり、爆笑ありのにぎやかな記者会見となりました。
東京・町田市出身の太田選手は2006年、「横浜FC」でプロサッカー選手としてのキャリアをスタートしました。「FC東京」「名古屋グランパス」「清水エスパルス」といったJリーグの名門チームを渡り歩いたほか、オランダの「SBVフィテッセ」、オーストラリアの「パース・グローリーFC」など、海外のチームにも所属。これまでJリーグベストイレブン、Jリーグ優秀選手賞などの輝かしい成績を残し、日本代表としてFIFAワールドカップのアジア予選にも出場しています。
冒頭から涙「ハンカチ忘れちゃって」
会見の司会を務めたのは、太田選手とゆかりのある元プロサッカー選手、近藤岳登。友人から呼び込まれて登壇した太田選手は、冒頭の挨拶から涙で声が詰まります。
「こういうの弱いんだよな〜」と苦笑いを浮かべつつ、「このたび、18年間の現役を引退する決断をいたしました。今日は、これまでかかわってくださった方々に感謝の気持ちを伝える会見にしたいと思いますので、明るく笑顔で元気に進めていけたらと思います」と挨拶しました。
3、4年前から引退を考えていたという太田選手。今シーズンが始まる前に「ラストの1年にしよう」と決めていたと語ります。現役の最後に、出身地のクラブであるFC町田に所属できたことに「運命を感じていますし、なにより幸せです」と振り返りました。
18年間の現役生活を振り返り、「大好きなサッカーを通して家族を幸せにできた」と胸を張ります。家族の話で感極まりますが、「今日、ハンカチを忘れちゃって……。家族に(近所の)『ドン・キホーテ』で買ってきてもらいました。ここでも家族に支えられている」と笑みをこぼします。
思い出深い試合を聞かれると、FC東京に所属していた2015年、味の素スタジアムで行われた「川崎フロンターレ」との「多摩川クラシコ」と回答。元日本代表の大久保嘉人選手に先制点を決められたあと、太田選手の直接フリーキックで同点に。そして後半、今度はフリーキックから武藤嘉紀選手にアシストし、劇的な逆転勝利をおさめた試合でした。
「会場の雰囲気も最高でしたし、なによりFC東京時代に仲良くしてくれた武藤選手が海外に移籍する少し前で。彼自身もプレッシャーが大きかったと思うけれど、直接アシストすることができました。本当にイメージ通りのゴールだったので、あのアシストは、いままでのアシストの中でもいちばんうれしかったです」
吉本サッカー芸人と熱いトーク!
記者会見の第2部は、サプライズで登場したサッカー芸人であり、太田選手と親交の深いペナルティ(ヒデ、ワッキー)と井本貴史(ライセンス)とのトークセッションです。笑いを交えつつ、3人と近藤が太田選手に質問していきました。
まだ現役で活躍できるポテンシャルが高い状態での引退に、3人からは惜しむ声が。太田選手は「僕がプロ1年目のとき、所属していた横浜FCのチームメイトだった(元日本代表の)城彰二さんがバリバリでプレーしていたのにもかかわらず、引退されたんです。もちろん膝がボロボロだったこともあったんですけど、当時、その引き際がカッコいいなと思っていて」と胸の内を明かしました。
今後はセカンドキャリアとして、子どもたちを無料招待し、一流のサッカー選手やプロアスリートと交流ができる場を企業や行政とつくっていくことや、アスリートのキャリア支援、そしてメディアの仕事をしていくと明かしました。
太田選手の「クロス論」に感服
太田選手の強みは正確なクロス(センタリング)です。ヒデはサッカーをする子どもたちに向けて、「ひとつのことに特化して、それを自分のストロングポイントにすると、日本代表の道も見えてくる」とコメント。井本も「プロのあるべき姿」と賛同します。
元横浜FC監督で現役時代はサイドバックだった都並敏史氏から基礎を教わった、という太田選手。「目の前に相手の選手がいてもボールを上げるよう意識している」と話します。相手が自分のほうに詰めてきたら、バックパスするのが安全と考えるのが一般的。にもかかわらず、「ボールを上げる」と語る太田選手の秘技を解明すべく、会見会場で「プチサッカー教室」も開かれました。
身体の使い方、ボールの置き方など、太田選手の「クロス論」に4人もすっかり感服。ヒデは「小学生が意識するだけでもレベルアップする」と舌を巻きます。この「プチサッカー教室」の模様は、FC町田ゼルビアの公式YouTubeチャンネルにアップされています。
終盤には世界的サッカー選手、ディエゴ・マラドーナに扮した芸人・ディエゴ(ストロベビー)が登場! ポーズを決めたり、通訳ネタで笑いを誘ったりと会場を盛り上げます。そしてワッキーは「今後、最高の人生になるように太田選手に念を送ります!」と記者らを巻き込んだギャグを披露。爆笑が沸き起こりました。
最後に太田選手は感謝を込めてこう挨拶しました。
「今後のキャリアがもっともっと輝けるように、自分なりに精一杯、謙虚に努力して頑張っていきます。チームはこれからが大事なシーズン。FC町田ゼルビアでJ2優勝、J1昇格を果たして、個人的には、そそくさと引退できればなと思っております(笑)」