麒麟・川島とかまいたち・山内が「面白いマンガ」に沼のようにハマって楽しむマンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』。今回は、先日放送された「マンガ家ガチアンケート・伊奈子編」の模様をお送りします（放送を見逃した方はTVerもご覧ください）。
連載決定まで、約30ものアルバイトで食いつなぐ
川島 今回のテーマは「マンガ家ガチアンケート」。今日は私が会いたくて仕方がない先生です。当初は顔出しNGということだったんですけども、マスクをすればOKということで、なんとスタジオに来てくれました。地上波初登場、『泥濘（ぬかるみ）の食卓』の作者・伊奈子先生です！
伊奈子 お願いします。
山内 占いの館の方……？
川島 違いますよ。
山内 雰囲気から声量から全部そうですけど……。
川島 人生経験豊富な方が、今までのいろんな人生経験をヒントにして、マンガを描かれてるんだと思ったけど、めちゃくちゃお若いですよね。
伊奈子 今28歳です。
川島 地上波は初めましてということらしいですけども、なんで出てくれた？
伊奈子 呼んでいただいたのももちろんあるし、売れたくて（笑）。
川島 売れたくて（笑）。ドストレート。
山内 いやいや売れてるでしょ、これは。
川島 いろいろ聞きたいことがあるんですけど、まずは伊奈子先生のプロフィールを紹介させていただきますね。愛知県出身です。28歳、好きな食べ物は豆乳・牛乳。性格は褒められて伸びるタイプ。あんまり怒られるのは好きじゃないですか？
伊奈子 はい、怒られたら逃げます。
川島 2015年、二十歳の時に広告デザインの専門学校の授業でマンガを描いたことがきっかけでマンガ家を目指します。二十歳からですか。
伊奈子 二十歳からですね。だいぶ遅い方だとは思います。
川島 いわゆる小学校・中学校で「マンガ家なろうかな」という発想はなかった？
伊奈子 落書きは好きだったんですけど、ガチでマンガを書いたのは二十歳からで。
川島 2016年、21歳の時に、投稿2回目で描いた『悪い夢だといいのにな』が第75回ちばてつやヤング部門大賞を受賞しました。いきなり。
伊奈子 いきなりです、はい。
川島 けっこうとんとん拍子でいきましたね。
伊奈子 そうですね。そこまではとんとんです。
川島 『悪い夢だといいのにな』、どういった内容だったんですか？
伊奈子 主人公の子が、すごい妄想癖のある女の子で。「床に食べ物をぶちまけたらどんな音がするんだろう」とか考え出したら止まらなくなっちゃって、それを叶えちゃうんですね。自分で気になったらもう実際にやっちゃて、興奮や快感を覚える子が主人公で。で、万引きもやってみたくてやっちゃって、楽しいってなってるところに、バイト先の男の子にその様子を見られて……みたいな話です。
川島 それが投稿2回目。ちなみに1作目は覚えてますか？ どんな作品だったか。
伊奈子 あんまり覚えてないんですけど、カメラマン志望の男の子と同棲している女の子の話で、自分の履いたパンツを売って2人の生活費にしているっていう話。
川島 ブルセラショップ？
伊奈子 ブルセラです。
川島 1作目がそれということは、やっぱりそっちの系統なんですかね。ちょっとドロッとした、人の闇の部分であったり。
伊奈子 あんまりマンガや映画で主人公にならないような人が面白いんじゃないかなと思って。「万引きGメン」よりは「万引きをしちゃう人」の方が気になります。
川島 『泥濘の食卓』も、目線によって誰が主役かというのがわからなかったりするんでね。そういったところも共通してるかもしれません。ただ、投稿2回目でちばてつやヤング部門大賞を受賞されております。とんとん拍子できてたんですけど、数年間、連載には恵まれなかったんです。ここで約30個のアルバイトで食いつなぐ。
山内 多いですね。
川島 怒涛のバイト生活。どんなことやってきたんですか？
