バッドボーイズ・佐田正樹のひとり芝居が、11月12日(水)から16日(日)まで東京・テアトルBONBONで上演されます。題して「バッドボーイズ佐田正樹『ひとり芝居8』」。相方・清人の「ひとり芝居に挑戦してみたら?」というアドバイスをきっかけに始まったこの企画も、今年で第8弾となります。そこで主演の佐田と、今回で4回目のタッグを組む演出家ニシオカ・ト・ニールに、稽古の合間を縫って、それぞれの思いや、まだまだ進化しそうな今後の展望までたっぷりと聞きました。

『ひとり芝居』は、佐田が清人を含むさまざまな脚本・演出家たちと組み、1公演につき2~3本のひとり芝居を上演するスタイルで2016年にスタート。今回は、ニシオカ・ト・ニール脚本・演出による『奇石』と、ますもとたくや作・演出の『サルカニ・サスペンス』という2作品が予定されています。
作品のヒントは佐田のインスピレーション
――何とも気になる2作品ですが、いつも佐田さんからニシオカさんに作品の内容についてオーダーしていることはありますか?
佐田 あまりないんですけど、何かあったほうが嬉しいですって言われるよね。
ニシオカ 「自由で」とか言われると逆に書きづらいので、毎回、何かお題をくださいとお願いしています。
佐田 今年は、たまたま見た、あるショート動画の話をしました。父親が息子に時計を売ってきてくれって頼むんですけど、息子が1軒目、2軒目と回っても安い金額しか提示されないんですよ。でも、3軒目に行った店では何百万もの値が付いたって、息子が喜んで帰って来る。それを見た父親は、場所によって価値は違うから、おまえにちゃんと価値を見出してくれる場所で仕事を見つけなさいっていう最後のメッセージを残すんです。それがすごくよかったから、そんな話がいいなって。
ニシオカ 「価値」の話ですよね。そんなふうに、佐田さんがしゃべったことからインスピレーションを受けて(作品を)作るようにはしています。

――ニシオカさんが今回、手掛ける『奇石』はどのような作品なのでしょうか。
ニシオカ そうですね。どういう話って説明したら、皆さん来てくれるんですかね?
佐田 うーん、極端に言うと「戦争反対」。暴力じゃ何も解決しないよっていうことかな。人ってモメるじゃないですか。モメてもちゃんと最後まで話し合おうよ、暴力じゃ誰も幸せになんてなれないんだよという、ザッというとそんなテーマです。
でも、やっぱり人間だから、同じ過ちを繰り返してしまう不安も残しつつ、生きていかなければいけないっていう……僕の解釈ですよ?
ニシオカ すごい! ちゃんと(台本を)読み込んでくれたんですね。ありがとうございます。
ニシオカのスパルタに苦戦!?
――ひとり芝居って大変じゃないですか? セリフを忘れたりしたら、誰にも助けてもらえないですし……。
ニシオカ フフフ……(笑)。
佐田 作家さんによっていろいろなひとり芝居の見せ方があるんですけど、ト・ニール先生は“The ひとり芝居”なので、セット転換とかナレーションとかを許さないスパルタ方針なんですよ。録音したセリフは使わず、素の舞台だけで勝負させる方針だから、いろいろ出てくる登場人物をすべて僕ひとりで演じるんです。
だから、若い人からお年寄りまで声を変えながら演じ分けて、セリフを言う立ち位置も変えなくちゃいけない。「いま、誰だったっけ?」っていうことも多々あります。ナレーションをやって、女性の役に戻って……とかやってると、男女の会話のはずが、いつの間にかおじさん同士の会話になっていたりね(笑)。脳みそが追いつかない感じで、難しいです。
ニシオカ でも、ひとり芝居だからね!
佐田 はい、ひとり芝居です……。

