浅田政志、片桐功敦ら初参加のアーティストも。やんばるアートフェス開幕!

今年で7回目を迎える沖縄県北部の地域芸術祭「やんばるアートフェスティバル2023-2024」が1月20日(土)~2月25日(日)まで開催されています。開幕前日の1月19日(金)、関係者やマスコミ向けの内覧会が行われ、総合ディレクターでありアーティストとしても出展する仲程長治氏をはじめ、多くのアーティストが出席し、作品の見どころなど、貴重なエピソードが次々と披露されました。

出典: FANY マガジン

過去6回行われた「やんばるアートフェスティバル」は大宜味村を中心に名護市、本部町、国頭村、東村などで、アート作品の展示やワークショップ、関連イベントなどを行い、日本人をはじめ、台湾、中国、韓国の観光客など、のべ30万人が来場。アートを通じて、やんばるの魅力を県内外・アジア・世界へ発信するイベントとなっています。

今年のテーマは数字の7にちなんで

今回のテーマは「嘉例ヌ源(カリーヌムトゥ)」。嘉例(カリー)は沖縄では「縁起が良いこと」を意味する言葉で、喜びを分かち合うため、お祝いの席での乾杯の挨拶としてもおなじみです。嘉例ヌ源の「ヌ」は数字の7を意味しており、7年目を迎える幸運の7を掲げることで、本フェスティバルがやんばるの「喜び」「幸せ」の源となることを願っています。

内覧会は塩屋湾を一望する大宜味村立旧塩屋小学校の体育館からスタート。体育館の舞台上には二隻の屏風が展示され、画家の丹羽優太氏が登壇します。金屏風に墨で描かれた一隻の画は2021年に熱海市で描いた作品で、ヤマタノオロチが温泉に浸かり、お酒を飲んでいます。丹羽氏は「熱海で土砂災害があり、ヤマタノオロチは一説では土砂災害の象徴として描かれていたということなので、お酒を飲んで温泉に浸かってもらって災害が早く落ち着きますようにという願いを込めて描いた」と語ってくれました。もう一隻は墨で黒く染めた和紙に金の粉で描いた作品で、京都にて発表されたものです。戦争をテーマに、ヤマタノオロチを倒しに行くスサノオノミコトを中心に描かれています。それぞれ違う年、違う場所、違うテーマで描かれた作品ですが、二隻が並ぶことで「お酒を飲み、食材を運び、ヤマタノオロチを囲んで、くだらない争いは止めて、楽しく飲めたらいいな」という平和への祈りが込められていると語ってくれました。

写真のパネルで囲まれたブースでは、竹富島の喜宝院のコレクションをお借りして展示されています。八重山における創作や美術工芸をリサーチして、広めていくユニット 「五風十雨」のひとりである畑中英二氏は「沖縄でも無い、台湾でも無い、“八重山”という独特の文化を持つ地域の物を持ってくることで、アーティストや美術・芸術を愛好する方たちが、いろんなことを感じ、作品に昇華して頂くことが狙い」と語ってくれました。

クラフトの展示販売も

会場となる小学校の各教室にはアーティストの作品が数々展示されています。クラフト部門に出展するアーティストの作品を見て、触れて、実際に購入することができる「やんばるクラフトマーケット」では、キュレーターを務める麦島美樹氏から、本フェスティバルの今年のテーマに基づいて、初参加7名を含め20名の作家の作品が展示されています。焼き物や紅型、首里城火災で焼け落ちた瓦を加工して制作された一輪挿しなどさまざまなジャンルが並びました。

校舎の中庭には林靖高氏と稲岡求氏、アーティスト西村健太氏による園藝プロジェクト、Leggy_の作品が。「Leggy」は植物が日の光があまり無いと、日のある方へひょろひょろと伸びるさまを表すことで、今作品は一般的には商品価値が無い植物を譲ってもらうなどして、伸びたサボテンを中心に寄せ植えをして創作されています。今回は沖縄だけで植物を集めたとのことで「暖かい気候でもあるので(植物が)パワフルに感じた」と、素材の素晴らしさを語ってくれました。