伊奈子 コンビニとかスーパーとか、あと税務署の窓口とか。マンガのアシスタントもやってました。
川島 どんな先生のところで？
伊奈子 『宇宙兄弟』の……。
川島 えー、小山宙哉先生！
伊奈子 小山先生のところに一瞬だけ。3、4ヶ月だけお世話になってました。すごくよくしていただきましたね。
川島 絵で稼ぐのは、アシスタント以外はやってない？
伊奈子 ほぼやってなくて。
川島 バイトは勉強も兼ねてやってたんですか？
伊奈子 通いやすくて、「自分の代わりがいくらでもいるだろう」という簡単なお仕事ばかりを選んでました。
川島 そんなにストレスかからんようにしたんですかね。
伊奈子 そうですね。
川島 怒られるの嫌ですもんね。
山内 テレアポって苦情とかそういうのですか？
伊奈子 苦情の窓口やってました。
川島 え。嫌じゃないですか？ 怒られるの。
伊奈子 嫌すぎてすぐ逃げました（笑）。
川島 だから30個っていう。行く先々でコラッ！て言われたらもう違うところに行く。
伊奈子 はい。
川島 最短は何日があるんですか？
伊奈子 半日です。
川島 半日。1日もない。何のバイトでどう言われたんですか？
伊奈子 パン工場のバイトで、洋菓子部門のケーキの担当で。ショートケーキにいちごをのっける仕事だったんです。それを12時間ずっとやるんです。怒鳴り声がしてて、私も怒鳴られて。のせ方が悪いとコラッ！みたいな感じで。ずっと怒られて、逃げ出しました。泣きながら帰りました。
山内 すごい経験してますね。
店長との不倫を継続するため、主人公が取った驚きの行動
川島 それでもマンガ家という夢は諦めず、2020年25歳、勝ち取りましたよ。ここで初の連載作品、『泥濘の食卓』連載開始。現在も大人気連載中でございます。連載が決まったと聞いた瞬間はどうでしたか？
伊奈子 わーっと思ったんですけど、当時の担当編集から「決まったんだけど、途中でどうなるかわからない」と言われて……。
川島 だからおっしゃー！じゃないんですね。まだどうなるかわからんから、そんな喜ばんといて、みたいな。
伊奈子 スッと一発で決まったわけではなかったですね。
川島 ということは、その反響でどんどん続いていったという感じなんですかね？
伊奈子 そうですね。1回「打ち切りになるかも」みたいなことはあって。2巻か3巻の途中で「ちょっと話があります」と。
川島 マジで2巻と3巻の間めっちゃ待たせましたよね。あそこ、めっちゃドキドキしてん。めちゃくちゃええとこで終わってんねん、しかも。
山内 間があいたんですか？
川島 めっちゃあきましたよね。
伊奈子 あいたと思います。
川島 もう今は大ヒットということでいいと思うんですけど、安心したのはいつぐらいですか？
伊奈子 ここ3ヶ月ぐらいですかね。ドラマが決まった時に、「じゃあ大丈夫だったんだ」って。本当にいつ「もう打ち切りです」と言われるのかわからなかったので。
山内 厳しい世界だ。
川島 じゃあマンガ沼で紹介したくらいでは安心できなかった。続いて、現在連載中の人気作『泥濘の食卓』簡単に紹介させていただきます。
伊奈子『泥濘の食卓』（新潮社）
●2020年、電子コミックレーベルの「ututu（ウツツ）」にて連載開始。
●その後、2023年5月より、ピッコマにて移籍して連載中。
●単行本は現在第5巻まで発売。
●2023年10月、テレビドラマ化。
川島 人間関係がもうドロドロしすぎて、目が離せない作品なので、読んでない方は絶対読んだ方がいいなと僕は思うんですけども。ちょっとあらすじ紹介します。
●主人公は田舎町のスーパーで働く深愛（みあ）。
● 深愛はスーパーの店長・夏生（なつお）と不倫関係にあった。
●何の取り柄もなく、自分に優しくしてくれる夏生が、本気で大好きになってしまう深愛。
●しかし夏生の妻が鬱になったことが理由で、突然夏生から別れを告げられる。