4年目にして信頼関係ができてきた!
――ニシオカさんが「ひとり芝居」に参加するのは、今年で4回目です。“役者・佐田正樹”の魅力をどんなところに感じていますか?
ニシオカ そうですね。魅力は……あるなと思っています(笑)。
佐田 ククク……(笑)。
ニシオカ 4回目にして信頼関係ができてきたなと、私は勝手に思っているんですけど、どうですか?
佐田 そうですね。
ニシオカ 素直な方なので、やりやすいというか、わかりやすいんです。「あ、今日やる気ないな」とか(笑)。
佐田 ハハハ!(爆笑)
――そういうこともわかってしまうんですね(笑)。
佐田 「やる気ないな」じゃなくて、「疲れてるな」でしょう! 言い方!!
ニシオカ そんなこともわかるようになってきました。役者ってストイックな人が多いので、最初のころは私もストイックにやり過ぎて、いま思えば、佐田さんがかわいそうだったなと思います。最近は佐田さんのペースに合わせてやれるし、佐田さんも私のスパルタに対する心構えがあるから、ちゃんと準備してきてくれます。
――回を重ねるごとに、佐田さんの変化を感じることはありますか?
ニシオカ 最初のころは、ひとり芝居ゆえのセリフ量に苦労していて、とにかくセリフを丸暗記という感じで大変そうでした。でも最近は、先ほどストーリーを説明されていたように、内容をちゃんと捉えてからセリフを言ってくれているので、すごく「俳優になったな」と思います。

佐田 セリフを覚えるのは早くなりましたね。でも極端な話、セリフを覚えていなくても、ストーリーをちゃんとわかっていれば、ひとり芝居なので最後まで演じきれるんですよ。だけど、ここ(ストーリーを把握して)からは、演出家の脚本に恥をかかせないように、一言一句正確にセリフを覚えていく作業に入ります
ニシオカ わっ! そんなことまで。
ときにはぶつかりながら成長させてもらった
佐田 芝居って、よくしようと思うとキリがないんです。だけど、料理と同じであれこれ足し過ぎてもお腹いっぱいになるばかりでよくない。だから、何度も足し引きしながら、いちばんいいところでお客さんに出せるようにと思っています。
でも、最初のころは本当にそんな余裕はなかったんですよ。とにかく「セリフを覚えて出す」までしかできなかった。やっぱり芸人だから、舞台は生ものだし、日によって多少違ったっていいだろうと思っていたんです。「とにかく、セリフを覚えたんだからいいでしょ、稽古ってなんですか?」って。
だけど、いろいろな演出家の方とやらせてもらって、ときにはぶつかったりもしながら成長させてもらって、そういう経験があるから、いまは「もっとやろう」「もっとよくしよう」と思えるように変わりました。人の意見を取り入れられるようになりましたね。
役者さんがやる舞台と芸人がやる舞台は、やっぱりちょっと違うから、それがバランスよく出せる舞台ができるといいなって。

千秋楽のチケットは希望者であふれてる!
ニシオカ チラシとか演劇っぽくなってきましたよね。最初はこの星取り(星マークで示す公演一覧表)もなくて、ただ佐田さんのビジュアルだけがボンとあって……。
佐田 以前は、自分でポスター作ったこともありましたもん。撮影も自分でスタジオを抑えて、マネージャーと2人で撮ったりして……。
――制作体制もだいぶ変わってきたんですね。
佐田 そうです。ちなみに、今回のチラシにあるタイトルは、バッファロー吾郎の竹若(元博)さんに書いてもらったんですよ。竹若さんの書道がすごく好きでね。めちゃくちゃ個性ある字を書かれるんですよ。
今回からセットも変わってきて、いつもはボックスだけだったんですけど、今回は天井に飾りも付きました。
ニシオカ だんだん高級な演劇感が出てきました(笑)
佐田 北海道や沖縄から日帰りで観に来てくれる人もいるんですよ。ありがたいですよね。聞きました? 今回なんて千秋楽のチケットは、先行販売の時点で希望者があふれてるんですよ。ほかの日もあまりチケットが残っていないらしいです。
ニシオカ すごいじゃないですか! もう人気俳優です。
佐田 継続は力なりです。もう嬉しくて、周囲の人に自慢しちゃいました。
ニシオカ 何年か前までは、(先行販売の抽選に)全員当たるよとか言ってたのに(笑)。
佐田 もう落選者が出ちゃいます。一般発売も早く買わないとなくなっちゃうかもしれないです。
ニシオカ 嬉しそうに(笑)。

