「関西演劇祭」最優秀作品賞はトリプル受賞達成! 南野陽子「演劇に対する思いや生き方そのものが変わった」

「つながる演劇祭」をテーマに今年で節目となる5回目を迎えた「関西演劇祭」。この演劇祭をきっかけに、受賞者がテレビドラマや映画、舞台など活躍の場を広げるなど、確かな実績を残しつつあります。今年は10組の劇団が参加し、11月11日(土)から1週間にわたり開催。11月19日(日)に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA SSホールで表彰式が執り行われました。

出典: FANY マガジン
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次世代を担う劇団登場に三船美佳“大絶賛”

今年は、表彰式の前にオープニングアクトを実施。今年8月に開催された、次世代を担う若手の劇団を発掘する「関西演劇祭 ネクストジェネレーション」で、「関西演劇祭」フェスティバル・ディレクターである板尾創路、アンバサダーのタレント・三船美佳から推薦された「劇団カチコミ」による演目を上演するという、例年とはひと味違った賑わいを見せる表彰式となりました。

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「劇団カチコミ」は、台本を使わずに創作する演劇集団。板尾と三船は「限られた時間ですが、それを感じさせない大作。ハリウッドムービーの名作を見たくらいの余韻だった」と絶賛します。

演目「賽」は、すべてが発達した超未来の日本が舞台。機械化推進派の西日本と、反対派の東日本に分断されるなかで、病気の母親を救うため、母親の体の機械化に取り組む少年が主人公の物語です。ぐっと引きつけるシリアスな芝居があれば、笑いどころを盛り込んだシーンもあり、観客全員が没入していました。

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演目終了後、「劇団カチコミ」の長野創、玉井敬大、山田岳功がステージに登場すると、三船は「もう一度、観られて幸せ」と笑顔。一方、3人は、観客の多くが役者ということもあって、「同業者目線だとここで笑いが起きるのか、というのがあった」と発見があった様子でした。

“つながる”作品ばかりだった

表彰式には実行委員長の南野陽子、フェスティバル・ディレクターの板尾、スペシャルサポーター(審査員)を務めたネルケプランニング代表の野上祥子氏、映画監督・三島有紀子氏、NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー・岡田健氏、そしてスーパーバイザーとして、脚本家・演出家の西田シャトナー氏が出席。最優秀作品賞の「MVO(Most Valuable Opus)」を含む各賞が発表されました。

まず南野は、今回の映画祭の感想をこう語ります。

「関西演劇祭は“つながる”がテーマですが、実際に作品のなかでも仲間や家族など、つながりを感じる作品ばかりで、私自身も観ながら立場を置き換えて、いろいろ感じることができた作品が多かったです。本当にいい時間を持てたし、皆さんも持てたのではないでしょうか」

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続いて各賞の発表へ。司会進行は、ラジオDJ の加美幸伸とNMB48の眞鍋杏樹が務めました。

脚本賞、演出賞はそれぞれ3人が選出され、そのなかから「ベスト脚本賞」はPandA・高梨由、「ベスト演出賞」は餓鬼の断食・川村智基が受賞。

続いて、アクター賞の6人のなかから「ベストアクター賞」に選ばれたのは、演劇組織KIMYO・元山未奈美と、PandA・山田だびんち(福吉座)の2人です。

そして「審査員特別賞」は、16年前の高校演劇の作品をリメイクして上演した無名劇団が受賞しました。プレゼンターを務めた板尾は、こう称えました。

「高校生劇団という、高校生のころのお芝居を皆さんがちょっと成長してやる、という。大人になった皆さんが、当時の気持ちを演技するというのが心地よくて。“誰が主役”というわけでなく、学生劇団ってみんなでひとつのものをつくるイメージで、まさにそのとおりでした。それぞれの個性が粒立っていました」

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「観客賞」に選ばれたのは、MousePiece-ree。プレゼンターを務めた板尾曰く、「関西演劇祭始まって以来の得票」と太鼓判です。

MousePiece-reeは、「僕たちは21年目の劇団で長く続けていますが、お客さん一人ひとりに丁寧にメールやLINEでご挨拶を送り、『お願いですから来てください』と頼んでおります」と明かします。「舞台はお客さんが最後のピース。だから、絶対に来てもらわないと僕たちは成り立たないんです。1人でも多くの人に届けたい、つながりたいとがむしゃらに必死に」と熱いメッセージを。

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これを受けて板尾も、「お客さんに観に来ていただける、支持していただける。それが長く続けていけてる、ということは、昨日今日でできることではない。すごいことです。特別賞に値するのではないかと僕は思います」と拍手を送りました。

