小堀が主導した「東京進出」に修士は反対だった!? 「漫才に自信がありすぎて…」【芸歴3タイムリープ】2丁拳銃編

芸歴3タイムリープ

これまでの芸歴の中で「もし3回だけタイムリープできるとしたら」いつ、どの場面をやり直す? 人気芸人たちに聞きます。

これまでの芸歴の中で「もし3回だけタイムリープできるとしたら」いつ、どの場面をやり直す? 人気芸人たちに聞きます。

「あの時こうしておけばよかった……!」「生放送中にあんなことを言ってしまったけど、撤回したい!」など、芸人だれしも、もう1回やり直したい局面があるはず! ということで、「もし3回だけタイムリープできるとしたら、いつのどの場面をやり直す?」というテーマでトークしてもらう連載企画、その名も「芸歴3(スリー)タイムリープ」!
今回は、コンビ結成30周年を迎えた2丁拳銃(小堀裕之、川谷修士)が登場。11月18日(土)に東京・ルミネtheよしもと、26日(日)に大阪・なんばグランド花月で恒例の100分漫才公演『百式』を控える彼らが、賞レースのほろ苦い思い出や、トンガっていた若手時代を振り返ります。

出典: FANY マガジン
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【1】若手時代のバスツアー

若手時代、2丁拳銃は大阪でアイドル的人気を誇っていました。そんなあるとき、ファンと行くバスツアーに参加した2人。解散場所の駅にバスが到着し、最後の挨拶で修士が……。

修士 この間、『百式』のチケットを手売りしていたら、昔からのファンの方が買いに来てくださったんですよ。お話させてもらっているなかで、若手時代の僕の話を聞いて「すごいな……」と思ったことがありまして……。
大阪時代、スキーに行ったり、温泉に行ったり、よくバスツアーをしていたんですよ。いろいろ回って解散場所の駅に着いたとき、最後の一言で僕が「オレ、これ仕事でやってるから、バス降りたら仕事終わりやからな。いっさい声かけてくんなよ」と言ったらしくて(笑)。

――それは……。

修士 (ファンからすれば)「これぞ修士や!」と思ったらしく、「あのときはカッコよかったです」とは言うてくれたんですけど、さすがに「ごめんな~!」 と謝りました。当時、(関西で放送されていたテレビ大阪の人気バラエティ番組)『吉本超合金』もやっていてイケイケのときで……。

出典: FANY マガジン
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――その一言は、自分では覚えていなかったんですか?

修士 まったく忘れていますね。もちろん、ファンの方に偉そうだったのは覚えているんですよ。すぐ「散れ」とか「帰れ」とか言うてたんですけど、バスツアーでの一言は……。「ようそんなこと言うたな」と思います。

――いまだったら、どう言いますか?

修士 「ありがとうございました。また行きましょね!」とか言うでしょうね(笑)。「(当時は)それでもよかった」とおっしゃってくれるのもありがたいし、そういう方が30年近く経ってもチケットを買いに来てくださるのは嬉しいです。

――小堀さんは当時、どんな感じでしたか?

修士 楽しんでましたよね?

小堀 僕は(ファンと)喋っていましたし、狙ってましたよ。

修士 「自分のファンばっかりで楽しくて仕方ない」みたいな。

小堀 そういう子らに優しくすると、 僕、好かれるんで。

――(笑)。小堀さんにとってはチャンスの場だったんですね。

小堀 そこでは「このあいだのネタどうやった?」って聞いてましたね。結局は、かまってちゃんなんですけど、そうやって喋るのはあまり苦じゃなかったです。

出典: FANY マガジン
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【2】東京進出

2丁拳銃は、小堀のある思いから2000年に東京進出します。2人の武器である漫才で戦いに挑みますが……。

小堀 「大阪でやることなくなった」言うて、東京進出するんですけど、当時、天狗やったんでしょうね(笑)。(大阪の劇場では)僕らのお客さんが多かったんで、ネタがバレているんですよ。漫才禁止令みたいなものがあってコントをするんですけど、ネタバレしているから明転した(舞台が明るくなった)瞬間、お客さんも「またこれか」という雰囲気になる。劇場のリーグ戦でも負けて「平等じゃないな」と思っていましたね。
そういうのもあって、僕らのことをあまり知られていない場所で勝負したい、と思ったんですけど、いま思うと「行ってよかったんかな、タイミング早かったんじゃないの。もっと地盤を固めてからのほうがよかった?」とは思いますね。

――どんな瞬間に後悔がよぎったんですか?

