お笑い芸人にして漫画家でもあり、NHK大河ドラマ『光る君へ』への出演でも話題のカラテカ・矢部太郎が3月27日(水)、3年ぶりの新作コミックエッセイ『プレゼントでできている』(新潮社)を刊行。これを記念して、発売日には新潮社(東京都新宿区)で矢部によるトークイベントが開催され、スペシャルゲストの今田耕司とともに作品の魅力を語りました。
新作のテーマは「プレゼント」
矢部の新作『プレゼントでできている』は、なぜか人からものをもらうことが多いという矢部が、有形無形を問わないさまざまな「もらう・あげる」の体験を、時にほのぼのと、時に味わい深く描いたコミックエッセイです。
そもそも、矢部が“プレゼント”をテーマにマンガを描きはじめたのは、今田耕司がスペシャルコメンテーターを務めたテレビ番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)で、今田にお世話になった若手時代のエピソードをマンガに描いたことがきっかけでした。
これにちなんで、イベントのスペシャルゲストとして今田が登場。トークは、『深イイ話』で披露されたマンガ(今回の単行本には未収録)を改めて紹介するところからスタートしました。
お笑いコンビ・カラテカ時代には、今田が司会を務める恋愛バラエティ番組『あいのり』(フジテレビ系)の前説を10年間務めていた矢部。「今田さんはいつもご飯を食べさせてくれました」とのことで、面倒見のいい今田の先輩エピソードが明かされます。
しかし、やがて話題は“大人のDVD”のことになり、今田は「ちょっと怪しくなってきましたね」と焦り気味。マンガには、劇場の楽屋前に差し入れさながらに“ご自由にどうぞ”と、今田提供のDVDが大量に積まれていた光景なども描かれており、記者陣から笑いが起こります。
今田いわく、「これはいただきもの。新喜劇にいたときにお世話になった帯谷(孝史)さんから『おまえ好きらしいな』って急にいっぱいいただいたんですよ。紙袋にいくつももらったから、せっかくなら若手にもあげようと思って……」とのこと。新作のテーマにぴったりな“プレゼント”の連鎖話に、矢部も驚いていました。
「マンガ」で感情面が豊かに
矢部の若手時代から交流があった今田ですが、「マンガを読んで初めて、こんなに感情の起伏があるんだと知った」と、しみじみと語ります。
「(芸人として)お笑いだけしているときはいつも緊張感があったけど、マンガという表現方法を手にしてから、感情面も含めていろんな面で豊かになったような気がする」
また、新作の原稿を完成前にひと通り読んだという今田は、「プレゼントを通していろんな人が出てきて面白い。僕も先輩にいろんなものをいただいたなと思い返しました」と、本書をきっかけに昔を思い出したよう。
「新喜劇のときなんかは、池乃めだかさんたちから形じゃないものをたくさんいただきました。行動であったり、生き方だったり、“これが芸人なのかな”っていうものを感じさせてもらいましたね」
これには矢部も「本当に先輩からいろんなものを教わったなと思って。今回のマンガを描くにあたって考えてみたら、“モノ”ではないプレゼントもたくさんもらっていた」と、しみじみ。
今田は「あの言葉をいただいたから裏切れない、頑張れる、みたいなこともある。言葉というのも人にとっては大事なプレゼントかもしれない」と神妙にうなずきつつ、「俺、いまいいこと言いましたね」と自画自賛していました。
「何か表現したい、という人の指針になるのでは」
さらに話題は、矢部が主人公「まひろ」の従者役として出演するNHK大河ドラマ『光る君へ』のことにも及びます。役者としても活躍する矢部に、今田は「1発当てたい人が多い世界だけど、矢部太郎はいろんなところに種を撒いてきて、それが年齢とともに花開いてきている」と、矢部ならではの歩みに感銘を受けている様子。
「(明石家)さんまさんを目指す人もいれば、千鳥を目指す人もいる。そんななかで、明るくおしゃべりするタイプじゃないけど何か表現したい、という人のひとつの指針になるんじゃないか」と賛辞をおくり、矢部を照れさせていました。
「今田さんに読んでいただきたかったので、うれしかったです」と語る矢部に、今田も「いまのも言葉のプレゼントです」とニッコリ。「今田さんが(本を読んで)『プレゼントをもらったときのことを思い出した』と言ってくださったので、描いてよかったなと思いました」と矢部もうれしそうで、2人のハートフルなやり取りに会場もほっこりした空気に包まれました。
書籍概要
『プレゼントでできている』
出版社:新潮社
発売日:2024年3月27日
単行本(ソフトカバー):128ページ
Amazonはこちらから。