「東京にエバースありと言われる存在になりたい」 ネタバトルで令和ロマンにも勝った注目若手コンビに深掘りインタビュー!

いま、お笑い好きの間で「次に来る」と囁かれているのが、エバース(佐々木隆史、町田和樹)です。『M-1グランプリ2023』敗者復活戦で鮮烈な印象を残し、今年2月の単独ライブは配信チケット3000枚という驚異的な売り上げを記録。3月には所属する神保町よしもと漫才劇場のネタバトル「Jimbochoグランプリ」で、M-1王者の令和ロマンを抑えて総合優勝を果たしました。ノリに乗っている彼らの素顔を、単独インタビューで深掘りしました。

出典: FANY マガジン
出典: FANY マガジン エバース(左:佐々木隆史、右:町田和樹)

「同棲カップル」のパターンで始まった共同生活

――2人ともNSC(吉本総合芸能学院)東京21期生で、芸歴9年目です。そもそもコンビ結成の経緯は?

町田 NSC時代の最初は、お互い違うコンビを組んでいたんです。「相方探しの会」みたいなのがあって何人かでメシに行ったんですが、僕はそのうちの1人と組み、佐々木はそこにいた別のやつと組んだ。

佐々木 それで、僕が組んでいた相方がわりとすぐに辞めるとなったときに、そいつが「俺の同期で相方探している奴いるから」って言って、町田をつなげてもらったんです。

町田 そう、そんな感じでした。僕も前のコンビではボケをやってたんですけど、ボケじゃ無理だなって最初の時点で思って、佐々木と組んでからはずっとツッコミです。

――コンビで一緒に住んでいると聞きましたが、それはなぜ?

佐々木 芸歴5~6年目ぐらいに世の中がコロナ禍になってしまい、ほんとにやることがなくなってしまって。そのころ町田は神奈川県にある実家に住んでいたんですけど、ふつうに僕の家に泊まってネタ合わせしたり、そこからライブ行ったりみたいなのが増えて。「それならいっそ住んじゃえば」って、家賃折半で一緒に住み始めたんです。

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町田 まさに男女カップルの同棲の始まり、みたいな感じです。半同棲からの共同生活。僕がお邪魔した感じです。それから3~4年、いまでも一緒に住んでます。なんかね、ビルみたいな家なんです。マンションでもアパートでもなく、ビル。

佐々木 一応、2部屋あって。ちょっと広いキッチンのある部屋ともう1部屋。

町田 ダンベル型っていうらしいんですけど、廊下が中央にあって、2つの部屋をつないでいる形で。

佐々木を激怒させた「キムチ鍋事件」

――2人一緒に住んで、ネタ合わせする時間も増えて、コンビとして成長した感はありますか?

佐々木 いや、でも、ネタ合わせが増えたってほどでもないので。たぶんあんまり変わらなかったと思います。コンビでの仕事で行き先が同じ劇場だとしても、家を出るのも帰るのもバラバラですし。

町田 同じ家に住んでいるんで、ネタ合わせで集まるのは楽ですけど、そのぐらいですね。そんなめちゃくちゃ一緒に過ごしているわけでもなく。メシもバラバラですし。

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佐々木 それで思い出したんですけど、僕が新型コロナに罹患したとき、めちゃくちゃしんどい状態で。40度近い熱が出て、救急車を呼ぶべきかってくらいだったんです。そのときに、町田の部屋からキムチ鍋の匂いがしてきて、「あ、もしかして体力つけたほうがいいと思って作ってくれたのかな」と思ったんです。そしたら、匂いだけはするのに何もなくて。町田はただ自分が食べるためだけにキムチ鍋作って食べてた(笑)。めっちゃムカつきました。

町田 いやいや、同居の人がコロナになったら、うつるんじゃないかと怖いから。それで汗をめっちゃ出して、俺だけでも助かろうと。

佐々木 せめてお椀1杯分でも、「お前も食べて精をつけたら」って扉の前に置いといたらいいんじゃないかと思うんですけど。

町田 自分が罹らないようにと、自分のことだけで必死でした(笑)。

「操り人形」にならない理由

――ネタは佐々木さんが作っているんですよね。

町田 ネタは佐々木が考えていて、俺のツッコミの部分に関しては、こんな感じのことを言ってくれ、という感じです。内容は変えずに言いやすいようにアレンジしてと。

佐々木 うん、まぁそうですね。いまカッコつけて「言いやすいように」と言ってますけど、最終的には僕がワードも全部考えて決めてます(笑)。とくに賞レースとかでやるネタは一言一句決めるので。町田が言っているのは、どちらかと言うと新ネタのことですね。

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――それは言い方の感じというか、ニュアンスについても佐々木さんが決めるんですか? 