「“ひとり芝居”は『10』でいったんやめようかと…」
――今後は劇場を大きくするとか、地方公演に行くとか、展望はあるんですか?
佐田 実は『ひとり芝居10』までいったら、ひとり芝居のスタイルはいったんやめようと思ってるんですよ。
ニシオカ えっ!?
佐田 ちょうど「10」をやる2年後は49歳になるんです。だから50歳になる「11」からは、何かしらかたちを変えたい。たとえば、1作品はひとり芝居にして、もう1作品は2人芝居にするとかね。最終的には“佐田劇団”を作りたいなと。
ニシオカ ひとり芝居で1時間半の長編作品を……とかはないんですか?
佐田 それはどこでやるかですよね。「9」か「10」でやるかもしれない。
ニシオカ 自分で脚本書くとかは?
佐田 それは恥ずかしい(笑)。自分以外の人も出演するならいいけど、自分で書いて自分で演じるのは恥ずかしいよ。だから、(自分が書いた脚本で)誰かに演ってもらうとかならいいですね。オレが書いた脚本で逆に(ニシオカが)演じるとか、面白くないですか? お互いに相手の脚本・演出でお芝居するっていうね。オレが演出する側になったら、(ニシオカに)「おまえ、あんときやってくれたな」って、めちゃくちゃスパルタにするかもしれない。すごい難しい殺陣とか入れて(笑)。
ニシオカ 仕返しされるんですね。そこで嫌われてたんだって気づく(笑)。

回を重ねるごとに観客との波長が合ってきている
――佐田さんにとって、お芝居の魅力って何ですか?
佐田 最初は自分のために始めた感じですけど、終わったあとに皆さんから「よくできるね」とか「感動したよ」っていう感想をもらうと、あぁ、やってよかったなって思えるんです。
それで、次の年もまたあの感覚を味わいたい、皆さんにも喜んでほしいという気持ちになる。回を重ねるごとに、お客さんとの波長が合ってくる感覚はあります。すごくしんどい作業ですけど、これまでの経験で、そのしんどさの先に待っているものを知ってしまったのでね。
――ひとり芝居をやることも、女性の脚本・演出でやることも、相方の清人さんのアイデアだと聞きました。それが見事にハマって、8年も続く人気公演につながったわけですね。
佐田 きっかけはいつも清人がくれていて、客観的に見て、方向性を決めてくれています。いま考えると、意外と名プロデューサーですね。

――芸人仲間が観劇に来たことはありますか?
佐田 後輩はよく来てくれますけど、前回公演は先輩が来てくれました。2丁拳銃の(川谷)修士さんです。昔から憧れていた、大好きな先輩だったから嬉しかったですね。しかも、めちゃくちゃ褒めてくれたんですよ。「オモロかったわ。もっと早くから観に来ていればよかった。おまえ華があるな」って。LINEで長文の感想を送ってくれて、それを見ながら、ふだん飲まない缶ビールを飲んじゃいましたもん。
――最後に、この記事を読んでいる皆さんにメッセージをお願いします。
ニシオカ 今回も佐田さんとぶつかり稽古をしながら(舞台を)作っているので、佐田さんの生き様を生で観に来てください。
佐田 調子にのっているわけではないですけど、早めにチケットを取ったほうがいいです。もうこの記事を読まれているころには売り切れているかもしれません。ごめんなさいね(笑)。
初めて来てくれる方も、2回目以上の方もいらっしゃると思いますが、一昨年より去年、去年より今年と、回を重ねるごとにいいものになっています。もちろん、今年も脚本を読んだ時点で、いい作品になる確信ができたので、楽しみに来てください!

開催概要
バッドボーイズ 佐田正樹 『ひとり芝居8』
開催日時:2025年11月12日(水)~11月16日(日)
※全6公演
11月12日(水)開場19:00/開演19:30
11月13日(木)開場19:00/開演19:30
11月14日(金)開場19:00/開演19:30
11月15日(土)開場13:00/開演13:30|開場17:00/開演17:30
11月16日(日)開場13:00/開演13:30
出演:バッドボーイズ佐田正樹
声:佐藤宙輝(山田ジャパン)、安藤ひかり
歌:TABARU
会場:ポケットスクエア/テアトルBONBON
(中野区中野3-22-8)
<チケット情報>
・一般:前売 5,000円/当日 5,500円
・特典付き:前売 7,000円
※限定スペシャル特典付きチケット購入者に会場にてレアグッズをお渡しします。
※特典付きチケットはFANY先行受付のみの取り扱いとなります。
チケット販売:FANYチケット
〇一般販売
発売日時:10月11日(土)10:00
FANYチケット:https://ticket.fany.lol/event/detail/7846