医者&後期高齢者の異色ユニット芸人がそろって著書刊行! 目指すは「コンビでM-1史上最高齢優勝」

どうも芸人ライターの「てんぐ」の横山ミルです。
皆さん、ご存じですか? 72歳で芸人デビューし、シニア川柳ネタで「神保町よしもと漫才劇場」史上最高齢の所属芸人になったピン芸人・おばあちゃんと、医師免許を持つ医者芸人・しゅんしゅんクリニックPが、それぞれ本を出版したんです。異色の漫才ユニット「医者とおばあちゃん」としても活動する2人。4月26日(金)に、東京・芳林堂書店高田馬場店で行われた合同の書籍発売イベントに潜入してきました。

出典: FANY マガジン
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「キャラ立ち」漫才で冒頭から大盛り上がり

今回、発表されたおばあちゃんの著書は『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを ー77歳 後期高齢者 芸歴5年 芸名 おばあちゃんー』(ヨシモトブックス)。しゅんしゅんクリニックP(以下、しゅんP)の著書は『40歳を過ぎるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?』(同)。どちらも読みたくなるタイトルです!

取材会の最初は、なんと2人の漫才からスタート。それぞれのキャラクターを生かした漫才で会場は大盛り上がりでした。さすが、ユニットとして昨年のM-1グランプリ3回戦まで進出しただけのことはあります。

その後は、しゅんPが自身の本について次のように紹介しました。

「『40歳を過ぎるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?』というタイトル通りに私も40歳になり、気づけば劇場などの楽屋で健康の話ばかりしているのを実感しています。40代になっても20代や30代の気持ちのままでいるので、どうしても無理をしてしまったり、なかなか病院に行かなかったりする。そして、そのまま50代で生活習慣病やいろんな病気にかかってしまう人が多いと思っていました。そのタイミングで吉本から『本を出しませんか?』と話がきたので、今回の出版につながりました。アラフォー以上の人がメインのターゲットで、健康の入門本です。これを読むことで、将来のメンタルや健康がよくなればいいと思います」

出典: FANY マガジン
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続いておばあちゃんも、自身の本についてこう語ります。

「71歳で吉本の養成所に入りました。まわりからは『どうしてその歳で?』と言われましたが、本のタイトル通り『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを』ということで、100歳まで寿命が延びるという時代なので、歳をとっても、いまからでも自分の好きなことを楽しく、無理なくしたいなぁということでこの本を書かせていただいきました。内容的には、吉本の養成所のことや、乳がんになった話、結婚の話など、私の77年間の歴史を書いています」

話はそこから、おばあちゃんが養成所に入ったときの話へと移っていきました。

実は、おばあちゃんはもともとシニア劇団に所属していました。演劇業界の用語もわからなかったので、もっと勉強したいと思っていろいろな事務所の養成所に連絡したんですが、すべて「25歳まで」などと年齢制限があって入れなかったようです。そんななか、吉本だけは年齢制限がなかったので入れたとのことでした。

出典: FANY マガジン
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養成所の学費“ウン十万円”を銀行で振り込むときに、銀行員さんに「何のおカネですか?」と聞かれ、「学校に振り込むおカネです。」と答えると、「お孫さんですか? おめでとうございます」と言われたとか。おばあちゃんが「いいえ、私の学校のおカネです」と答えると、銀行員さんにオレオレ詐欺に引っかかっていると勘違いされたみたいです(笑)。

■「高齢者のスターになれる存在」

その後も、記者たちからのさまざまな質問に2人が答えていきました。お互いの本を読んだ感想を尋ねられると、しゅんPはこう言います。

「おばあちゃんの養成所の話とかは、僕自身も(養成所を)体験しているので楽しく拝見させていただいたのですが、おばあちゃんが主治医の先生に養成所の合宿に行っていいのか聞きに行った話は、医者として考えると、けっこう困る質問だなぁと(笑)。もし自分だったらどう答えるのかっていうような医者としての目線で読んだ部分もありましたね」

本の後半に書かれた乳がんの話には、特に感動したそうです。

「当時は乳がんの告知を本人にしないで家族とかにする時代だったので、本当にツラかっただろうなぁと思いました。僕らが見ているおばあちゃんは本当にポジティブで何回転んでも立ち上がるみたいな人で、それがつくられたのはこういったツラい経験も踏まえてのことだと思うと、僕の知らない一面を知れた本でした。読んだあとは気持ちが前向きになれましたね」

出典: FANY マガジン
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おばあちゃんは、しゅんPの本を読んだ感想として「私が歩んできたままの本だなぁと思いました(笑)」とニッコリ。これには、しゅんPも「70代ですから、(本のテーマである)40代を経験していますからね」とうなずきます。おばあちゃんは、こう続けました。

「でもね、若いときにこの本を読んでおけば勉強になったのになぁと思いました。健康とか美容のこととかね。私も整形したいと思うけど、年齢と費用のことを考えたらやめておきますが、若い人は絶対にタメになりますよ。たとえば、“赤外線”のこととかね。私たちの時代はあんまり赤外線のことを気にしなかった時代だから」