川島 普通はそれで別れるんですけど、深愛ちゃんは導き出した答えは「私はやっぱり店長と幸せになりたい」。ピュアな愛なんです。ですが、その想いがひとつの家庭を泥濘へと引きずり込むと。不倫をしている主人公が、不倫相手の息子や妻にまで近寄っていき、その過程を泥濘に引き摺り込んでいくパラサイト不倫マンガです。なんといっても登場人物の人間関係がめちゃくちゃおもろいんですね。整理すると、
・深愛ちゃんと夏生さんが職場のスーパーで不倫。
・夏生さんの妻ふみこさんが鬱に。
・なので夏生さんは深愛ちゃんとの不倫をやめたい。
・夏生さんの息子・ハルキくんが深愛ちゃんに惚れてしまう。
・ハルキの幼なじみのちふゆちゃんは、ハルキのことを好きで独占したいので、深愛ちゃんに嫉妬しまくる。
・深愛ちゃんは不倫関係を続けるために、夏生さんの家庭を助けたいので、ふみこさんのヘルパーみたいなことをやりだす。
・ふみこさんは深愛ちゃんのことをいい子だと思っている。
3巻くらいでこのような関係が浮き彫りになっていきます。この設定というのは、連載開始からもう考えてたことなんでしょうか？
伊奈子 そうですね。最初ハルキが女の子という設定だったんですけど、編集の方に「ここは男でいこう」と言われて男の子にしました。もうちょっと恋愛を絡めた方がいいとなって。
川島 ハルキが女の子だったとしたら、深愛の親友みたいなポジションで。
伊奈子 そうですね。深愛と仲良くなるみたいなことを考えてたんですけど、男の子だったら、友情じゃなくて「好き」になっちゃうと思うので。
川島 もうちょっとねじれるんでないかというところ。
伊奈子 そうです。
川島 1巻増えるごとにねじれるのよ。ストーリーもですけど、絵がすごいですよね。鬼気迫る感じ。誰の真似してたんですか、絵って。
伊奈子 あんまり人を描いたことがなくて。小学生とか中学校の時、さくらももこが好きで、ああいう感じの絵ばっかり描いてたので。あの絵だとこのストーリーがちょっと合わないかもなって……。
川島 でも最終的には練習してあいまったんでしょ。専門学校の授業がきっかけで、マンガ家を目指し始めたということですけど、それはどんな授業だったんです？
伊奈子 広告を作っている専門学校で、その中で「4コママンガを使ったインパクトのある広告を作ろう」という授業があって。その時にマンガの作り方みたいなのを学んで、「え、めっちゃ楽しい」と思って。広告って用意されてる要素から組み立てていくんですけど、マンガは登場人物を全部自分で考えなきゃいけない。それがすごく楽しくて。
川島 それで「ゼロからやりたい」と思って、ハマっていった。もともとは広告の会社に就職しようと思ってた？
伊奈子 そうですね。「広告を作ってみたい」と思ってました。やっぱりマンガでガチでやろうろは思えないというか、本当に夢だと思ってたんです。
山内 ご両親は？
伊奈子 （マンガ家になるのは）あんまり本気だと思ってなかったみたいです。私が勝手に学校を辞めて、「マンガでやる」と言ったらびっくりしてて。今はやっと「まあがんばれ」みたいな感じになってますね。マンガで食えてるようになって、そうなりました。
川島 ご両親は読まれてるんですか、これ。
伊奈子 読んでます。
川島 なんて言ってはります？
伊奈子 いや、怖くて聞いてないです。
川島 向こうも怖くて感想言われへんよね。「これ、あんたのことなん！？」ってなるからね。
山内 娘がこれ描いてたらもう恐怖でしか……。
川島 「どれ？ どれよ？」ってなるよね。
めっちゃ腹立つセリフ「好きなの？」
川島 ここからは先生に書いていただいたアンケートを元に『泥濘の食卓』の魅力について迫っていきたいと思います。最初の質問こちら。
『泥濘の食卓』の中で、伊奈子先生のお気に入りシーンとその理由を教えてください。
川島 先生の回答こちら。
1巻の44ページ。深愛が店長にフラれ、それでもちゃんと働いて……。
川島 深愛が店長に、別れようと一方的に言われるんですよ。つらいんですけども、笑顔で働いておられます。伊奈子先生的にはどこが気に入ってるんですか？
