大阪府障がい者芸術・文化大使を務める芸人アーティスト・たいぞう。そのたいぞうが、アート×福祉×社会をつなげる芸術家プロダクション「Abeille(アベイユ)」とタッグを組み、お笑いパフォーマンスイベント「たいぞう×放送芸術学院専門学校×Abeille~お笑いとアート~」を開催しました。発達障がい(自閉症スペクトラム:ASD)であることを公にして、「障がい者」と「芸術」、そして「お笑い」に向き合うたいぞうの取組みがかたちになり、障がいがあるアーティストたちとともに、にぎやかなパフォーマンスを繰り広げました。

「僕にお笑いができるなら、みんなもできるかな」
大阪・放送芸術学院専門学校で3月16日(日)に行われたこのイベントは、たいぞうが講師を務める同専門学校に通う、タレント志望の生徒たちの協力によって実現したもの。
たいぞうがこのイベントを開催しようと考えたのは、昨年8月に開催された、障がいがあるアーティストたちとのコラボ展示会「こだわりストたちの世界-たいぞう×Abeille’sアーティストコラボ展2024-」がきっかけでした。そのとき、「僕にお笑いができるなら、みんなも、お笑いができるかな?」と感じたたいぞうが、アーティストの皆さんに意向を尋ねたところ、「やりたい!」との声が。そこで実現に向け奮闘し、ついに開催こぎつけたのでした。

3部構成のイベントで盛りだくさん!
たいぞうがステージに姿を現すと、満席の客席から大きな拍手が起こります。「いっぱい入ってくれてうれしいです!」と、笑顔を見せるたいぞう。ただ、初の試みとなるイベントで、さらに司会にも初挑戦ということで「緊張しています」とも。
イベントは、ネタ、コメディ、アートトークの3部構成。最初のネタコーナーでは、落語、ピン芸、漫談、漫才が披露されます。
まず落語の舞台に上がったのは、放送芸術学院専門学校総合タレントコースの春藤風花さん。「明礬丁稚」を演じ、客席の雰囲気を温めます。次のピン芸に登場したのは、同じく総合タレントコースの西村怜さん。西村さんは脳性まひの障がいがありますが、吉本新喜劇に入団するが夢とのこと。そんな西村さんが披露したのは「ギャグ5連発」! たいぞうとのアフタートークでは、すっちーが目標だと明かしていました。


警官が警察手帳ではなく障がい者手帳を!?
続いては、たいぞうの「アート漫談」。たいぞうが描いた「吉本新喜劇」をモチーフにした作品と、ある日のワークショップでのエピソードを題材にした作品を前に、コンセプトなどを交えて漫談を繰り広げると、観客は爆笑。
そして最後は、落語の春藤さん、ピン芸の西村さんを交えたコンビ「ヒーロー」が、漫才を披露しました。アフタートークでは、ピン芸、漫才に出演してもなお緊張気味の西村さんを、「あれだけ練習したやん!」と励ますたいぞうでした。

そしてネタの最後は障がいがあるアーティスト、Asukaさん、長谷川良夫さん、羽戸康貴さん、ゆめかさんが出演するコメディです。
演じるのは「放芸うどん」。主人のたいぞうとアルバイトとして働く西村さんのもとに、「場所代を払え!」と乗り込んでくるヤンキー女とその手下……という王道の設定で、ステージ上は大騒ぎです。
劇中では「邪魔すんで~」「邪魔すんのやったら帰って~」、という往年のギャグをはじめ、出演者たちによるギャグコーナー、さらには3人の警察官のうち2人が、警察手帳ではなく障がい者手帳を提示するという、この顔ぶれならではのボケも飛び出して、お客さんは大笑いです。なかでも見せ場は、西村さんとヤンキーたちによる殺陣のシーン。3カ月前から練習を重ねたという熱の入ったパフォーマンスで、お客さんを沸かせました。


障がい者アーティストが語るこれからの夢
今回のイベントを締めくくるのは、アートトークです。コメディにも出演したAsukaさん、長谷川良夫さん、羽戸康貴さん、ゆめかさん、そしてこのメンバーも所属する事務所Abeille代表の河瀬有子さんが登壇。それぞれの作品を前に、アートとの出会いや自分の作風、これからの夢などを語ります。
脳性まひの障がいがある長谷川さんは、現在72歳。堂々と正面を向く動物を描いた作品が、見る人の心を動かします。「僕が若いころは、障がい者は存在感がなく、子ども時代にはいじめられることもあった」とのこと。しかし、“自分の存在意義”を何かに託して伝えようと思ったのが、油絵を始めるきっかけに。「今後も障がいを持つアーティストさんたちと絵を描いていきたい」と語ります。

Asukaさんは、やさしい色使いで癒やされるテイストが持ち味。先天性難聴の障がいがあるAsukaさんですが、アーティスト活動を始めてから「自分以外にもいろんな障がいがあるんだということを知ることができ、心が広くなった」と話します。
次回開催に向けて意欲満々!
花やスイーツなどをテーマに、独特の色使いでカラフルな作品を描くゆめかさんは、自閉スペクトラム症などの障がいがありますが、そのことで「みんなと違った絵が描けること」が自身の魅力につながっているといいます。
ふだんは人前に出ることが苦手で口数も少ないそうですが、今回のイベントは自分から「出る」とアピール。たいぞうも、そんなゆめかさんに「大きな第一歩を踏み出されたと思います」と感激していました。
羽戸康貴さんも自閉スペクトラム症で、幼少のころ「太陽の塔」を見て衝撃を受けたことがきっかけで絵の世界に。最近では、ロックバンド『WeekendAll』のアルバムのジャケットに羽戸さんの作品が採用されました。将来は「好きなバンドのジャケットに自分の絵を採用してもらうことと、絵本を販売すること」が目標だと語ります。

そしてAbeille代表の河瀬さんは、「今日は本当に貴重な経験をさせていただきました」と語ると、こう続けます。
「“アート”と“福祉”はあるけれど、そこ“に笑い”が加わる。最初は『障がいをネタにするのはどうかな?』と思いましたが、本人たちが『やりたい』『障がいをネタに笑わせてやろうや』と言ってくれ、その強さにかっこよさを感じました」
さらに「手応えを感じた」という河瀬さんが、たいぞうに「次は……どうですか?」とさっそく次回のオファーをすると、会場から大きな拍手が。これを受けてたいぞうも、実現に向けて「夢が広がっていくと思います!! 僕も役立ててうれしいです」と目を輝かせていました。
このイベントの模様は映像化され、YouTubeチャンネル「たいぞうのスケッチブック」でご覧いただけます。
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「たいぞう×放送芸術学院専門学校×Abeille~お笑いとアート」
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