すゑひろがりずと狂言師・野村太一郎がガチンコ対談! 「いつか本物の狂言を指導したい」

狂言風漫才で人気のすゑひろがりず(南條庄助・三島達矢)と、31歳の若さで新作能の演出など精力的に活動する狂言師・野村太一郎。これまでもYouTubeチャンネル「すゑひろがりず局番」などでコラボしてきた3人ですが、ついに舞台での共演が実現します。今回は、1月に東京・銀座の観世能楽堂で開催された『狂宴御芸〜狂言お笑い共宴〜』の模様が6月19日(土)にBSフジで放送されるにあたって、副音声収録で再会した3人にインタビューしました。

出典: FANY マガジン
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『狂宴御芸』を振り返って

――まずは1月30日(土)に上演された漫才・落語・狂言のコラボイベント『狂宴御芸』を今回、改めて映像で観た感想を聞かせてください。

野村 話芸の立ち合いといった感じで、漫才、落語、狂言の三者三様のよさが出た、非常に有意義な公演だったなあと思います。すゑひろがりずさんが出られなかったのはとても残念でしたが……。(すゑひろがりずが出演予定だった『狂宴御芸』夜の部はコロナの影響で上演中止)

三島 本当に。

南條 太一郎さんのやられた狂言「蝸牛」は、自分たちのYouTubeチャンネルに出演いただいたときに拝見しましたが、漫才の部分は今回初めて観て、やっぱりあの舞台(観世能楽堂)に立ったら、いつもどおりにはいかなそうやなあと思いました。僕ら、ふだんは前を向いてやることしかないですけど、横からも観られてるってどんな気持ちなんやろうと。しかも、橋掛かり(狂言の本舞台へつながる長い廊下)から出てくるあのストローク、どういう顔していいかわからんやろな……。

三島 やっぱり橋掛かりからの登場が面白いですよね。単純にうらやましいな、出たかったなあと思いました。

出典: FANY マガジン
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能楽堂間違いは狂言師あるある!?

――7月3日(土)に大阪で開かれる『狂宴御芸 Vol.2 〜大阪夏の笑宴〜』には、いよいよすゑひろがりずのおふたりも出演しますね。

南條 そうなんですよ。

三島 うれしいです。

野村 会場の大槻能楽堂は、いま大阪の能楽堂でいちばん大きいところですね。最近リニューアルしてきれいになったんですよ。

三島 へえ!

南條 楽しみやなあ。

出典: FANY マガジン
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――野村さんは、大阪で公演することに特別な思いはありますか?

野村 笑いにシビアな関西圏で、お笑いファンの方、落語ファンの方もいらっしゃるなかでやるのは、銀座の観世能楽堂とはまた違った緊張感がありますね。第1回の『狂宴御芸』では話芸を意識しましたが、今回は動きの多い、視覚的に面白いものをチョイスしようと思っています。

三島 狂言師の皆さんも、舞台でウケたいと思われるものなんですか?

野村 ウケたいというより、反応がほしいという感じですかね。「うんうん」とうなずいてくださるお客さまが見えると、「理解してくださっているんだな」とホッとします。

――おふたりは、とうとう初めて能舞台に立つことになりますが。

三島 当日、めちゃくちゃ緊張するんやろなと思います。でもさっき知ったんですけど、同じ日に埼玉・大宮で「大宮セブン」(すゑひろがりずが所属するお笑いユニット)のライブがあるんですよ。だから出番を終えたら、すぐ大宮に向かわないといけない。

南條 絶対に狂言までぜんぶ観て帰りたかったのに!

三島 本当ですよ! もちろん、どっちも大事な仕事なので仕方ないですけど……。「能楽堂飛び出し」ってなかなかないですよ。狂言師の方って、飛び出し(出番が終わってすぐに劇場を出ること)とかあるものですか?

野村 それが、けっこう僕らもあるんですよ。基本的には同じところでやりますが、それこそ終わってすぐ着物に着替えて、バーッと車で移動して次の場所で舞台に立って、という日もあります。

出典: FANY マガジン
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三島 あるんですねえ。太一郎さん、吉本に所属したからこれから増えると思いますよ。

南條 いやいや、太一郎さんに営業振らないでしょ。

三島 分刻みでの移動で、自分がどこにいるのかわからなくなっちゃうと思いますよ。「あれ、いま何能楽堂かな?」って。

野村 でも、それもあるんです(笑)。違う能楽堂に行ってしまって、「あれ、誰もいない」ってことがけっこう。

南條 “能楽堂間違い”は、能楽師・狂言師あるあるなんですね。

出典: FANY マガジン
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それぞれの“豪華単独ライブ”