伊奈子 トイレでひとり佇んでるところですね。（便器に座って）お尻も出てて。あとは手洗い場がすごい汚い感じとか、蛍光灯に虫がいっぱい死んでたりとか、めちゃ荒んでるんですよね。その深愛の荒んだ気持ちと汚いトイレがリンクしてて、好きですね。張り紙も水でふやけて破れてたり、下の床も腐ってたりしてて。
川島 続いて、もうひとつ先生のお気に入りシーンでございます。こちら。
4巻8ページ。深夜の電車にボロボロの精神状態で乗り込むハルキ。
川島 ここはどこがお気に入りなんでしょうか？
伊奈子 隣のページの女の人が泣いてたりとか。
川島 そうですね。スマホ見て泣いてはりますね。
伊奈子 酔っ払いがわーって騒いでたりとか、深夜の電車で自分ひとりだけだと、もう「この世にひとりきり」みたいな気持ちになってくるんですよね。まわりに人がいても「自分は本当にひとりなんだ」みたいな。
川島 先生はどうなんですか？ 孤独が好きなタイプ？
伊奈子 ひとりでも全然苦じゃないですね。でも逆に、よく知らない人たちがいっぱいいる飲み会でひとりだけだと、そっちの方がつらいというか。そっちの方が孤独を感じるので。みんなでいるより、ひとりでいたい派です。
川島 最初からひとりやったら別にいいんやけど、みんなとおる時は輪に入ってないとちょっとつらいという。
山内 コンパとかは？
伊奈子 コンパ行ったことない。
川島 人生で1回も？
伊奈子 1回も誘われたことないです。
川島 山内くんはどうですか？ これは気になるなというシーンがあれば。
山内 5巻で、ハルキが（父親の）夏生と喋ってるシーンがあるじゃないですか。あん時の親父の感じが、めちゃくちゃ腹立って。「好きなの？」って聞くんですよ。読みながら、「このボケほんま」って。
川島 5巻で一番評価下げたキャラやからな。
山内 その前の「じゃ俺は子どもだな！」からイライラし始めてるんですけど。「なに開き直っとんねん」と思って。そして最後の「好きなの？」。「俺はもう（深愛を）抱いてるぜ」感が、「好きなの？」に出てるというか。息子に対してちょっとマウントを取ってますよね。「なに息子に対してこんなこと言ってんねん」と思って。顔もめっちゃ腹立つんですよ。
呪いを描こうと思った
川島 続いての質問でございます。
『泥濘の食卓』を書こうと思ったきっかけは何ですか？
川島 先生の回答こちら。
“呪い”を描こうと思いました。
私と同い年の女の子で、固くて厳しい育てられ方をして、同じような思考回路や癖の子が、閉塞感からどうやって抜け出すか見たくて。
川島 テーマは呪いなん？
伊奈子 呪いです。
伊奈子 育った環境が、けっこう田舎で古い考えの大人が多くて。
川島 閉塞ですよね。
伊奈子 大人になったら結婚して、子ども産んで、こういう人と結婚しなさい……みたいなのが、命令じゃないけど日常会話の中で自然に出てくるというか。そういうのが枷（かせ）っていうか、呪いだなと思って。それにがんじがらめになった人たちを描きたいと思いました。
川島 舞台になってるのは、狭い街の小さいスーパーですからね。
伊奈子 すごい狭い世界ですね。
川島 何かあったらもうすぐ次の日には広まっちゃう、そういった閉塞感。山内くんも、島根の、ちょっと田舎と言っても差し支えないところにいたと思うんですけど。
山内 そうっすね。スーパー田舎です。
川島 スーパー田舎で育って、ちょっと共感できる部分はありますか？
山内 「固くて厳しい育てられ方」といえば、友達の家に泊まりに行くのはダメって言われてたんですよ。19時過ぎたらもう絶対家に友達なんかいちゃダメだし。
川島 じゃあ泊まったことも、泊めたこともない。
山内 家に友達泊めたことないです。大学行くまで泊まりに行ったこともなかったです。泊まり＝悪。カラオケ＝悪。ゲームセンター＝悪。
川島 もってのほか。
