桂文枝が80歳最後の独演会で3年半ぶりのネタを披露! 「明日からは米寿に向けて頑張りたい」

7月16日(火)に81歳の誕生日を迎えた落語家の桂文枝が、その前日の7月15日(月)に大阪・なんばグランド花月(NGK)で独演会を開催しました。この日の『傘寿を越えて 文枝自選集・華麗なる独演会』には、ゲストとして林家つる子と桂二葉が出演。文枝は、舞台美術に凝った高座で新作を含む三席を口演し、80歳最後の独演会を自ら盛り上げました。

出典: FANY マガジン
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マネージャーが「新作」をお願い

文枝は、師匠である五代目桂文枝に入門してから57年、学生時代から数えると落語歴は60年になりました。これまでに作った創作落語の数は329席とほかの追随を許さず、いまなお芸の道を邁進するその足取りは軽やか。本番直前に取材に応じた文枝は、心境をこう話します。

「一席目の『妻の旅行』は東京でもやりましたが、最後に披露する『涙をこらえてカラオケを』は3年半やっていません。妻と母が亡くなって、人が死ぬというネタをずっと封印していたものですから。3年半経って、「あのネタ、面白いからやってほしい」という声もありました。また、いままで独演会は二席でしたが、 今回はマネージャーから、落語を三席やってほしいと。そのうち中入り前は新作をお願いします、と。その新作は『約束』いうネタです。昨日も3時近くまでNGKでリハーサルをしていました。今日はほとんど寝ていないですし、このごろ物忘れが激しくて、それがいま心配だなという気持ちです」

出典: FANY マガジン
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舞台美術にも凝った独演会

また、文枝は「『華麗なる独演会』というタイトルにちなんで、舞台美術にも注目してほしい」とアピールしました。

「落語の独演会では初めてですが、金屏風ではなく、仕掛けのある華やかな舞台になっています。花の絵をあしらった舞台美術のなかでも、ぜひ見ていただきたいのが中入り後にお見せする藤の花です。新札の5千円札の裏に大阪の野田藤が印刷されていますが、野田藤は室町時代からある品種です。新しいお札をまだ見ていないという方にも、この舞台美術は見てほしいですね」

独演会の翌日に81歳になることから、文枝は「明日からは米寿(88歳)に向けて頑張りたい」と意気込みます。「500席作るという大きな目標を作ったものですから、健康に気を付けて頑張っていきたいなと思います」と語りました。

出典: FANY マガジン
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『妻の旅行』、新作ネタおろしの『約束』、そして『涙をこらえてカラオケを』と、披露するネタはどれも歌を取り入れていて、歌好きの一面も垣間見られます。文枝は「今日は三席あるので、最後まで体力や声がもつか。80歳最後の公演なので、死力を尽くして頑張りたいと思います」と改めて気合を入れました。

傘寿の「黄色の着物」は見納め!?

開場時間を迎えたNGKには、懐かしい昭和のヒット曲が流れます。そして幕が上がると、近代建築のような舞台美術の前に高座があつらえてあり、その壁面は“無地”です。

文枝はまず、『妻の旅行』を口演。「待ってました!」の声も飛び交い、会場は一気に活気づきます。文枝は「黄色は傘寿の色ということで、明日81歳になるので今日で見納めです。次は米寿ということで、この着物も“ベージュ”に染めようと思います」と駄洒落を交えて会場を暖めます。

『妻の旅行』では定年退職を迎えた夫の悲哀を、笑いを交えて切々と語る文枝。妻の底知れない“圧”でも客席の共感を呼びました。

出典: FANY マガジン
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続いては1人目のゲストの桂二葉です。無地だった舞台美術の壁に花が描かれています。甲高い声で元気よく挨拶した二葉は、「いまの若手は天満天神繁昌亭で勉強させてもらっています」と文枝に感謝。上方落語の常設小屋を建てたいと東奔西走し、2006年9月15日に繁昌亭の開場にこぎつけた文枝の功績を称えました。

ネタは『天狗さし』。身振り手振り、擬音に巻き舌と豊かな表現力で、‟アホ“を愛嬌たっぷりに描きました。

出典: FANY マガジン
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中入り前は、文枝が新作の『約束』を披露。文枝は「2作目はネタおろしなので、聞きづらいところもあるかもしれませんが、気に入っているネタです」と自信をのぞかせます。「南米のコロンビア共和国からこのお話は始まります」と、観客たちは時空を超えてコロンビアの大地へ。50年ぶりにコロンビアから祖国の日本へと帰ることになった‟丹波くん“の故郷を巡る旅は、意外な結末を迎えました。

イントロ中の名調子で拍手喝采

中入り後にはもう1人のゲストである林家つる子が登場。舞台美術はさらに変化し、朝顔と野田藤が描かれています。「学生時代に文枝師匠とお会いしまして……」と振り返るつる子は、「今日は貴重な機会なので新作落語をします!」と少女漫画に出てくるようなベタな出来事が次々起こる、まさにマンガみたいな展開の『ミス・ベター』を全身で熱演しました。

出典: FANY マガジン
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トリは文枝の『涙をこらえてカラオケを』です。約3年半、封印していたネタですが、昭和歌謡を多用している噺だけに、なんとも賑やか。カラオケにハマった義父と、無茶なリクエストをあの手この手で回避しようとする嫁との攻防戦で客席が沸きます。クライマックスでは、イントロ中に文枝による名調子もあって拍手喝采。大きな笑い声に包まれ、陽気にオチをつけました。

出典: FANY マガジン
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最後に文枝は「明日から81歳です。できる限り面白いものをいっぱい作って、明日からも頑張りますのでよろしくどうぞ!」と力いっぱいに挨拶。客席から温かい拍手が沸き起こり、傘寿最後の独演会は幕を降ろしました。

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