先日、突然の出家で世間を大いに驚かせた千原せいじ。そんなせいじのYouTubeチャンネル「せいじんトコ」で、12月18日(水)に注目の動画が公開されました。なんと、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた福島第一原子力発電所(以下、福島第一原発)の内部を、せいじが潜入レポートしたのです! いつも以上に多くの人に見てほしいと息巻くせいじに、企画を実施した理由や撮影に至った経緯、そしてせいじがこの動画に込めた思いなどをたっぷり聞きました。
空気的にふざけられない
今回の動画では、せいじは後輩芸人である黒ラブ教授とともに、経済産業省資源エネルギー庁の担当者の案内のもとで厳重にセキュリティ管理された福島第一原発の中心部にまで足を踏み入れています。
実は黒ラブ教授は「東京大学大学院情報学環 客員研究員」「国立科学博物館認定サイエンスコミュニケータ」など、アカデミックな肩書きの持ち主。今回の企画は黒ラブ教授の人脈で実現しました。
──今回の動画は、すごく臨場感がありましたし、貴重なものを見ているんだという実感が強く湧く動画でした。
ありがとうございます。そう思ってもらおうと思って撮りましたからね(笑)。気合が違いました
──今回は笑いを少し封印して、まじめに取り組んでいる姿が印象的でした。
いや、もう空気的にそうなりますよ。やっぱり、世界に注目されて、日本が緊張していた当時(2011年の東日本大震災発生時)の光景って、もう13年も経つのに覚えているんですよね。現地を訪れるとそれがよみがえってくる。今回は当時、ニュースで見ていた場所も見られたりして、もうすごかったです。
──企画の中身については、実際に動画を見ていただくとして、ここでは企画実現の経緯などについて教えてください。今回の企画のキーマンとなった黒ラブ教授とは、どのような関係なのでしょうか。
彼はだいぶ後輩で、僕の息子が小学生だったときに、夏休みの研究とかを手伝ってもらっていたんですよ。そうすると、学校の先生が理解でけへん研究を出してしもうたりして、先生にはすごく嫌われたみたいです(笑)。そりゃ、そうですよね。東大の研究室におるヤツと一緒に宿題やってんねんから。
だから、息子はスーパーコンピュータ「京」の中に入って、「京」を裏側から見せてもらったり、修理のときに見学させてもらったりもしました。
吉本は黒ラブ教授を“ムダ使い”している
──今回以外にも、黒ラブ教授とそういう“ふつうは絶対に入れない場所”に行った経験があったんですね。
そうです、そうです。当時YouTubeみたいなものはやっていなかったので、残っていないだけです。黒ラブ教授といると、けっこうどこでも入っていけるんですよ。吉本は、そういうところをムダ使いしているというか、アホやと思いません? 黒ラブ教授しかできないことがいっぱいあるんです。ニュートリノの実験をしているところとかも、あいつ入れるんですよ。
でも今後、黒ラブ教授に何か依頼したいなら、僕を通してもらわないとダメです。勝手に黒ラブ教授にアポ取ったりしたら、こっちは出るとこ出ますよ。あいつは俺のもんやから(笑)。
──どういう経緯で知り合いになったんですか?
「特殊能力を持ってる芸人集まれ」というイベントをやったことがあって、その参加芸人の1人やったんですよ。ほかに医者や、弁護士、元国税局職員なんかもいたんですが、医者はまあまあいたりするじゃないですか。でも、東大の研究室におるヤツなんて、よくわからないでしょう? 僕も科学に興味があるほうなので、仲よくなりました。
あいつと一緒にいると面白いですよ。たとえば、いろいろなメディアで「これは体にいいですよ」とかって、紹介されてるものがたくさんあるじゃないですか。僕はすべて黒ラブ教授に聞いて、情報の裏取りをしているんです。
僕が聞くと「エビデンスを確認してみます」って調べてくれて、「こういう論文が出ていますよ」とか教えてくれる。だから、「このテレビ局は非常にウソが多いな」とか「この出版社はおカネになるなら何でもやるんだな」とか、僕、全部わかっています。言わないだけです。
だけど、あいつ自体は科学にしか興味がないので、純粋に科学の楽しさを広める活動をしていますね。
「これを断るヤツはおらん」
──それで、今回はなぜ福島第一原発に行くことになったのでしょうか。
僕がこうして科学に興味を持っていることを知っているので、黒ラブ教授がときどき声をかけてくれるんですよ。「こういうのがあるんですけど、興味ありますか?」「行ってみますか?」って。だから、いつも黒ラブ教授の声かけ待ちなんです。今回もそんな始まりでしたね。
──黒ラブ教授さんは、いろいろなところにせいじさんを連れていきたいって思っているんですね。
喜ぶから嬉しいんちゃいます? 科学的にすごいものを見たりすると「何やこれ!」ってリアクションがええから(笑)。
──今回は、大きな損傷には至らなかった5号機の見学がメインですが、そこでも使用済みの核燃料プールや、完全防備のうえで原子炉の真下、格納容器の内部にまで入り込んでいます。こんなに内部まで入れるという話は事前に聞いていたんですか?