山内 今思えばなんとも思わずに行ってましたけど。親父が教員やったんで、それもめっちゃ言われて。「先生んちの息子」なので、お父さんの名を汚すようなことをしてはいけないという。カラオケ行っただけで言われましたから。「山内さんとこの息子さんがカラオケ行ったらしい」。
川島 「法に触れてる」みたいな。
山内 それだけでもうヤンキーみたいな。そんな田舎でしたよ、川島さんのところは都会ですか？
川島 いやいや田舎田舎。京都の宇治ですから。神社とお寺とお茶しかないんで。当時はマクドナルドや吉野家もなかった。僕が24の時にサイゼリヤができて長蛇の列ができたっていう。親父が毎日通ってましたけど（笑）。でも「誰々と誰かが付き合ってるぞ」とか、「誰々はもう童貞卒業したらしいぞ」みたいのもすごいスピードで広まってて。
山内 広まります広まります。
川島 先生はどうですか？
伊奈子 工場と田んぼと家しかなくて。全然暮らせるんですけど、遊び場がないというか。友達とどこかで遊ぼうとなったら、もう友達の家しかないみたいな。そんな環境でした。
川島 親はそこまで厳しくはなかったんですか？
伊奈子 めちゃ厳しかったです。
川島 厳しい環境で育った、その反動で呪いを描こうとしたと（笑）。
ほんまはしたいやん！
川島 続いては僕がどうしても聞きたい質問です。
泥濘の食卓は、実際の体験が元になっていたり、現実世界にモデルがいたりするんですか？
川島 ストーリーがリアルすぎるんでね。これは先生の経験なのか、もしくは先生が取材して得た知識なのか。回答こちら。
だいたいの登場人物にモデルがいます。私だったり、身内、友達、バイト先で会ったことある人、ツイッターの人、いろいろ混ぜて作っています。私は、ストーキングも不倫もしませんし、したいと思ったことはありませんが、もし私が深愛と同じ境遇、環境だったら（たぶんしたい！とは言わないけど）深愛のすることは全然わからなくはないと思います。
山内 したいやん！ ほんまはしたいやん！
川島 ここまでのことを描いているけど、そういった経験もないと。
伊奈子 ないです。
川島 登場人物にモデルがいますと書いてますけど、これは具体的に言えます？
伊奈子 主人公は私の要素だいぶ入れてて。
川島 深愛ちゃん。一番ピュアですよ、このキャラ。
伊奈子 ふみこさんもだいぶ私の要素を入れていて。夏生さんは私が働いてたスーパーの店長です。
川島 ちょっと待って。ストップ伊奈子。
伊奈子 はい。
川島 深愛ちゃんに自分の要素があって、夏生さんが自分の働いてたスーパーの店長……しとるじゃない！
山内 一致してる。
川島 ぬかるんどるやん！ （マンガと現実が）繋がっちゃった。
山内 実際はスーパーの店長は、別の人とな怪しいが噂が立ってたってことですか？
伊奈子 いや、めちゃめちゃ優しい人で、愛妻家で有名な方です。
川島 いやいや、繋がってますよ。まだ逃がしませんよ。愛妻家で、「妻がさ」とか言ってる人やったんですか？
伊奈子 子どもの写真もデスクに飾って。
川島 それはそれですやん。
山内 で、その人は不倫とか浮気とかはしてなかったんですか？
伊奈子 してないと思います。（バイトをしていた頃は）私、高校1、2年生だったんで全然そんな……不倫とか知らないですね。
川島 キャラだけじゃなく、実際の体験を物語に練り込んだようなことはあるんでしょうか？
伊奈子 けっこうありますね。婦人科で親と同伴で足をガーって開かれて診察されたとき、「嫌だな」と思ったこととか。あとは「洗濯物も出来んのか！」と言ってゴーンとやられるところとか。
川島 これはご自身の体験がヒントになってる？
伊奈子 そうですね、「将来、絶対使ってやろう」と思って。
川島 すごい呪い（笑）。
山内 もうゴールのことも考えてるんですか？
伊奈子 ふんわりとは考えてるんですけど、まだバシッとは決まってなくて。とりあえず「誰も殺さないでおこう」とは決めてます。
山内 殺す可能性があったんだ……。