ここで、おばあちゃんの発言に間違いを発見したしゅんPが、「え……赤外線じゃなくて、紫外線ですかね(笑)。赤外線のことは書いてないですね」とすかさず訂正。おばあちゃんは、「自分の知っている単語によせて読んじゃうんですね(笑)。ごめんなさい」と応じて、「若いときに先生の本に書いてある紫外線の話を読んでいれば、いま、しみがもっと少なかったかもしれないですね。でも、年寄になったいまでも本を読んで勉強になりました」と語りました。

出典: FANY マガジン
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こうしたやりとりからも、年齢差を越えたお互いへの信頼感が感じられる2人。ユニットを組んだきっかけを問われると、しゅんPはこう説明しました。

「7年前くらいに、東京の芸人がみんなお世話になっている山田ナビスコさんという構成作家さんが、『養成所におばあちゃんが入ってきたんだけど、絶対にしゅんPと合うと思うんだよ。診察とかして動画にしたらバズると思うし、老人ホームの営業にたくさん行けるよ!』って言われたんです」

そのときは「そうかぁ」と、そのまま話を流していたしゅんP。5年ほどあとに、おばあちゃんと会う機会があり、「この人か!」と一緒に写真を撮ってツイッター(現X)にアップしたら、これがバズったとのこと。

「いまのこの時代に必要とされているというか、いい感じのコンビなんだなぁと思って。ちょうどその1週間後くらいがM-1グランプリ2022のエントリー締め切りだったので、ちょっと出てみようかと思い、僕から『コンビ組みませんか?』とお誘いしたのがきかっけです」

出典: FANY マガジン
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この話に、おばあちゃんが、「そうですね。M-1のネタも当日に電車の中で合わせて……」と振り返ると、しゅんPは「いや、違いますね(笑)。1回戦の前にちゃんとライブに出させてもらいましたよ」と、すかさずツッコミ。ふつうの会話が自然と漫才になってしまうやりとりに、しゅんPは「本当、おばあちゃんは面白いですよ。だから、僕は高齢者のスターになれる存在だと思っています」と、改めて語りました。

「いまできることを楽しむ!」

このあとは、お客さんを入れて2人のトークイベントが開催されました。司会進行は、2人の先輩のピン芸人、ピクニックさんです。本の説明やお互いの読んだ感想を語り、会場は大盛り上がりでした。

この時間で印象に残った話が2つあります。

まずは、ネタ合わせするのがカラオケ店という話。2人はネタ合わせをする合間に、たまに歌うこともあるそうで。そこで、おばあちゃんが歌う曲は、島倉千代子さんの「東京だョおっ母さん」だそうです。お客さんの中でも知っているのは1人だけでした。これは、ネタ合わせがはかどりそうですよね(笑)。

もうひとつは、養成所を卒業して、3年ほどは自分が芸人だとわかっていなかったという話。

月に1回だけ渋谷の劇場に出ていたときに、同期の男の子に「あなた将来、芸人になるつもりなの? お母さんも心配しているでしょ?」と聞いたら、「何を言ってんの? おいら芸人だぜ」と言われたことで、「え? 私も?」となり、自分が芸人だったと気づいたみたいです(笑)。

出典: FANY マガジン
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続いては、おばあちゃんがどうしてこんなに元気でポジティブなのかをしゅんPに調べてもらう、このイベントならではの企画「公開診療」が行われました。いろいろと問診して、出た診断結果は……。

「何回転んでも起き上がるという、前向きな心を持っています!」

会場は静まり返ってしまい、慌ててしゅんPが「これ難しいですね!」と言うと会場は爆笑でした(笑)。

でも、ここでわかりました。

おばあちゃんは考えても解決しないことは考えない。たとえば、病気になって、死ぬのか? 生きるのか? がんなのか? ……と、いろいろ考えても仕方がないと。だったら、思いっきり生きていくしかないという考え方をしているみたいです。歳をとれば、身体にガタがくるのは当たり前。歩けていることがもう幸せなのだと。いまできることを楽しむ。この考え方が、おばあちゃんの前向きな姿勢の秘訣なんです。

出典: FANY マガジン
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最後に、2人はそれぞれの目標を宣言しました。

「個人ではR-1、おばあちゃんとのコンビではM-1で決勝に行きたいです。あとは、こういう本とかイベントとか講演会でもいいので、みんなに健康や美容のことについて伝えていきたいです」(しゅんP)

「M-1、ついていきます!」(おばあちゃん)

2人とも力強い言葉を放っていました。もしかしたら、いつの日かM-1グランプリ史上最高齢優勝をするおばあちゃんが見られるかもしれません。

書籍概要

『40歳を過ぎるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?』

発売日:4月23日(火)
定価:本体1,540円(税込)
著者:しゅんしゅんクリニックP
発行:ヨシモトブックス
発売:株式会社ワニブックス

『ひまができ 今日も楽しい 生きがいを ー77歳 後期高齢者 芸歴5年 芸名 おばあちゃんー』

発売日:3月12日(火)
定価:本体1,500円(税込)
著者:おばあちゃん
発行:ヨシモトブックス
発売:株式会社ワニブックス

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