桂文枝の大阪市24区創作落語プロジェクト『参地直笑祭in平野区』が10月1日（日）に開催されました。この日は文枝をはじめ、桂三風や平野区にゆかりのある女と男（ワダちゃん、市川）、“平野区住みます芸人”の翠星チークダンス（ちろる、木佐）が出演。会場となったコミュニティプラザ平野（平野区民センター）には大勢のお客さんが詰めかけ、落語や漫才を楽しみました。
文枝自らが命名した「参地直笑祭」は、大阪市の24区に「参」上し、各区の特色を盛り込んだオリジナル創作落語で「地」域の方々に「直」接、「笑」いを届ける公演です。大阪市と吉本興業が地域活性化などを目的に締結した包括連携協定に基づくもので、平野区は15番目の開催地となりました。
最新情報を盛り込んだ「平野区落語」
翠星チークダンスの前説で会場が暖まったところで文枝がステージへ登場すると、会場からは大きな拍手が。黄色の着物で登場した文枝は、その理由について、7月に満80歳（傘寿）を迎え、「傘寿は金色か黄色を身に着けるとあったので」と明かします。
コロナ禍での中断を経て、ようやく平野区での開催に漕ぎつけられたことについて、「うれしい」と笑顔を見せた文枝は、「平野区の落語は、今日のために新しく作り直しました」と語り、最新の情報を盛り込んだ落語を披露すると意気込みました。
まずネタを披露するのは、漫才ゲストの女と男。登場するなり歓声が飛び、大歓迎ムードです。市川が平野区出身ということで、自己紹介がてらに地元トークで盛り上げたほか、得意のモノマネでも笑いをとります。
続いて文枝の弟子である三風が創作落語「引き出物」（桂三枝作）を披露。結婚式の引き出物として、大阪までやってきた鹿児島・枕崎の名物、鰹節。とある家の物入れを舞台に、鰹節をはじめとする贈答品たちのコミカルな会話を口演しました。
「ミラノでもこの噺を口演したい」
そしていよいよ文枝が登場し、「やっと平野区でできることになりました」と万感の思いを伝えました。この日の創作落語は、平野区に店を構える畳屋とクリーニング店の主人のやり取りで進み、平野区の地名や店名など、親しみのある名称が飛び出すたびに客席が沸きます。
平野区は生野区や八尾市などと隣接していて、境界線が複雑に入り組んでいます。「平野区と思いきや隣の町」というような “平野区あるある”も盛り込まれ、笑いを誘いました。途中から、平野区とイタリア・ミラノの意外な共通点も飛び出し、平野区発の噺はワールドワイドな展開を見せて客席は大いに盛り上がりました。
文枝に花束を贈呈した平野区の武市佳代区長は「すごく楽しかったです。途中、ほろっとしそうにもなりました」と話します。この日の噺の着眼点について文枝は、「イタリアのベニスに行ったことがきっかけでした。『平野』と『ミラノ』の言葉の響きが似ていること、大阪市とミラノが姉妹都市提携していたので」と明かしました。オチは前日に考えたそうで、畳屋の設定にしたのは弟弟子の四代 桂小文枝の家が畳屋だったからというウラ話も披露しました。
最後に文枝は「平野区落語は覚えることが多くて苦労しましたが、お客さまにも助けられ、ひとつもネタを飛ばさずにできました」と感謝。「ミラノでもこの噺を口演したい」と言いながら、「またこの落語をどこかでやって、平野区を宣伝したいと思います」と意欲を見せました。