町田 はい、こんな感じでとか言われますね。

佐々木 別に操り人形みたいに全部決めているわけではなくて。町田が町田っぽくなるのはどんなだろうっていう感じで作っているので。

町田 確かに「俺の思うこういうツッコミになれ」という感じで指示されることはないです。俺がイヤなことを無理やりやらされるとかはない。

佐々木 操り人形って、ボケが操られている状況なんですよね。ツッコミの人がネタを作っていて、ボケが言わされているパターンがそうなりやすい。うちは逆なので。僕がこういうことを言うネタがやりたいっていう形。無理にボケるわけでもないから、町田がイヤだというところがないんですよね。

町田 思っていないことを言わされているわけでも、自分じゃない人を演じているわけでもないので、たぶんそこでストレスにはならないんですよね。

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――だから生活も一緒にできるのかもしれないですね。自分じゃない人になれとネタを作る相方に言われていたら、一緒に生活するのは苦しそうですもんね。

町田 それはあるかもしれません。

佐々木 ツッコミなんで、否定している側だから。とはいえ……町田が上になることは、ふだんの生活の中でもないかもしれません。

町田 ないです、ないです。

――(笑)。では、お互いのいいところは?

町田 生活は僕のほうがちゃんとしているかもしれないですね。ゴミ出しとか洗濯とか。そういう部分は。カネとかは佐々木はしっかりしてますけど。
佐々木のいいところは、義理堅いというか。面倒見がいいから後輩にも慕われてますし、お世話になった人にもちゃんと返そうみたいな感覚を持っているところはあるかなと。

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佐々木 町田のいいところか……うーーん、なんだろうな(しばし考える)。

町田 こういうのは早く言ったほうがいいよ。

佐々木 うーーん、僕の意見を尊重してくれることが多い。あんまりそこで町田の我が出てモメるみたいなことはないので。それだからネタとかも好き勝手やれているのかなって思いますね。

M-1敗者復活戦は「あ、こんなウケてたんだ」

――昨年の『M-1グランプリ2023』では準決勝まで進みました。自分たちでも手ごたえを感じていたんですか?

佐々木 そうですね。所属している神保町よしもと漫才劇場だけでなく、ほかの劇場でも、わりと手ごたえを感じることが出てきていました。

町田 準決勝は行ったことのないステージだったので、自分たちでも行けるのかなってよくわからなかったんですけど、オズワルドの伊藤(俊介)さんが「お前ら、準決勝は絶対行けるよ」と言ってくれていたので、そんな感じで見てくれているんだなと。

――その後の敗者復活戦は、決勝行きこそ叶いませんでしたが、ケンタウロスネタで見事にウケをさらって爪痕を残しましたね。会場がザワザワしていたんじゃないかなと思うぐらい場の空気をかき乱したトム・ブラウンのネタの後の出番だったわけですが、緊張はしましたか?

佐々木 準決勝まで行ったのが初めてだったので、当然、敗者復活も初めてで。いろんなことが初めてすぎて、なんも考える余裕がなかったですね。とりあえず、ミスらずにベストパフォーマンスを目指そうと。

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町田 あんまり細かいことを気にしてもしょうがないなと。前のトム・ブラウンさんのネタは知っていたので、会場の空気がそんな感じになるのもわかっていたので。

佐々木 また当日のあの会場(新宿住友ビル三角広場)が、M-1の歴史の中でも初めてとなる場所で。僕らがBブロックだったんですけど、先にやったAブロックの人のネタを見ていて、早口だとけっこう聞き取れないなと感じたんです。それで町田と「(テンポを)だいぶゆっくりやろう」と事前に話し合っていたんです。それが、運よくいいほうに転んだのかなって思います。トム・ブラウンさんの後でも落ち着いてやっているように見えたのかもしれないです。
でも、ステージ上だとウケたのかどうかよくわからなくて。あとで動画を見返して、「あ、こんなウケてたんだ」と思いました。だから、結果出る直前までトム・ブラウンさんに負けていると思ってあの場にいたので、勝てたときは驚きました。

町田 うん、ハズしはしなかったけど、ウケたかどうかはわからない感じだった。あれの反響はすごくて。いろんな方から「めっちゃ言われていると思うけど、めちゃ面白かったよ」と言っていただけました。

佐々木 もう数えきれないぐらい、会う人ほぼ全員に「面白かったよ」と言ってもらえましたね。

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――今年ももちろんM-1優勝を目指していると思うんですが、これまでのところ、どんな調子ですか?

