日本の不条理演劇の第一人者で劇作家の別役実(べつやくみのる)脚本、劇団「玉田企画」主宰の玉田真也が演出を務める舞台『天才バカボンのパパなのだ』が、2月21日（水）に東京・下北沢の本多劇場で開幕しました（3月3日まで）。初日の公演直前にはゲネプロが行われ、キャストが取材に応じました。
男性ブランコ・浦井「ゲネプロで演じて初めて理解できた」
この舞台は、男性ブランコ・浦井のりひろ、うるとらブギーズ・佐々木崇博、ジェラードン・かみちぃ、エルフ・はる、メトロンズ（しずる、サルゴリラ、ライスによる演劇ユニット／メンバーが日替わり出演）ら吉本芸人のほか、浅野千鶴、市川しんぺーら実力派俳優陣が勢ぞろいする意欲作。メトロンズを除くコント師たちにとって、初の本格的な演劇への挑戦となります。
ストーリーは、署長（浦井）と巡査（佐々木）が勤務する派出所が、電信柱が立つ“路上”に引っ越しをするところから始まります。そこへ、バカボンファミリーが次々と来訪。人が増えるたびにまったく問題ではないことが問題になり、まったくモメる必要のないモメごとがただただ広がって……というもの。独特の作風で知られる脚本の別役が、赤塚不二夫のギャグマンガ「天才バカボン」に設定を借りてつくり上げた原作者公認の「二次創作戯曲」です。なお、この作品は、毎年2月に開催される第34回下北沢演劇祭に参加しています。
不条理なバカボンファミリーたちに振り回され続ける署長役の浦井は、こう意気込みます。
「（ゲネプロで）初めて関係者の方に見ていただいて、ようやくこの舞台がどういう性質のものなのか、“こういうお芝居なんだ”と理解できたので、早くお客さんの前でやってみたい気持ちでいっぱいです」
浦井とペアになる巡査役の佐々木も「初めて人前でやったので、稽古とはまた違う感じ。みなさんに体重を預けたくなるような気持ちです」と追随しますが、“体重”のたとえがわかりづらかったのか、報道陣はノーリアクション。「（どういう意味か）説明しますけども……」と、あわててセルフフォローしていました。
「コントのキャラをそのままこの世界感に入れた」
不条理劇らしい理不尽な展開が続きながらも、独特の空気感からじわじわと面白さがあふれてくる今回の舞台。演出の玉田は、どんなこだわりを持って取り組んだのでしょうか。
「この（作品の）完成形が、ドリフのコントのように、真ん中にいる人（署長）が、どんどん酷い目にあって、そのさまが笑える……みたいになればいいなと。だから、浦井さんがいかりや長介で、まわりに加藤茶たちがいて、彼らにやられるみたいな。そういう見え方になればいいなと思っていました」
吉本芸人はコントに定評のある実力派ぞろいですが、本格的な演劇には今回、初めて触れたというメンバーがほとんど。バカボン役のかみちぃと、女1役のはるは、それぞれこう語ります。
「個人的には、お芝居をやっている感覚がまったくなくてですね（笑）。いつも通りの（コントの）キャラクターを、この世界観に入れさせていただいた感じがしています。もっと“演技をやれるかも”と思っていたんですけど、僕に関してはすごく自由にやらせていただいてコントの延長線上みたいな感じです。まわりが熱演するなか、そこに紛れ込ませていただいているので、“贅沢な空間にいさせてもらっているな”と思っています」（かみちぃ）
「こういうお芝居を一度はやってみたいと思っていました。緊張感もあるなか、皆さんの胸をお借りしようと思っています。あと、（芝居のなかで）堂々と喫煙ができるシーンがあるのでうれしいです（笑）」（はる）
冷静なサルゴリラ児玉は「俳優のテンション」！？
そんな芸人たちの芝居や稽古場での様子について、演劇が本業である役者陣はどんな印象を持ったのか、報道陣から質問が投げかけられました。
その反応は、意外にも“絶賛”の嵐。バカボンのママ役の浅野が「役者よりも真面目に稽古する方ばかり」「ふだん、もっと頑張らなきゃと思わされました」と言えば、パパ役の市川も「みんな真面目だし、日替わりのメトロンズさんも一人ひとり真面目」とうなずきます。
市川はさらに、はるが玉田から「（キャラを作らず）そのままで」と指導を受けた際、それを見事にやってのけたことが印象的だったと振り返ります。「そんなに素直に『そのまま』ができるんだなって。僕らはどうしても作っちゃう」と持ち上げると、はるは得意顔で「記事に載せておいてください！」と記者にリクエストしました。
そんなドタバタなやりとりを冷静に眺め、あまりの落ち着きぶりに「ほんまの俳優のテンションやん」とツッコまれたのは、この日、メトロンズのメンバーとして日替わり出演したサルゴリラ・児玉智洋。本多劇場の舞台に立てたことについて、「聖地ということもあり、立てて嬉しいです。メトロンズとしてもいつか出てみたい」と目標を掲げました。
公演概要
第34回下北沢演劇祭参加作品「天才バカボンのパパなのだ」
脚本：別役実 「天才バカボンのパパなのだ」
演出：玉田真也（玉田企画）
出演（※登場順）：男性ブランコ・浦井のりひろ、うるとらブギーズ・佐々木崇博、ジェラードン・かみちぃ、浅野千鶴、市川しんぺー、川面千晶、エルフ・はる、西出結、メトロンズ（日替わり出演）
開催期間：2月21日（水）～3月3日（日）
場所：下北沢 本多劇場（世田谷区北沢2丁目10−15）
主催：吉本興業株式会社
＜チケット情報＞
■劇場での観劇
前売：6,000円／当日：6,500円 （全席指定）
チケット販売：FANYチケット、チケットぴあ、ローソンチケット
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■配信での観劇
配信チケット料金：4,000円（カット割り映像配信）
配信開始：3月3日（日）19:00
※3月2日（土）に収録済の映像を配信
チケット販売：FANY Online Ticket
FANY Online Ticket（配信）はこちらから。