――6月13日(日)には『野村太一郎 狂言の会』が開催されますが、これはお笑いにたとえると単独ライブのようなものでしょうか。

野村 そうですね。今回が第1回目なんですが、年1回でも新たな演目をやって、芸力を高めるための研鑽の会にしたいと思っています。

――師匠である野村萬斎さんも出演するそうですね。

野村 萬斎先生にも、萬斎先生のお父様である野村万作先生にもお相手いただいて、勉強させていただきます。

三島 すごい! 僕らでたとえたら、単独ライブに西川きよし師匠とダウンタウンの松本(人志)さんが来るようなものじゃないですか。

南條 しかも、トリを僕らがやることになるんやろ。

野村 自分の会でしかできないような選曲と配役をさせていただいています。

出典: FANY マガジン
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――単独ライブといえば、すゑひろがりずさんは結成10周年を記念した初の全国ツアー『諸国漫遊記』で、千秋楽の8月8日(日・祝)の東京公演をなんと観世能楽堂で開催するんですよね。

南條 能楽堂に格があるかどうかも知らないんですが、最初は町のちっちゃな神社にあるような能舞台でもいいと思ってたんです。それくらいのイメージで「能楽堂とかで単独ライブできたら面白いですね」とポロッと言ったら、観世能楽堂でやらせていただけることになって。

三島 衝撃ですよ。

南條 そこまでのつもりじゃなかった!と思いましたけど、せっかくの機会なので思いっきり盛り上げたいと思います。

――野村さんから、2人にアドバイスはありますか?

三島 お願いします!

野村 先ほど「横から観られる経験がない」と話されていましたが、僕らは常に360度から観られている意識を持ちながら舞台に立っているところがありまして。正面と右に客席があって、左は能楽堂によっては楽屋内の方が観られるスペースがあるんです。そして後ろは神様が観ていると。

三島 はー!

出典: FANY マガジン
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野村 能舞台には舞台の真ん中「正中」の少し後ろの上に、「道成寺」といって鐘を吊るための滑車があります。もし慣れない舞台で圧を感じたら、一歩下がってそのあたりに立たれるのがいいんじゃないかと。僕らもそこからスタートすることが多いので。

南條 なるほど。やはりふつうの劇場とは設備からして違うので、先日、東京公演の打ち合わせをしたときも、「もし揚幕(橋掛かりの端にかけられた五色の幕)を上げるんやったら専門の方を2人お呼びせなあかん」という話になったりして。

三島 鐘を吊る可能性もあります。

南條 ないです。

三島 最初にゴーンと。

野村 (笑)

五反田のラーメン屋で「運命の出会い」!?

――すゑひろがりずのおふたりは、野村さんとの交流が生まれたり、テレビ番組で鼓の先生に指導を受けたりと、本職の方々と接する機会も増えてきましたね。

南條 ちょっと前までは本物の方とはあまり会わんように、逃げながら暮らしてたんですよ。でも、いざこうしてお会いすると、新しい世界が広がりますね。

三島 ほんまやなあ。

南條 知らなかったこと、これは知っといたほうが絶対いいということがたくさん出てくるので、いままでビビっていた自分を叱ってやりたいです。もっと積極的に交流を持ったほうが、面白さの厚みも増すと思うので。今回、能楽堂で単独ライブをやらせていただくのも、太一郎さんとお会いしたのがひとつのきっかけになっているので、ありがたいなあと思います。

出典: FANY マガジン
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三島 もともとは僕ら、本とかネットで知識を得ていましたけど、1人で「こんな感じなんやなあ」とかいうよりも、やっぱり直接お会いして、冗談を交えつつお話を伺えるほうがいいですね。人となりも知れますし。この前、五反田のラーメン屋で太一郎さんにばったりお会いして。

野村 びっくりしました。

南條 そんなことある?

三島 だからもう、太一郎さんとは出会うべくして出会ったんだなと思います。カウンターの、隣の席ですよ?

野村 しかも同じものを注文していました(笑)。

南條 そらすごい、運命やなあ。

出典: FANY マガジン
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――野村さんは今年から吉本に所属することになりましたが、新たにやってみたいことはありますか?

野村 幅を広げるために、さまざまなジャンルの演劇や映像に飛び込みたいですね。もちろん本業の狂言の芸力を高めて、新たな若いお客さまも獲得して狂言のファンを増やしていきたいと思います。

三島 それはメチャクチャいいですね。

野村 すゑひろがりずさんともご縁ができましたし、おふたりには一度、ちゃんとした狂言をご指導させていただきたいです。どこででもできるような、10分くらいのものを。そこまで本物寄りの芸風になってしまうのは、おふたりにとっていいのか悪いのかわかりませんが(笑)。

三島 おお! それは一度やってみたいですね。

南條 それは僕らも夢です。ぜひいつか、お願いしたいですね。

すゑひろがりずの公式YouTubeチャンネルはこちらから。

番組概要

『狂宴御芸 1月30日実施分』(BSフジ)
日時:6月19日(土)18:00~18:55

公演概要

『第1回 野村太一郎 狂言の会』
日時:6月13日(日) 開場13:30 開演14:00
会場:観世能楽堂
チケット:S席8,000円 A席5,000円 B席3,000円

詳細はこちらから。

『狂宴御芸vol2 ~大阪夏の笑宴~』
日時:7月3日(土)
場所:大槻能楽堂
出演:【狂言師】野村太一郎ほか 【落語家】桂文珍 【漫才師】和牛、おいでやすこが、すゑひろがりず
チケット:前売5,000円

FANYチケットはこちらから。

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