かつての鹿児島県知覧町で「富屋食堂」を営み、戦時中に特攻隊員たちから“母”と慕われた鳥濱トメの半生を描いた舞台「Mother~特攻の母 鳥濱トメ物語~」が3月19日(水)~23日(日)まで、東京・新国立劇場小劇場で上演されています。初日の本番前に行われた公開ゲネプロの挨拶では、今回の公演からプロデューサーも兼務したペナルティ・ワッキーや、主役の“鳥濱トメ”を演じた浅香唯が挨拶で感極まって涙を見せました。ゲネプロ終了後、ワッキー、浅香のほか、舞台初出演となったジャングルポケット・太田博久、プロスケーターの安藤美姫が取材に応じ、舞台への思いなどを語りました。

初舞台のジャンポケ・太田は物語のキーマン
物語は、日本が敗戦したあとの「富屋食堂」から幕開け。戦時中、軍指定食堂として、多くの特攻兵が集ったこの食堂で、女主人のトメと警察署長が話をしています。かつて「町の誉れ」と称えられていた特攻隊が、敗戦後には「特攻なんてやらなければ……」と言われることを嘆く署長。
果たして、特攻隊とはなんだったのか――。ここから戦時中と戦後を行き来しながら、家族を想い、仲間を想い、国の未来を想い、尊い命を散らした若き特攻隊員たちの物語を綴ります。
舞台初挑戦のジャンポケ・太田が演じたのは、確固とした信念をもって特攻隊に志願した朝鮮出身の“金山文博”。他国にルーツを持つがゆえ、周囲と一定の距離がありながらも、トメから特に大きな愛情を注がれた人物です。

物語のキーマンの1人となる金山は、舞台初挑戦の太田にとってなかなかの難役。しかし、ワッキーが「『Mother』の中でも名シーン」と語る、金山が特攻隊に志願した理由をトメに切々と語るシーンで、“役者・太田博久”の実力がいかんなく発揮され、観る者の心を大きく動かします。
同じく初舞台の安藤が演じるのは、第百十七振武隊を率いる少尉・久保田利雄(ワッキー)の妻・喜美子。久保田少尉は、特攻隊の大義を信じて後輩たちを鼓舞し、一方で自らの悲しみを隠して最後まで喜美子を思いやる人物です。安藤は、夫の気持ちを汲んで見送る喜美子を、慎ましくも凛と演じ切りました。

浅香唯「舞台上で涙は見せないぞという思い」
小柄な浅香からあふれ出る“トメ”の大きな愛情が作品を包み込み、客席のあちらこちらからすすり泣きの声も聞こえます。ワッキーがこだわって演出した“教練”(軍人たちが行っていた筋力トレーニング)による、オープニングで見せる兵隊たちのキレのある動作や発声も見どころです。
ゲネプロ終了後の囲み取材でワッキーは「1年かけて準備してきたものが、今日、初日を迎えるということで、嬉しさと不安といろいろな感情がありますが、でもいちばん嬉しさが勝ちますね」と笑顔を見せました。
ジャンポケ・太田は、舞台セットも役者の熱量も本番さながらで行うゲネプロを初体験し、「絶対泣いちゃいけないところで泣きそうになっちゃって、(感情を抑えるために)ちびまる子ちゃんのことを考えていた瞬間がありました」と明かして笑わせます。
以前行われた取材会で、「芝居をしながらつい泣きそうになってしまう」と明かしていた浅香は、「トメさんは明るく元気で特攻隊を見送った方なので、私も舞台上で涙は見せないぞという思いで、立派に鳥濱トメさんを務めさせていただきたいです」と意気込みました。

安藤は、実弟や娘が過去の公演に出演していた縁で、この舞台を何度も観てきたそうです。今回、初めて演じる側に立ったことについて、「これまでは(フィギュアスケートで)言葉なく人にメッセージを伝える表現をしてきましたが、セリフがあって演技をするのは、また違う緊張感がありました」とコメントしました。
安藤美姫へのまさかの“ダメ出し”とは?
ワッキーは、今回初参加となった太田と安藤について、「2人とも僕がキャスティングしましたが、間違いなかったと思います!」と自信を覗かせます。
「安藤さんは内に秘めているものが熱くて、僕の妻を心から受け止めて演じてくれているなと思いました。太田は稽古に参加できる機会がいちばん少なかったなかで、よく頑張ったと思います。体育会系で特攻隊が似合うだろうと、舞台に出てほしくて前の公演を観に来るよう誘いましたが、今回、これぞ金山(太田の役名)だというところを見事に演じてくれています」
そんな2人を浅香も絶賛しました。
「安藤さんが芝居をされるというのが最初はピンと来なかったのですが、数年前の稽古でお付き合いしてくださったときに見事に役になりきっていたので、さすが“世界の安藤”だと思いました。また、私はお笑いが大好きなので、太田さんとご一緒できるのがすごく嬉しかったのですが、こんなにすばらしい演技をされるんだと驚きました。太田さんのお芝居に引っ張られて、金山さんに対するトメさんの思いが引っ張られていきました」

このコメントを聞いた、太田がこう意気込みます。
「ワッキーさんに誘ってもらって、僕が足を引っ張ってはいけないというプレッシャーが大きかったのですが、これまで『Mother』 に携わってきたみなさんが、『金山はこういう人だよ』『こういう思いを持っているんだよ』というのを教えてくれて、ちょっとずつ自分なりの金山が構築できました。いまは、僕が以前に舞台を観たときと同じ感動を持って帰っていただきたいという思いです」
何度もこの舞台を観てきた安藤は、自身が演じる喜美子のシーンがもっとも心に残っていたと語ります。
「あまり接点が持てない夫婦でしたが、最後まで愛し合って、言葉がなくても通じるものがある愛の大きさ、強さ、優しさを1人でも多くの人に残せる演技をしっかりしていきたいです」
一方で、安藤は演出家から「足がきれいすぎる」と“ダメ出し”されたそうで、ほかの3人は爆笑。ちょっとした足の運びが美しくなってしまうそうで、「毎回注意されるので、そこはめちゃくちゃ練習しました」と話すと、ワッキーが「練習するところがおかしいよ!」とツッコみました。

「Mother~特攻の母 鳥濱トメ物語~」の劇場チケットはすでに完売。現在、3月22日(土)の2公演の配信チケットが発売中です。
配信概要
アース製薬100周年presents 「Mother~特攻の母 鳥濱トメ物語~」
配信日程:3月22日(土)B班 13:00開演/A班 18:00開演
上映時間:2時間40分予定(※休憩含む)
配信チケット料金(税込):3,000円
出演:浅香唯、ワッキー(ペナルティ)、太田博久(ジャングルポケット) 、安藤美姫 他
主催・企画制作:株式会社エアースタジオ
特別協賛:アース製薬株式会社
協力:吉本興業株式会社、鳥濱拳大、ホタル館富屋食堂、赤羽潤、薩摩おごじょ、特定非営利活動法人知覧特攻の母鳥濱トメ顕彰会、NPO法人国際芸術文化交流振興会、劇団空感演人 他
<配信チケット情報>
配信チケット販売期間:2月21日(金)17:00~3月29日(土)12:00(正午)
視聴可能期間:
B班 3月22日(土)13:00~3月29日(土)23:59まで
A班 3月22日(土)18:00~3月29日(土)23:59まで
※期間中は何度でもご覧いただけます
配信チケット販売:ザイコ
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