宝物の写真をアートに再構築

次の展示会場では机の上にはさまざまな写真が並びます。登壇した写真家の浅田政志氏は「15名の大宜味村在住の方に協力して頂き、これまで撮った写真の中で1番大切な写真を選んでもらい、選んだ理由を聞いた」とのこと。それを自分の中でくみ取って、写真を写真に収めた作品を創り上げました。写真が大切な理由も添えられており、「他人が見ると(写真に)なかなか見入っていけないが、理由を知ることで、見方が変わるという経験をしてもらいたい。写真家だけでなく多くの人が(スマホなどで)写真を撮る時代になったので、宝物のような一枚を知ることで、それを自分にとって大切な一枚を考えるきっかけになればいい」と語り、会場内は多くの方々が写真に見入っていました。

次の会場では教室の中心に男性スタッフ8人で運んできたというガジュマルの切り株が鎮座し、植物の写真などが囲む作品が。生け花をなりわいにしている華道家・片桐功敦氏の作品で、写真と植物のインスタ―レーションを創り上げています。いつも携わっている植物と人の関わりを追求した形の写真の展示と、国頭村安田地区の集落で800年くらい続く人と植物が一体になって、海と山を繋ぐ媒介になるという祭事「シヌグ」を写真に収めた作品があります。「人が植物に変容していくようすを創作として展示しているので、2つの作品を併せてみることで、祭りの本来の意味と華を生ける中で気付きから生まれた創作のリンクが見えてくると思います」と見どころを語ってくれました。

親しい人から譲り受ける芭蕉布

出典: FANY マガジン

その後は、大宜味村喜如嘉保育所に移動します。2019年に閉園となった跡地で2組のアーティストによる展示が行われています。今回の展示会場を選んだという金サジ氏は芭蕉布を身にまとって登壇。金氏は「昨年、このフェスティバルに参加した際に喜如嘉(きじょか)の芭蕉布に出合い興味を持ったことがきっかけ。滞在制作をしながら、いくつか会場の候補があった中で、制作に協力してくれた方々が近くに住んでいる場所を選び、(気軽に)見に来ていただければ。(会場は)光がさまざまな方向から入るので、(作品が)活きるから」と、選定した理由を明かしてくれました。

今回の作品について金氏は「芭蕉布は喜如嘉を代表する工芸品として知られているが、昨年見たとき、美しいとは思ったが、人が着ている姿がイメージできなかった」とのこと。「2年に1回行われる喜如嘉祭りに踊り手として参加されている方々は自分自身の芭蕉布を着て踊る。親から子または親しい人から譲り受ける、そのエピソードが人それぞれあって、みなさんの芭蕉布にまつわる人の記憶のエピソードを手繰って、それを体現したものを一枚の写真に収めました。芭蕉布自体は手の掛かる技術なので、継ぐ人もいれば、そうでない人もいる。(芭蕉布との付き合いが)100人いたら100人違うというのが面白く、現代を表している」と語ってくれました。

『やんばるアートフェスティバル2023-2024』は、大宜味村立旧塩屋小学校をメイン会場に、1月20日(土)~2月25日(日)まで行われます。独自の自然や文化が根付き、沖縄の原風景が色濃く残る「やんばる」を舞台に、現代アートや沖縄をはじめ日本各地の伝統工芸を肌で感じられるフェスティバルに足を運んでみませんか。

開催概要

『やんばるアートフェスティバル2023-2024嘉例ヌ源』

【開催期間】
2024年1月20日(土)~ 2月25日(日)

【メイン会場】
大宜味村立旧塩屋小学校
毎週火曜・水曜休館
開館時間:11:00~17:00
入場料:一般500円/沖縄県内在住者300円/高校生以下無料

【会場】
大宜味村立旧塩屋小学校(大宜味ユーティリティーセンター) / 大宜味村喜如嘉保育所 / やんばる酒造 / オクマプライベートビーチ&リゾート / 辺土名商店街 / オリエンタルホテル 沖縄リゾート&スパ / カヌチャリゾート / 名護市民会館前アグ―像 / 星野リゾートBEB5沖縄瀬良垣 / ホテルアンテルーム那覇

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