南野「すべてが受賞に値するよき形だった」

最優秀作品賞である「MVO」に選ばれたのは、PandA! 劇団名が呼ばれた瞬間、抱き合って喜びを爆発させます。「コロナの時期は本当に、演劇もキツい時期がありました。でもこうやって続けて来られて、この『関西演劇祭』の1週間で、皆さんのお芝居を観て、ケツを蹴り上げられて、僕らもそれを糧にできたからこそ、この賞をいただけた」と参加劇団全員に感謝の言葉を語りました。

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南野は、PandAの受賞理由をこう語ります。

「脚本と、個性ある役者さんの演技力。そして演出も、舞台上に椅子だけだったり、照明も音楽もよかった。客席をこれほどうまく使える作品はないんじゃないかというくらい、すべてが受賞するに値するよき形だったと思います」

さらに、「私も表舞台に出る立場として、オーディションに受かること、賞をいただくことは、とっても大きな意味があります。今回、受賞された方は大喜びしていただいて」と受賞者たちに心を寄せると、「受賞できなかった方も、獲れなかったほうが次のがんばりやエネルギーにつながると思うので、ほかで狙ってください。皆、よかったんです!」と激励の言葉を送り、思わず板尾らは大笑い。会場全体が和やかなムードに包まれました。

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板尾「違う演目で同じことをやったら結果は…」

スペシャルサポーター、スーパーバイザーの各氏も、参加劇団に改めてこんな温かいメッセージを送りました。

「賞を決めなくてはいけない、という目的があったから選びましたが、皆さん全員に花丸を贈りたいです。大人になってほめられるってうれしいですし、明日の励みになります。そして、褒められた皆さんのパフォーマンスが誰かの励みに繋がります。つながりを大切に、これからも応援していきます」(野上氏)

「関西演劇祭に出られたことが、まずひとつ素敵なことだったのではないかなと思います。演劇や映画、芸術は誰かの命綱になれる。今回、皆さんのお芝居を観て、改めてそう信じることができたので、本当に素晴らしいことだなと思いました」(三島氏)

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「皆さんの公演を2回以上は観劇しましたが、一つひとつのセリフ、シーンを本当に丁寧に、心を込めてつくっているのが感じられました。とてもエネルギーをいただきました。これからもがんばって続けてもらいたいです」(岡田氏)

「場当たりから最後まで全部で40ステージ観させていただき、最高の体験ができました。皆さんと一緒に誇りたいのが、『俺たち、まだ演劇やってるよ』ということ。芝居が誕生して何百年が経っても『まだやっていますよ』と、まったく途切れずにここまで来たということを誇りたい」(西田氏)

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そして板尾は、「ボクのなかでは(公演最終日の)昨日で終わっていて、“祭”なので賞はあまり意識していないんです。期間中、みんなすごく楽しかったでしょう? 僕らもすごい楽しくて、こんな楽しい1週間を過ごしたことが、いちばんよかったと思います」と満足げな表情。

「最後にこういう賞はありますが、この10劇団、また違う演目で同じことをやったらまた結果は変わってくると思います」としながら、脚本賞を受賞したバイク川﨑バイクに「バイクが脚本賞を獲らなかったかも知れんし……」と会場を笑わせる一幕も。

今年も新たなつながりを生み出した関西演劇祭は、拍手と歓声で幕を下ろしました。

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「本当に一言、楽しかった、これに尽きます」

授賞式を終えた実行委員長の南野と、フェスティバル・ディレクターの板尾に話を聞きました。

会期中、10劇団・10作品の熱のこもった演劇を観劇してきた南野は、「どれも本当に違ったタイプのお芝居で、新たな発見がある45分間の連続でした」と熱い1週間を振り返ります。なかでも、それぞれの終演後に作り手と観客が作品について意見交換をする「ティーチイン」の時間は刺激的だった様子。

「ティーチインでは、私の考えていることだけではなく、観客の皆さんが考えていること、感じたことを知ることができて、私自身も、これからの演劇に対する思いや生き方そのものが変わるような時間を過ごせました」

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板尾もまた、「本当に一言、楽しかった、これに尽きます」と充実した表情で語ると、こう続けました。

「5年目ですごくレベルも高くなり、今回は各賞を決めるのが大変で、でもそれがまた楽しくて。最後、みんな笑顔で終われたことと、つながりができたことにすごく意義を感じました」

『関西演劇祭』公式サイトはこちらから。