小堀 漫才には自信あったんですけど、自信ありすぎて……。テレビのひな壇が向いているわけでもないし、「ここで頑張らんでも、オレら漫才オモロいもん」みたいな考えもあって、(東京のテレビに)合わしに行かなかった、というのはあるんかなと思いますね。
『吉本超合金』では、FUJIWARAさんと2組で中心やったし、僕らのために(スタッフがいろいろと)やってくれるけど、(東京では)何百組中の1組じゃないですか。そもそも(番組の)作り方がぜんぜん違うというか。そこで育ったもんやから、「なんや、ぜんぜん構ってくれへんやん。でも別にええわ、オレら漫才あるし」と思って頑張らなかったですね。声も張っていなかったです。

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修士 僕は、もともと東京に行く気なかったんですよ。大阪では、ようやくしたいことができるようになってきた感じだったんで、「ここで甘えさせてくれ」という思いはありました。だから、もっとトンガりたかったのかもしれないです。「自分がリーダーだ」(と誇示したい)みたいな。
あるとき、(東京は考えていなかったのに、小堀が) まわりを固めて話をつけてきたんですよ。ただ、いちばん大事な大阪の支配人に話をしてなかった。「お前やったら怒られへんと思う」って(小堀に言われて)、僕が報告に行ったんですけど、結果、めちゃめちゃ怒られました(笑)。

【3】賞レースでの苦い思い出

数々の漫才賞レースで勝ってきた2丁拳銃ですが、高校生が審査員を務める『MBS漫才アワード』(2005、2006年決勝進出)、M-1休止中に開催されていたフジテレビの『THE MANZAI』(2014年決勝進出)では……。

修士 僕は『MBS漫才アワード』がいちばん悔しいですね。自分のなかでも腐っていた時代なんですよ。ひな壇が弱いからテレビ番組もないし、『M-1グランプリ』も(芸歴制限で)終わってるし、どうしようみたいな……。あの大会に戻って、当時の高校生たちに「ちょっと待ってくれ」と、いまの漫才を見せたいですね。

――気持ちの問題ということですか?

修士 あれが自分のなかで節目になっていて、初めて「あれ? 若い子にウケへんな」と思ったときかもしれないです。大阪の人らに(テレビを通じて)もう1回、「僕ら頑張ってますよ」と見せられる大会やったのに「こんな感じなんや」って。
だから、(漫才中)不安にならなきゃよかったなと。やっていることは、いまと変わらないんですけど、たぶん気持ちの面で負けていたんかなと思います。いまやったら、ちゃんと強い気持ちで挑むとは思うんですけどね。

出典: FANY マガジン
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――小堀さんも当時のことは覚えていますか?

小堀 覚えていますね。あと、そこでカンペを間違えられたんですよ。青と赤に分かれて対決するんですけど、僕らが青やのに、赤って言われて、それでグチャグチャってなっちゃって。当時は、生放送やし、気使いすぎて、そのままにしたんですけど、いまなら「おかしい! ちゃんとやり直してください!」って言う根性はあるやろなと。あのとき、手を上げて大きい声で言うたら結果も違ったんかな、というのは覚えていますね。あと僕のなかでは『THE MANZAI』もデカいです。

――『THE MANZAI』決勝は、12組(1組敗者復活)がまず4組ずつ3つのグループに分かれて戦うルールでした。2丁拳銃は、予選通過11組中10位で決勝進出しましたね。

小堀 抽選会のとき、予選の上の順位から好きなブロックと出番順に名前を入れていくんですけど、予選1位~3位がノリで同じグループに入って。僕らが選ぶときには、その上位が入っている1枠かトップしか空いていなかったんですよ。
そこで僕がちょっとビビってもうて、トップを選んで、自動的に11位のトレンディエンジェルが、激戦区に入ったんですけど、(結果的にトレエンは)ファイナルラウンドまで勝ち上がったし、その勢いのまま、次の年に再開されたM-1で優勝するんです。あのときの抽選会に戻りたいなとは思いますね。
(僕たちは)トップでやりにくい空気のところを選んで、案の定、(審査員から)1票も入らなかったし、評判がいいネタやったけど、お客さんの温度とも合っていなかった。「違うグループでやっていたら、いい成績やったんちゃうかな」っていうのは思いますね。