いや、そこまではっきり言えるわけないじゃないですか。内部のスケジュールとかすべて機密ですもん。見たことがないセキュリティでしたよ。世界がほしがる技術があるわけですし、また、燃料がまだ残っているという危険もあります。ここを攻撃されたら終わりですからね。
──今回、かなり内部まで見られたというのは、経済産業省資源エネルギー庁の担当者の立会いも大きいんですよね。
あの方が一緒に行ってくれたから、いちばん奥のほうまで行けたんだと思います。あの人がくると、現場がすごくざわつくんですよ。「なぜ、あの方が」って(笑)。
──芸人のYouTubeで動かせるレベルの方ではないんですね(笑)。今回、黒ラブ教授から最初に福島第一原発の内部に入れるという話があったときは、率直にどう思いましたか?
いや、これを断るヤツおらんやろって。
──たとえば、“危険”みたいなことはよぎりませんでしたか?
危険なわけないでしょう! 事故から何年経ってるんですか。まあ、もちろんそれぞれ考え方はあるのでね。でも、僕は全然気にしないタイプなんで。
震災時の光景が鮮明によみがえった
──実際に現地を巡ってみた感想は?
先ほども言いましたが、鮮明に事故当時の記憶がよみがえってきました。事故のニュースが流れて、福島の知り合いや、福島に関係する人たちからバンバン状況連絡があって、このあと、どうなってしまうんやろうなって……。
僕は震災の2日後にアフリカに飛んだので、震災の状況はフランスのニュースで見ていたんです。日本ではカットされるような場面も、フランスではバンバン流していて、それは衝撃的でした。女性キャスターが泣きながら何かしゃべっていたり、そういうことがどんどんよみがえりましたね。
それから、事故の暴走を止めるために尽力しはった人たちの話も聞いたので、その方たちのことを思うと、いたたまれない、ありがたい気持ちでいっぱいになりました、その方々がおられたから、最小限の被害に抑えることができたわけで、心からありがとうございますしかないです。
あんなに狭くて暗い現場で、人力でバルブを開けに行ったっちゅうねんもん。信じられへんわ。「僕が行きます」って名乗り出る方が何人もいたっていうんです。皆さん責任感が強くて、本当にすごいなって思ってね。
僕は原子力推進派でもなんでもないけど…
──動画のなかでも、この経験を未来に生かさなくてはならないと強く語っていましたが。せいじさんが視聴者に望むことはありますか?
人間って、知識がないことを理解しようとすると、自分に近いものをチョイスするんです。たとえば、インターネットで僕を調べようと思ったら、僕を好きな人は「千原せいじ いい話」って入れるし。嫌いな人は、「千原せいじ 事件」とか入れる。人間は、自分と同じ思考を持った人とつるみたいとか、理解し合いたいみたいなところがあるので、どんなことでもアンチは必ず存在するんです。
原子力についてもそうです。ネガティブな人はどこまで行ってもネガティブで、理解しようとしない。ただ、真実、事実はこれだよ、ということだけは理解してほしいなと思います。
僕は原子力推進派でもなんでもないですけど、あのようなことが二度と起こらないように、そして次の段階にアップデートできるように、いまも延べ4000人以上の方々が現場で日々尽力されている。これはウソじゃないし、理解してほしいなって。
こういうことにフェイク情報やアンチはつきものですが、アホなフェイク情報ほど信じやすいじゃないですか。だから、アホが言うてる話は信用せんこっちゃっていうことです。
だって、僕らは行ってるんやから。行ってる僕らにああだこうだ、わけのわからんヤツから聞いた情報で戦ってこられても、知らんてそれは。僕らは行って、見て、何やったら触ったんやから。
YouTubeを見ているヤツのまわりには、黒ラブ教授みたいな専門家はおらんやろうから、なかなか適確な情報は入りにくいでしょうけど、それなら黒ラブ教授に聞け! って言いたいです。そして今回の動画は、ふだん「せいじんトコ」を見ていない人も含め、多くの方々に本当に見てほしいですね。
YouTube「せいじんトコ」はこちらから。