デビュー10年以内の若手芸人が漫才、コント、ピン芸などで競う〝お笑い異種格闘技〟『第47回ABCお笑いグランプリ2026』は、芸歴8年目のゼロカラン(ワキユウタ、たいが)が頂点に立ちました。

涙の優勝から一夜明けた7月27日(月)、賞レースで初のタイトルを獲得した彼らは、いま何を思うのか。ゼロカランの2人に話を聞くことができました。
優勝後、2人が交わしたLINE
――優勝から一夜明け、先ほどは「神保町よしもと漫才劇場」で公演MCも務めていました。ホームに戻ってみてお客さんの反応はいかがでしたか?
ワキユウタ(以下、ワキ) 「おめでとう」とは言ってないけど、拍手の厚みというか、しっかり音を鳴らしている感じもあって、なんか照れくさかったっすね。
たいが ほんまに人をお祝いするときの拍手ってあるじゃないですか。顔より上で手を叩いている人もおって「優勝したんやな」、「愛されてるな」と思いました。
――心境的には落ち着いてきたところですか?
ワキ そうですね。昨日の帰りの新幹線で、お祝いメッセージの返信やエゴサをしながらも少しずつ実感が湧いてきました。でも、2時間の移動の間に冷静になって、「これで浮かれてたらアカンな」と思い始めました。
――もう次に向けて動き始めたんですね。
ワキ ABCは絶対に獲りたかったので、ほんまはめっちゃ喜びたいけど、性格的にサボっちゃいそうで……。このあとの『M-1グランプリ』につなげないと意味がないし、すぐに切り替えないとなと思いました。

――たいがさんはいかがですか?
たいが 他の媒体ではボケるけど、FANYマガジンなのでボケなしモードでいきますね。
ワキ そっち? FANYマガジンだからこそボケるんじゃなくて?
――(笑)。
たいが それこそバタバタで新幹線に乗ったんですけど、移動中にワキから「切り替えましょう。目指すのはM-1やから」とLINEがきましたね。それはほんまにそうなんで「そうしましょう」と。グッと気が引き締まった状態で東京駅に着いた、という感じです。
優勝につながった2年前の“変化”
――今回初の準決勝進出から、一気に決勝、優勝まで駆け上がりました。なぜ優勝できたのか。漫才に向き合うなかで変化があれば教えてください。
ワキ 面白いと思うことは曲げずにやってきたんですけど、2年前から、ボケやネタなど考える量を増やしましたね。その後は(2025年は)M-1も『ダブルインパクト』もいい感じやったけど、両方とも準決勝で終わっちゃった。「この量やったら足りないんやな。まだ増やさなアカンのか」とゲロ吐きそうになりながらも、さらに増やしていった感じです。
――その思いに至るには何かきっかけがあったのでしょうか?
ワキ 一番デカいのは、金魚番長とかイチゴとか、大阪でいうとcacaoとか……結果を出している同期の存在ですね。金魚番長とは、毎月新ネタ5本をやるライブを一緒にやっているのに差がついた。そこで「金魚番長は自分たちより才能があるから、倍はやらなアカン」って……。
そうやって追いかけることによって、自分たちの意識がだいぶ変わりました。自分は天才じゃないから「この人たちと同じ量やってたらアカンな」と思ったんです。それをやったからこそ「絶対に周りのヤツらよりはやってる」という自信につながりましたね。
――そんな同期とABCの最終決戦で戦えたのも大きいですね。
ワキ めちゃくちゃアツかったです。でも、もちろんここで終わりじゃないというか。アイツらもM-1ですごい結果を残すやろうから、そこで負けたら意味がない。僕らは負けた経験がめっちゃあるから強くなれましたけど、金魚番長もこれでまた強くなるし、絶対に油断したくないって感じです。

――たいがさんは何か変えたところはありますか?
たいが 僕のスタンスとしては、ボケのニンの部分を意識するようになりました。
たとえば、めっちゃボケ主体のライブを毎月1回やっているのですが、そこで得るものがあったし、なんか染み付いてくるんですよね。普通の会話をしているだけでも「ボケてるんちゃうか?」と思わせるくらいがよくて、そういうところを目指しています。
ワキ あとは見た目も変えたりな。もともとたいがはシュッとしてて、短髪で、正当にボケる印象があったんですよ。でも本当はそんなヤツじゃないんで、それこそ2年前に「見た目を変えようか」「自分のボケにあった見た目にしよう」と髪を伸ばし始めました。
たいが M-1に負けてから2年計画で髪を伸ばし始めたんですよ。いまは髪を結んでいますけど、去年のM-1はジョーカーくらいの長さでした。
あと、漫才でめっちゃ動くのもあって、M-1の前に2人でジムに行ってたこともありましたね。最近は通えてなかったんですけど、僕はこの2か月で再開して、メンタルも整いました。
こみ上げた涙、その理由
――今回ゼロカランさんはBブロックで、江戸川ジャンクジャンクさん、センチネルさん、ダウ90000さんと戦いました。どんな心境だったのでしょうか?
ワキ 勝手な考えですけど、「僕らみたいな王道の漫才はABCを獲らないとな」と思っていたんですよ。ABCは大阪の大会で、大阪といえば漫才のイメージがある。だとしたら僕らが獲れる大会はそこやろなと。仲のいいセンチネルとか、江戸川ジャンクジャンク、ダウ90000も怖かったんですけど、「ABCやったら俺らのほうが強いやろ」という自信はありました。それがハマったんで良かったです。
たいが コントの爆発力にはビビっていましたし、センチネルもウケるのは知っているので怖かったです。トミサット(センチネル)とは「お前らと同じブロックになれて良かったわ。一勝確定したわ」と“かましあい”をしていたんですけど、いざ終わったら、そういうボケが一切できなかったです(笑)。
――センチネルさんは事務所ライブで圧倒的な強さを見せていますし、江戸川さんもダウさんもとんでもない面白さですもんね。
たいが ダウ90000は前日まで単独ライブをしていましたよね。
ワキ あれはガッツポーズしました。「よしよしよし。あいつら忙しいぞ」って。