修士 「ウケたのに負けた」やったら悔しいんですけど、決勝でウケなかったんですよ。漫才をやりながら、「うわー。もうこれはアカン。無理無理!」と思ったのは初めてでした。そういうトラウマはありますね。あのビートたけしさん(『THE MANZAI』最高顧問)が、トップバッターやということだけで「誰か1票あげて」って助けてくださったぐらいですから(笑)。

出典: FANY マガジン
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小堀 こぼれ話ですけど、負けたあと、同期の小籔(千豊)からメールが来たんですよ。ちょうど『人志松本のすべらない話』(フジテレビ)を撮っていて、その打ち上げで『THE MANZAI』を見ていたらしいんです。松本(人志)さんが画面越しで見る限り、「(同グループの)4組では(2丁拳銃が)1位やったって言うてるで」と送ってくれて……ギリ気持ちは保てました。

修士 確かにあったな。最初、ウソかなと思いましたけどね。小籔が励ましてくれてんのかなって(笑)。

『THE SECOND』も意識した公演に

――今年も『百式』が行われます。昨年は百式20周年でしたが、こうして漫才を続けるなかで、改めて漫才に関して気づくこともあるのでしょうか?

修士 僕らの漫才に関しては、ですけど、「完成なんてないな」と思っています。歳をとったら変わるし、気持ちでも変わるし、「なんなんやろうな」って思いますね。作り直せばいまでも戦える過去のネタもあれば、「当時は面白いと思っていたけど、いま見たら全然おもんないやんけ」というネタもあるし。嫌いなツッコミ、嫌いなボケ方をやってることもあるし、でも、それが本当は合っているのかもしれないし……。そう思うと、「2丁拳銃の漫才に完成はないな」っていう感じはしますね。

――いまだに舞台を降りてすぐに「こうしておけばよかった」と思うこともあるんですか?

修士 1回1回の出番で思いますね。舞台を降りたあと、「あそこな……」と話したり、楽屋で「今度はこう言おうかな」と考えたり、それがなくなったら漫才やらへんと思います。

小堀 『THE SECOND~漫才トーナメント~』(フジテレビの結成16年以上の漫才師による大会)も始まりましたし、昔やってたネタで少しでもアレンジできるものがあれば、と思って、(過去の映像を)見直すこともあるんですけど、昔は昔でオモロいんですよ。「このアクセルの踏み方、いまやってみたらどうなんねやろ」とか、「設定の一箇所をとって作り直したら若返るんか? 逆に老けさせたほうがええんか」とか……どこをどう切るかで、ぜんぜん違ってくるので、それこそ完成っていうのはないなと思いますね。

出典: FANY マガジン
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――年齢を重ねて舞台の立ち回りや、ネタづくりで変化を感じることはありますか?

小堀 ふつうは、(芸歴や年齢を重ねると)丸くなったり、優しくなったりするんですけど、それを「うー!」って、わざと若いときのようなエッジを立たせようと意識することもありますし、「これは流れに任せて柔らかいネタにしよう」というときもありますね。

修士 中間出してくれ。そんな極端に分けんといてくれ!

――(笑)。百式では、100分の間にいろんな設定が詰め込まれています。

小堀 そうですね。100分あるんで、わりと手広くはやっているんですけど、『THE SECOND』が始まったので、いつもは10分、20分で考えていたものを(同大会の制限時間)6分で作ろうと意識する部分もありますね。

――では、最後に読者へメッセージをお願いします。

修士 今回、タイムリープ企画に出させてもらいましたが、ちょっとそれっぽいネタもあるんですよ。だから、この記事も読んでいただき、そして百式も楽しんでいただければなと思います。

小堀 30周年で集大成というか、「これぞ2丁拳銃」というネタと、新しいネタが融合した100分になればいいなと思っています。

公演概要

2丁拳銃結成30周年記念『百式』
出演者:2丁拳銃
チケット:前売3,000円 当日3,800円

【東京】
開催日時:11月18日(土) 開場19:00 開演19:20 
会場:ルミネtheよしもと

【大阪】
開催日時:11月26日(日) 開場19:00 開演19:30
会場:なんばグランド花月

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