川島 あるよな、やっぱり。登場人物まともな人ひとりもいないんで。何か間違ったら全滅の可能性あるよ。読んでる感じだと、どうやらこれハッピーエンドじゃないなと思っちゃうんですけど。これから幸せになれます？
伊奈子 させるつもりで……。
川島 マジっすか！？ いや、13対0ぐらいで負けてますよ。ここから逆転サヨナラいけます！？
気になることはYahoo!知恵袋に相談
川島 続いてはマンガ沼恒例のこの質問。
マンガを描く時の七つ道具は何ですか？
川島 先生の回答はこちら。
1 映画
2 音楽
3 ダルダルのパジャマ
4 iPad
5 香り
6 グーグルマップ
7 ネット（YouTube、5ちゃん、ツイッター、Yahoo!知恵袋）
ネットのいろんな畑を渡り歩いて、社会生活を営んでる気になってます。
5ちゃんもツイッターも、人の心の中を覗き見できてる気がして楽しいです。
川島 映画は、何か好きな映画あるんですか？
伊奈子 岩井俊二監督。
川島 『スワロウテイル』とかですよね？
伊奈子 そうです。そのへんがすごい好きで。やっぱり日本の90年代の邦画の雰囲気が世紀末感あるというか。
川島 音楽は誰が好きなん？
伊奈子 ナンバーガールやZAZEN BOYSがすきです。
川島 そしてダルダルのパジャマ。
伊奈子 1日中これを着てます。
川島 これで寝てるんですか。
伊奈子 これで寝てますし、コンビニも行きます。
川島 コンビニも行っちゃう。
伊奈子 全部もうこれなんだ、基本。
川島 着替えない？
伊奈子 着替えない。
川島 これがお気に入り。これじゃないとマンガも描けない。いつから着てるんですか？
伊奈子 10年ぐらい前。
川島 じゃあマンガ家になる前？
伊奈子 はい。高校生の時、おばあちゃんが買ってくれて。
川島 ずっと大事に着てるわけですね。
伊奈子 はい。それじゃないと無理ですね。
川島 ところでYahoo!知恵袋が好きなんですか？
伊奈子 大好きです。気になることがあったら、すぐYahoo!知恵袋で相談したりとか。
川島 実際に相談するんですね。
伊奈子 相談したりとか、答えたりもしますし。悩み相談をネットの人たちに頼ってます。
川島 どういった相談をしました？
伊奈子 「原稿料の交渉ってどうやったらいいですか？」とか……。
川島 そんなの知恵袋の人知らんよ（笑）。
山内 編集者に直で言ったほうがいい。
伊奈子 直接聞くのがちょっと怖くて、いったんネットの人たちにいい言い方を考えてもらおうと。
川島 なるほどね。で、それ使ったんですか？
伊奈子 使いました（笑）。
川島 それがマンガのネタになったりとか、そういう経験はあるんですか？
伊奈子 ありますね。「夫が若い子と付き合ってるみたいで」とか。「友達に言えないような悩みを、とりあえず誰も知らない人になら話せる」みたいな。けっこう人に言えない悩みがいっぱい詰まってますね。
川島 さて、私が楽しみにしてる先生の本棚の写真、見てみましょうよ。あれ、あれ……やっぱりな。はいあった！
川島 先ほど「呪いを描きたい」と言った時から、もうピンときてたんですよ。
山内 意志強先生と面識あるんですか？
伊奈子 1回だけ会ったことはあります。この番組に出てた（編集者の）金城さんのつながりで、1回一緒に舞台を見に行こうということになって。
川島 どんな会話をしました？
伊奈子 さらっとした挨拶しか話してないんですけど。大好きなので、内心バクバクでした。
川島 先生もこの番組に来てもらったんですけど、そのへんの空気感が似てるなと思いますよ。
山内 あっちの一派だ。
「いつバイト生活に戻るのか」という恐怖
川島 （担当編集に）普段どんな人なんですか？ 伊奈子先生は。
担当編集 お願いごととか、「スケジュールちょっと厳しいけどどうですか？」とか聞いても、「はい、大丈夫です。やります」みたいな返事なんです。否定をあんまりしないので、逆に「大丈夫かな？」みたいに思うことがあります。