佐々木 去年は準決勝以上っていうのが未知の世界だったので、何もかもが初めてで。一昨年、準々決勝で落ちたときに「あ、でも全然、戦えるな」と思って、1年やって準決勝には行けたので。準決勝で落ちたけど、敗者復活戦でも「あ、俺らがやっていることは間違ってはいないんだな」とわかったので。今年は準決勝でもいちばん面白いと言われるような準備はしているつもりです。

町田 神保町以外の劇場に出させてもらうことも増えてきたので、それができるようになったのは大きいし、ありがたいです。

夢は「サバイバル企画」と「始球式」

――「憧れる先輩」みたいな存在はいますか?

佐々木 囲碁将棋さんみたいな感じは憧れます。芸人みんなから「いちばん面白い漫才師は囲碁将棋さん」と思われている漫才師。後輩たちからそう思われるような漫才師になりたい。「東京にはエバースさんいるからな」と言われるようになりたいですね。

町田 僕ら世代は、やっぱり囲碁将棋さんが憧れなので。でも、僕はもちろん漫才もしていきたいですが、テレビとかにも出たいです! ロケもいいですし、この間、ふと思ったのがサバイバル系とかも出てみたいなと。

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佐々木 サバイバル系? え、無人島生活とか?

町田 ふと思ったのよ。俺、素潜りとかもできるし、けっこう無人島なら活躍できるんじゃないかと。なんでも食えるし。いける気がする。

佐々木 ああ、確かにどこでも寝れるし。町田の無人島生活(笑)。めっちゃオモロいけどな。

――同居しているくらいなので、コンビで無人島生活もあり得ますよね。

町田 コンビでも全然ありだな。

佐々木 そんなんなったら、いちばんですけど。……いや、あんまりやりたくないかな(笑)。できれば町田がやっているのを、安全な場所で見ているぐらいな感じがいいです。
それで言うと、僕は始球式がやりたいです。子どものころはピッチャーをやっていたんですが、最近、粗品さんのYouTubeで粗品さんに野球を教えるみたいな企画で久々に投げたら楽しくて。それで「プロ野球の始球式、やってみたいな」と思いました。高校はけっこう強いところに入って、エースになれなくて外野のレギュラーで。高校時代は野球しかしてなかったので。

――2月の単独ライブも配信チケットが3000枚も売れるなど絶好調で、がぜん注目度が上がっていますね。5月18日(土)に東京・赤坂の草月ホールで行われるお笑いライブ『千言万語 気鋭漫才師編』にも出演するそうで。ガクテンソクやさや香とも共演するんですね。

町田 そうなんです。ありがたいことに、最近、いろんなライブに出られるようになってきて。だから、今後もいろんなところで結果出して、上の人たちともっとライブで絡めていけたらなって思います。それこそ囲碁将棋さんとか、自分が芸人になる前に見ていた人たちと同じ舞台に立てたらうれしいです。

佐々木 単独ライブに関しては、タイミングがいろいろちょうど良かったというのはあったと思うんですけど、今後の目標としてはやっぱり全国ツアーとかやってみたい。僕の地元の宮城でのライブもできたらいいですし、町田の地元の神奈川でやるのもいいなと。

出典: FANY マガジン
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あと、僕らと素敵じゃないかさんと金魚番長、マリーマリー、ボニータの5組で「でら漫才」というユニットのをやっているんですけど。みんながイイ感じに結果を出して、ミルクボーイさんや金属バットさんがやっている「漫才ブーム」みたいに、10年間かけて全国をめぐるツアーみたいなのができたらいいなぁって思います。

町田 あれはすごいよね。みんなで結果出して、みんなで47都道府県まわるという。あんなのできたらいいよね。ずっとやってきたメンバーでまわれるようになったらいいなと思います!

公演概要

『千言万語 気鋭漫才師編』

日時:5月18日(土) 開場12:30 開演13:00
場所:草月ホール
チケット:前売3000円 当日3500円
出演者:ガクテンソク、さや香、エバース、インテイク、ストレッチーズ ほか

FANYチケットはこちらから。

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