――(笑)。最終決戦は、関係性のある金魚番長さん、豆鉄砲さんとの対決でした。
ワキ 金魚番長が上がって、豆鉄砲がきて、Bブロックはゼロカランかセンチネルがいく……それで戦うのが一番アツいなという話はしていたんで、理想的なかたちではありました。認めている2組に勝てたのが、めっちゃデカいし、うれしい優勝でしたね。
たいが 審査員は絶対に豆鉄砲の漫才が好きやろうし、金魚番長もめっちゃウケてたし、僕らもウケてたし、ほんまにどのコンビが優勝するのか分からなかったです。名前を呼ばれたときは、めちゃくちゃうれしかったですね。
ワキ 「自信がある」とは言うたんですけど、豆鉄砲は『ツギクル芸人グランプリ2025』優勝、金魚番長は『UNDER5 AWARD』、『「マイナビ Laughter Night」第9回チャンピオンLIVE』優勝、しかも人気があって全国ツアーもできる。ずっと負け続けている2組やったんで、結果発表直前までは「また負けるんちゃうかな」と思っていました。2組に初めて勝てたからこそより感動しましたね。
――優勝発表後はワキさんが涙を流されていました。がんばりが報われたこと、ライバルに勝てたことなどもあったのでしょうか。
ワキ 全部重なりましたね。「勝てるんや」と思いましたし、これはさすがに認められたやろ、と思って。
――たいがさんも涙をこらえていたような印象を受けました。
たいが よく「相方が泣いてたら泣かれへん」とかあるじゃないですか。ではなく、ワキが泣いているのを見て泣きそうになりました(笑)。でも、なんか我慢しちゃいましたね。「ボケなアカン」という脳になりました。
優勝後にマッドお笑い特番出演
――そんな喜びの直後に、ニューヨークさんMCの特番『ニューヨークがマンマ・ミーアな新王者を深堀りSP』(ABEMA)にご出演されました。お笑いに特化した番組で、とても面白かったです。
ワキ ああいう大会って負けてる人がイジられて目立ちますけど、僕らもちゃんとイジってくれたんでおいしかったです。すっげえお笑いをやれたから楽しかったですね。
たいが マジでニューヨークさんで良かったですね。あの人らの引き立てのうまさと言いますか……。一瞬で「こいつらはこうしたらいいんやろな」を察知して、すぐにワキのことをイジって(笑)。ワキが生きる感じにしてくれたのはありがたかったです。
ワキ 反応を見てたら「なんだこの企画」「かわいそうだろ」とかあったんですけど、いやいやいや……というか。ほんまにめっちゃありがたかったし、楽しかったんですよ。
たいが 「俺らも一応は言うけど」ってことですからね(笑)。企画でやった「新王者のベストイレブン」(自分たちの強みや武器をサッカーのベストイレブンになぞらえて発表する企画)も楽しくて、大喜利をずっとやっている感覚でした。
ワキ あれはシビれましたね。楽しかったな〜。

――最後に「お笑いPK対決」も行われました。
たいが ただ「おもろいことやれ」ってことだけですからね。
ワキ CMに入っているあいだに説明されたんですよ。「いまから『お笑いPK』をやります。ゼロカランさんはお笑いキーパーをやっていただいて、他の方々はお笑いキッカーで点を決めていただきます」って。なんの説明にもなってない!
――(笑)。
たいが でもその説明の通りでした。間違ってはなかった。
――未見の方はもちろん「かわいそう」と思った方もエンターテインメントと捉えてもう一度見ていただきたいですね。
ワキ そうですね。
たいが あれがおもろいんですよ。
――最後に今後どんな芸人・漫才師になりたいのか教えてください。
ワキ めっちゃ濃いお笑い番組をやりたいですね。全部のテレビに出ながらも、深夜や地方の“何やってもいいレギュラー番組”を持ちたいです。僕、自分が大好きなんで、それを自分で見たいんですよ。あと吉本に入って感じたのは舞台の魅力です。ちゃんとお客さんの前に立って、笑いを浴び続けたいです。
たいが 吉本に入って寄席の魅力に気づいたので、なんばグランド花月やルミネtheよしもとでも、ホームの感覚で漫才ができるようになったら幸せだなと思います。
あとはテレビですね。お笑いはもちろん、恋愛リアリティショーのモニタリングもしたいし、散歩もしたいし、スポーツ番組、やれるか分からないですけど、朝のコメンテーターなど……。『逃走中』とか『ぐるナイ』の「ゴチになります」とか見ていた番組にも出たいです。広告もいいですね。とにかく小さい頃に夢を見ていたスターになりたいです。
文・写真:浜瀬将樹