伊奈子 断れないです。断ったら傷ついちゃうかなとか考えてしまうので。あと、次にチャンスが回ってこないかもしれない……。「またすぐバイト生活に戻るのではないか」という恐怖がいつもあって。もうチャンスを逃さないためになんでも受けようと。
川島 締め切りはどうですか、守る？
担当編集 この1年ぐらいはちょっと……。
川島 でも断ったらね、誰か違う人にいかれて嫌やもんね。自分のことを「ちょっと変わってるな」と思うことあります？
伊奈子 人をすごい見る方なので、人のちょっとした行動を見ちゃいます。見るほうに夢中になって、ろくに話を聞いてないことも多かったりして。人の足元とか、頭の後ろとかもすごい見ちゃいますね。
川島 ご飯食べに行っても、ちょっと気になるところあったらそこばっかり見ちゃうんですか？ 店員さんとか。
伊奈子 そうですね。食べ方とか食器の置き方とか。ガシャンとか置いてたりとか。
川島 基本的にそういうのが全部マンガになるんですね。
山内 何にお金使ってはるんですか？
伊奈子 外に出るのが嫌で、ウーバーイーツばっかり頼んじゃうとか。お金はそんなに使わないですね。食費とマンガと映画と……本当にそれぐらいで。いつバイト生活に戻るのかが怖すぎて。
川島 じゃあ贅沢できないんだ？
伊奈子 どんと使えない……。大きな買い物は全然しませんね。バイト生活がもうトラウマすぎるので。買い物するとすごく迷ったりして。
山内 相当なんですね。
伊奈子の知恵袋
川島 さあここで、Yahoo!知恵袋などネットのお悩み相談が大好きな伊奈子先生が、我々にいろいろ聞いてみたいことがあるということです。伊奈子先生、タイトルコールお願いします。
伊奈子 「ベストアンサーはどっち！？ 伊奈子の知恵袋」！
川島 このコーナーは伊奈子先生からのお悩みや相談に対して、我々がYahoo!知恵袋風な文章で回答して、どちらがベストアンサーかを伊奈子先生に決めていただきます。伊奈子先生からのお悩み、こちらでございます。
「私は家にいる時よく裸で過ごしてしまいます。宅急便を取りに行く時はちゃんと服を着るのですが、服の脱ぎ着が本当に嫌いで……。体は冷えるし突然の来客に対応できないのでよくないなと思っています。どうしたらいいでしょうか？」
山内 僕の回答はこちらです。
「あなたが来客に裸だと対応できていないと思っているだけで、裸でも来客された方は対応に満足しています」
山内 別に裸でも、本人が気にしてるだけで。全然対応できるんで。むしろ向こうは大歓迎の可能性もありますから。
川島 向こうはサインもらえればいいしな。
山内 「そのままの君でいいよ」という。
川島 私の回答です。文章じゃ伝わりにくいけど、玄関を大きなフードで覆ってみてはいかがでしょうかという。言いたいのはこういうことなんですよ。
川島 顔だけ出てる。入ってきても玄関にカーテンみたいな幕があって、顔だけパッて出せばできるようにしてあげて。家が服みたいな。すっごい大きな服ん中に住んでるみたいなことなら、別に服を着んでもいいですもんね。裸でも見えないですから。伊奈子先生、ベストアンサーをお願いします。
伊奈子 ベストアンサーは山内さんです。川島さんのはもちろんこれで解決なんですけど、やっぱり山内さんのは心に響いた。寄り添ってくれてる感じがしたので。
最後に、伊奈子先生から番組とMCの二人に色紙をいただきました。
＊次回放送は「細かすぎるマンガクイズ選手権」をお届けします。
（構成：前田隆弘）
マンガバラエティ『川島・山内のマンガ沼』は、読売テレビ：2月17日（土）深1:33～2:03、日本テレビ：2月22日（木）深3:05〜3:35の放送（※一部地域を除く）です。
おたのしみに！
番組概要
川島・山内のマンガ沼
次回放送
読売テレビ：2月17日（土） 深1:33～2:03
日本テレビ：2月22日（木） 深3:05〜3:35
「細かすぎるマンガクイズ選手権」を放送。
（TVerでも配信中！）
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